西浦特急 鉄道と旅のブログ

鉄道・飛行機などで国内外を旅行した様子のほか、鉄道を中心に交通全般の話題を取り上げます。

祝開業!西九州新幹線かもめ号乗車記(博多15:54→武雄温泉→長崎17:22)

福岡県福岡市JR博多駅。今回はここから2022年9月23日に開業した西九州新幹線経由で長崎へ向かいます。

西九州新幹線のうち2022年9月の開業区間は佐賀県武雄市の武雄温泉駅から長崎駅までの間です。

博多から長崎へ向かう場合、武雄温泉駅までは西九州新幹線に接続する在来線特急リレーかもめ号を利用することになります。

乗車券については博多〜武雄温泉〜長崎で指定席を利用すると運賃2860円、指定席特急券3190円の計6050円となりますが、

2022年10月現在[おためし!かもめネット早特7]という企画乗車券がJR九州のサイトで発売されており博多〜長崎間を西九州新幹線経由で3200円で移動することができます。今回はそちらを利用しました。

博多駅改札口の発車時刻表。今回利用するのは博多15:54発の特急リレーかもめ41号。(下から2段目)

特急リレーかもめ号の行先は先述のように西九州新幹線乗り換えの武雄温泉駅ですが、長崎行の西九州新幹線かもめ号に接続する列車ということで、博多駅の行先表示は長崎になっています。

実際とは違う行先を掲げることには賛否両論ありそうですが、

武雄温泉行では長崎へ行ける列車であることが伝わらないうえ、武雄温泉駅で特急リレーかもめ号から下車した乗客の多くが長崎行の西九州新幹線かもめ号に乗り継ぐと想定されているため、これで良いのかも知れません。

博多駅4番線で発車を待つ特急リレーかもめ41号。

西九州新幹線開通前日まで博多と長崎を結んでいた在来線特急かもめ号でも活躍していた787系での運転です。

特急リレーかもめ号は787系のほか885系で運転される便もありますが、787系で運転される特急リレーかもめ号の普通車指定席を利用する際は、ビュッフェ車両として登場した出自を持つ4号車が、他の車両よりシートピッチが広くおすすめです。(写真は4号車車内)

上記のような格安の企画切符でもネットでの予約時に車両や座席を選択することができます。

定刻に博多駅を発車した特急リレーかもめ号は途中の鳥栖まで鹿児島本線を南下します。

路線名としては鹿児島本線ですが、2011年の九州新幹線全線開通以後、博多から鹿児島本線を下る特急列車は由布院方面へ向かう数本を除いて佐世保 長崎方面ばかりで、最近では長崎本線の一部のような印象もあります。

鳥栖で鹿児島本線と別れ、長崎本線最初の停車駅となる新鳥栖は九州新幹線との乗り換え駅でもあります。

博多から長崎方面へ向かう西九州新幹線の列車は、元々ここまで鹿児島方面へ向かう九州新幹線を走行し、新幹線よりレール間の幅が狭い在来線に合わせるため車輪の幅を変えたうえで在来線に直通。

佐賀駅などを通ったのち、武雄温泉駅で再び車輪間の幅を広げて、今回開通した西九州新幹線区間に直通することにより、博多〜長崎だけでなく、山陽新幹線にも乗り入れ新大阪〜長崎などを直通することが想定されていました。

しかしレールの幅に合わせて車輪の幅を変える技術と新幹線区間での高速運転を両立させることは容易ではなく、車両の開発を断念せざるを得なくなってしまいました。

新鳥栖から新幹線車両が直通する予定だった在来線の長崎本線を走行すること12分。16:33佐賀駅に到着。ここまで博多から約40分。

車輪間の幅を変える車両の開発断念後、新鳥栖〜武雄温泉間に現在の在来線とは別の新幹線規格の路線を新たに建設することも検討されていますが、

人の流れが長崎ではなく博多方向にむいている佐賀県からみれば、現在の在来線特急でも佐賀から40分程度の博多までの所要時間が、新幹線によって20分から25分程度に短縮されるメリットは大きくはなく、

それよりも新幹線規格の新線の建設費負担や、現在の長崎本線がその新たな新幹線の並行路線としてJRから経営分離される恐れがあることなど、デメリットのほうが大きいという見地から、新幹線建設には反対の立場をとり、佐賀県内(新鳥栖〜武雄温泉間)の西九州新幹線開通は現状では見通しが立っていません。

佐賀を出た列車は佐賀平野を快走。

16:44。永年親しまれた肥前山口から駅名が変更になった江北駅に到着。

江北駅を発車した列車は武雄温泉駅へ向かうため、西九州新幹線開通まで長崎行の在来線特急かもめ号が走行していた長崎本線と別れ佐世保線に入ります。

江北から先諫早までの区間、今回開通した西九州新幹線と、長崎本線とはかなり離れたところを通りますが、

博多と長崎を結ぶという機能の共通面から、長崎本線の江北〜諫早間については西九州新幹線の並行在来線とされ、新幹線開通後の扱いが問題となりました。

ここでは議論の末、一部を非電化化してランニングコストを下げたうえで、当面はJRがこの区間に残るローカル列車の運行をすることで決着したようですが、

全国に目をやると北陸新幹線が2024年に敦賀まで南進したのち小浜経由で京都、新大阪方面へ建設されることが決定したことに伴い、この新幹線経路にかからない滋賀県を通る湖西線が関西と北陸を結ぶという機能の共通面から北陸新幹線の並行在来線とする見解が示され、新幹線開通後の扱いが議論を呼んでいるようです。

さて江北を発車した列車は佐世保線を西進。江北から武雄温泉までは距離にして13.7km。特急リレーかもめ号は10分で走行します。

従来の佐世保方面への特急に加えて、長崎方面へ向かう客を乗せた特急リレーかもめ号が乗り入れるようになったこの区間は運行本数の増加に備え、西九州新幹線開業に合わせて複線化されました。

16:55。高架駅の武雄温泉駅に到着。

武雄温泉駅は西九州新幹線との乗り換えの利便のため、同じホームに在来線と新幹線が停車する構造になっています。

乗り換え時間は3分ですが、博多からの特急リレーかもめ号が定刻に到着すれば余裕を持って乗り換えることができます。

武雄温泉駅に到着した特急リレーかもめ41号(左)と長崎行西九州新幹線かもめ41号(右)。

西九州新幹線の車両は東海道新幹線などで活躍しているN700S系をベースとした車両6両編成での運転に統一されています。

運転本数が1時間に1〜2本、走行時間も途中駅に全て停車するものでも30分程度のため、4編成計24両のみで全運用が賄われるようです。

西九州新幹線かもめ号指定席車内。横4列の幅の広いシートで全席にコンセントが備わっています。

16:58。特急リレーかもめ41号からの乗り換えが終わり武雄温泉駅を発車した、西九州新幹線かもめ41号は淀みのない加速で短時間のうちに最高時速260kmに迫る速度に達しました。

西九州新幹線の長崎までの途中駅は嬉野温泉、新大村、諫早の3駅のみ。

全駅に停車する便、諫早と新大村に停車する便、諫早のみに停車する便がありますが、愛称はかもめ号に統一されています。

乗車中のかもめ41号は諫早のみ停車の速達便で武雄温泉から終点長崎まで69.6kmをわずか24分で走行します。

嬉野温泉駅付近を通過。嬉野温泉は今回の開通区間では唯一在来線接続のない駅です。

新大村駅を通過。西九州新幹線は在来線の佐世保線と大村線を短絡するような経路で武雄温泉から新大村に達したのち、大村線に沿うルートで諫早へ向かいますが、

西九州新幹線が佐世保から離れた経路で建設されたことから、佐世保と長崎を結ぶ機能を有する大村線は並行在来線の議論を免れたようてす。

17:13。武雄温泉から15分で長崎県第2の都市諫早に到着。在来線駅に併設される形で新幹線ホームが建設されました。

17:14諫早発車。次は終点の長崎です。

諫早〜長崎間の鉄道については長らく現在長与経由と呼ばれている非電化単線の路線が担っていましたが、昭和47年に長崎市街地に直結するトンネルを経由する市布経由の短絡ルートが開通。西九州新幹線開通前日まで長崎行の特急列車はそちらを走行していました。

