西浦特急 鉄道と旅のブログ

鉄道・飛行機などで国内外を旅行した様子のほか、鉄道を中心に交通全般の話題を取り上げます。

【普通列車0本の特急街道を駆け抜ける】特急おおぞら5号乗車記(札幌11:50→釧路15:51)

JR北海道札幌駅。

今回はここから特急列車で釧路へ向かいます。

 

札幌駅東改札口。

今回乗車するのは札幌11:50発。特急おおぞら5号釧路行。

終点釧路到着予定時刻は15:51。

走行距離348.5km、所要時間4時間1分のロングラン特急です。

 

乗車日の特急おおぞら5号は先頭1号車がグリーン車、2〜4号車が指定席、5、6号車が自由席の6両編成。

長期間の乗車に備え指定席を押さえておきたいところでしたが、

今回は関空からピーチで渡道し、指定エリア内の特急自由席が乗り放題となる「ピーチひがし北海道フリーパス」を利用したため、早めに発車ホームへ向かい、自由席の号車札の下に並びました。

 

札幌駅8番線に入線した特急おおぞら5号。

車体傾斜装置を備えたキハ261系での運転てす。

 

6号車自由席車両のシート。

 

北の大ターミナルらしく車内で発車を待つ10分ほどの間にも多くの列車が発車していきます。

 

11:50札幌駅発車。

 

札幌発車から10分。札幌市営地下鉄東西線も乗り入れる札幌の副都心「新札幌」に停車。

札幌から函館方面や帯広・釧路方面へ向かうすべての特急が停車しますが、札幌行の便からの下車に比して、札幌発の便への乗車は少ない印象があります。

 

札幌・新札幌から次の停車駅南千歳までは、新千歳空港へ向かう快速列車が12分間隔で運転される都市近郊区間です。

時刻は正午過ぎ。

「列車が北海道らしい雄大な自然の中へと踏み出す前に腹ごしらえ」ということで、

乗車前に札幌駅で購入した人気駅弁「海鮮えぞ賞味」を開封。

北海道の海の幸を堪能できる駅弁です。

 

列車は千歳市内の高架線へ。

高架区間にある千歳市の玄関千歳駅には快速列車は全て停車しますが特急は通過。

千歳は札幌の衛星都市でここから道内各地へ向かう需要は少ないのかも知れません。

 

12:25。南千歳停車。

帯広や釧路への直行フライトがない地域から道東方面を目指す場合、

新千歳空港駅から快速エアポートで1駅3分の当駅で特急おおぞら号を乗り換えることが有力な選択肢となるようで、

札幌から空いた状態だった車内は、ここからの乗車で自由席は7〜8割程度の座席が埋まりました。

 

南千歳を発車した列車は南から東に進路を変え、石勝線に入ります。

石勝線は札幌と道東の短絡路線として昭和56年に全線開通した比較的新しい路線です。

全線開通により札幌〜帯広・釧路方面の走行距離は旧来の滝川回りに比べ40km以上短縮され、列車の大幅な所要時間短縮が実現しました。

西日本で言えば京阪神と鳥取の高規格短絡ルートとして開業した第3セクターの智頭急行線が、国鉄時代に開業しJRの路線として引き継がれた。というイメージでしょうか。

 

石勝線に入り車内では「野生動物が多く出没する地域を走行するため衝突回避のため急ブレーキを使用することがあります」と注意喚起の車内放送が。

実際に今回の乗車でも、線路上の鹿との衝突を避けるため急ブレーキがかかり停止寸前まで減速。そのあと線路上を逃げる鹿の後を追ってしばらく徐行運転という場面がありました。

 

石勝線は全線単線ですが高速運転可能な高規格路線で、

また積雪対策として写真のようなシェルターに覆われた信号場が多数あって、列車のスムーズな行き違いを可能にしています。

なお道東への短絡路線として特急列車が頻繁に運行される石勝線ですが、

沿線人口は希少で石勝線内で完結するローカル需要はごく限られています。

そうした事情を反映し、石勝線南千歳〜新得間のうち、新夕張〜新得間89.4kmの区間に途中駅は「占冠」と「トマム」の2駅しかなく、平均駅間距離は実に30km。

同区間に普通列車や快速列車の設定はなく、特急おおぞら号6往復と特急とかち号5往復のみの運行となっています。

「駅間距離が30kmあり、通過する旅客列車は全て特急」という状況は、

個人的には都市周辺以外の人口密度が極めて少ない北海道ならではの列車の運行スタイルという印象を最近まで持っていましたが、

北海道以外でも「同じような運行スタイルが検討されてもよいのではないか」と感じる区間。

具体的には、利用の大半は特急列車による長距離移動の通過需要で、数kmおきに設けられた各駅に停車する普通列車の需要はバスで十分輸送可能な程度しかないが、

その普通列車を運転するために、多くの駅が存置され、普通列車運転のための追加の行き違い設備や車両などの維持が必要になっている。

JR九州日豊本線やJR四国土讃線の一部区間など、そんな区間が増えてきている印象があります。

 

