2021年12月までJR西日本から発売されていた関西どこでもきっぷは、
関西周辺の指定エリア内の特急、新幹線に2日間乗り放題で、指定席も6回まで利用できて10000円という格安きっぷでした。
筆者はこの切符を最大限活用し、特急14本と新幹線1本を乗り継ぐ鉄道旅行を計画していました。
しかし直前になって予定通り旅行に出発できない事情が生じ、キャンセル払い戻しも考えましたが、
価格を考えれば、鳥取まで今冬初めての雪景色を見に行くだけでも元がとれるだろう。と思い直し、払い戻しはせず旅程を大幅に短縮して出かけることにしました。
さて関西から鳥取へ向かう場合、京阪神、姫路を通り智頭急行線経由で鳥取へ向かう特急スーパーはくと号を利用することが一般的ですが、
スーパーはくと号と大差ない所要時間で鳥取に到着できるルートが、もう一つ存在します。
そんなわけで、今回の鳥取旅行は新大阪駅の新幹線ホーム20番線からスタートです。
折り返し12:06発さくら555号鹿児島中央行となる編成が20番線に到着。
山陽新幹線と九州新幹線を直通する、さくら号みずほ号に使われるN700系車両は、JR九州編成とJR西日本編成があります。
今回乗車する編成は左下に見えるJRのロゴがJR九州のコーポレートカラーの赤色であることからJR九州編成であることがあわかります。
九州新幹線に直通する列車の指定席のシートはグリーン車と同じ2列✕2列で横幅があり、
自由席の空席状況に関わらす指定席乗車がおすすめです。
関西どこでもきっぷの特権で追加料金無しで発券した指定席券。
臨海工業地帯を望む加古川市内区間。
新幹線に平行する複線軌道は山陽電鉄本線です。
先日発売された鉄道雑誌に、この付近に山陽新幹線の駅を設けたら山陽電鉄との乗り換えで広範囲の新幹線アクセスが改善するのではないか。という読者氏の意見が寄せられていました。
加古川市や明石市から新幹線で東京方面へ向かう場合、
最寄りの西明石は停車する列車が少なく、次の新神戸は三ノ宮で地下鉄に乗り換える必要があることから、
JR神戸線の快速や新快速で新大阪へ向かう人がかなりいると思います。
その点では、この付近への駅設置は効果がありそうに思えますが、
個人的には、新駅ができても、こだま号のみ停車なら西明石と同じ扱いを受けるのではないか。という思いと、もう一点、
この付近から博多方面へ向かう場合は、現状のままでも、JRであれ山陽電鉄であれ、電車1本で姫路へ出ればよく、新幹線へのアクセスは良好です。
JR西日本の新幹線の営業エリアが新大阪以西であることを考えれば、
東京へ向かう客の新幹線アクセスが改善されることは、
必ずしも新駅設置という投資をする動機にはならないのかも知れないと考えています。
姫路周辺のみならず兵庫県の広い範囲から西へ向かう需要を集めている姫路駅。
さくら555号は通過しましたが、姫路駅への停車は実需要を踏まえ慎重に検討されているようで、時間帯によっては、さくら号より格上の、みずほ号も停車します。
岡山県に入り赤穂線、国道2号線との平行区間。
岡山県を代表する河川の一つ吉井川を渡ると岡山到着の車内放送が始まります。
新神戸発車から30分。列車の速度が落ち車窓には岡山市街のビル群が広がります。
12:51。新大阪から45分で岡山駅に到着。
種別としては、ひかり号相当のさくら号ですが、姫路通過の555号に限れば、岡山までの所要時間はのぞみ号と変わりません。
岡山では乗り換え時間で駅前広場へ。
駅前広場に立つ桃太郎像。
数年後には、現在駅前通りに発着している岡山電軌の路面軌道が延伸され、この銅像のあたりに乗降ホームが新設されるようです。
岡山駅内の土産物売場。
桃太郎に因む商品や、その代表格である吉備団子に大きなスペースが割かれています。
駅前の銅像は、移転や新調はあっても、撤去され姿を消すことはないのではないでしょうか。
岡山駅中央改札口。
できるだけ写り込む人の数が少なくなるタイミングを狙って撮影したものです。
旅行者の目には、日曜日の岡山駅はコロナ前の賑わいを取り戻しているように見えます。
さて岡山からは、13:43発の鳥取行特急スーパーいなば7号に乗車します。
倉敷方から入線した特急スーパーいなば7号。
187系2両編成のディーゼル特急です。
