JR東日本山形駅。
今回はここから山形新幹線つばさ号で東京へ向かいます。
午前7時前の山形駅のコンコース。
山形駅から山形新幹線に乗車する場合、まず在来線改札口を通り、山形新幹線ホーム入口で再度山形新幹線専用の改札を通ることになります。
山形新幹線ホームへ。
今回乗車するのは写真左側の1番線から7:08に発車する「つばさ124号」です。
山形新幹線の車両は開業時の400系はすでに引退し現在はE3系7両編成での運転。
初めての在来線直通新幹線として1992年に山形新幹線が開業した際、
ほぼ無塗装でシルバー一色の400系の車体について、
「在来線走行区間の沿線の緑や冬期の雪景色にマッチする色を追求した結果がこれだった」などと説明されたものですが、
現在のE3系は新幹線車両としては多彩な色遣いが特徴です。
普通車の車内は暖色系でまとめられ落ち着いた雰囲気です。
シートの座面と背もたれは、肘置きのボタンで別々に動かすことができます。
今回の東京までの乗車券は、JR東日本の列車予約サイト「えきねっと」から、席数限定の「トクだ値35」で購入。
東京まで指定席特急料金込みで7370円です。
7:08。定刻に山形を発車したつばさ124号は雪景色の中を快走します。
山形発車からしばらく、左手の車窓に田園にそびえ立つ「スカイタワー41」が見えます。
乗車中の124号は通過しますが、山形新幹線の大半の便が停車する、かみのやま温泉駅から徒歩30分の場所にあるタワーマンションです。
田園地帯にそびえ立つ姿は奇抜な印象ですが、
ネツトの書き込みなど見ていると、
付近で一戸建てを建てるより安く購入でき、地方特有の濃密な地域の付き合いや雪下ろしの悩みからも解放されるなど、
実質的なメリットに注目して入居する地元の方が少なくなく、入居後の満足度も高い様子が伺えます。
赤湯駅手前。
平地を見下ろす下り勾配で車窓が広がります。
山形の1月の日の出時刻は7時前後。
日の出から間もない太陽に照らされる雪景色の車窓は美しく見飽きることがありません。
東京より西に住む鉄道ファンが、車窓の美しい在来線特急として思い浮かべるのは、
「あずさ号」や「しなの号」が多いのではないかと思いますが、
山形新幹線つばさ号の在来線区間も負けず劣らず。ではないでしょうか。
7:38。山形から30分で最初の停車駅米沢に到着。
速達便の124号はノンストップでここまで来ましたが「つばさ号」の多くは、山形から途中
かみのやま温泉、赤湯、高畠に停車し、米沢まで35分程度の所要時間となっています。
米沢市の人口は約8万人で山形県内では4位。
東京までの所要時間も乗車中の速達便124号に限れば2時間を切ります。
ホームでは米沢駅の名物駅弁「牛肉どまん中」が販売中ですが、停車時間は僅かでホームに出る時間はありません。
同じ在来線直通の秋田新幹線では大曲駅で進行方向が変わったり、単線区間があるため行き違い待ちの停車がある場合もありますが、
山形新幹線の山形以南はほとんどが複線で進行方向の転換もないため運行はスムーズです。
米沢駅を発車した「つばさ号」は山形県と福島県を分ける板谷峠に差し掛かります。
板谷峠の最急勾配は38パーミル。
長野県内のJR飯田線には40パーミル区間も存在しますが、距離は僅かであり、
板谷峠は、1997年の北陸新幹線長野開通とともに信越本線の碓氷峠区間が廃止されて以降、実質的にJRで最も急な勾配で峠を越える区間となっています。
時速200km以上で走行できる大出力のモーターを積んだ新幹線車両ですが、勾配のほか急曲線もあり、また下り区間では制動距離が伸びることから、
一部区間では新幹線とは名ばかりの時速60km付近まで速度が低下します。
板谷峠を抜け福島平野へと下る場面。
大きな曲線で峠にアプローチするこの付近は、庭坂カーブとも呼ばれ鉄道撮影地として有名です。
福島駅が近づくと、在来線から分岐して高架に上がり、右カーブで 東北新幹線と並んで新幹線ホームに進入します。
8:13。福島に到着。
山形から米沢まで47km30分に対し、米沢から福島まで40.1kmに35分を要した計算です。
それぞれ平均時速を計算すると前者94km に対し後者は69kmとなります。
この速度低下に対し、JR東日本と山形県が米沢〜福島間の板谷峠区間を貫く新板谷トンネル掘削の調査を始めており、完成すれば同区間で13分程度の短縮が見込まれているようです。
