岐阜県高山市。JR東海高山本線高山駅。
今回はここから特急ひだ号に乗車します。
特急ひだ号は富山、高山〜名古屋間を1〜2時間に1本の頻度で運転する特急列車ですが、
1日1往復だけ、岐阜まで名古屋行に併結し、岐阜から単独で大阪へ向かう便があります。
高山本線と大阪を直通する特急ひだ号は通称大阪ひだ号などと呼ばれています。
高山から大阪へ向かう大阪行特急ひだ号の高山発は15:38。
岐阜まで併結となる名古屋行は16号ですが大阪行には別途36号の号数が付番されています。
高山駅ては北海道以外ではほとんど見られなくなった列車別改札が行われています。
15:38発の特急ひだ16号、36号に乗車する場合、写真右手の看板の後ろで列にならび15:10の改札開始を待つことになります。
改札が始まりホームへ。
特急ひだ号は全列車が写真のキハ85系での運転ですが、近く新型のハイブリッド車両HC85系に置き換えられる予定です。
乗車日のひだ16号、36号は、
前方に大阪行ひだ36号3両編成、後方に名古屋行ひだ16号5両編成を併結した8両編成で高山駅を発車します。
なお8両編成の最前部となるのは大阪行編成の自由席です。
キハ85系普通車車内。大阪行編成にグリーン車の連結はありません。(終点到着後撮影)
キハ85系はシート部分が通路より一段高いハイデッカー構造になっています。
その結果、写真のように窓の下部が肘置きと同じ高さになり広い視野で車窓を楽しむことができます。
今回は運転席後方の前面展望席を確保することができました。
なお反対方向、大阪から高山方面へ向か特急ひだ号の場合、
途中の岐阜で、大阪時点で先頭となる車両の前に名古屋からの車両を繋いで高山方面へ向かうため高山本線内の前面展望は楽しめません。
また岐阜までの区間についても、連結面が先頭になる関係で、写真の非連結(非貫通)車両ほどの前面展望は期待できません。
15:38。定刻に高山駅を発車した列車はしばらく高山の市街地を進みます。
高山本線のうち高山〜岐阜間の最高速度は高山から下麻生まで100km/h、下麻生から岐阜までが110km/hとなっています。
高山の次の駅にあたる飛騨一ノ宮を過ぎると高山盆地の平坦区間は終わり、一宮峠と呼ばれる勾配に差し掛かります。
山間に分け入る手前、線路は曲線を描いて高度を稼いでいきます。
先頭車から振り返ると8両編成のうち後ろ5両くらいが見えており、かなりの急曲線であることがわかります。
この区間の線形は、地図で見るとΩの文字のように見えることからオメガループなどと呼ばれ、鉄道撮影の名所としても知られます。
高山を経由して富山と岐阜を結ぶ高山本線は、
富山寄りの砺波平野区間と岐阜寄りの濃尾平野区間を除く大半の区間が、曲線や勾配が連続する山間部区間となっており高速運転には不向きな路線です。
国鉄時代には電化して振子式車両の特急を走らせる計画もありましたが、頓挫し非電化のままJR東海に引き継がれました。
電化計画はJR化後も復活することはなく実質的に断念されたように見えますが、
JR発足から間もない時期にアメリカ•カミンズ社製の強力なエンジンを搭載してデビューしたキハ85系は、その代償という見方がされることもあるようです。
キハ85系登場により、先代の国鉄型80系特急型気動車で2時間50分かかっていた名古屋〜高山間は、分岐器改良など線路側の改善とあわせ、最終的には2時間9分まで短縮されています。
★2021年12月現在では3号の2時間13分が最速です。
高山以南の高山本線は、美濃太田の手前まで飛騨川に沿って進みます。
列車は何度となく飛騨川にかかる鉄橋を渡り、川は車窓の右へ左へと頻繁に移ります。
国道との並行区間。国道41号は概ね高山本線に並行して名古屋と富山を結んでいます。
また高山本線に関係する道路としては東海北陸自動車道が90年代に順次延伸され、2000年に高山に近い飛騨清見IC以南が全線開通。
名古屋〜高山間の高速バスも、キハ85系登場で早くなった特急ひだ号に匹敵する所要時間で運転されるようになり、特急ひだ号の利用にも影響を与えています。
16:14。最初の停車駅飛騨荻原に到着。
飛騨萩原から10分弱、飛騨川沿いに広がる温泉街が車窓に見えると、間もなく高山本線では高山と並ぶ主要駅である下呂に到着します。
16:22。下呂温泉の玄関として賑わう下呂駅に到着。
ホームでは観光を終え名古屋や大阪へ帰る乗客が列を成して特急ひだ号の到着を待っていました。
下呂駅発車から数分。対向の特急ひだ13号を待たせて少々野信号所を通過。
下呂駅からわずか1.7kmの当信号所はかつて貨物駅として機能していたものです。