岡山発車時点で前寄りの車両が自由席、後寄りの車両が指定席です。
写真は乗車直後の指定席。
空いているように見えますが、発車時には8割方の席が埋まりました。
パソコン作業もできる大型の背面テーブルが備わりますがコンセントはありません。
先程新幹線で渡った吉井川を渡ります。
岡山駅から約50km折り返す格好で、再び兵庫県に入り最初の停車駅上郡に到着。
スーパーいなば号は、ここで進行方向を変え、智頭急行線に入ります。
車内の座席転換も満席に近いときは大変です。
第3セクターの智頭急行線は上郡と鳥取県南部の智頭を結ぶ55.1kmの路線で、兵庫県、岡山県、鳥取県の3県に跨っています。
兵庫県区間の智頭急行線は千種川に沿って進みます。
兵庫県南西部、播磨地方を南北に流れる主要な河川は、
東から加古川線に沿う加古川、播但線に沿う市川、姫新線に沿う揖保川があり、
智頭急行線に沿う千種川は最も西に位置しています。
岡山県まで視野を広げると、その西には、かつての片上鉄道に沿う吉井川、津山線に沿う旭川、伯備線に沿う高梁川と続きます。
兵庫県、岡山県に限らず、川の話を抜きに国内の鉄道網を語ることは到底できません。
JR姫新線との乗り換え駅佐用を発車すると、間もなく左手に樹齢500年以上と言われる大銀杏がみえます。
兵庫県の天然記念物にも指定されています。
岡山県に入り(戻り)大原駅に停車。
上郡では晴れていた空は、智頭急行線を北上するにつれ、次第に曇に覆われ、この付近から車窓には白いものが目立ち始めました。
そして智頭急行で最も長い志戸坂トンネルを抜け鳥取県に入ると写真のような雪景色が。
先述の経緯を踏まえて言えば、ミッション達成ということになるでしょうか。
このあと10日ほどで当地が災害級の大雪に見舞われることは予想もしていませんでした。
列車は智頭急行線からJR因美線に入り、雪景色のなかを北上。
15:32鳥取に到着。
新大阪から3時間26分での到着ですが、そのうち52分は岡山駅での乗り継ぎ時間ですので、正味2時間34分。
京阪神から鳥取へ向かうには明らかに遠回りの岡山経由ですが、岡山駅でスムーズに乗り継げは、スーパーはくと号と同等の所要時間で鳥取に到達できることがわかります。
訪問日の時点では鳥取市街地に雪はありませんでした。
鳥取滞在時間約1時間20分。
鳥取16:54発の特急スーパーはくと12号で帰路につきます。
スーパーはくと12号は倉吉始発ですが、始発駅からの乗車も多く鳥取からの乗車で指定席はほぼ満席になりました。
新規開業した智頭急行線を通ることで、京阪神と鳥取の所要時間を一気に1時間以上短縮したスーパーはくと号は、
開業直後に阪神大震災の影響で京阪神への乗り入れができなくなるなど災難にも見舞われましたが、
以後は堅調で、平行する鳥取自動車道が全線開通した現在も大きく利用者を減らしているようには見えません。
夕食は鳥取駅前の大丸地下で買った弁当を車内で。
スーパーはくと号に使われているHOT7000系は1994年の智頭急行開業、スーパーはくと号運転開始時に登場したものですが、
何度かリニューアルが施されており、シートだけでなくデッキの洗面所なども更新され快適性を維持しています。
なお2024年頃より新型車両への置き換えが始まるようです。
鳥取から2時間で明石に到着。
最近設置されたロープ式のホームドアは、
新快速などとドアの数や位置が全く違う特急車両にも対応できる優れものです。
今回は19:11着の三ノ宮で下車しました。
このまま乗車すると大阪には19:31、新大阪には19:41、終点の京都には20:06に到着します。
ちなみに乗車したスーパーはくと号の34分前、16:20に鳥取駅を発車した岡山行スーパーいなば号は終点岡山に18:11到着。
岡山18:23発の山陽新幹線のぞみ50号に乗り継ぐと、新神戸に18:55、新大阪に19:07、京都には19:22に到着します。
偶然ですが新大阪までの所要時間は共に2時間47分、京都では岡山周りの方が所要時間が短くなります。
遠回りする分、運賃料金は高くなり、岡山での乗り換えの手間も余計とは言え、
一刻も早く目的地に着きたいときや、京阪神〜姫路〜上郡間の在来線で輸送障害が発生した際などには大いに活用できそうです。
最後までお読みいただきありがとうございました。