西浦特急 鉄道と旅のブログ

鉄道・飛行機などで国内外を旅行した様子のほか、鉄道を中心に交通全般の話題を取り上げます。

【並行高速道路が全線開通】特急ふじかわ12号乗車記(甲府16:35→静岡18:55)

f:id:nishiuraexp:20210819173519j:plain山梨県甲府市JR甲府駅改札口。

今回はここから静岡行の特急ふじかわ号に乗車します。

 

f:id:nishiuraexp:20210819174142j:plain特急ふじかわ号の終点は静岡ですが、今回は静岡で東海道新幹線に乗り継ぎ静岡空港に近い掛川へ向かいます。

 

f:id:nishiuraexp:20210819173551j:plain特急ふじかわ号は、甲府と静岡の間を身延線経由で2時間少々で結ぶ特急列車で1日7往復の運転。

乗車するのは甲府16:35発の12号です。

 

f:id:nishiuraexp:20210819173615j:plain甲府駅から特急ふじかわ号など身延線方面の列車に乗車する場合、1番ホームの東端に位置する行き止まり式の4番・5番線からの乗車となります。

 

f:id:nishiuraexp:20210819173647j:plain甲府発の身延線は普通列車が概ね40分毎、その間に特急ふじかわ号が約2時間間隔で運転されています。

 

f:id:nishiuraexp:20210819173709j:plain16時過ぎ。少し遅れて静岡からの特急ふじかわ7号が4番線に到着。

乗客が下車したあと車内清掃と座席回転が行われ、折り返し特急ふじかわ12号となります。

特急ふじかわ号は全列車が写真の373系3両編成での運転です。

 

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f:id:nishiuraexp:20210819173830j:plain373系は東京〜静岡間の急行東海号、東京〜大垣間の夜行快速列車、現在の特急ふじかわ号の前身で静岡〜甲府を結んでいた急行富士川号やそれらの間合いで東海道線の普通列車としても運転されていた急行型電車165系を置き換える目的で1995年に投入されました。

373系は特急型車両として製造され、急行東海号と急行富士川号は373系投入に伴い特急に格上げされました。(特急東海号は2007年に廃止)

一方で間合いとはいえ乗降の多い普通列車の運用にも入る前提であったため、スムーズな乗降を考慮する必要があり、ドアは特急車両としては珍しい幅広の両開きが採用されデッキと客室を仕切る扉も設けられていません。

 

f:id:nishiuraexp:20210819173928j:plainドアが車端ではなく少し中間に寄った位置にあるのも特急車両としては異例で、

ドアと車端の間のスペースは4人掛席の真ん中にテーブルが配されたコンパートメントのような区画になっています。

 

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特急車両でありながら普通列車としての運転も考慮された373系ですが、座席は他のJR特急車両と比較して見劣りするようなことはなく、モケットの色遣いの効果もあって普通車の座席としては高級感さえ漂っています。

 

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シートピッチは97cmでフットレストが備わります。ただ90年代製造の車両で大きな改造の履歴もないことからコンセントは備わっていません。

 

f:id:nishiuraexp:20210819174225j:plainテーブルは座席背面ではなく肘置きに内蔵されており、引き出すと一般的なサイズの弁当とペットボトルをのせても余る程度の大きさがあります。

 

f:id:nishiuraexp:20210819174309j:plain16:35。信号が変わり定刻に甲府駅を発車。

373系は一般的には前面展望車両とは認識されていませんが、運転席の後ろのデッキに立つとある程度前面展望を楽しむことができます。

 

f:id:nishiuraexp:20210819174331j:plain甲府を発車した特急ふじかわ号が進む身延線は大半が単線ですが、甲府駅からしばらくは中央本線の複線との並行区間となります。

なお身延線はJR東海の路線、並行する中央本線はJR東日本の路線です。

写真は身延線最初の通過駅で金手と書いて「かねんて」と読みますが、並行する中央本線にはホームはなく身延線単独の駅となっています。

 

f:id:nishiuraexp:20210819174352j:plain金手からもしばらく中央本線と並行したのち身延線は右手に別れ、南に進路をかえ静岡県方面へ向かいます。

 

f:id:nishiuraexp:20210819174416j:plain中央本線との分岐点に近い善光寺駅を通過したのち、16:40。最初の停車駅南甲府に停車。

 

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国母駅〜常永駅間で中央自動車道をアンダークロス。

 

f:id:nishiuraexp:20210819174501j:plain16:48東花輪駅に停車。

旅客施設としては島式ホーム1面ですが、ローカル線の途中駅としては広い構内を有する駅であることがわかります

 

f:id:nishiuraexp:20210828211925j:plain東花輪を出ると笛吹川の鉄橋を渡ります。

笛吹川は甲府市街を流れる釜無川と合流し富士川となって静岡県から太平洋に注ぎます。

 

f:id:nishiuraexp:20210828212005j:plain16:56市川大門駅に停車。

1995年築の中国風駅舎は公民館を併設しています。

 

f:id:nishiuraexp:20210828212040j:plain乗車日の甲府周辺は夕立に見舞われましたが、身延線を南下するにつれて天候は回復。

雨上がりの瑞々しい車窓を楽しむことができました。

 

f:id:nishiuraexp:20210828212124j:plain市川大門駅を出て間もなくアンダークロスする新しい高速道路は中部横断自動車道で、

本記事投稿日の2021年8月29日に身延線に並行する区間のうち未開通で残っていた南部IC〜下部温泉早川IC間が開通。

新東名高速道路新清水JCT〜中央自動車道双葉JCTの区間が全線開通しました。

特急ふじかわ号が結ぶ静岡市と甲府市の間は、高速道路がなかった時代には国道52号経由で2時間45分かかっていたものが、今回の全線開通で1時間40分まで短縮されるようです。

 

f:id:nishiuraexp:20210828212204j:plain17:00鰍沢口駅着。

甲府から21.6km。鰍沢口駅は甲府盆地の南端に位置しています。

甲府からの普通列車はここで折り返すものが多く、ダイヤ上も甲府都市圏の末端駅となっています。

特急ふじかわ号の自由席を身延線内で利用する場合、30kmまで330円の特急料金で利用でき、甲府〜鰍沢口間もその対象となるはずですが、甲府都市圏内での利用は多くないように見えます。

甲府〜鰍沢口駅間は特急では25分程度ですが、朝ラッシュ時の甲府方面の普通列車では45分から50分かかります。

現在のダイヤでは甲府方面へ向かう特急ふじかわ号の初発1号の甲府着は10:31で甲府への通勤に特急ふじかわ号を利用することはできません。

一方、甲府から静岡へ向かう最終の特急ふじかわ14号が18:36に甲府を発車したのち、静岡からは11号が20:01に、13号が22:06に甲府に到着します。

この2本の編成は甲府滞泊となり、翌日の甲府発6:20の2号と8:45発の4号となって静岡に帰る運用になっていると思いますが、11号が20:01に甲府に到着したのち、普通電車として身延まで折り返し、

翌朝、身延を7:20頃に出て、鰍沢口7:45頃、甲府着8:10頃となる通勤特急として運転すれば、一定の需要が見込めると思うのは筆者だけでしょうか。

新幹線を持たないJR四国などでは、実際にこのようなキメ細かい車両運用で増収が図られ、利用者からも一定の評価を得ているように見えます。

 

f:id:nishiuraexp:20210828212251j:plain鰍沢口からは次第に山間の風景となり、

17:19下部温泉駅に到着。

しばらく停車して甲府行の特急ふじかわ9号と行き違います。

下部温泉駅からの乗車は行き違った9号のほうが多かったようです。

特急ふじかわ号の自由席特急料金が安く設定されているのは、このあたりから特急ふじかわ号に乗車し甲府で中央本線の特急に乗り継いで首都圏とを行き来する乗客に対する乗り継ぎ割引的な意図もあるのかも知れません。

