午前5:40。
東京駅。東海道・山陽新幹線改札口。
今回は東京6:00発、始発の新幹線「のぞみ1号」に乗車し、
終点の博多まで全区間乗り通します。
「のぞみ1号」の乗車券購入はエクスプレス予約を利用しました。
写真下のカードはエクスプレス会員(年1100円)になると送付されるEXICカード。
今回はホテル最寄の浜松町駅からSUICAで山手線に乗車し、
東京駅では駅の外に出ることなく新幹線改札口へ向かいました。
新幹線改札口では浜松町駅でタッチしたSUICAとEXICを2枚重ねて自動改札機にタッチします。
タッチ後、自動改札機から発行される「EXご利用票」を受け取り、
券面記載の車両・座席へ向かいます。(写真は事後撮影)
座席は予め指定されているのですが、この「ご利用票」のお陰で、
改めて予約画面などを確認することなく指定の座席へ向かうことができます。
ANAグループの便に搭乗する際、搭乗口の改札で座席番号が記入された半券を受け取って機内へ向かいますが同様のサービスです。
東京~博多間グリーン車利用の運賃・料金はエクスプレス会員向けの商品「EX早得」利用で22100円でした。
東京・品川・新横浜~小倉・博多の区間は、
11月下旬からEX早得の発売区間に加わったばかりです。
新幹線改札口付近にあったリニア鉄道館(名古屋)のポスター。
東海道新幹線を駆けた歴代車両を一目で見ることができます。
新幹線18番19番ホームへの階段下にある銘板を拝んでから乗車ホームへ向かうことにしました。
「東海道新幹線。この鉄道は日本国民の叡智と努力によって完成された」
5:45。14番ホーム。
すでに「のぞみ1号」として西へ下る車両が入線しドアを開いた状態で発車を待っていました。
先頭車両。
最新型N700S での運転を期待していましたが、本日の「のぞみ1号」はN700Aでの運転です。
SやAなど派生型がありますが、現在の東海道新幹線はこだま号・ひかり号を含めN700系に統一されています。
東海道新幹線の車両が一つの車種に統一されるのは、昭和39年の開業から昭和60年に100系が登場するまで続いた0系の時代以来です。
グリーン車は16両編成中ほど8.9.10号車に連結されています。
10号車グリーン車の指定座席。
普通車の場合、新幹線のシートピッチは多くの在来線特急列車より広めの1040mm となっていますが、
グリーン車の1160mmは在来線特急と共通です。
普通車は「新幹線だから広い」というより、
横3席のシートを回転させるために、やむを得ず広めの寸法にせざるを得なかったのではないでしょうか。
右の肘おきにはリクライニングのレバー。
左の肘おきには読書灯とシートヒーターのスイッチが内臓されています。
シートポケットには車内誌が2冊。
JAL の「SKY WARD 」やANA の「翼の王国」に近いのは「ひととき」のほうで、
「時代の先端を行く」と車内放送でも宣伝される「Wedge 」はかなり硬派な内容です。
東京発車時点でグリーン車は10%程度の着席率でした。
空いているには違いありませんが、休日の早朝でコロナの影響もあることを考えれば思ったより乗っている印象です。
6:00。北へ向かう新幹線車両を横に見て東京駅を発車。
山手線などと平行してゆっくりと走り、6:07。品川に停車。
品川発車後の車窓。
写真奥の高層ビルの壁面が朝日でオレンジに染まっています。
夜明けの都心の風景を眺めながら、1000kmをこえるスーパーエクスプレスの旅が始まります。
グリーン車内では「おしぼり」が配られました。
東海道新幹線の場合、新横浜までは助走区間というイメージですが、
多摩川を渡り神奈川県に入ると持ち前の加速性能を発揮し一気に加速。
短時間ですが時速約200kmに達しました。
「出せるところは出す」そんな意気込みが伝わってくる走り方です。
新横浜を出てしばらくすると郊外の風景の向こうに早くも富士山がその姿を現しました。
小田原手前。斜面に並ぶカラフルな住宅。
東京駅発車から約30分。小田原駅を猛然と通過。
熱海付近は東海道新幹線のルーツともいえる、戦前の東京~下関間の弾丸列車構想に基づいて取得した用地を活用しているため線形が厳しく減速を強いられます。
現在の山陽新幹線区間でも用地の取得はすすめられていたようで、
