五輪開会に伴う4連休初日。JR東日本仙台駅。
今回はここから秋田新幹線「こまち号」に乗車し終点の秋田へ向かいます。
「こまち号」の大半は東京〜秋田間の運転です。
仙台から途中乗車すると、盛岡まで約40分東北新幹線(赤線)を下ったのち、
盛岡からは、大曲を経由して秋田まで(青線)約1時半の道のりです。
盛岡から秋田までの区間は便宜上、秋田新幹線と呼ばれることが多いものの、
盛岡〜大曲間は田沢湖線、大曲〜秋田間は奥羽本線の一部であり、
ともに狭軌の在来線を新幹線と同じ標準軌に改める工事を施工し、
東京からの新幹線車両の直通を実現させたものです。
参考 左 標準軌レール間1435mm
右 狭軌レール間1067mm
「こまち号」は概ね1時間間隔の運転で、利用の多い時期・時間帯には臨時便が追加されます。
今回は東京発11:20の「こまち21号」秋田行に乗車します。「こまち21号」の仙台発車は12:53です。
乗車券はJR東日本のインターネッ予約システム「えきねっと」から「お先にトクだ値」という企画切符を購入。
正規の運賃、料金から35%割引で秋田まで6720円でした。
今回は券売機で紙の切符を発券しましたが、紐づけのICカードでチケットレス乗車も可能です。
JR東日本のサイトではそちらの利用が推奨されています。
仙台駅新幹線ホームに入線する「こまち21号」。
仙台駅改札内の表示。
「こまち21号」の後ろには、盛岡までの東北新幹線区間で併結となる新青森行の「はやぶさ21号」が連結されています。
「こまち号」は7両、「はやぶさ号」は10両で、計17両は国内の旅客列車としては、東海道新幹線の16両を上回り最も長い、、と簡単に言いたいところですが、
在来線に直通する「こまち号」の車長は通常の新幹線車両より短く、概数で先頭車23m、中間車20.5mとなっており少々計算を要します。
東海道新幹線のN700系先頭車両27.3m×2両+25m✕14両=404.6mに対して、
はやぶさ、こまち併結の17両は、はやぶさ先頭車26.5m×2両+25m✕8両+こまち23m✕2両+20.5m✕5両=401.5mとわずかに及びません。
「こまち号」普通車車内。秋田到着後撮影。
「こまち号」は全車指定席で、7両のうち東京寄りの1両がグリーン車、6両が指定席です。今回は指定席を利用します。
「こまち号」の車両は長さだけでなく幅も在来線仕様のため、
普通車も通路を挟んで2席✕2席のシート配置となつており、新幹線ではお馴染みの横3席のシートはありません。
シート。
シートピッチは98cmと新幹線車両としては狭く、この点も在来線規格と言えそうですが、
背景には横3席シートの回転を考慮しなくても良いことがあるのでしょう。
またシート上の取っ手が目立ちますが、これも理由あってのことです。
定刻に仙台を発車。
国内最速の最高時速320kmに近づくころには、すでに車窓には田園地帯が広がっていました。
仙台駅ホームの自販機で購入したお茶と車内販売品のワッフル。
盛岡まで併結の「はやぶさ号」とは、車内での行き来はできないため、この区間で車内販売が回ってくるのは、「こまち号」「はやぶさ号」のそれぞれに車内販売員が乗務していることを意味します。
在来線特急では、車両販売がほぼ全滅していることを考えれば新幹線は別格の扱いです。
13:32盛岡着。
ここで後方の「はやぶさ号」を切り離し、「こまち号」が先発します。
盛岡駅での停車時間は先発の「こまち号」で3分、「はやぶさ号」は5分です。
東北新幹線では最近上野〜大宮間の最高時速が110km/hから130km/hに向上しましたが、時間短縮は1分程度。
東北新幹線が八戸や新青森までだった時代は、盛岡到着時点で終点までの時間距離が長い秋田行「こまち号」を前に連結しておき、先発させることは自然だったかもしれませんが、
今後、東北新幹線に続く北海道新幹線の札幌延伸が視野に入ってくると、
そちらへの到達時間短縮が優先され、編成を逆にして「はやぶさ号」の停車時間を少しでも短くしようという話がでてくるかもしれません。
盛岡駅を発車すると、アプローチ線を経て在来線の田沢湖線に進入します。