 

f:id:nishiuraexp:20210828212419j:plain下部温泉駅から約10分。17:29身延着。

路線名にもなっている身延線の主要駅で、日蓮宗の総本山久遠寺の最寄り駅でもあります。

改札上には「ようこそ信仰の町 心のふる里」の文字もみえますが、

駅の利用者数はコロナ前の数値で303人と控えめで、特急ふじかわ12号への乗車も他の駅に比べ目立って多いわけではありません。

 

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身延からは富士川に沿って南下します。車窓は美しいこの区間ですが、線形は厳しく列車の速度は上がりません。

高速道路と競合どころか並行する一般道を走る自動車に抜かれることも珍しくないようです。

 

f:id:nishiuraexp:20210828212620j:plain17:43内船駅着。

f:id:nishiuraexp:20210828212705j:plain富士川の流れから一旦離れると、沼久保駅から西富士宮駅にかけて富士宮市街地を見下ろす長い下り勾配を進みます。

天気が良ければ市街地越しに富士山を裾野まで見渡すことができるJR屈指の絶景区間でもあります。

 

f:id:nishiuraexp:20210828212752j:plain内船を発車して30分。

18:13富士宮市街に入りその玄関である富士宮駅に停車。

以前はこの駅を目的地とする宗教系臨時列車が多数運転されていましたが、現在ではほとんど運転されることはありません。

バス輸送などに取って代わられたのではなく宗教上の理由によるものです。

 

f:id:nishiuraexp:20210828212844j:plain全線88.4kmの身延線ですが、富士宮と東海道線接続の富士の間10.7kmのみ複線化されています。

背景には先述の宗教系臨時列車のスムーズな運転という理由があったとも言われていますが、

その運転がほぼ無くなった現在でも、複線設備が活きるだけの本数の普通列車が運転されているのは幸いです。

 

f:id:nishiuraexp:20210828212926j:plain富士宮から約10分東海道線に合流し富士駅に進入。

特急ふじかわ号はここで進行方向をかえて東海道線に入り終点静岡へ向かいます。

 

f:id:nishiuraexp:20210828213008j:plain富士では4分の停車時間があり車内ではセルフサービスで座席の転換作業が行われます。

静岡まで30分もかかりませんが大半の乗客が座席を回転させていました。

 

f:id:nishiuraexp:20210828213043j:plain富士を発車して間もなく、身延線では一度も渡ることなく並行していた富士川にかかる鉄橋を渡ります。

 

f:id:nishiuraexp:20210828213123j:plain国道1号、東名高速道路と並んで静岡へラストスパート。

道路越しには駿河湾が広がり背後には富士山がそびえています。

 

f:id:nishiuraexp:20210828213158j:plain18:46最後の停車駅、清水に停車。

 

f:id:nishiuraexp:20210828213252j:plain清水からの最終区間になって甲府発車以来初めて時速100kmを突破。

身延線の線形の悪さが災いし、乗車中の特急ふじかわ12号は甲府〜静岡の全区間122.4kmの走行に2時間20分を要し平均時速は52.5km。

平均時速70km台でも全線開通した高速道路を走る場合と同タイムで静岡〜甲府間を走破できる計算てすが、

残念ながら現状では遠く及ばず全国屈指の鈍足特急となっています。

 

f:id:nishiuraexp:20210828213322j:plain東海道線の清水〜静岡間はターミナルは離れているものの静岡鉄道と並行しています。

静岡鉄道の路線は短距離ながら全線複線で運転間隔も10分未満。

西日本で言えば広島におけるJR山陽本線と広島電鉄宮島線の並行区間に近い印象です。

 

f:id:nishiuraexp:20210828213355j:plain富士駅で進行方向を変えたのち東海道線を下ること約25分。高架線に上がり終点の静岡駅に進入。

 

f:id:nishiuraexp:20210829193821j:plain18:55終点静岡駅に到着。

下車客のうち一定数は駅出口ではなく東海道新幹線乗り換え改札口へ向かったようです。

時刻表を確認すると静岡停車のひかり655号新大阪行と接続が図られており、乗り継ぐと京都に20:15、新大阪には20:30に到着することができます。

 

f:id:nishiuraexp:20210828213531j:plain 筆者はその1本あとの「こだま747号」に乗り継ぎ隣の掛川駅で下車。

 

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f:id:nishiuraexp:20210828213641j:plain 掛川駅前のホテルで一泊し、翌朝フジドリームエアラインズ利用者専用の無料バスで静岡空港へ向かいました。

続きは近日中に投稿します。

 

 

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【JR最高路線】小海線乗車記(小諸12:04→小淵沢14:23)

f:id:nishiuraexp:20210818205347j:plain長野県小諸市。小諸駅。

今回はここからJR東日本小海線に乗車します。

 f:id:nishiuraexp:20210822142809j:plain小海線は小諸から北陸新幹線接続の佐久平駅・小海駅などを経由して山梨県に入り、中央本線の小淵沢に至る78.9kmの路線です。

 

f:id:nishiuraexp:20210818205428j:plain小諸駅は1997年の北陸新幹線開業まで、信越本線の主要駅の一つに数えられ、上野と長野を結んでいた特急あさま号も停車していました。

駅舎内は国鉄時代の名残りも感じられます。

 

f:id:nishiuraexp:20210818205514j:plain乗車する列車は小諸発12:04の小淵沢行普通列車。

小海線の定期列車は全て普通列車で、小諸周辺では1時間に1本程度の運転ですが、途中の中込や小海までの便が多く、終点小淵沢まで運転する定期列車は1日7本しかありません。

 

f:id:nishiuraexp:20210818205557j:plain5番線で発車時刻を待つ小海線列車。

発車時刻まで30分でありましたが、すでに乗車可能でした。

 

f:id:nishiuraexp:20210818205716j:plain 車両は平成19年に世界で初めて定期列車に導入されたハイブリッド気動車キハE200系の2両編成です。

発車時には蓄電池の充電電力を使用するため、気動車特有のディーゼルエンジンの唸りを聞くことはありません。

小海線での運転を開始して14年になりますが、この車両で運転される列車は今でも時刻表に「ハイブリッド車両で運転」の注釈が添えられています。

 

f:id:nishiuraexp:20210818205842j:plain小諸を発車した列車は、しばらく複線電化のしなの鉄道線の軌道と並行して進みます。

並行区間では、小海線には東小諸、乙女の2駅が設けられていますが、しなの鉄道線には駅はありません。

なお小海線は終点小淵沢まで全線が単線非電化です。

 

f:id:nishiuraexp:20210818205917j:plain乙女駅ホームの電柱に設置された路線図。

右側に各駅の標高が記されています。

小海線は全線が標高600m以上に位置しています。

小諸方から見ると中込までは標高700m近くで小刻みなアップダウンを繰り返しますが、中込からは山梨県境に向けて登り勾配が続き、海尻から終点小淵沢の一つ手前甲斐小泉までの8駅は標高1000mを越えています。

そのうち佐久広瀬から甲斐大泉の表記の横には1位〜5位の文字があります。

これは小海線内での標高ランキングではなく全JRでの順位です。

参考までにJR西日本で最も標高が高い駅は木次線の三井野原駅でその標高は727m。

小海線がいかに高い所を走っているかがわかります。

 

f:id:nishiuraexp:20210818205952j:plain三岡で行き違った小諸行の普通列車はキハ110系での運転。

キハ110系はJR発足から間もない1990年に登場した高出力気動車で、勾配が続く小海線では早い段階で国鉄型気動車からの置き換えが進みました。

現在でも小海線の列車の大半はこの車両で運転されています。

 

f:id:nishiuraexp:20210818210049j:plain12:19。高架の佐久平駅に到着。

小海線の高架下には北陸新幹線の佐久平駅があります。

佐久平駅は新幹線乗り換え駅として1997年の北陸新幹線長野開通と同時に開業しました。

 

f:id:nishiuraexp:20210818210126j:plain北陸新幹線長野開業から間もなく24年。

佐久平駅周辺には新しい街が形成されていますが、その街周辺で移動の主役となっているのは、新幹線でも小海線でもなくクルマであることがよくわかる光景です。

 

f:id:nishiuraexp:20210818210244j:plain12:30着の中込では臨時列車HIGH RAIL1号と行き違い。

HIGH RAIL号は土曜休日などに運転される臨時快速列車で全車指定席。

普通列車より10分から20分短い2時間少々で小海線を走破します。

 

f:id:nishiuraexp:20210818210321j:plain古い木造住宅が残る羽黒下駅。

 

f:id:nishiuraexp:20210818210435j:plain列車は千曲川に沿って進み小海の市街地に入ります。

 

f:id:nishiuraexp:20210818210500j:plain 13:05。小諸から約1時間で標高865mの小海に到着。

小諸から30.6km、20駅目にあたります。

ここまでの平均駅間距離は1.5km。対して小海から終点小淵沢まで48.3kmに途中駅は9駅しかなく平均駅間距離は4.8kmと3倍の開きがあります。

これは沿線人口の差に加え、小諸〜小海間が私鉄てして開業し後に国有化されたのに対し、小海〜小淵沢間は最初から国鉄路線として建設されたという歴史の違いも関係ありそうです。