そして今回新たに長崎まで西九州新幹線が開通したことで諫早〜長崎間には3本のJR九州の路線が並行して存在することになっています。

単線非電化の長与経由の旧線沿いは長崎のベッドタウンとして沿線開発が進み、長崎近郊では廃線議論の対象とならないレベルの利用があり、

後年に開通した市布経由の新ルートは博多〜長崎を結ぶ特急列車が新幹線開通で廃止になっても、佐世保〜長崎を結ぶ快速列車が大村線から乗り入れるなど幹線的機能が残っており、それらの列車を時間のかかる旧線へ迂回させることもできなかったということでしようか。

隣の佐賀県が新幹線が開通することで在来線がJRから切り離されてしまうという懸念に振り回されているという印象さえあることを思えば、

新規開通の新幹線と2本の在来線がJRの路線として共存しているのは皮肉にも思えます。

諫早から長崎までの所要時間は旧線経由の普通列車が50分程度、新線経由の快速列車が25分程度となっていますが、新幹線ではわずか8分。

長いトンネルを抜けると、そこはすでに斜面まで広がる長崎の市街地でした。

17:22。長崎駅新幹線ホームに到着。

博多〜長崎間は新幹線開通まで長崎本線経由の在来線特急かもめ号で約2時間でしたが、今回は博多を特急リレーかもめ号で発車してから1時間28分での到着。新幹線開通により約30分短縮された計算です。

ただ新たに武雄温泉での乗り換えが生じたことや料金値上げにより、かえって博多•福岡〜長崎を2時間〜2時間半程度で結ぶ高速バスに客が流れるのではないか。という見方もされているようです。

また広域的には、例えば関西方面から長崎へ向かう場合、これまで博多1回だった乗り換えが博多と武雄温泉の2回となり、30分の短縮も全体の所要時間を考えればインパクトは小さいと言わざるを得ず、場合によっては航空利用の増加に繋がるとも考えられます。

当初の計画とは違った形での開通となったことで様々な懸念材料に目が向きがちな西九州新幹線ですが、

博多から鹿児島中央までの全線開通から11年を迎えた九州新幹線も、当初は西九州新幹線と同じく博多に繋がらない新八代〜鹿児島中央間が先行開通し、新八代での在来線と新幹線のリレーが数年間続いていました。

しかしその間にも新幹線の一部開通による所要時間短縮の効果で博多〜鹿児島間の鉄道需要は増加していたようですし、

西九州新幹線も未開通の佐賀県内区間の動向に関わらず、当面は沿線を巻き込んだ積極策で開通区間の存在価値を高めていってほしい。というのが初乗りに訪れた一鉄道ファンとしての感想です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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新日本海フェリー「すずらん」乗船記(苫小牧東23:30→敦賀20:30)

札幌から新千歳空港へ向かう快速列車エアポート号で約30分。

JR北海道千歳線南千歳駅改札口。

今回はここから苫小牧東港行の連絡バスに乗車、苫小牧東港から新日本海フェリーの長距離航路で福井県の敦賀へ向かいます。

★当記事のフェリー、連絡バスの運賃、ダイヤや船内サービス等の記述は2022年9月の乗車・乗船体験に基づくものです。

苫小牧東港への連絡バスは改札口を出て右手の北口ロータリーから発車します。

北口ロータリーの連絡バス乗り場。

北口周辺に店舗などはなく、連絡バスが向かう苫小牧東港周辺も同様のため、乗船前に買物が必要な場合は、札幌など南千歳駅に向かう列車に乗車する前に済ませておいたほうが良さそうです。

なお南千歳駅周辺では一駅隣の千歳駅が千歳市の市街地に位置し、コンビニや飲食チェーン店、イオンなどが駅徒歩圏にあって、買物や連絡バスまでの時間調整に便利です。

新日本海フェリーの航路は、今回乗船する苫小牧東〜敦賀を直行する航路と、途中秋田、新潟に寄港して敦賀に向かう航路のほか、小樽〜舞鶴と小樽〜新潟の計4航路(毎日運航または曜日限定)がありますが、

苫小牧東港に発着する2航路に交通機関を使ってアクセスする場合、実質的にここ南千歳駅からの連絡バスが唯一の手段となります。

苫小牧東港発19:30の秋田新潟経由敦賀行の連絡バスは17:50、 苫小牧東港23:30発の敦賀直行便の連絡バスは21:50に南千歳駅前を発車します。

南千歳駅から苫小牧東港までは約40分、1200円てす。

★乗船をネットで予約し連絡バスを利用する場合は前日までに苫小牧東港ターミナルの事務所に電話連絡が必要となる旨、新日本海フェリーHPに記載がありました。

21:45頃。苫小牧東港から到着し待機していたバスが乗り場に入線。

筆者を含め10人弱の乗車がありました。

路線バスタイプの車両で一般道を進みますが、信号は少なく高速道路を走っているような感覚です。

22:30。苫小牧東港新日本海フェリーターミナル前に到着。

ターミナルビルとこれから乗船する敦賀行の船体。本日の敦賀行は「すずらん」での運航です。

ターミナルに入ると乗船手続きのカウンターがあり数人が列をなしていましたが、筆者は素通り。

新日本海フェリーの乗船をネットで予約した場合、支払後に写真のようなe乗船券のデータを受け取ることができ、

それを印刷したものを持参した場合は、乗船手続きは不要になり、乗船直前の改札時にQRコードを読み取り機にかざすだけで乗船することができます。(他の航路については確認していません)

エスカレーターでターミナル2Fへ。

写真右手が待合席。奥に土産物などを売る売店、左手に軽食コーナーとトイレがあります。ここで乗船開始までの時間を過ごします。

待合席の一角にはこれから乗船するすずらんの模型が展示してありました。

「すずらん」は旅客定員613名、全長224.5m、総トン数17400トンで、

トラック158台・乗用車58台を積載することができますが、

特筆すべきは航海速力で27.5ノットは時速換算で約50km。

小樽~舞鶴航路などの運航に入る「はまなす」「あかしあ」の30.5ノットには及ばないものの、国内最速級の速力で、かつては2晩かかっていた北海道と若狭湾周辺(舞鶴・敦賀)を1晩・24時間以内で結んでいます。

22:50。係員の案内で乗船開始。

QRコードを読み取ってもらい、奥のエスカレーターでさらにワンフロア上がり、 

船体のエントランスへとつながる桟橋へと進みます。

船員さんの出迎えを受け乗船。

エントランスに掲示されていた苫小牧東〜敦賀航路の航路図と時刻表。

敦賀まで948km、23:30の出港から明日20:30到着まで21時間の船旅の始まります。

今回はステートAという個室を利用します。個室利用の場合、乗船後まずフロントに立寄りルームキーを受け取ります。

部屋番号は新日本海フェリーのサイトから予約する際に指定できました。

また利用するステートAは定員2人の個室ですが、新日本海フェリーでは指定された繁忙期を除いて2人部屋を1人で利用する場合でも追加料金は不要となっており、敦賀までの支払い額は22800円でした。

受け取ったルームキー。

船体中央部の吹き抜け。

客室は4F・5F・6Fの3層構造で、4Fはツーリストと呼ばれる最もリーズナブルな客室やフロント、売店など。

5Fは今回利用するステート個室とレストランや喫茶コーナーなど。

6Fはスイートなど最上級個室と浴場・スポーツルームなどが配されています。

階段でワンフロア上がり5Fのステート個室へ。

ステート個室の部屋の鍵はオートロックで、ルームキー差し込んで解錠。

ステートA個室内。一般的なビジネスホテルのシングルルームと同程度の広さがありそうてす。

デスク周り。冷蔵庫、テレビや茶器も用意されています。

写真左手にはトイレと洗面台があります。

シャワーや浴槽はステート個室にはなく、6Fの浴場を利用することになります。

出港・離岸の様子を眺めようと5F後方のデッキへ出て見ましたが、ちようど「出港が遅れる見込み」との放送があり、

周囲を見渡すと、まだバイクなどの乗船が続いているようでした。

苫小牧東港は市街地から離れているため周囲は暗く、次第に街明かりが遠のいていく船旅の始まりを印象づける光景を見ることは難しいかも知れません。

出港を待たず自室に戻りました。

深夜の出港ということで、船内の散策は明日に回し就寝することに。

ベッドサイドには室内の明かりを調整できるスイッチ類と目覚まし時計が内蔵されたテーブルが備わります。

ベッド幅がやや狭いのと、シャワーや浴槽が室内にない以外は、市中のビジネスホテルと比べても遜色ないサービス水準といえそうです。

乗船前に確認した航行時間帯の日本周辺の波予報。

南海上から接近する台風の影響で太平洋側は大変なことになっていますが、日本列島が盾になり、日本海側は波が低いことを示す濃い青色の海域が広がっています。

ただ同じ新日本海フェリーの航路でも小樽発着の航路と違い、苫小牧発着の航路は津軽海峡までは太平洋側を航行します。

その区間は台風の影響で波高2m程度の水色となっており、多少揺れを感じながらの就寝となりました。

 