福島駅新幹線ホームに到着した「つばさ124号」は、先に到着していた「やまびこ24号」の後方に連結され、その作業が終わったのちにドアが開きます。
8:15。 2分の停車時間で福島駅を発車した「やまびこ・つばさ」号は、
東北新幹線下り本線を横断して東京方面の上り本線に進入します。
高速道路で例えれば、上り線に入る際に、下り線の出口から逆走で進入し、対向車が迫りくる下り線を逆走したのち中央分離帯の切れ目から上り線に合流していくイメージです。
山形新幹線の開業から今年で30年。盤石の安全システムに守られ事故は起きていませんが、対向車の速度は時に時速300キロ以上。
一度事故が起これば航空機の墜落を上回る惨事になるかも知れません。
機械の誤作動やヒューマンエラーをある程度起こりうるものとして考慮に入れ、
そのような場合でも大事には至らせない。というフェイルセーフの思想を古くから発展させてきた日本の鉄道にあって、
素人目には、ここは異例の対応という印象を受けます。
ちなみに 福島駅で併結した「やまびこ124号」は仙台始発であり、
福島駅進入時にも下り本線を横断して「つばさ号」の到着・併結を待っていました。
再び高速道路を引き合いに出せば、上り線を走行している車が下り線のサービスエリアで一休みしていたようなものでしようか。
事故の危険性の話は差し置いても、
上り列車が頻繁に下り本線を横断(言うなれば短距離の逆走)しなければならない現状では、
ダイヤが乱れた際に、その影響が拡大したり収束が困難になることもあり、
2022年、山形方面から東北新幹線の上り待避線に直接繋がる新たなアプローチ線の建設が始まっています。
「つばさ号」の東北新幹線内の最高速度は275km。
「つばさ124号」は、他の多くの「つばさ号」が停車する郡山・宇都宮には停まらないため、福島を発車すると次の停車駅は大宮です、
8:30。福島駅発車から東北新幹線を南下すること15分。
山形駅から続いていた沿線の積雪はいつの間にかなくなり土色の車窓が続きます。
列車は間もなく白河の関を越え関東地方に入ります。
8:40。北関東、栃木県に入り那須塩原駅付近。
車窓右手には冠雪した山並みを望む美しい車窓が展開します。
8:50。栃木県の県庁所在地宇都宮の駅を速度を落とすことなく通過。
栃木県から埼玉県に入り、新交通システムニューシャトルとの平行区間に入ると間もなく大宮に到着。
9:12。大宮着。
ここから終点東京まで、東京から北へ延びる新幹線3路線(東北、上越、北陸)の全便が線路を共有しています。
そのため線路容量に余裕がなく、
山形新幹線や同じく在来線直通の秋田新幹線が、福島駅や盛岡駅で東北新幹線の列車と併結して東京へ向かわなければならない理由はここにあります。
大宮駅発車後、ほぼ同時に在来線ホームを発車した651系の特急あかぎ6号と並走。
時刻表では特急あかぎ6号の大宮発は9:12となっており、向こうは少し遅れていたようです。
大宮から次の上野までの間は、2021年より最高時速が110kmから130kmに向上しており、平行する在来線埼京線の電車を軽快に追い抜いていきます。
速度だけ見れば、関西圏の複々線区間で、新快速が普通電車を追い抜いているようなものですが、
新幹線車両にとっては徐行とも言える速度であり追い越す側の余裕が全く違います。
田端駅付近。
JR東日本東京支社の社屋に新幹線車両が綺麗に写り込んでいました。
上野を通過。
先述のように東京を発着する東北、上越、北陸の各新幹線の全便がここを通りますが、通過する列車は一日に数本しかありません。
東京到着直前の指定席車内の様子。
東京から地方へ向かう利用に比べ、地方から東京へ向かう利用は、コロナ禍による急減からの回復が遅れているという話もあり、
今回の「つばさ124号」の指定席も山形から終点東京まで終始1両数人〜10人程度と寂しい乗車率でした。
定刻9:35。東京駅に到着。
新板谷トンネルの調査開始や福島駅でのアプローチ線建設に加え、山形新幹線向けの新型車両E8系の投入予定も最近発表されました。
鉄道全体に明るい話題が少ない中、今後の進化に期待を寄せることができるのは、幸いと言わなければならないでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。