 

f:id:nishiuraexp:20210818210610j:plain13:32。佐久広瀬駅。

小海から山間の勾配を登り続け、この付近で標高は1000mを越えます。

小海線の小さな駅では写真のような三角屋根の待合室がよく見られます。冬季の降雪も少なくないのでしょう。

 

f:id:nishiuraexp:20210818210644j:plain13:52。JRで最も標高の高い駅として有名な野辺山に到着。小諸方から来ると長野県内最後の駅でもあります。

 

f:id:nishiuraexp:20210818210718j:plain野辺山駅のホームには「JR線最高駅野辺山。標高1345.67m」の標柱が立っています。

 

f:id:nishiuraexp:20210818210755j:plain野辺山の手前まで山間の登り勾配が続いていましたが、野辺山からしばらくは八ヶ岳を望む高原を快走します。小海線には八ヶ岳高原線の愛称もあります。

 

f:id:nishiuraexp:20210818210854j:plain野辺山駅を発車して約3分。

列車は「JR鉄道最高地点標高1375m」と記されたポールの前を通過。

列車はこの付近で長野県から山梨県に入り、終点の小淵沢に向け下り勾配に転じます。

 

f:id:nishiuraexp:20210818210944j:plain14:00。山梨県内最初の駅清里に到着。

清里はバブル期に行楽地として注目を集め多くの人で賑わったことを覚えている方も多いと思います。

JRも東京方面から小淵沢まで中央本線を走ってきた電車の前に、ディーゼル機関車を連結し、非電化の小海線へ電車を直通させる荒技で清里への需要に応えたこともあります。

ある指標で見れば、あの時代から30年余りが経過した今でも当時を超えられないのは事実であり「当時は華やかで良かった」と言うことは簡単かも知れませんが、

スマホ以前にインターネットがなかったという話は差し置いても、

公共の場所での受動喫煙は当たり前、これまでに国内でコロナウイルスが原因で亡くなられた方の数に近い数の命が毎年交通事故で失われ、

鉄道の旅でもエレベーターやエスカレーターがあるのは大都市圏の一部の駅のみ、少し田舎へ行けばトイレは汲み取り式も珍しくなかった時代。

当時を知っている世代も含め今の多くの日本人には耐えられないのではないでしようか。

  

f:id:nishiuraexp:20210818211017j:plain清里から標高1000mの森林の中を下ること20分。

松本方面からの中央本線と合流すると間もなく終点の小淵沢駅に到着します。

 

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14:23。終点小淵沢駅に到着。

この日の小淵沢駅は標高886mの高地とは思えない猛暑の中にありました。

小淵沢駅からは中央本線の普通列車で甲府に移動し、

JR東海の特急ふじかわ号に乗り継いで静岡方面へ向かいました。

続きはこちらです。
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しなの鉄道快速「軽井沢リゾート2号」乗車記(長野9:11→軽井沢10:13)

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JR東日本長野駅コンコース。

長野駅は長野冬季五輪開催を翌年に控えた1997年、北陸新幹線の長野開通にあわせ、現在の橋上駅舎となりました。

今回はここから第3セクターしなの鉄道に乗り入れる快速列車「軽井沢リゾート号」に乗車し軽井沢へ向かいます。

※本記事掲載のダイヤ、運賃、料金、サービス内容等は、2021年7月現在のものです。

 

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長野から運賃表右下の軽井沢までは1670円。

 篠ノ井までのJR区間が200円、篠ノ井からのしなの鉄道線区間が1470円です。

 

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快速軽井沢リゾート号は土曜休日のみ1日2往復の運転です。

今回は長野発9:11の2号に乗車します。

 

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長野駅6番線に入線した快速軽井沢リゾート2号。

SR1系と呼ばれる、しなの鉄道の最新型車両2両編成での運転です。

 快速軽井沢リゾート号は全車指定席で、しなの鉄道のサイトから事前予約することができます。

 

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今回座席指定した前寄り1号車の車内。

3扉車両に2人掛シートが並ぶ車内は、京阪神や名古屋周辺の新快速を連想させます。

この車両の座席指定料金は500円です。

 

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指定の席に着席。

シートピッチは広く、足元にはドリンクホルダーとコンセントが設置されています。

 

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こちらは後寄り2号車の車内。

2号車は軽食付きプランでの利用となり、追加料金は2000円。

写真のように半数の座席を埋める形で大きなテーブルが設置され、

予約が入っている席には、長野駅入線時点でSR1系柄の掛け紙が添えられた軽食ボックスが置かれていました。

1人で専有できる面積も広く値段の価値はありそうですが、

始発の長野駅発車時刻が9:11、終点軽井沢到着が10:13という2号のダイヤでは、朝食には遅く昼食には早過ぎると思い、

今回は、朝食後に座席のみの1号車に乗車することにした次第です。

 

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定刻に長野駅を発車。

長野止まりの北陸新幹線あさま603号が入れ違いに長野駅新幹線ホームに進入していきます。

長野を発車した列車は、先述のように4駅目にあたる篠ノ井まではJR東日本信越本線を走行、篠ノ井から先しなの鉄道線に入ります。

しなの鉄道は終点軽井沢まで全線が元JR東日本信越本線で、1997年の北陸新幹線長野開通により、篠ノ井〜軽井沢間を並行在来線としてJRから移管され発足した第3セクター鉄道です。

長野から終点の軽井沢まで、元は信越本線という1本の路線だったため、しなの鉄道の列車は、会社境界の篠ノ井を通る全列車がJRと直通するダイヤになっています。

 

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快速軽井沢リゾート号は篠ノ井駅を通過。

しなの鉄道線区間に入ると間もなく信濃川と名を変え新潟市から日本海に注ぐ大河千曲川にかかる鉄橋を渡ります。

 

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9:23、長野を発車して最初の停車駅屋代に到着。

進行方向左手に見える写真のホームには長野電鉄屋代線の電車が発着していましたが、利用者の減少により2012年に廃止されました。

国鉄時代には東京方面からの列車が当駅を介し長野電鉄に直通する設定もあったようです。

私鉄との直通は民営化以前の国鉄時代のほうが盛んで、富山地方鉄道、名古屋鉄道、南海電鉄、島原鉄道など多数の事例がありましたが、いずれも現在では廃止されています。

 

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駅舎側には長野行の普通列車が到着。

湘南色と呼ばれる国鉄時代の塗装に戻された115系での運転です。

 

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しなの鉄道では、他にも台湾の在来線を運行する台鉄の特急列車をイメージした車両なども運行されています。

 

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坂城駅前には、しなの鉄道で2013年まで活躍していた国鉄型急行電車169系が、国鉄時代の塗装に戻され静態保存されています。

 

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坂城駅は通過のため、実物は上手く写せませんでしたが、車内前方に設置されたモニターでも紹介されていました。

 