朝8時前に起床。

予約したステートA個室はインサイドと呼ばれる部屋で、部屋には窓があり光は差し込みますが、

海は見えず、別の通路沿いの部屋と向き合う構造になっています。

窓には角度がつけてあり向かいの部屋から容易に室内が見えないように配慮されているようです。

朝日の差し込む船内を歩きレストランへ。

船内レストラン「プロヴァンス」は朝、昼、夕食時間に合わせた営業で、朝食は8時から1時間。

店内は空いていました。

 注文はテーブル上の端末を使ってセルフサービスで行います。

レストラン入口には各食事毎のメニー写真と価格がならんでおり、ある程度予算やメニューの見当をつけてから入店できるようになっていました。

洋食の朝食プレートを注文。

洋食でもパンをご飯に替えることができるようです。

精算は注文内容が紐付けられたテーブル備え付けのバーコードを出口の精算機にかざして支払います。クレジットカードも利用できました。

レストランの朝食営業は9時までですが、そのあと9時半からレストラン隣の喫茶コーナーが営業開始となり、こちらでもカレーなどの軽食を注文できるようです。

「ゆっくり寝て朝食と昼食は兼用で」という方には便利かも知れません。

さて5F後方のレストランを出たのち、ステートルームが並ぶ通路を通り抜け、5F最前方のフォワードサロン「ラルクアンシェル」へ。

前面展望を楽しむことができるサロンでソファなどが並びます。

窓から前方を覗くと、まるで瀬戸内海のように穏やかな日本海を時速50kmの速力で進んでいく様子を一望できました。

フォワードサロンから一旦部屋に戻り寛いでいましたが、

「あと約15分で昨夜敦賀を出港し苫小牧東へ向かう姉妹船と行き違います」との船内放送に誘われ後方デッキへ。

10:15頃。昨夜23:55に敦賀港を出港した姉妹船と行き違い。

海しか見えない外洋上で大型船が汽笛を鳴らし合いながら行き違う様子は、その場に居合わせなければ分からない感慨があるものです。

両船の出港到着時刻に大きな違いはないため、この行き違いは21時間の道のりの約半分が終わったことを意味します。 

姉妹船との行き違いから2時間。昼食のため再びレストランへ。

朝とは違う後方デッキを望むカウンター席で、味噌バターコーンラーメンをいただきました。

午前は部屋で過ごす時間が長かったため、食後は6Fのスポーツルームで軽く運動することに。

スポーツルーム室内。

ウォーキングマシーンの1台は使用中止で、もう一台は先客が使用中でしたが、

筆者が室内を眺めていると譲ってもらえたので、自身も次のお客さんが見えるまでと思い歩き始めました。 

前の景色に集中して歩いていると、まるで海上を歩いているような他では味わえない感覚になります。

時速4kmで約15分。ちょうど1km歩いたところで次のお客さんに譲って終了。

食事→運動のあとは入浴。

ステートルーム備え付けのタオルは洗面台横のハンドタオルのみだったため、フロントで貸しタオルを借りることにしました。

貸し出し時間に制限はなく「下船までに返してくれれば良い」とのこと。

6Fの浴室。

乗船直後就寝前の入浴も考えましたが、海を望む開放的な浴室は気持ちよく、昼間の利用は正解だったかもしれません。

入浴後はマッサージチェアでリラックス。

今回のように揺れの少ない航海であれば「乗船前より元気になって目的地に到着できるのではないか」そんな気分にすらなってきます。

朝から長らく通信不可を示していたスマホのアンテナマークが何本か立ち、外を確認すると小島がいくつか見え、その奥には陸地らしき影も見えました。

航路図と時刻表、現在時刻を照らし合わせると、船はすでに石川県の能登半島沖まで進んでいるようです。

18時頃日没。船は石川県沖から福井県沖へと進み長い航海も残すところあと約2時間。

そのままレストランへ行きディナータイム。

かつての寝台特急の食堂車を想起させる窓側席は残念ながら全て埋まっていました。

レストランでの3回目の食事はハンバーグ定食。

朝食プレート950円、昼食の味噌バターコーンラーメン800円、夕食のハンバーグ定食1200円。

一般的には割高な印象もある船内レストランですが、3食で2950円、1食あたりでは1000円以下で済ませることができました。

なお船内には今回利用したレストラン「プロヴァンス」とは別に「グリル・マルゴー」というレストランもあり、

「予算は気にしない」という方は予約制でコース料理などさらに充実した食事を楽しめるようです。

夕食を終えると下船まで1時間余り。

下船前に乗船記念の一つでもと思い4Fフロント隣の売店へ。

ロゴ入り300円のタオルを購入。

ルームキーは回収されなかったので、タオルの袋に一緒に入れ乗船記念にすることにしました。

入室から20時間以上を過ごした自室ステートA個室。

到着1時間前から静かなBGMが船内に流れ、それに促されるように荷物をまとめて、到着下船案内の放送を待ちます。

到着時刻が近づき、航海中何度も訪れた5F後方デッキへ行くと、進行方向を変え敦賀港への接岸作業が行われているところでした。

徒歩での下船は、乗船時にも通った写真左奥の通路からとなりますが、

車やバイクのお客さんが車両甲板へ向かうと船内は閑散となりました。

苫小牧東港へのアクセスが難しいこともあり徒歩乗船の人数は限られているようです。

20:30。ほぼ定刻に桟橋が開放され下船。

桟橋の途中で振り返り21時間お世話ななった「すずらん」の船体を撮影。

斬新な敦賀港ターミナルビル。

ターミナル前から発車する敦賀駅行の連絡バス。敦賀駅までは約15分・350円です。

20:50頃。2024年の北陸新幹線開業を見越してのことかホテルが立ち並ぶ敦賀駅前に到着。南千歳駅から23時間、札幌からならほぼ24時間での到着です。

敦賀は福井県南端の都市で北陸地方に位置しますが関西(近畿)地方に隣接しており、

敦賀駅からJRの特急サンダーバード号に乗車すると京都まで約1時間、大阪まで約1時間半で行くことができます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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【普通列車0本の特急街道を駆け抜ける】特急おおぞら5号乗車記(札幌11:50→釧路15:51)

JR北海道札幌駅。

今回はここから特急列車で釧路へ向かいます。

 

札幌駅東改札口。

今回乗車するのは札幌11:50発。特急おおぞら5号釧路行。

終点釧路到着予定時刻は15:51。

走行距離348.5km、所要時間4時間1分のロングラン特急です。

 

乗車日の特急おおぞら5号は先頭1号車がグリーン車、2〜4号車が指定席、5、6号車が自由席の6両編成。

長期間の乗車に備え指定席を押さえておきたいところでしたが、

今回は関空からピーチで渡道し、指定エリア内の特急自由席が乗り放題となる「ピーチひがし北海道フリーパス」を利用したため、早めに発車ホームへ向かい、自由席の号車札の下に並びました。

 

札幌駅8番線に入線した特急おおぞら5号。

車体傾斜装置を備えたキハ261系での運転てす。

 

6号車自由席車両のシート。

 

北の大ターミナルらしく車内で発車を待つ10分ほどの間にも多くの列車が発車していきます。

 

11:50札幌駅発車。

 

札幌発車から10分。札幌市営地下鉄東西線も乗り入れる札幌の副都心「新札幌」に停車。

札幌から函館方面や帯広・釧路方面へ向かうすべての特急が停車しますが、札幌行の便からの下車に比して、札幌発の便への乗車は少ない印象があります。

 