戦後自動車専用道路として活用された例もあるようです。
三島付近を通過。
富士川鉄橋通過中にふりかえるように撮影した富士山。
下り列車の場合、神奈川県内走行中のほうが見えている時間は長いように感じられました。
7時前ですが、まだ夜明けの雰囲気の静岡を通過。
駅前の高層ビル「アクトシティ」が目立つ浜松駅。
在来線や高速道路では延々と続くように感じられる静岡県区間も、
285km/h運転の「のぞみ」だとあっけなく終わってしまいます。
愛知県に入り東海道新幹線で唯一地平にホームがある豊橋駅。(米原も低いですが地平にあたるのでしょうか。)
名古屋到着の車内放送とともに一気に減速。
最高速度ばかりが注目される新幹線ですが、
加減速性能の向上や車体傾斜による曲線通過速度の向上など、細部の時間短縮の積み上げの上に、
現在のダイヤが成立しています。
名古屋駅周辺の高層ビル群。
7:34。名古屋着。
「のぞみ1号」が東京駅を発車した6:00には、品川から下りの「のぞみ」が、新横浜からは下りの「ひかり」が発車しており、
東京方面からの速達列車としては3番目の到着ということになります。
名古屋を出て関ヶ原を越え近畿地方へ。
滋賀県内で新幹線に並行する単線の線路は近江鉄道です。
滋賀県内では、琵琶湖越しに比良山系の山並みを望むことができます。
8:08京都着。
巨大な駅舎の向こうに京都タワーが見えます。
京都大阪府境付近では阪急電鉄京都線の併走。
東海道新幹開通前の一時期阪急電鉄が新幹線の高架線を走行していたというのは有名な話です。
近年では福井駅周辺で第3セクターの「えちぜん鉄道」が建設中の北陸新幹線の高架線を間借りするという事例がありました。
新大阪到着前に見える鳥飼車両基地。
在来線に比べ編成数に余裕をもたせているのか、
列車本数が多い時間帯でも多数の編成が休む様子を見ることができます。
8:22。新大阪に到着。
日中の「のぞみ」の東京新大阪間の所要時間は2時間33分~2時間27分ですが、
まだ列車本数が少ない早朝を走るのぞみ1号は先行列車に頭を押さえられることがないため2時間22分での運転です。
新横浜からだと約2時間であり、長く続いた「東京新大阪間、関東関西間=新幹線で3時間」の常識はいつの間にか過去のものになりました。
8:24。
新大阪での2分の停車時間の間にJR東海からJR西日本の乗務員に交代し、山陽新幹線区間へと踏み出します。
8:37。新神戸停車。
現在は「のぞみ」も含めて全列車が停車する新神戸ですが、
かつては「のぞみ」の一部は通過していました。
通過当時の最速「のぞみ」は新大阪~博多を2時間17分で走行していましたが、
この所要時間記録は未だ破られていません。
なお新神戸への「のぞみ」全列車停車の背景には神戸空港の開港があったと言われています。
新神戸を発車すると2度目のおしぼりサービス。
西明石を通過すると車窓に田園風景も見られるようになります。
写真のJR神戸線大久保~魚住付近には新幹線の車両基地の建設が予定されています。
姫路通過。
進行方向右側にすわっていても姫路城が見える時間は長くありません。
今回はシャッターチャンスを逸してしまいました。
のぞみ号の山陽新幹線区間の最高速度は300km/h ですが、
新大阪を出て初めてその速度に達するのが姫路駅付近といわれでいます。
姫路駅通過後にメーターアプリを確認すると294km/h 。
東海道新幹線区間の最高速度285km/h を上回っています。
岡山県に入り新幹線の撮影スポットとして有名な吉井川を渡ると、早くも岡山到着放送が流れ、
新神戸発車からわずか30分で岡山駅に進入。
9:09岡山到着。
上りホームには「ひかりRail Star 」車両が停まっています。
車両形式的には東海道新幹線から去年末引退した700系の派生型です。
在来線に目を向けると、
9:25発の特急「しおかぜ」に乗り継ぐと愛媛県の松山に12:10に到着できますが、
東京からだと6時間を超える長旅になります。
岡山駅での新幹線と在来線の接続は、今のところ首都圏より阪神地区との行き来が重視されているようで、
出雲市へ向かう特急「やくも」と高松へ向かう快速「マリンライナー」はともに9:05に発車したばかりです。
岡山以西のグリーン車内は1両に5人以下となり、早朝の東京発車時点よりも空いていました。