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左手から北陸新幹線の高架線が近づくと間もなく上田。

上田は、しなの鉄道沿線最大の都市で県庁所在地である長野との行き来も少なくありません。

長野〜上田を新幹線で移動すると12分・1470円であるのに対し、しなの鉄道の普通列車は45分・780円となっており、その差690円。

これは実質的に在来線特急と同等の追加料金で新幹線を利用できることを意味します。

 

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 9:39。普通列車で45分程度の区間を28分で走り上田駅に到着。

快速軽井沢リゾート号が土曜休日の運転であるのに対し、平日の朝夕には同じSR1系を使用した快速しなのサンライズ号・サンセット号が運転されています。

快速しなのサンセット号の場合、長野〜上田間ノンストップで所要時間26分、座席指定料金は300円で、

料金、所要時間いずれも新幹線と、しなの鉄道普通列車の中間に位置する存在です。

 

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 上田を発車した列車は起伏に富んた地形に敷かれた軌道を軽快な速度で進みます。

しなの鉄道の運転本数は、長野、篠ノ井〜上田間が1時間に2〜3本、上田〜軽井沢間は1時間に1〜2本程度。

それに加えて貨物列車が篠ノ井〜坂城間に数本程度となっていますが、

特急列車が多数運転されていた新幹線開通前のJR時代のまま全線が複線であり、一見すると輸送実態に比してインフラが過剰なようにも見えます。

昨今、JRでは経営合理化のため複線路線の単線化や電化路線の非電化化などが検討されているようですが、

特に複線を単線にすることについては、信号、踏切など多くの施設改修が必要であり、

その費用を単線化後に、複線維持の場合のランニングコストとの差で、現実的な期間で回収できるケースは少ないのではないでしょうか。

 

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JR小海線乗り換えの小諸駅も通過。

新幹線のルートから外れた小諸ですが、駅から徒歩圏内に小諸城址などの観光スポットがあり鉄道で訪問するには適しています。

大都市圏から近い或いはアクセスが良く、気候や自然環境に恵まれ、観光一色ではなく一定の生活インフラが整っている地方都市の、古いが安い宿泊施設に1〜2週間滞在するような旅行が、今後は日本でも広まっていくのではないか。と個人的に思っています。

ホテル滞在の合間に散歩程度で訪問できる静かな観光スポットがあればなおよく、長野県であれば、小諸や岡谷などがその条件を満たしてくれそうです。

 

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小諸を過ぎると間もなく左の車窓には浅間山が姿を現しますが、夏場は雲がかかりやすいようです。

 

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10:07中軽井沢に停車。

 

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10:13終点軽井沢に到着。

普通列車だと1時間半程度かかる長野〜軽井沢間を1時間2分で走破した計算です。

ちなみに北陸新幹線開通まで運転されていた特急あさま号は最高時速120Kmで、同区間を50分〜55分で程度で結んでいましたが、

軽井沢から先、次の横川までの区間は、碓氷峠の急勾配を下るため、補助機関車の連結を必要とし、軽井沢到着からその補助機関車を切り離して横川駅を発車するまで30分以上を要していました。

 

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軽井沢駅に到着したSR1系軽井沢リゾート号。

濃いブルーの塗装が秀逸です。

 

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向かいのホームではしなの鉄道のクルーズ列車「ろくもん」が発車を待っていました。

隣に見える機関車は1997年10月1日の北陸新幹線開通の前日に、横川から補助機関車として碓氷峠を登ってきたのち、翌日の新幹線開通で在来線の碓氷峠区間が廃止となり、そのまま軽井沢駅で静態保存という運びになったようです。

 

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駅改札口へ向かう前に、改札内にある「森の小リスキッズクラブ」に立ち寄り。

 

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 店内にはしなの鉄道グッズが並んでおり、キッズクラブとありますが、大きなお友達向けと思われるマニアックな商品も多数ありました。

 

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しなの鉄道軽井沢駅舎。

新幹線開通後長らく駅としては使用されていませんでしたが、近年リニューアルされ、再び駅舎として本来の用途で使われるようになりました。

 

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軽井沢駅にしばらく滞在したのち、115系で運転の10:50発の普通列車で小諸まで戻り、JR小海線に乗り継ぎます。

 

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国鉄→JR→しなの鉄道と引き継がれてきた115系ですが、大掛かりな改造は受けておらず、車内は4人掛けセミクロスシートの原型を留めています。

 

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希少車両として注目されファンが押しかける前の今のうちに、ゆったりと静かな車内で車窓を楽しみつつ独特の走行音に耳を傾けたいものです。

 

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 11:13小諸着。

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【乗り継ぎ割引適用可】特急しらゆき号→北陸新幹線乗り継ぎ乗車記(新潟16:24→18:23上越妙高19:14→長野19:38)

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JR東日本新潟駅万代口。

在来線ホームが高架化された後も長らくその姿を保っていた万代口駅舎もついに解体工事が始まりました。

 

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 今回は新潟駅から信越本線経由で上越妙高へ向かう、特急しらゆき号と北陸新幹線を乗り継いで長野へ向かいます。

写真は特急しらゆき号の指定席特急券と北陸新幹線の自由席特急券です。

特急しらゆき号は新潟から直江津までJR信越本線を走行しますが、直江津からは第3セクターの「えちごトキめき鉄道」に乗り入れ、終点の上越妙高に到着します。

北陸新幹線とはJR同士の乗り継ぎとならないため、

本来は、新幹線と在来線特急を同日に乗り継ぐ場合、在来線特急の運賃が半額になる乗り継ぎ割引は適用されませんが、

特急しらゆき号で終点の新幹線接続駅の上越妙高駅まで行く場合に限り、

乗り継ぎ割引が適用となる特例が設けられています。

新潟から上越妙高までの指定席特急料金は乗り継ぎ割引適用で1570円です。

 

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特急しらゆき号は1日5往復の運転、乗車するのは新潟駅16:24発の8号です。

 

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新潟駅5番線に入線した特急しらゆき8号。

E653系4両編成で全車普通車のモノクラス編成です。

 

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E653系のシートピッチは91cm。

国鉄時代の特急車両普通車や京阪神や名古屋周辺の新快速と数値上は同じで、JRの特急車両としては広くありません。

 

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ただ実際に着席してみると、シート形状に工夫があるようで、それほど窮屈な感じはしません。

同じ車両で運転される新潟発着の特急いなほ号と違い、グリーン車という選択肢はありませんが、

終点の上越妙高まで乗っても2時間程度なら問題になることはなさそうです。

 

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16:24定刻に新潟駅を発車。

 

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新潟から2駅目、広いホームを持つ亀田駅を通過。

亀田駅の乗車人員はコロナ前には5000人を超えていました。

コロナの影響で大都市圏の鉄道の混雑率が大幅に低下するなか、新潟や広島など地方都市近郊路線の混雑が問題視されるようになっています。

 

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秋田からの羽越線と合流し、広い構内を持つ新津駅に進入。

 

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16:37新津着。新津は福島県の郡山駅へ向かう磐越西線との乗り換え駅でもあります。

 

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新津から先は沿線の建物も減り、列車は田園地帯を快走します。

日本海縦貫線の一部をなす信越本線ですが、この先、柏崎駅までは越後線のほうが日本海に近い所を通り、

その越後線と信越本線の間を上越新幹線が通っています。

 

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16:51加茂着。

対向ホームでは到着した新潟行の普通列車に多くの乗客が乗車する光景が見られました。

普通列車は6両編成、新潟近郊の鉄道需要の高さを実感する光景です。

 

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16:56東三条着。

三条市は金属加工業が盛んなことで知られる人口9万人の都市で、当駅が市の玄関の役割を果たしています。

 

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曲線で信越本線に合流し東三条駅に進入する弥彦線の電車。

弥彦線は東三条から上越新幹線との乗り換え駅「燕三条」、越後線との乗り換え駅「吉田」を経て、終点の弥彦に至る17.4kmの路線です。

 

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新津、加茂、東三条と10分程度の間隔で駅に停まりますが、駅間では最高時速120km/h に頻繁に達する快走が続きます。

 