札幌・新札幌から次の停車駅南千歳までは、新千歳空港へ向かう快速列車が12分間隔で運転される都市近郊区間です。

時刻は正午過ぎ。

「列車が北海道らしい雄大な自然の中へと踏み出す前に腹ごしらえ」ということで、

乗車前に札幌駅で購入した人気駅弁「海鮮えぞ賞味」を開封。

北海道の海の幸を堪能できる駅弁です。

 

列車は千歳市内の高架線へ。

高架区間にある千歳市の玄関千歳駅には快速列車は全て停車しますが特急は通過。

千歳は札幌の衛星都市でここから道内各地へ向かう需要は少ないのかも知れません。

 

12:25。南千歳停車。

帯広や釧路への直行フライトがない地域から道東方面を目指す場合、

新千歳空港駅から快速エアポートで1駅3分の当駅で特急おおぞら号を乗り換えることが有力な選択肢となるようで、

札幌から空いた状態だった車内は、ここからの乗車で自由席は7〜8割程度の座席が埋まりました。

 

南千歳を発車した列車は南から東に進路を変え、石勝線に入ります。

石勝線は札幌と道東の短絡路線として昭和56年に全線開通した比較的新しい路線です。

全線開通により札幌〜帯広・釧路方面の走行距離は旧来の滝川回りに比べ40km以上短縮され、列車の大幅な所要時間短縮が実現しました。

西日本で言えば京阪神と鳥取の高規格短絡ルートとして開業した第3セクターの智頭急行線が、国鉄時代に開業しJRの路線として引き継がれた。というイメージでしょうか。

 

石勝線に入り車内では「野生動物が多く出没する地域を走行するため衝突回避のため急ブレーキを使用することがあります」と注意喚起の車内放送が。

実際に今回の乗車でも、線路上の鹿との衝突を避けるため急ブレーキがかかり停止寸前まで減速。そのあと線路上を逃げる鹿の後を追ってしばらく徐行運転という場面がありました。

 

石勝線は全線単線ですが高速運転可能な高規格路線で、

また積雪対策として写真のようなシェルターに覆われた信号場が多数あって、列車のスムーズな行き違いを可能にしています。

なお道東への短絡路線として特急列車が頻繁に運行される石勝線ですが、

沿線人口は希少で石勝線内で完結するローカル需要はごく限られています。

そうした事情を反映し、石勝線南千歳〜新得間のうち、新夕張〜新得間89.4kmの区間に途中駅は「占冠」と「トマム」の2駅しかなく、平均駅間距離は実に30km。

同区間に普通列車や快速列車の設定はなく、特急おおぞら号6往復と特急とかち号5往復のみの運行となっています。

「駅間距離が30kmあり、通過する旅客列車は全て特急」という状況は、

個人的には都市周辺以外の人口密度が極めて少ない北海道ならではの列車の運行スタイルという印象を最近まで持っていましたが、

北海道以外でも「同じような運行スタイルが検討されてもよいのではないか」と感じる区間。

具体的には、利用の大半は特急列車による長距離移動の通過需要で、数kmおきに設けられた各駅に停車する普通列車の需要はバスで十分輸送可能な程度しかないが、

その普通列車を運転するために、多くの駅が存置され、普通列車運転のための追加の行き違い設備や車両などの維持が必要になっている。

JR九州日豊本線やJR四国土讃線の一部区間など、そんな区間が増えてきている印象があります。

 

13:35頃。トマム着。所定ダイヤなら南千歳から約1時間。

スキーシーズンではなく、中国など外国からの観光客もほぼ見られない現状でも、

ホームが埋まるほどの多くの観光客が下車する様子が見られました。

 

石勝線区間の走行を終え、石勝線開通前の道東へのメインラインであった滝川からの根室本線と合流し、13:58。新得に到着。

 

新得駅到着後、新得駅と次の十勝清水駅の間で線路に倒木があつたため、しばらく停車すると放送があり、気分転換に花壇の植栽が美しいホームへ。

 

ホームで列車の写真を撮影していると、車内に戻って発車を待つよう放送があり、それに従い一旦車内に戻ったものの、

復旧まで時間がかかることがわかったのか「駅の売店などもご利用いただけます」と案内が変わったため、再び下車し駅舎内を散策。

駅売店の店員さんは突然押し寄せたお客さんに、喜んでいるというより戸惑っているように見えました。

 

新得駅の所在地は北海道上川郡新得町本通北1丁目。1日の利用者数221人。

石勝線と根室本線の実質的分岐点として機能してきましたが、 

根室本線は2016年8月の災害で一部区間が不通になり、復旧の見通しが発表されないまま、新得~富良野間のバス転換に向けた協議が行われています。

現在は駅前から代替バスが運行されています。

 

長時間停車ののち「復旧作業が終了し間もなく運転再開します」と放送があり、

列車は新得駅を約1時間20分遅れで発車。

新得駅到着時点ですでに「鹿の後追い」と対向列車遅延で10分程度遅れていたので、新得駅では1時間10分程停まっていたことになります。

 

新得発車から約30分。道東最大の都市「帯広」市街地の高架線へ。

 

15:40頃。帯広に到着。

札幌や南千歳からの乗客が多数下車する一方、ここから乗車して釧路方面を目指す乗客も少なくないのが印象的でした。

北海道の首都たる札幌へは道内各都市から鉄道以外の交通手段も用意されている一方、帯広〜釧路といった地方都市間の移動となると選択肢が限られているのかも知れません。

 

15:55頃停車の池田駅では新型H100系で運転の普通列車と行き違い。

 

浦幌付近からは内陸の曲線区間がしばらく続き、列車の速度も石勝線区間の半分近くまで低下します。

同じJR北海道でも特急北斗号が走る札幌〜函館間の場合、直線または半径800m以上の緩いカーブが全体の50%以上を占めるのに対し、

特急おおぞら号が走る札幌〜釧路間では30%程度となるようです。

 

厚内駅を過ぎると内陸から一転、海岸線へ。

 

海岸線に出ても所々に急曲線があり速度は上がりませんが、

国内の他地方では見られない、荒涼とした海岸周辺の風景に、道東の列車旅を実感する区間でもあります。

 

16:50頃。最後の停車駅白糠に到着。

かつてこの駅と北進駅の間33.1kmを結んでいたローカル線「白糠線」は昭和47年の全線開通からわずか11年後の昭和58年に利用不振から全線廃止に至っています。

廃止時の運転本数は1日3往復。100円を稼ぐのにかかった経費は2872円だったとのこと。

計算方法が異なるのかもしれませんが、現在JR路線として運行されているローカル線の中には、それよりも遥かに営業成績の悪い路線が多数存在しているようです。

 

 

白糠を発車した列車はやがて釧路の市街地に入り速度を回復。

高速で通過した写真の駅は大楽毛駅。

読みは「おたのしけ」難読ではないが強く印象に残る響きです。 

車内では昔日のローカル線で聞いた間延びしたオルゴールと同じ曲とは思えない、

軽快な電子音の「アルプスの牧場」に続き終点釧路駅からの乗り換え案内が始まりした。

 

17:10頃。新得での1時間20分の遅れは回復することなく終点の釧路に到着。

札幌から5時間20分となった長旅は終わりましたが、

特急おおぞら号のライバルである札幌〜釧路間の高速バスのダイヤを確認してみると、所要時間は約5時間半と、ダイヤ通りの運行でも今回大幅遅延となった特急おおぞら号と同レベル。

帯広以東に必ずしも高速運転に適さない区間が存在することを思えば、特急列車として十分な速達性を有し健闘しているという印象です。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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近鉄の観光特急「あをによし」乗車記(京都13:20→近鉄奈良13:54)

JR京都駅。東海道新幹線中央改札口。

 

今回はその真向かいに改札口を構える近鉄の新しい観光特急「あをによし」に乗車し奈良へ向かいます。

 

自動改札機にSuicaをタッチして改札内に入ると1番線ホームにはすでに「あをによし」の編成が入線していました。

 「あをによし」は今年4月に運行を開始した観光特急で、大阪難波〜近鉄奈良間1日1往復、京都〜近鉄奈良間を1日3往復のダイヤで運行されています。

今回は京都駅を発車する便としては2便目にあたる13:20発の近鉄奈良行に乗車します。

 