時刻は17時前。次の停車駅美濃太田へ歩を進めるうち日が暮れてきました。
車窓の飛騨川の様子を撮影することも難しくなってきましたが、この付近で岩場を流れ下る飛騨川の車窓は特に美しいことで知られています。
17:16。列車は山間部を抜け美濃太田に到着。
さて美濃太田を発車後、乗車前に高山駅で購入した駅弁「飛騨牛入り牛しぐれ弁当」を開くことに。
弁当の下に発熱体が仕込まれていて、手前に見えている紐を引き抜くと化学反応で加熱。
紐を引いて待つこと5分。
コンビニで温めてもらうより少し低いくらいの温度まで温まった弁当を開封すると、肉の香りが広がり食欲をそそります
なお今回は弁当を買った際にペットボトルのお茶も一緒に購入しましたが、
特急ひだ号の車内デッキには飲料の自販機や、トイレから独立した洗面所も設置されています。
車内販売こそありませんが、持ち込みでの食事には重宝する設備です。
17:36。弁当を食するうちに東海道本線と合流し岐阜に到着。
岐阜駅では名古屋行と大阪行の切り離しが行われます。
到着から5分の17:41。写真左手の名古屋行が進行方向を変えて先に発車時刻を迎えます。
ホームに残された大阪行の3両編成。
大阪行の発車は名古屋行に遅れること2分の17:43。
切り離し作業を見学していた大阪方面へ向かう他の乗客とともに急ぎ足で車内に戻ります。
岐阜から2駅目にあたる穂積駅を高速で通過。
東海道線に入り列車の速度はキハ85系の最高速度でもある120kmに迫ります。
通過駅であっても駅周辺に市街地の明かりが広がり、車窓からも大幹線に乗り入れたことを実感できます。
17:53大垣着。
名古屋方面から到着して折り返しを待つ近郊型車両越しに駅名標を撮影しました。
大垣は名古屋都市圏の西端に位置し、この先関ヶ原を越え滋賀県の米原まで、東海道線では最も列車本数が少ない区間となっています。
大垣から約30分。 18:22米原に到着。
米原はJR東海とJR西日本の境界駅で短い停車時間の間に乗務員さんの交代が行われます。
18:23米原を発車。JR西日本区間へと進みます。
米原の次の彦根駅周辺には大きな市街地が見えますが特急ひだ号は通過。
米原から終点の大阪まで、特急ひだ号は米原駅を6分前の18:17に発車した新快速播州赤穂行を追う形になります。
新快速は米原から京都までの間、彦根、能登川、近江八幡、野洲、守山、草津、南草津、石山、大津、山科に停車するのに対し、特急ひだ号は草津に停車するのみですが、
いわゆる平行ダイヤで、追いついたり追い越したりはせず、一定の間隔を保ったまま走るため、この区間では線形や車両の性能に比して控えめな速度での走行が続きます。
19:01草津着。
ここから京都、大阪、神戸を経て兵庫県の西明石駅まで続く、全国最長約120kmの複々線区間に入ります。
19:17。
奈良線の205系と並走しながら京都駅に進入。右手にはライトアップされた京都タワーが見えます。
★カメラの補正機能で運転室内が明るく見えますがフラッシュ等は使用していません。
長岡京駅を高速通過。京都〜新大阪間では前を走る新快速も高槻に停車するのみ。
後に続く特急ひだ号の速度も上がります。
山崎駅付近の左カーブ。
右手にサントリーの工場があることからサントリーカーブと呼ばれ鉄道撮影の名所として知られます。
列車はこの付近で京都府から大阪府に入ります。
減速して駅に進入する普通電車をトップスピードで一気に追い抜き。複々線区間ならではの光景です。
前面展望への興味は日が暮れても尽きることはありません。
19:44。最後の停車駅新大阪に到着。
新大阪では19:55発九州新幹線直通の鹿児島中央行みずほ615号に乗り継ぐことができます。
夕方まで高山や下呂に滞在し、その日のうちに熊本や鹿児島へ帰ることも、特急ひだ号と新幹線の乗り継ぎなら可能です。
新大阪から終点大阪駅到着までの5分間は動画に収めました。
淀川を渡り大阪都心のビル街からドームに覆われた大阪駅進入まで、大阪行特急ひだ36号前面展望のクライマックスをご覧下さい。
19:50。終点大阪駅に到着。
長編成の電車が頻繁に発着する大阪駅に据え付けられた3両のディーゼル特急車両は、
ホーム上を忙しく行き交う人々にむけて、有名観光地とこの地を直結する1日1往復だけの特別な列車であることを無言のうちに主張しているかのようです。
なお大阪から高山方面へ向かう特急ひだ25号は、大阪発平日7:58.土日祝日8:02発で高山には12:23に到着します。★2021年12月現在のダイヤです。
最後までお読みいただきありがとうございました。