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17:05見附着。

2面3線で中線を上下共用の待避線として使用する配線は、東海道本線、山陽本線、東北本線などJRの主要幹線によく見られますが、

ここでは中線があった部分の一部を埋めてエレベーターを設置したようです。

 

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見附の次の停車駅は長岡。

長岡が近づくと田園地帯の向こうから次第に上越新幹線の高架が近づいてきます。

 

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17:14長岡着。

在来線ホームの一部は上越新幹線駅舎の下に潜る形になっています。

長岡から先、上越新幹線は南に進路を変え、上越国境を超えて群馬県方面へ抜け、

在来線についても長岡の次の宮内駅から上越線が分岐し新幹線に近いルートで群馬県方面へ向かいます。

特急しらゆき号は長岡から先も直江津まで日本海に沿う信越本線を進みます。

時代を遡ると、上越新幹線が開通するまで、在来線の上越線が新潟と東京を結ぶメインルートでしたが、

昭和初期に上越線が開通するまでは、信越本線で長野へ迂回するルートがメインでした。

上越線については「国境の長いトンネルを抜けるとそこは」という小説「雪国」の一節が有名ですが、

雪国新潟と東京の鉄道ルートの変遷を知ると、トンネル掘削技術の進歩で、群馬から新潟へのワープが可能になったことに感心しているような、少し違った印象を持つようになるものです。

 

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17:40柏崎着。

ここまで新潟からちょうど100km、新津駅からでも84.8kmありますが、

日本海沿いを辿り当駅で合流する越後線経由では新潟から83.8km。

越後線を直角三角形の斜辺とすると、信越本線は新津を直角とする直角三角形の2辺を辿ってきたイメージです。

 

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柏崎から先の信越本線は、越後線にかわるように日本海沿いを進みます。

かつて日本海縦貫線ルートで大阪と札幌を結んだトワイライトエクスプレスのネーミングは、

この付近で日本海に沈む美しい夕陽を車窓から眺められることに由来したと言われています。

時刻はすでに18時になろうとしていますが、真夏の7月下旬では、日没はもう少し遅い時間になるようです。

 

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18:08直江津着。

特急しらゆき号はここから終点の上越妙高まで、第3セクターの「えちごトキめき鉄道」に乗り入れます。

「えちごトキめき鉄道」は、2015年の北陸新幹線開通で並行在来線としてJRから切り離された、 

直江津から長野県境「妙高高原」駅までの信越本線と、直江津から日本海沿いに進む北陸本線の富山県境に近い「市振」駅までを引き継いだ形です。

直江津には北陸新幹線は乗り入れませんが、並行在来線の切り離しにあたっては、10km離れた上越妙高駅が、新幹線直江津駅として扱われた格好です。

 

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直江津駅に停車中の旧国鉄急行形電車。

JR西日本七尾線での活躍を終え廃車となる運命でしたが、レア車両で集客を狙う、「えちごトキめき鉄道」に買い取られ、すでに市振方面への臨時急行列車として運転を開始。鉄道ファンの注目を集めています。

 

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特急しらゆき号と同時に直江津駅を発車し市振方面へ向かう普通列車。

「えちごトキめき鉄道」の市振方面の普通列車は、電化区間にも関わらすディーゼルカーで運転されています。

 

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直江津から先も旧JR信越本線を走行しますが、日本海を離れ進行方向が南に変わると車窓も一変します。

 

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直江津から6.7km、18:18高田着。

30年近く前の冬、大阪から急行きたぐに号で初めて直江津駅に降り立ち、乗り換えて長野へ向かった際、直江津と高田の積雪量の差に驚いた記憶があります。

冬の日本海側は寒く降雪が多いと言っても、その水面が見えるような街では、海水温によって気温の低下は緩和され、積雪も少ないということを実体験で学んだ格好です。

  

f:id:nishiuraexp:20210801222929j:plain高田から5分、18:23終点上越妙高駅に到着。

 

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「えちごトキめき鉄道」の改札を抜け右手方向に進むと、隣接するJR北陸新幹線の改札口が見えます。

 

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JR東日本のコーポレートカラーである緑字に白抜きのJR上越妙高駅入口の文字。

北陸新幹線は上越妙高駅を境に金沢方面がJR西日本、東京方面がJR東日本の路線として扱われていますが、

上越妙高駅の施設はJR東日本が管理しているように見えます。

 

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冒頭で述べたように、特急しらゆき号利用時に限り、上越妙高駅での新幹線と在来線の乗り継ぎに乗り継ぎ割引が適用されますが、

割引が適用されるからと言って、必ずしもスムーズな乗り継ぎができるわけではありません。

長野駅へ向かうために乗り継ぐ、東京行はくたか574号の発車は、特急しらゆき号到着から51分後の19:14。

北陸新幹線開通以前に遡ると、新潟と長野の間には国鉄時代から急行赤倉号が運転されていました。

急行赤倉号はJR化後、特急みのり号に格上げされましたが、長野方面への利用は奮わず、後に新潟県内のみの運転に変更された歴史があります。

今回も特急しらゆき号から下車し、北陸新幹線に乗り継いだ客の多くは、11分接続の金沢行はくたか571号に乗車したようです。

新潟と金沢の間には北陸新幹線開通前日まで特急北越号が走っており、長野乗り入れ時代の特急みのり号とは比較にならない需要がありました。

新幹線が開通して沿線と東京の間の所要時間は大幅に短縮されても、

周辺の地方都市間の移動は必ずしも便利にはならず、

場合によっては新たな乗り換えが生じるなど不便になることもあります。

 

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新幹線改札前には、コンビニNEWDAYSや土産物屋、ベンチが並ぶ待合スペースなどがあり、1時間程度の乗り継ぎ時間なら暇を持て余すようなことはありません。

 

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待ち時間を利用して駅前へ。

駅周辺は、駅前にレンタカー店とホテル、少し離れた場所にコンビニが見える程度で、新幹線の駅前としては長閑な雰囲気が漂います。

日本海に面する直江津から10kmしか離れておらず、標高が高いわけではありませんが、

真夏でも日が傾くと風は涼しく、このまま駅前のホテルで一泊したいと思わせる心地よさでした。

 

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発車時刻が近づき新幹線ホームへ。

JR西日本とJR東日本の境界駅ですが、通過列車も多く、乗務員交代などもないため、東北新幹線の途中駅などと変わらない雰囲気です。

 

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上越妙高駅に入線する北陸新幹線はくたか574号。

長野〜東京などJR東日本区間だけを走る便も多数ある北陸新幹線ですが、車両の塗装はJR西日本の車両をイメージさせます。

 

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自由席車内は上越妙高駅発車時点で、A席とE席がほぼ埋まる程度の乗り具合。

乗車率にすれば40%近くということになります。

北陸新幹線のJR西日本区間はコロナ前から空いているイメージでしたが、思いのほか健闘している印象です。

 

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JR西日本とJR東日本の車内誌が仲良くシートポケットにおさまっていました。

 

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長野県に入り飯山に停車。

 

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間もなく長野と車内放送が流れる頃。

日も暮れた市街地の空に月が昇ります。

 

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 19:37長野着。

 

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 長野駅善光寺口。

本日の行程はここまでです。

翌日はしなの鉄道、小海線、特急ふじかわ号などを乗り継ぎ、静岡方面へ向かいました。

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【グリーン車は日本一?】特急いなほ8号乗車記 (秋田10:35→新潟14:05)

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JR 東日本秋田駅。

今回はここから新潟行の特急いなほ号に乗車し終点の新潟へ向かいます。


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 秋田駅改札口。

 

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乗車するのは秋田駅10:35発の特急いなほ8号。

 

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6番線で発車を待つ特急いなほ8号。

E653系7両編成です。

前寄りの7号車6号車が普通車自由席。

つづく5~2号車が普通車指定席、最後部の1号車がグリーン車指定席となっています。

  

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普通車車内。

 

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E653系の普通車のシートピッチは91cmで国鉄時代の標準を踏襲しており、