「あをによし」先頭車両。

「あをによし」は4両編成で、車両は近鉄の特急車両として長年使われていたものに大掛かりな改造を施し、新たに奈良への観光特急に仕立てられたものです。

先頭車両の前面に輝くエンブレムは、奈良時代に縁起の良い鳥として描かれた文様「花喰鳥」をイメージしています。

その他にも「あをによし」の車両側面や車内には奈良に都が置かれた時代の文化をイメージした装飾を至るところに見ることができます。

 

運転開始以来、満席での運行も珍しくない「あをによし」ですが、今回は近鉄の特急列車予約サイトで3号車の座席に空席を見つけることができました。

1・2・4号車のドアは車端部にありますが、3号車だけは移設のうえバリアフリー対応の少し幅の広いドアが設けられており、車端部にはバリアフリートイレなどが設けられています。

 

「あをによし」3号車車内。

4両編成の「あをによし」の車両のうち1号車、3号車、4号車は、全ての座席が2つのシートが向き合う形のツインシートとなっています。

 

今回はツインシートを一人で利用します。

「あをによし」に京都〜近鉄奈良間で乗車する場合、Suicaなどでも支払える普通運賃640円のほか、特急料金520円、特別車両料金210円が必要で計1370円となります。

ただし相席での販売は想定されていないため、1人で乗車する場合はツイン席のもう一席を「買い取る」必要があります。

ただその場合は、もう一席分の運賃は不要で、特急料金、特別車両料金の半額を支払えばよいことになっています。

それぞれの料金は半額で260円、110円となり「買い取り」に必要な支払いは370円。計1740円でツインシートを押さえることができます。

★普通運賃をSuicaなどで支払う場合、別料金(特急料金と特別車両料金:1人2席利用時)の支払いは1100円です。

 

ツインシートに座り車内を撮影。

対になっているシートとの間には大きなテーブルがあり、その上に置かれたブルーのライトが車内全体のアクセントになっています。

京都〜近鉄奈良間の所要時間は30分程度とあって、シートにはリクライニングなどの機能はありませんが、掛け心地のよいハイバックシートで、各座席にはコンセントが設けられてきます。

 

なお同じツインシートでも、進行方向右側と左側でシート配置が異なっており、

京都発奈良行の場合、進行方向左側のツインシートは窓に向かって斜めに設置され、三角形のテーブルを囲むような形状になっています。

料金等は右側のツインシートと同じです。

(本記事の一部の写真は近鉄奈良からの復路乗車時に撮影したものです。)

 

定刻13:20に京都駅を発車。

東海道新幹線の高架をくぐると、間もなく右手に京都のシンボルの一つである東寺の五重塔が見えます。

「あをによし」など特急列車は停まりませんが、上の写真の撮影地点からすぐのところに京都駅から1つ目の駅として東寺駅もあり訪問には便利です。

 

京都駅発車後の車窓をしばらく眺めてから2号車の販売カウンターへ。

行列ができていましたが、スタッフの皆さんが手際よくオーダーに対応しており、数分で所望の品を手にすることができました。

 

販売カウンターのショーケースに並ぶ「バターサンド」と「大仏プリン」は販売品の代表格。

車内では売り切れを心配する声も聞こえてきましたが、十分な数が用意されているように見えました。

 

販売カウンターでは記念乗車証も配布されています。

 

記念乗車証裏面。

あをによし 奈良の都は 咲く花の

にほふがごとく 今さかりなり

 

2号車の販売カウンターに隣接するエリアには、4人掛けのサロンシートが3区画設けられています。

区画内を覗くとゆとりあるスペースで応接間のような雰囲気でした。

 

その他の車内設備として4号車の車端には奈良の観光ガイドなどを並べたミニライブラリーが設けられています。

 

バターサンドはドリンクとのセット販売でした。

3号車の自席に持ち帰り備え付けのテーブルでいただきます。 

 

バターサンドは「シェラトン都ホテル大阪」の考案で、1枚は「レーズン」もう1枚には「マロン」が入っています。

 

バターサンドを口に運ぶうち列車は木津川の鉄橋を通過。

京都発車から20分弱ですが、すでに終点奈良までの行程の約半分を走っていることになります。

数十年間使われてきた車両を改造した観光特急とはいえ、その足取りは軽く列車は100km/h前後と思われる速度で走行します。

もう少しゆっくり走ってくれても良いのにと思わなくもありません。

 

大阪方面からの路線「奈良線」と合流する大和西大寺駅に進入。

 

大和西大寺駅を発車した列車は、西暦710年から都が置かれた平城京の跡地を横切るように走ります。

進行方向右手の車窓には復元された朱雀門が、

 

左手には南門や太極殿の復元が進んでいる様子を眺めることができます。

 

平城京跡を抜けた列車は終点奈良到着を前に奈良市街地の地下線に進入。

地下トンネルに入ると奈良時代をモチーフにした車内の造作の美しさが際立ちます。

 

13:54。近鉄奈良に到着。京都からわずか34分のミニトリップはあっけなく終了しました。

 

近鉄奈良駅掲出の駅周辺地図。

初めて奈良を訪れる方や修学旅行以来2度目という方の多くが、まず向かうであろう東大寺周辺(地図左下)は近鉄奈良駅からだと約1km。

これがJR奈良駅だと2km程度となり「奈良観光には近鉄が便利」と言われる由縁のようです。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

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【9月で運転終了】観光特急「36ぷらす3長崎ルート(金の路)」乗車記(長崎17:30→博多21:05)

2022年9月23日の西九州新幹線開業が間近に迫るJR九州長崎駅。

 

今回はここからJR九州の観光特急「36ぷらす3」に乗車します。

★★本記事記載の運賃、ダイヤなどは2022年5月の乗車日現在のものです。

 

「36ぷらす3」は毎週木曜日~月曜日にかけて九州各地を巡る観光特急で、全席がグリーン車指定席です。

乗車のみのグリーン席プランのほか、ランチプラン、ディナープランなど食事付きのプラン、宿泊付きの旅行プランなど多彩な利用方法が用意されています。

その中でもグリーン席プランは価格が最も安く、空席があれば一般の特急列車と同様に「みどりの窓口」やJR九州のサイトから予約購入することもできるなど、最も気軽に「36ぷらす3」の魅力に触れることができるプランです。

今回はそのグリーン席プランで長崎から博多まで乗車します。

乗車のために支払った費用は、運賃2860円+グリーン券6500円の計9360円で、乗車2週間ほど前にJR九州のサイトから予約決済。九州到着後に博多駅の券売機で発券しました。

 

長崎駅3番線ホームで発車時刻を待つ「36ぷらす3」の黒い車体。 

 

「36ぷらす3」の車両はかつて九州新幹線開業前の博多〜西鹿児島間で特急つばめ号として活躍した787系の6両編成を大幅にリニューアルしたものです。

博多寄りから1号車と2号車がグリーン個室、3号車がグリーン個室と販売カウンター、4号車がマルチカー(フリースペース)、5号車と6号車がグリーン席車両となっており、

6両編成での定員わずか105人という数値からも贅沢な車内の造りを想像することができます。

 

今回は5号車に乗車します。

車体にも大きく描かれている36+3という変わった列車のネーミングは、九州が世界て36番目に広い島であることなどにちなんだものです、



5号車グリーン席車内。

同じグリーン席車両でも6号車は畳敷きになっており、靴箱を備えたデッキで靴を脱いで客室内に入る斬新な造りになっています。

 

グリーン席の座席は九州新幹線で使われているものがベースで、窓は左右に動かす障子の向こうに上下に動かす簀子が透けて見えています。

 

お隣4号車マルチカー車内。

1両全てがフリースペースとなっています。

天窓を思わせる明るい天井と広々とした空間が列車内にいることを忘れさせます。

 

マルチカーの中央部にはソファが置かれ、背後には「LOUNGE BAR39」の金色のロゴが。乗車記念撮影の格好のスポットとなっていました。

 