山陽新幹線内のみを走る「ひかり・こだま」や九州新幹線直通の「みずほ、さくら」の指定席がグリーン車並みの快適性であることも多少関係があるのかもしれません。
9:26福山に停車。
東京~博多間で最速となる列車は上り最終の「のぞみ64号」で、
その所要時間は4時間46分に対して「のぞみ1号」の所要時間は4時間52分。
時間差の大半は「のぞみ1号」が、ここ福山に停車することによって生じているようです。
福山駅に隣接する福山城。
福山駅を発車し加速に入ったタイミングで空を見上げると、低空を飛行する機体が見えました。
時刻から広島空港へ向かうANA673便と思われます。
ANA673便の羽田発は8:10で「のぞみ1号」が発車した1時間後に東京駅から羽田空港に向かっても充分間に合いますが、
広島空港に9:40に到着したのち、リムジンバスで広島市の都心へ向かうと、到着は11時前、「のぞみ1号」より1時遅くなってしまいトータルの所要時間では互角という構図です。
福山から新尾道・三原と通過し、東広島駅付近を走行中。
この地域特有の赤い瓦屋根の日本家屋が並ぶ様子は、トンネルが多い山陽新幹線の車窓の見所かもしれません。
付近には先程ANA機が向かっていた広島空港もあります。
9:49。広島着。東京から3時間49分。
東京から大阪、岡山、広島、福岡の各都市への移動での新幹線と航空のシェアをみると広島でほぼ半々となり、
いわゆる鉄道4時間の壁の国内における論拠とされることもあります。
広島という空港から離れた都市を基準に4時間の壁を論じるのは正当ではなく、
実際には3時間台でも航空利用が優勢という見方もあるようですが
高速鉄道技術で日本と競うフランスでも首都パリからの高速鉄道の所要時間と航空とのシェアの推移は似たような傾向にあるようです。
また当地ではコロナで苦境にたたされた航空会社の公的支援の条件に、
高速鉄道で3時間以内の路線を今後復活させないことが条件とされたという話もあります。
やはり鉄道で3時間以下は鉄道優位、4時間以上は航空優位で、
3時間台が分かれ目になるという事実は無視できないように思われます。
広島を発車し加速しながら太田川を渡るとトンネルに突入。
山陽新幹線は大都市周辺でもトンネルが目立ち、
トンネル区間が全体の50%を占めます。
減速して大きな市街地を通過。
東の熱海とともに徳山駅周辺は曲線半径が小さく減速を強いられます。
10:36小倉着。
「のぞみ1号」の場合、広島~小倉間の所要時間は46分ですが、
かつて44分運転のダイヤが組まれたことがあり、
停車駅間での平均時速世界一としてギネスブックに登録されたこともあります。
現在では最高速度で勝る東北新幹線の仙台~盛岡などのほうが早いのではないでしょうか。
小倉~博多は山陽新幹線がJR西日本、平行在来線の鹿児島本線はJR 九州の運行で、JR同士の競合が見られる区間ですが、
新幹線の圧倒的なスピードにJR 九州の特急列車が苦戦しているようにも見受けられます。
ライバルでもあるJR九州の特急列車が車窓に見えると、間もなく終点の博多に到着です。
10:52博多到着。
東京から4時間52分ののぞみ1号の旅は終わりました。
山陽新幹線は、昭和39年に開通した東海道新幹線を延伸するかたちで、昭和47年に岡山、昭和50年にここ博多まで開通し全線開通を果たしています。
開通から間もない昭和51年の時刻表によれば、のぞみ1号と同時刻の6:00に東京を発車していた「ひかり1号」の博多到着は13:01。
40年あまりの間に2時間以上の時間短縮が実現したことになります。
博多駅ではEXIC だけをタッチして改札口から出場しました。
12月に入っても秋の名残が感じられた博多駅前。
東海道山陽新幹線は、大きくみると西へ向かいつつ少しずつ南下する線形になっています。
少しずつといってもその距離1000kmオーバー。
調べてみると、東京と博多の緯度の差は、新潟と東京の緯度の差とほぼ同じであることがわかります。
博多に到着し、冬から秋に季節が戻ったように感じられたのも無理のないことなのかもしれません。
東海道山陽新幹線のスケールを改めて実感したところで、今回の乗車記は終了です。
最後までお読みいただきありがとうございました。