JR化後に製造された特急車両としては狭い部類に入ります。

E653系は、元々上野から茨城県方面へ向かう常磐線の特急「フレッシュひたち号」としてデビューした車両です。

需要が大きい首都圏に乗り入れる特急車両は「座れない乗客を減らす」ことを視野に入れなければならないでしょうから、

数値をだけを見比べ「狭い、快適性に難あり」と断じるのは早計というものでしょう。

もっとも、地方都市を結ぶ「いなほ号」に活躍の場を移した時点で、

シートピッチを拡大する改造を施工するという選択肢もあったかも知れません。

実際に、国鉄末期からJR 初期にかけて、特急車両1両当たりの座席を1列減らし、

生まれたスペースでシートピッチを数センチずつ広げるという車両改造が頻繁に行われていました。 

しかし多くの場合、躯体や車体強度に絡む、窓の位置や大きさは変更されなかったため、

少なくない座席が「窓枠のために車窓を充分に楽しめない」という不都合を抱えることになってしまいました。

窓枠とシートピッチの話に文字数を割いているのには理由があります。

 

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こちらは最後部1号車のグリーン車です。

E653系が「フレッシュひたち号」として運転されていた当時は全車両普通車でしたが、

以前からグリーン車が連結されていた「いなほ号」に転用されるにあたり、

普通車からの改造で登場したグリーン車です。

最初から「いなほ号」向けに設計されたグリーン車で、定員を増やすことをそれほど重視する必要がなかったためか、

写真のように、車内にフリースペースが設けられるなど、全体にゆとりある空間に仕上がっています。

 

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グリーン車のシート。

シートについては、明るい色調の大きな座席が配置されています。

そして普通車では2列でシェアする窓を1列で独占していることがわかります。

シートピッチは普通車の2倍の182cm(91cm ×2)あり、

この点では全JRのグリーン車でも断トツのスペックとなっています。

 

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横方向についても、通路を挟んで2席×1席の配置であり、

1席あたりの専有面積はかなりのものです。 

 

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 今回はこのグリーン車の独立席を利用します。

断トツのスペックを有する「いなほ号」のグリーン車ですが、実際に着席すると、

前席との間に設置されたパーティションのために多少圧迫感があり、

前のシートまで182cmあっても、パーティションまでだとグリーン車標準の116cm+α程度に見えます。

 

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フルリクライニングさせた状態。

シートピッチが182cmあって、この程度のリクライニング角度で、後ろの席から「そんなに倒さないで」と苦情が来ることなどあるのでしょうか。

パーティションの存在価値に疑問を感じないでもありません。

 

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10:35。定刻に秋田駅を発車した列車は、秋田新幹線こまち号が通る奥羽本線と別れ、終点新潟の手前まで日本海縦貫線の一部を成す羽越線を南下します。

 

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羽後牛島駅通過後、秋田を代表する河川、雄物川にかかる鉄橋を渡ります。

 

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「いなほ号」グリーン車は2席並びの側が日本海を望む海側で、独立席は内陸側となりますが、

グリーン車内のフリースペースのおかげで、独立席を指定した場合でも、

日本海の車窓を好きなタイミングで楽しむことができます。

 

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内陸側の車窓。

もっとも、この季節、緑濃い内陸側の車窓を独立席から眺めるのも悪くありません。

 

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11:07。最初の停車駅「羽後本荘」に到着。

現在橋上駅舎への切替工事が続いています。

 

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羽後本荘駅前発車後、かなりの距離に渡り羽越線に並行する線路は、第3セクターの由利高原鉄道線のものです。

並行区間の沿線には市街地が広がりますが、駅はありません。

 

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11:27。象潟に停車。読みは「きさかた」です。

 

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小砂川駅付近の車窓に広がる日本海。

列車はこの付近で秋田県を抜け、山形県に入ります。

 

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内陸側に目を向けると、標高2236mの鳥海山を望む区間ですが、

本日は天気に恵まれず、広い裾野だけが見えている状態でした。

 

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11:59酒田着。

酒田は山形県庄内地方の要衝で、羽越線の運転上の拠点ともなっています。

 

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酒田駅の時刻表。

左が新潟方面、右が秋田方面です。

赤字で記された特急いなほ号の本数は新潟方面が7本、秋田方面が3本。

新潟発の特急いなほ号の半数以上が当駅で折り返していることがわかります。

 

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酒田発車後「いなほ号」はしばらく広大な田園地帯の中を快走します。

 

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山形新幹線の終点新庄へ向かう陸羽東線が分岐する余目駅に停車したのち、

12:19。鶴岡駅に到着。

 

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鶴岡市は酒田市と並ぶ庄内地方の拠点で、その人口12万は山形県内では山形市に次ぐ第2位となっています。

駅前にはホテルが複数見え、秋田から動きが少なかったグリーン車も新たな乗客を迎えての発車となりました。

 

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庄内地方の中心で乗客を拾った列車は、あつみ温泉駅とその次の停車駅である府屋駅の間で、新潟県に入ります。

山形新潟県境付近は、羽越線内でも特に日本海の車窓が美しい区間として知られます。

 

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12:51。新潟県最初の停車駅、府屋駅に到着。

 

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新潟県に入っても美しい日本海の車窓が続きます。

 

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その日本海から少し離れ、村上駅に接近すると車内の照明と空調が一時ストップ。

秋田から交流電化区間を走ってきたいなほ号は、この先直流電化区間に入ります。

交流、直流の電化方式が切り替わる地点には、電気的な絶縁のため、無電区間が設けられています。 

これはデッドセクションとよばれますが、デッドセクションを通過する電車は、交流、直流の両方に対応できることを求められます。

その点、E653系は、最初に投入された常磐線(取手駅〜藤代駅間)にデッドセクションがあるため、それに対応した交直両用車両となっており、

それは常磐線特急の車両置き換えに伴って、E653系が羽越線に転じた理由の一つと考えて差し支えないでしよう。

 

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13:18村上着。

羽越線酒田以南の普通列車は、

村上以南の直流区間だけを走る直流電車と、村上以北の交流区間に乗り入れる気動車に大別され、村上駅で乗り換えとなるケースが少なくありません。

 

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13:28坂町駅に停車。

坂町駅からは、山形県の米沢へ向かう米坂線が分岐します。

余目駅から分岐する陸羽東線とともに、日中は列車間隔が数時間空くこともあるローカル線です。

 

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13:43新発田着。

「いなほ号」が秋田から走ってきた羽越線は、この先、新潟を通らず、その先の新津へ抜けるため、

「いなほ号」はここから白新線へ進みます。

白新線は、新発田と新潟を結ぶ27.3kmの短い路線で、半分以上が単線ですが、

新潟の近郊輸送を担い、輸送密度はコロナ前の数値で約16000。

札幌近郊の札沼線や広島近郊の可部線と肩をならべる存在です。

 

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白新線の車窓。

田園地帯に立つ建物の数が次第に増え、

 

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阿賀野川にかかる鉄橋を渡ると、間もなく終点の新潟です。

 

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上越新幹線と並んで新潟駅に進入。

 新潟駅在来線ホームは近年高架化されました。

 

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14:05。秋田から273kmの道のりを3時間30分で走破し新潟駅に到着。

 

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「いなほ8号」が到着した新潟駅5番線は上越新幹線と平面で乗り換えができる構造になっています。

 

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ホーム上に設置された新幹線乗り換え改札。

接続の14:14発上越新幹線「とき324号」に乗り継ぐと終点東京に16:00に到着します。

このように、新潟駅において「いなほ号」から上越新幹線へスムーズな乗り換えができるよう配慮されている背景には、

「いなほ号」が通う羽越線沿線が、首都圏からの距離の割に時間がかかることが、問題視されている。という事情があります。

長期的には羽越新幹線の構想もありますが、

当面、上越新幹線にリレーする特急いなほ号が、首都圏と羽越線沿線の速達輸送の重責を担うことになりそうです。

筆者は、新潟から先、上越新幹線ではなく、上越妙高行の特急しらゆき号に乗り継ぎ、長野方面へ向かいました。

続きはこちらです。

 