さらにお隣3号車には販売カウンターがあり、乗車記念品や軽食、アルコールを含む飲料などを購入できます。

この3号車は、先述の博多〜西鹿児島間の特急つばめ号として、この車両が運転されていた時代にビュッフェとして使われていた車両で、間接使用に照らされたドーム型の天井などは当時からのものです。

特急つばめ号が廃止されて以降は、一般の座席車両に改造され、他の特急列車に使用されていましたが、

「36ぷらす3」運転にあたり、ビュッフェとして使われていた当時に近い形に復元されたようです。

なお3号車より前の1号車、2号車のグリーン個室席については別途旅行商品などとして発売されていますので、5号車、6号車のグリーン席の乗客が利用できるのは、ここ3号車までとなります。

 

3号車の冷蔵庫には酒類を含む飲料が並んでいました。

 所望の品が売り切れるのを心配してか、3号車販売カウンターは長崎駅発車前から長い行列ができる盛況でした。

 

3号車の販売カウンターで購入したカレー、かつサンド、炭酸水。

購入した飲食メニューは自席のほか、4号車のマルチカーのテーブル席でいただくこともできます。

マルチカーでは車内イベントなども催されますが、それ以外の時間帯については、

5号車、6号車のグリーン席車両と販売カウンターがある3号車の中間という連結位置から考えても、

グリーン席プランの利用者が、食事や談笑の場所として活用するのがふさわしいのではないか。と感じました。

 

乗車記念に購入したクリアファイル。

手揚げ袋は有料ですが、それ自体が乗車記念品になりそうです。

 

マルチカーのの障子は縦方向に開きます。横方向のグリーン席の障子も含め、開口部は窓全体の半分で、単純に考えれば車窓を楽しむのには適していませんが、

敢えて車窓を「覗き見る」ことを意識した仕掛けとも言われているようです。

 

障子を開けて車窓を「覗き見る」と、有明海越しに島原半島と雲仙普賢岳を望むことができました。平成初期の大噴火からすでに30年以上が経過しています。

 

有明海に面した小長井駅でしばらく運転停車。到着と同時に長崎方面へ向かう普通列車が発車していきます。

 

食後もしばらく居座ったマルチカーには大きなモニターがあり、九州の観光案内ビデオがエンドレスで流されていました。

5分、10分と続く運転停車中も手持ち無沙汰な時間の長さを感じることはありません。

 

小長井駅を発車し次の肥前大浦駅との間で長崎県から佐賀県に入った列車は、その先の信号場で特急列車と行き違うため再び運転停車。

特急かもめ号が約2時間で結ぶ博多〜長崎間を「36プラス3」は約3時間半をかけゆっくりと走ります、

 

 長崎行の特急かもめ号が隣の線路を通過すると発車。

振り返ると先程隣の線路を駆け抜けた特急かもめ号が、湾に沿う線路を走り去る姿が見えていました。

このように長崎本線の有明海に沿う区間は急カーブが連続し、長崎〜博多間の高速運転のネックとなっていましたが、

2022年9月に西九州新幹線が開業すると、長崎〜博多間の鉄道輸送は、佐世保線武雄温泉駅での特急と新幹線の乗り継ぎがメインとなり、この区間を走る特急列車はなくなります。

また36ぷらす3についても、乗車中の長崎〜博多間の運転は9月19日をもって終了となることが発表されています。

 

肥前浜駅に到着。

19:09〜19:24まで15分の停車時間がありホームに降りることができます。

 

九州各地を巡る「36ぷらす3」の各行程では、途中駅のホームや駅舎でイベントや物販などが行われる「おもてなし駅」が設定されており、長崎~博多ルートでは当駅が該当します。

 

長崎本線肥前浜駅は長崎本線と佐世保線が分岐する肥前山口駅から4駅目。

味わい深い木造駅舎が乗客を出迎えます。

 

肥前浜駅での「おもてなし」は19時過ぎという停車時刻に相応しく「お酒」。

 

駅舎の一角は「HAMA BAR」として開放され地酒の試飲や販売が行われていました。

 

肥前浜駅での途中下車を終え、ここでようやく予約していた5号車の自席へ。

 

 各座席には沿線の見どころなどを集めたリーフレットと記念乗車証などが用意されています。

 

「36ぷらす3」は木曜日に博多を発車、熊本経由でその日の夕方に鹿児島へ、翌日以降、宮崎、大分と周り日曜日の夕方に博多に戻ったのち、月曜日に長崎を往復する運転スケジュールになっています。

「金の路」と名付けられた長崎ルートのうち復路の長崎→博多は全行程で唯一の夜間走行となります。

肥前浜駅を発車する頃には日も暮れ、車窓が闇に包まれると、視線は否応なしに車内の凝った造作に惹きつけられます。

「36ぷらす3」車内の至ることろには、福岡県の伝統工芸「大川組子」の内装が施されています。

 

19:49佐賀に到着。20:05の発車まで16分停車。

 

19:54。向かいのホームに佐世保からの特急みどり28号が到着し、2分停車ののち博多へ向け先に発車していきました。

特急みどり28号の博多着は20:38で、博多まで「36ぷらす3」に乗っていたのでは間に合わない、博多発21:09の新大阪行最終の山陽新幹線に乗り継いで、阪神地区へその日のうちに帰ることが可能になります。

 

「36ぷらす3」は停車駅間の区間乗車も可能です。

今回は 長崎→佐賀間の区間乗車が多かったようで、佐賀~博多の最終区間は空席も少なくない状況に。

 

佐賀駅発車後にクルーから配られたアメ。

販売カウンターで乗車記念品として販売もされていました。

 

鳥栖から鹿児島本線に入り列車は福岡の市街地へ。 

終点博多からの乗り換え放送が始まりました。

 

21:05。終点博多駅に到着。

ここから列車を乗り継ぐと九州新幹線で鹿児島中央や熊本、在来線特急で大分や長崎のほか、山陽新幹線区間運転のこだま号で福山まではその日のうちに帰ることができます。が。

 

木曜日の朝から九州を巡り、5日目の月曜日の夜に全行程を終え博多駅に戻ってくる「36ぷらす3」の運転スケジュールを考えると「その日のうちにどこまで帰れるか」というような慌ただしい発想は似つかわしくないようにも感じられます。

21時ではまだ宵の口の大都会福岡のこと、

飲食店を訪れたりホテルにチェックインして、列車で巡った九州旅行を回想し、翌日以降ゆったりと帰路につきたいものです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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快速アクアライナー惜別乗車記(益田11:14→米子15:08)

f:id:nishiuraexp:20220223134959j:plainJR西日本山陰本線益田駅。

 

f:id:nishiuraexp:20220223135043j:plain益田は島根県の西端に位置する人口5万の都市で、鉄道では山陰本線と山口線の分岐点となっています。

駅舎こそ小さいものの近年再開発された駅前にはホテルやマンションが並び都会的な様相となっています。

 

f:id:nishiuraexp:20220228225903j:plainさて今回は、2022年3月のダイヤ改正で廃止された山陰本線の益田〜米子間(写真路線図のオレンジ色の区間)の快速列車アクアライナーに、廃止直前に惜別乗車した際の乗車記となります。

##本記事中の意見、提案に類する記載は、あくまで一鉄道ファン、一乗客として感じたこと、考えたことを述べているだけですので、その点ご了承下さい。##

 

f:id:nishiuraexp:20220228225959j:plain益田駅の山陰本線時刻表。

右が米子方面で、赤字が特急列車、オレンジで記された9:10、11:14、17:02の3本が快速アクアライナーです。

 

f:id:nishiuraexp:20220228230056j:plain山陰本線の益田〜米子間を走る特急列車や快速アクアライナーの停車駅は列車毎に異なっており、時刻表の下段には各列車の停車駅一覧がありました。

 

f:id:nishiuraexp:20220223135158j:plain今回乗車したのは益田11:14発の快速アクアライナー米子行です。

 

f:id:nishiuraexp:20220228230227j:plain益田駅3番線で発車を待つ快速アクアライナー。キハ126系2両編成。

快速アクアライナーの運転区間である山陰本線の益田〜米子間は、ほとんどが島根県に属しており、同区間では1999年から2001年にかけ、主として島根県が出資する高速化事業が施工されました。