アプローチ線は東京方面の上り「こまち号」と共用の単線1本のみです。
「こまち号」は先述のように概ね1時間ごとの運転ですので、単線であることは、それほど問題にならないと思われますが、
東京方面への列車は、東北新幹線の下り本線を横切って盛岡駅新幹線上りホームに到着することになります。
同じような構造のアプローチ線で山形新幹線列車が在来線から合流する福島駅では、
山形新幹線列車が遅れた際に、東北新幹線列車の進路を塞ぎ、ダイヤの乱れを広げることが問題視され、
上りホームにダイレクトにつながる、東京方面専用のアプローチ線を新たに建設することが決まっています。
福島の場合、盛岡より東北新幹線本線を走行する列車の本数が多い上、福島を通過する列車も少なくないことなどが、
当面1本のアプローチ線を使い続ける盛岡との対応を分けたのかも知れません。
標準軌に改められたとはいえ、盛岡からの走行感覚は在来線特急そのものです。
最高時速は一気に190km下がって130kmとなり、その速度に達する区間も限られています。
在来線の証ともいえる踏切をいくつも通過した列車は、盛岡の次の駅である大釜駅に停車し上りの「こまち号」と行き違います。
盛岡〜終点秋田までの区間の大半は単線です。
在来線直通の新幹線については、
東北新幹線のようなフル規格ではなく、在来線改軌による新幹線車両の直通とすることが決まった当時、フル規格新幹線を望む地元からは、
「ウナギを注文したらアナゴが出て来た」と揶揄する声が上がったという話を聞いたことがあります。
寿司屋ではないのでウナギとアナゴの価値の差がどれほどのものか実感がわきませんが、
実はもっと大きな差があるのではないか。という気がしないでもありません。
盛岡近郊の田園地帯を抜けた列車は50km程度まで減速し深い山中を進みます。
岩手秋田県境を跨ぐこの区間は盛岡からの秋田新幹線在来線区間の中でも特に速達化の足かせとなっている区間ですが、
この区間をショートカットする新仙岩トンネル建設の構想があります。
仮に開通すると現在最速便で3時間37分かかっている東京〜秋田の所要時間が3時間20分台になることが見込まれているほか、災害対策としての効果も期待されているようです。
山間部を抜け田沢湖駅に停車。
次は角館。仙台・盛岡と東北新幹線区間での下車が目立ち、盛岡発車時点で着席率は30パーセント程度。
車内販売員も盛岡で下車してしまったようです。
今年夏で駅開業から100周年を迎えるという角館駅に停車。
第3セクター秋田内陸縦貫鉄道との乗り換え駅でもあります。
角館からは広々とした田園地帯を軽快な速度で進みます。
14:31。盛岡から約1時間で田沢湖線区間を走り抜け大曲駅に到着。
「こまち号」はここで進行方向を変え、奥羽本線下り線に入ります。
14:33。大曲を発車。
先程走ってきた田沢湖線が右手に別れていきます。
大曲から秋田までは51.6km、時刻表上の所要時間は31分でこの区間の平均時速は約100km。
「こまち号」を在来線特急として見るなら、この区間に限ればかなり早い部類に入ります。
大曲で進行方向が変わっても誰も座席を転換させないのには驚きました。
各シートに備わる大きな取っ手の出番はありませんでした。
大分と博多を結ぶ特急ソニック号でも途中の小倉駅で進行方向が変わりますが、
博多まで残り約40分の乗車でも乗客同士の無言の連携プレーで全ての座席の向きが変えられていたのを覚えています。
奥羽本線区間では「こまち号」が走行する線路に並行して、もう1本線路があり複線区間のようですが、
並行する線路は在来線規格の狭軌で「こまち号」は通れません。
狭軌の線路は、大曲の先、横手方面と秋田を結ぶ奥羽本線ローカル列車が使用するもので、国内では珍しい単線並列区間となっています。
「こまち号」の車両が休む車両基地の脇をかすめると間もなく終点の秋田に到着します。
15:04。終点秋田駅新幹線ホームに到着。
本日の行程はここ秋田までです。
駅前のホテルに一泊し、明日は新潟方面へ向かいます。
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