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秋田新幹線こまち21号乗車記(仙台12:53→秋田15:04)

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五輪開会に伴う4連休初日。JR東日本仙台駅。

今回はここから秋田新幹線「こまち号」に乗車し終点の秋田へ向かいます。

 

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「こまち号」の大半は東京〜秋田間の運転です。

仙台から途中乗車すると、盛岡まで約40分東北新幹線(赤線)を下ったのち、

盛岡からは、大曲を経由して秋田まで(青線)約1時半の道のりです。

盛岡から秋田までの区間は便宜上、秋田新幹線と呼ばれることが多いものの、

盛岡〜大曲間は田沢湖線、大曲〜秋田間は奥羽本線の一部であり、

ともに狭軌の在来線を新幹線と同じ標準軌に改める工事を施工し、

東京からの新幹線車両の直通を実現させたものです。

 

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参考 左 標準軌レール間1435mm

   右 狭軌レール間1067mm

 

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「こまち号」は概ね1時間間隔の運転で、利用の多い時期・時間帯には臨時便が追加されます。

今回は東京発11:20の「こまち21号」秋田行に乗車します。「こまち21号」の仙台発車は12:53です。

 

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乗車券はJR東日本のインターネッ予約システム「えきねっと」から「お先にトクだ値」という企画切符を購入。

正規の運賃、料金から35%割引で秋田まで6720円でした。

今回は券売機で紙の切符を発券しましたが、紐づけのICカードでチケットレス乗車も可能です。

JR東日本のサイトではそちらの利用が推奨されています。

 

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仙台駅新幹線ホームに入線する「こまち21号」。

 

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仙台駅改札内の表示。

「こまち21号」の後ろには、盛岡までの東北新幹線区間で併結となる新青森行の「はやぶさ21号」が連結されています。

「こまち号」は7両、「はやぶさ号」は10両で、計17両は国内の旅客列車としては、東海道新幹線の16両を上回り最も長い、、と簡単に言いたいところですが、

在来線に直通する「こまち号」の車長は通常の新幹線車両より短く、概数で先頭車23m、中間車20.5mとなっており少々計算を要します。

東海道新幹線のN700系先頭車両27.3m×2両+25m✕14両=404.6mに対して、

はやぶさ、こまち併結の17両は、はやぶさ先頭車26.5m×2両+25m✕8両+こまち23m✕2両+20.5m✕5両=401.5mとわずかに及びません。

 

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「こまち号」普通車車内。秋田到着後撮影。

「こまち号」は全車指定席で、7両のうち東京寄りの1両がグリーン車、6両が指定席です。今回は指定席を利用します。

「こまち号」の車両は長さだけでなく幅も在来線仕様のため、

普通車も通路を挟んで2席✕2席のシート配置となつており、新幹線ではお馴染みの横3席のシートはありません。

 

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シート。

シートピッチは98cmと新幹線車両としては狭く、この点も在来線規格と言えそうですが、

背景には横3席シートの回転を考慮しなくても良いことがあるのでしょう。

またシート上の取っ手が目立ちますが、これも理由あってのことです。

 

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定刻に仙台を発車。

 

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国内最速の最高時速320kmに近づくころには、すでに車窓には田園地帯が広がっていました。

 

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仙台駅ホームの自販機で購入したお茶と車内販売品のワッフル。

盛岡まで併結の「はやぶさ号」とは、車内での行き来はできないため、この区間で車内販売が回ってくるのは、「こまち号」「はやぶさ号」のそれぞれに車内販売員が乗務していることを意味します。

在来線特急では、車両販売がほぼ全滅していることを考えれば新幹線は別格の扱いです。

 

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13:32盛岡着。

 

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ここで後方の「はやぶさ号」を切り離し、「こまち号」が先発します。

 

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盛岡駅での停車時間は先発の「こまち号」で3分、「はやぶさ号」は5分です。

東北新幹線では最近上野〜大宮間の最高時速が110km/hから130km/hに向上しましたが、時間短縮は1分程度。

東北新幹線が八戸や新青森までだった時代は、盛岡到着時点で終点までの時間距離が長い秋田行「こまち号」を前に連結しておき、先発させることは自然だったかもしれませんが、

今後、東北新幹線に続く北海道新幹線の札幌延伸が視野に入ってくると、

そちらへの到達時間短縮が優先され、編成を逆にして「はやぶさ号」の停車時間を少しでも短くしようという話がでてくるかもしれません。

 

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盛岡駅を発車すると、アプローチ線を経て在来線の田沢湖線に進入します。

アプローチ線は東京方面の上り「こまち号」と共用の単線1本のみです。

「こまち号」は先述のように概ね1時間ごとの運転ですので、単線であることは、それほど問題にならないと思われますが、

東京方面への列車は、東北新幹線の下り本線を横切って盛岡駅新幹線上りホームに到着することになります。

同じような構造のアプローチ線で山形新幹線列車が在来線から合流する福島駅では、

山形新幹線列車が遅れた際に、東北新幹線列車の進路を塞ぎ、ダイヤの乱れを広げることが問題視され、

上りホームにダイレクトにつながる、東京方面専用のアプローチ線を新たに建設することが決まっています。

福島の場合、盛岡より東北新幹線本線を走行する列車の本数が多い上、福島を通過する列車も少なくないことなどが、

当面1本のアプローチ線を使い続ける盛岡との対応を分けたのかも知れません。

 

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標準軌に改められたとはいえ、盛岡からの走行感覚は在来線特急そのものです。

最高時速は一気に190km下がって130kmとなり、その速度に達する区間も限られています。

 

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在来線の証ともいえる踏切をいくつも通過した列車は、盛岡の次の駅である大釜駅に停車し上りの「こまち号」と行き違います。

盛岡〜終点秋田までの区間の大半は単線です。

在来線直通の新幹線については、

東北新幹線のようなフル規格ではなく、在来線改軌による新幹線車両の直通とすることが決まった当時、フル規格新幹線を望む地元からは、

「ウナギを注文したらアナゴが出て来た」と揶揄する声が上がったという話を聞いたことがあります。

寿司屋ではないのでウナギとアナゴの価値の差がどれほどのものか実感がわきませんが、

実はもっと大きな差があるのではないか。という気がしないでもありません。

 

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盛岡近郊の田園地帯を抜けた列車は50km程度まで減速し深い山中を進みます。

岩手秋田県境を跨ぐこの区間は盛岡からの秋田新幹線在来線区間の中でも特に速達化の足かせとなっている区間ですが、

この区間をショートカットする新仙岩トンネル建設の構想があります。

仮に開通すると現在最速便で3時間37分かかっている東京〜秋田の所要時間が3時間20分台になることが見込まれているほか、災害対策としての効果も期待されているようです。

 

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山間部を抜け田沢湖駅に停車。

次は角館。仙台・盛岡と東北新幹線区間での下車が目立ち、盛岡発車時点で着席率は30パーセント程度。

車内販売員も盛岡で下車してしまったようです。

 

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今年夏で駅開業から100周年を迎えるという角館駅に停車。

第3セクター秋田内陸縦貫鉄道との乗り換え駅でもあります。

 

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角館からは広々とした田園地帯を軽快な速度で進みます。

 

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14:31。盛岡から約1時間で田沢湖線区間を走り抜け大曲駅に到着。

「こまち号」はここで進行方向を変え、奥羽本線下り線に入ります。

 

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14:33。大曲を発車。

先程走ってきた田沢湖線が右手に別れていきます。

大曲から秋田までは51.6km、時刻表上の所要時間は31分でこの区間の平均時速は約100km。

「こまち号」を在来線特急として見るなら、この区間に限ればかなり早い部類に入ります。

 

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大曲で進行方向が変わっても誰も座席を転換させないのには驚きました。

各シートに備わる大きな取っ手の出番はありませんでした。

大分と博多を結ぶ特急ソニック号でも途中の小倉駅で進行方向が変わりますが、

博多まで残り約40分の乗車でも乗客同士の無言の連携プレーで全ての座席の向きが変えられていたのを覚えています。

 