高速化事業のメニューには、軌道の改良だけでなく、その効果をより高めるため、快速列車向けのキハ126系と特急列車向けのキハ187系の導入も含まれており、

快速アクアライナーは、今回の廃止に至るまで全列車がその際に導入されたキハ126系で運転されました。

 

f:id:nishiuraexp:20220228230326j:plainキハ126系車内。

暖色系の内装に4人掛けのボックスシートが並びます。

 

f:id:nishiuraexp:20220228230417j:plain車端部はロングシート。

 

f:id:nishiuraexp:20220228230510j:plainボックスシートはシートピッチに余裕があり、比較的新しいJR型車両でありながら、どこか国鉄急行型気動車の車内を彷彿とさせます。

 

f:id:nishiuraexp:20220302123805j:plain11:14。2両合わせても10人に届かない乗客を乗せ、益田を定刻に発車。

快速アクアライナーの中には益田〜浜田間が各駅停車となる便もありますが、

乗車便については出雲市までの全区間が快速運転となっており、つぎの停車駅は岡見。

 

f:id:nishiuraexp:20220302123848j:plain益田の市街地を抜けると間もなく日本海の海岸線に出ました。

 

f:id:nishiuraexp:20220302124007j:plain時速約40kmまで減速して駅を通過中。

先述の高速化事業では、通過列車が減速を必要としないよう、多くの駅で分岐器の交換、改良が施工されましたが、

駅が曲線に隣接していて、その曲線でどのみち減速が必要な場合は改良の対象から外すなど、費用対効果が強く意識されたようです。

 

f:id:nishiuraexp:20220302124127j:plain 11:30岡見着。

益田から16.9km、時刻表上の所要時間17分、平均時速は60kmと計算されます。

 

f:id:nishiuraexp:20220302125126j:plain岡見からは11:37三保三隅、11:43折居と連続停車。

その先も江津まで途中8駅のうち5駅に停車します。

益田から次の主要駅である浜田までの各駅の利用者数について調べてみると、

コロナ前の数値で以下のようになっています。

益田500人

石見津田16人

鎌手18人

岡見34人

三保三隅106人

折居8人

周布92人

西浜田156人

浜田692人

9駅合計1622人。

中間の7駅計は430人ですが、そのうち三保三隅、周布、西浜田の3駅で354人を占めています。

今回の改正では比較的利用が多い駅に選択停車する快速列車が廃止され、

利用者数にかかわらず全駅に停車するかわりに所要時間が長い普通列車が残された格好ですが、

山陰本線の島根県西部区間のように、輸送密度は低くても、

特急列車や快速列車が運行される幹線で、

過去に高速化の投資もなされていて、

並行高速道路の延伸が進んでいるような路線では、

合理化策として、普通列車を廃止して快速を残す。という方法もあったのではないか。という思いがあります。

もっとも、JRがそのような改革を実行しようとすれば「停車列車がなくなる駅」の利用者の利益を代表する形で、地元自治体からの異議申し立てがなされるかも知れません。

しかし人口減少時代を迎えた自治体にとっても、全員が市の中心部とまではいかなくても、快速停車駅のような一定の拠点周辺への集住が進むほうが、

長期的には効率の良い行政が可能になり、最終的には地域住民の利益になるとも考えられます。

北陸地方にはそのような方針を公言し様々な施策を進めている自治体もあるようです。

 

f:id:nishiuraexp:20220302125215j:plain西浜田に停車し対向の普通列車と行き違い。

この付近の山陰本線普通列車の多くは写真の閑散路線向けキハ120系が使われています。

快速アクアライナーに使われてきたキハ126系は、先述のように地元負担主体の高速化事業の一部として投入されており、他の地方への転属は難しいかも知れません。

そうなると快速アクアライナー廃止後は普通列車に転用され、玉突き転配で経年が高いキハ120系の廃止が始まるのか?など興味は尽きません。

 

f:id:nishiuraexp:20220302125313j:plain列車は益田より一回り大きい浜田市の市街地に入ります。

 

f:id:nishiuraexp:20220302125358j:plain11:58浜田着。

古くからの市街地が広がる内陸側とは反対の海側は、駅の橋上化で利便性が向上して以降、

病院や集合住宅のほか某ホテルも進出し新市街地の様相を呈しています。

 

f:id:nishiuraexp:20220306190514j:plain浜田は島根県内では出雲市以西で最大の都市であり、駅の利用者数も同様ですが、

昼間の快速アクアライナーへの乗車は少なく、空のボックスが目立ったまま発車時刻を迎えました。

 

f:id:nishiuraexp:20220306191104j:plain12:03。下府に停車。

利用者数の少ない駅でも、歴史ある大幹線に属するだけに、駅施設の規模は大きく、見た目には頼もしいものの、

経営的にはその管理が重荷になっているのではないでしようか。

 

f:id:nishiuraexp:20220306191216j:plain12:11。波子に停車。

新調された駅舎の横には駅から徒歩圏内の「しまね海洋館アクアス」の看板が建てられています。

 

f:id:nishiuraexp:20220306191321j:plain波子駅を出てしばらく、車窓には石州瓦の家並みと日本海を見下ろす、この地方らしい美しい光景が広がります。

駅看板にあった「アクアス」の塔が存在感を放っていますが、景観という点では賛否があるかもしれません。

 

f:id:nishiuraexp:20220306191448j:plain車内のトイレに立ったついでに後方の運転台を覗くと、軽くブレーキがかかってもなお速度計の針は約90km付近を指していました。

 

f:id:nishiuraexp:20220306191609j:plain列車は江津の市街地に進入。

 

f:id:nishiuraexp:20220306191703j:plain12:22江津着。

ここでは乗車よりも下車が目立ちました。

乗客が少ない中でも、県都松江方面への長距離利用だけでなく、

益田〜浜田間や浜田〜江津間などの都市間利用が見られることは、今回の快速列車廃止と絡めて無視できない事実であるように思われます。

 

f:id:nishiuraexp:20220306191804j:plain江津発車後、江津市街地から日本海へ注ぐ江の川の鉄橋を通過。

 

f:id:nishiuraexp:20220306191917j:plain12:38。温泉津着。読みは「ゆのつ」です。

 

f:id:nishiuraexp:20220306192026j:plain駅前に立つ温泉津温泉のゲートの向こうには温泉街が広がります。

 

f:id:nishiuraexp:20220306192124j:plain大田市駅手前。

徒歩でアクセスできそうな距離にイオンが見えましたが、

ここに駅があれば利便性が増し云々。という議論は、もう少し輸送密度が高く列車本数のある区間でなければ成立しないのかも知れません。

 

f:id:nishiuraexp:20220306192229j:plain12:58大田市着。

 

f:id:nishiuraexp:20220306192548j:plain大田市駅は2007年に世界遺産登録された石見銀山の玄関となる駅で、駅前からバスで約30分の距離ですが、

駅の乗車人員数はコロナ前の2019年で465人。

世界遺産登録も山陰本線高速化もほぼ関係なくコンスタントに減少を続けています。

 

f:id:nishiuraexp:20220306192749j:plain大田市から出雲市にかけて再び日本海の海岸線を快走。

 

f:id:nishiuraexp:20220306192858j:plain出雲市の一つ手前の西出雲駅を通過。

駅に隣接して車両基地があり、特急やくも号やサンライズ出雲号が留置されています。

これらの車両の出入りのため西出雲駅〜出雲市間は電化されています。

 

f:id:nishiuraexp:20220306193000j:plain大田市から32.6kmを28分で走り、13:28出雲市に到着。

3分後の13:31に発車する岡山行の特急やくも20号に同じホームで乗り換えることができます。

快速アクアライナーの快速運転区間はここまでで、出雲市から先終点米子までは各駅に停車します。

なお益田から出雲市まで130kmに要した時間は2時間14分。

駅停車時間も含めた平均時速はほぼ60kmと単線非電化路線の快速列車としてはかなり早く、高速化事業施工前の特急に匹敵するレベルとなっています。

 

f:id:nishiuraexp:20220306193152j:plainやくも20号を先に通し、

13:34。出雲市を発車。

しばらく山陰地方唯一の私鉄である一畑電鉄との並行します。

 

f:id:nishiuraexp:20220306193450j:plain13:53宍道駅着。

向かいのホームには14:00発の木次線備後落合行が停車中です。

木次線は陰陽連絡線の一つに数えられる路線で島根県と広島県を結ぶ鉄道ルートの一部となっていますが、実質的にその連絡機能を喪失しており、

停車中の列車から備後落合、三次と乗り継いで広島まで行くと到着は約7時間後の20:56となります。

なお島根県の県庁所在地松江と広島を結ぶ高速バスの所要時間は高速道路の延伸で3時間まで短縮されており、

島根県と広島県の行き来自体は以前よりむしろ増えているようです。

 

f:id:nishiuraexp:20220306193600j:plain宍道駅を発車し、宍道湖の湖岸を走行するうち湖畔に開ける松江市の市街地が近づいてきました。