13:35頃。トマム着。所定ダイヤなら南千歳から約1時間。

スキーシーズンではなく、中国など外国からの観光客もほぼ見られない現状でも、

ホームが埋まるほどの多くの観光客が下車する様子が見られました。

 

石勝線区間の走行を終え、石勝線開通前の道東へのメインラインであった滝川からの根室本線と合流し、13:58。新得に到着。

 

新得駅到着後、新得駅と次の十勝清水駅の間で線路に倒木があつたため、しばらく停車すると放送があり、気分転換に花壇の植栽が美しいホームへ。

 

ホームで列車の写真を撮影していると、車内に戻って発車を待つよう放送があり、それに従い一旦車内に戻ったものの、

復旧まで時間がかかることがわかったのか「駅の売店などもご利用いただけます」と案内が変わったため、再び下車し駅舎内を散策。

駅売店の店員さんは突然押し寄せたお客さんに、喜んでいるというより戸惑っているように見えました。

 

新得駅の所在地は北海道上川郡新得町本通北1丁目。1日の利用者数221人。

石勝線と根室本線の実質的分岐点として機能してきましたが、 

根室本線は2016年8月の災害で一部区間が不通になり、復旧の見通しが発表されないまま、新得~富良野間のバス転換に向けた協議が行われています。

現在は駅前から代替バスが運行されています。

 

長時間停車ののち「復旧作業が終了し間もなく運転再開します」と放送があり、

列車は新得駅を約1時間20分遅れで発車。

新得駅到着時点ですでに「鹿の後追い」と対向列車遅延で10分程度遅れていたので、新得駅では1時間10分程停まっていたことになります。

 

新得発車から約30分。道東最大の都市「帯広」市街地の高架線へ。

 

15:40頃。帯広に到着。

札幌や南千歳からの乗客が多数下車する一方、ここから乗車して釧路方面を目指す乗客も少なくないのが印象的でした。

北海道の首都たる札幌へは道内各都市から鉄道以外の交通手段も用意されている一方、帯広〜釧路といった地方都市間の移動となると選択肢が限られているのかも知れません。

 

15:55頃停車の池田駅では新型H100系で運転の普通列車と行き違い。

 

浦幌付近からは内陸の曲線区間がしばらく続き、列車の速度も石勝線区間の半分近くまで低下します。

同じJR北海道でも特急北斗号が走る札幌〜函館間の場合、直線または半径800m以上の緩いカーブが全体の50%以上を占めるのに対し、

特急おおぞら号が走る札幌〜釧路間では30%程度となるようです。

 

厚内駅を過ぎると内陸から一転、海岸線へ。

 

海岸線に出ても所々に急曲線があり速度は上がりませんが、

国内の他地方では見られない、荒涼とした海岸周辺の風景に、道東の列車旅を実感する区間でもあります。

 

16:50頃。最後の停車駅白糠に到着。

かつてこの駅と北進駅の間33.1kmを結んでいたローカル線「白糠線」は昭和47年の全線開通からわずか11年後の昭和58年に利用不振から全線廃止に至っています。

廃止時の運転本数は1日3往復。100円を稼ぐのにかかった経費は2872円だったとのこと。

計算方法が異なるのかもしれませんが、現在JR路線として運行されているローカル線の中には、それよりも遥かに営業成績の悪い路線が多数存在しているようです。

 

 

白糠を発車した列車はやがて釧路の市街地に入り速度を回復。

高速で通過した写真の駅は大楽毛駅。

読みは「おたのしけ」難読ではないが強く印象に残る響きです。 

車内では昔日のローカル線で聞いた間延びしたオルゴールと同じ曲とは思えない、

軽快な電子音の「アルプスの牧場」に続き終点釧路駅からの乗り換え案内が始まりした。

 

17:10頃。新得での1時間20分の遅れは回復することなく終点の釧路に到着。

札幌から5時間20分となった長旅は終わりましたが、

特急おおぞら号のライバルである札幌〜釧路間の高速バスのダイヤを確認してみると、所要時間は約5時間半と、ダイヤ通りの運行でも今回大幅遅延となった特急おおぞら号と同レベル。

帯広以東に必ずしも高速運転に適さない区間が存在することを思えば、特急列車として十分な速達性を有し健闘しているという印象です。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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