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奥羽本線区間では「こまち号」が走行する線路に並行して、もう1本線路があり複線区間のようですが、

並行する線路は在来線規格の狭軌で「こまち号」は通れません。

狭軌の線路は、大曲の先、横手方面と秋田を結ぶ奥羽本線ローカル列車が使用するもので、国内では珍しい単線並列区間となっています。

 

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「こまち号」の車両が休む車両基地の脇をかすめると間もなく終点の秋田に到着します。

 

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15:04。終点秋田駅新幹線ホームに到着。

 

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本日の行程はここ秋田までです。

駅前のホテルに一泊し、明日は新潟方面へ向かいます。

続きはこちらです。

 

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速い!観光特急しまかぜ乗車記(鳥羽16:11→四日市17:14)

 

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 本記事は上に添付の記事の続きです。


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三重県鳥羽市。近鉄鳥羽駅。

今回はここから近鉄の観光特急しまかぜ号に乗車し四日市へ向かいます。

#本記事掲載のダイヤ、運賃、料金等は乗車日6月26日時点ものです。7月にダイヤ改正が実施されています。


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近鉄鳥羽駅切符売り場。


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「しまかぜ」は大阪難波・京都・名古屋の各駅と、伊勢神宮最寄りの宇治山田や鳥羽を通り賢島とを結ぶ3系統が、それぞれ1日1往復(木曜運休)運転されています。

大阪難波行は大阪府内や阪神なんば線でつながる阪神地区と、

名古屋行は名古屋周辺や東海道新幹線乗り継ぎで、静岡県、首都圏と伊勢志摩方面の往き来をカバーしていることは容易に想像できますが、

岡山以西の山陽新幹線各駅から鉄道で伊勢志摩方面を目指す場合、

京都で新幹線としまかぜ号を含む近鉄特急を乗り継ぐルートが、

乗り換え負担や所要時間の面で最も合理的であるという事実はあまり知られていないように思います。

大都市圏への復路にあたる、しまかぜ号の鳥羽駅発車時刻は京都行15:20、名古屋行16:11、大阪難波行16:31となっていますが、

終点からの乗り継ぎでカバーするエリアが広い順の発車という印象もあります。


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しまかぜ号はJR 風にいえば全車グリーン車であり、通常の特急料金に上乗せで、しまかぜ特別料金が必要です。

運賃と特別料金込みの特急料金を合わせ、鳥羽駅から乗車の場合、名古屋まで3930円、難波まで4670円、京都まで5010円です。


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近鉄特急を利用する際、インターネット予約サービスを利用できますが、

予約時に支払うことができるのは特急料金や特別料金のみで、

普通乗車券は別途乗車前に購入するか、ICOCAやピタパなどを使うことになります。



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鳥羽駅に入線する16:11発名古屋行「しまかぜ」。行先を問わず6両編成での運転です。


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今回は名古屋寄り先頭1号車のプレミアムシートを予約しました。

両端1号車と6号車のプレミアムシートは床面が72cm嵩上げされたハイデッカー構造になっており、階段を登って客室へ進みます。


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客室入口から見たデッキ部分。

デッキ部分の天井はハイデッカーの客室と同じ高さになっていることもあり、

列車内としては異例の開放的な空間になっています。

また車両連結部に近い側には大型のロッカーがあり、大きな荷物を抱えて客室への階段を登る必要もありません。


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1号車プレミアムシート客室内。

横3列の明るい色調のシートと前面側面の大きな窓が観光特急らしい雰囲気を醸しています。


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シートピッチはJRグリーン車標準を上回る125cmで大型の背面テーブルが備わります。


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座席ポケットに備え付けの車内設備案内とカフェ車両のメニュー。 


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鳥羽駅発車後にアテンダントさんから配られたおしぼりと記念乗車証。

今回は乗車時間が短いため、早速席を立ち、車内見学を兼ねて4号車カフェ車両へ向かいます。


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両端1号車と6号車に隣接する2号車と5号車は、ハイデッガー構造ではないプレミアムシート。


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3号車はグループ車両と呼ばれ、写真のサロン室(定員4〜6名)のほか、


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和風、洋風個室(定員3〜4名)があります。

サロン室はプレミアムシートと同料金で利用できます。(定員利用時)

和風、洋風個室については別途個室料金が1室あたり1050円必要ですが、

1人あたりでは数百円の追加で済むことから人気があり、発売早々に埋まることも珍しくないようです。

(個室写真は車内パンフレットのものを拝借しました)


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4号車カフェ車両に到着。

カフェの入口にあたる鳥羽・賢島寄りには土産物などを扱うカウンターがあり、

「入店」しようとすると、上下どちらのフロアの席が良いか、好みを聞いてくれました。

カフェ部分は2階建になっています。


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下のフロア。6席。


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上のフロア。13席。

眺めが良い上のフロアのほうが人気があるようで、

筆者も、訪問時は無人だった下のフロアではなく、上のフロアの空席を案内してもらいました。


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今回は海の幸ピラフを注文。

カフェ車両を名乗っていますが、ラーメン、カレー、松坂牛の牛丼など食事メニューも多彩で「食堂車」と考えて差し支えありません。


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食後はスイーツセット。

ケーキはモンブランなど4種類から選択できます。

マドレーヌはカウンターで販売している商品の試供品ですが、

「真珠の小箱」という懐かしい?商品名に惹かれ、

食後にカウンターで8個入りの小箱を買って席に戻りました。

「真珠の小箱」は2004年まで日曜の朝に放送されていた近鉄提供の旅番組の名称です。

毎回、近鉄沿線の神社仏閣や祭事を紹介する中高年向けの渋い内容だったと記憶していますが、

オープニングで表示される「第千数百回」という放送回数のテロップが、

長寿番組であるということ以上に、沿線にその類のネタが尽きないことを誇っているかのようでした。


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「真珠の小箱」と並んで置かれていた伊勢志摩の定番土産「赤福」。


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カフェ車両で早めの夕食を楽しむうち、列車は宇治山田、伊勢市と停車、

席に戻るとすでに大阪線と名古屋線が分岐する伊勢中川駅にさしかかるところでした。

先頭車両の座席を予約すると、車両後方の座席でも、ある程度は前面展望を楽しむことができます。


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伊勢中川駅に隣接するデルタ線を速度を落として通過。

大阪方面へ向かう線路から右へ別れ名古屋方面へ進路を変えます。


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デルタ線を抜け名古屋線に入った列車は、田園地帯に延びる直線を120km/h で快走。

JR四国やJR九州が週末を中心に運転している観光特急では、定期特急にくらべ所要時間が延びる傾向にあり、平均時速を算出すると「特急とは名ばかり」という事例もありますが、「しまかぜ」に限らず近鉄の観光特急は違います。

例えば乗車中の名古屋行「しまかぜ」の場合、鳥羽~四日市間の所要時間は63分。

これは平日ダイヤ、土休日ダイヤ問わず同区間を走行する特急列車の中では最速で、

他の特急がすべて停車する津も通過してしまいます。


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ちなみに、今回はすぐ後ろの席がずっと空席のままで、プレミアムシートの機構を試すには好都合でしたが、

十分に楽しむ間もなく、列車は下車駅の四日市に近づいてしまい、

「JRの観光特急のようにゆっくり走ってくれた方が有り難い」と思ったのも事実です。


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四日市の市街地に入った「しまかぜ」の前面展望。

 
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17:14定刻に近鉄四日市に到着。


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 先行の特急とのセパレーションを広げるかのような長めの停車時間のあと、

17:17。鋭い加速で四日市駅を発車していきました。

終点の名古屋までは27分。名古屋で東海道新幹線に乗り換えると、概ね19:30頃には品川駅・東京駅に到着できます。


今回は蔓延防止措置の発出状況などを考慮し三重県内の区間乗車としましたが、1時間での下車は後ろ髪をひかれる思いでした。

感染状況が落ち着いたら、私鉄最長距離運転の記録ホルダーでもある、京都発の「しまかぜ」に改めて乗車したいと考えています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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