 

f:id:nishiuraexp:20220306193754j:plain14:16。益田から約3時間。浜田から2時間16分で松江に到着。

 

f:id:nishiuraexp:20220306193852j:plain 松江では15分の停車時間があり、その間に益田を乗車しているアクアライナーの約1時間後に発車した特急スーパーまつかぜ10号が到着。先発していくダイヤになっています。

 

f:id:nishiuraexp:20220306194023j:plain 14:25。向かいのホームに到着した特急スーパーまつかぜ10号鳥取行。

 

f:id:nishiuraexp:20220306194135j:plain特急列車に続いて松江を発車。米子への最終区間に踏み出します。

 

f:id:nishiuraexp:20220306194229j:plain松江と米子のほぼ中間、荒島駅で下りのアクアライナーと行き違い。

 

f:id:nishiuraexp:20220306194318j:plain安来駅に到着。

この駅までが島根県に位置し、列車は終点米子駅までの最後の一駅間で県境を越え鳥取県に入ります。

 

f:id:nishiuraexp:20220306194417j:plain 松江からの最終区間。

車内は出雲市付近からようやくワンボックスに1人程度の乗車率となりました。

 

f:id:nishiuraexp:20220306194524j:plain15:08。終点米子に到着。

出雲市からの各駅停車区間61.6kmに要した時間は1時間34分、益田からだと191.5kmで3時間54分の長旅となりました。

 

今回の乗車体験だけでものを言えば列車廃止もやむなし。という気もしますが、

過去の高速化事業や特急が運転され今も幹線としての機能が残っていることなどを考えると、

今回の快速廃止は、長期的に見れば2019年の三江線廃止や、コロナ後の木次線廃止議論以上の大事ではないか。という気もします。

乗車記中で述べた普通列車廃止が難しければ、JRが施設保有のうえ優等列車を運行し、

普通列車のみ停車する駅の管理と普通列車の運行経費を地元が負担するなど、逆上下分離的な手法も、島根県西部の山陰本線のような「幹線ローカル線」の合理化策として考えられるのではないでしょうか。

 

f:id:nishiuraexp:20220306194606j:plain国鉄以来の存在感のあった米子駅舎は解体され現在の米子駅は元の駅舎脇のにあった建物で仮営業中です。

 

f:id:nishiuraexp:20220306194727j:plain最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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山形新幹線つばさ124号乗車記(山形7:08→東京9:35)

f:id:nishiuraexp:20220127172710j:plainJR東日本山形駅。

今回はここから山形新幹線つばさ号で東京へ向かいます。

 

f:id:nishiuraexp:20220127172819j:plain午前7時前の山形駅のコンコース。

山形駅から山形新幹線に乗車する場合、まず在来線改札口を通り、山形新幹線ホーム入口で再度山形新幹線専用の改札を通ることになります。

 

f:id:nishiuraexp:20220127172954j:plain山形新幹線ホームへ。

 

f:id:nishiuraexp:20220127173029j:plain今回乗車するのは写真左側の1番線から7:08に発車する「つばさ124号」です。

 

f:id:nishiuraexp:20220127173200j:plain山形新幹線の車両は開業時の400系はすでに引退し現在はE3系7両編成での運転。

初めての在来線直通新幹線として1992年に山形新幹線が開業した際、

ほぼ無塗装でシルバー一色の400系の車体について、

「在来線走行区間の沿線の緑や冬期の雪景色にマッチする色を追求した結果がこれだった」などと説明されたものですが、

現在のE3系は新幹線車両としては多彩な色遣いが特徴です。

 

f:id:nishiuraexp:20220127173244j:plain普通車の車内は暖色系でまとめられ落ち着いた雰囲気です。

 

f:id:nishiuraexp:20220127173321j:plainシートの座面と背もたれは、肘置きのボタンで別々に動かすことができます。

 

f:id:nishiuraexp:20220219180617j:plain今回の東京までの乗車券は、JR東日本の列車予約サイト「えきねっと」から、席数限定の「トクだ値35」で購入。

東京まで指定席特急料金込みで7370円です。

 

f:id:nishiuraexp:20220127173453j:plain 7:08。定刻に山形を発車したつばさ124号は雪景色の中を快走します。

 

f:id:nishiuraexp:20220127173532j:plain山形発車からしばらく、左手の車窓に田園にそびえ立つ「スカイタワー41」が見えます。

乗車中の124号は通過しますが、山形新幹線の大半の便が停車する、かみのやま温泉駅から徒歩30分の場所にあるタワーマンションです。

田園地帯にそびえ立つ姿は奇抜な印象ですが、

ネツトの書き込みなど見ていると、

付近で一戸建てを建てるより安く購入でき、地方特有の濃密な地域の付き合いや雪下ろしの悩みからも解放されるなど、

実質的なメリットに注目して入居する地元の方が少なくなく、入居後の満足度も高い様子が伺えます。

 

f:id:nishiuraexp:20220127173626j:plain 赤湯駅手前。

平地を見下ろす下り勾配で車窓が広がります。


f:id:nishiuraexp:20220127173720j:plain山形の1月の日の出時刻は7時前後。

 日の出から間もない太陽に照らされる雪景色の車窓は美しく見飽きることがありません。

東京より西に住む鉄道ファンが、車窓の美しい在来線特急として思い浮かべるのは、

「あずさ号」や「しなの号」が多いのではないかと思いますが、

山形新幹線つばさ号の在来線区間も負けず劣らず。ではないでしょうか。

 

f:id:nishiuraexp:20220127173802j:plain 7:38。山形から30分で最初の停車駅米沢に到着。

速達便の124号はノンストップでここまで来ましたが「つばさ号」の多くは、山形から途中

かみのやま温泉、赤湯、高畠に停車し、米沢まで35分程度の所要時間となっています。

米沢市の人口は約8万人で山形県内では4位。

東京までの所要時間も乗車中の速達便124号に限れば2時間を切ります。

 

f:id:nishiuraexp:20220127173846j:plainホームでは米沢駅の名物駅弁「牛肉どまん中」が販売中ですが、停車時間は僅かでホームに出る時間はありません。

同じ在来線直通の秋田新幹線では大曲駅で進行方向が変わったり、単線区間があるため行き違い待ちの停車がある場合もありますが、

山形新幹線の山形以南はほとんどが複線で進行方向の転換もないため運行はスムーズです。

 

f:id:nishiuraexp:20220127173921j:plain米沢駅を発車した「つばさ号」は山形県と福島県を分ける板谷峠に差し掛かります。

 

f:id:nishiuraexp:20220127173947j:plain 板谷峠の最急勾配は38パーミル。

長野県内のJR飯田線には40パーミル区間も存在しますが、距離は僅かであり、

板谷峠は、1997年の北陸新幹線長野開通とともに信越本線の碓氷峠区間が廃止されて以降、実質的にJRで最も急な勾配で峠を越える区間となっています。

時速200km以上で走行できる大出力のモーターを積んだ新幹線車両ですが、勾配のほか急曲線もあり、また下り区間では制動距離が伸びることから、

一部区間では新幹線とは名ばかりの時速60km付近まで速度が低下します。

 

f:id:nishiuraexp:20220127174049j:plain 板谷峠を抜け福島平野へと下る場面。

大きな曲線で峠にアプローチするこの付近は、庭坂カーブとも呼ばれ鉄道撮影地として有名です。

 

f:id:nishiuraexp:20220127174134j:plain

f:id:nishiuraexp:20220127174245j:plain福島駅が近づくと、在来線から分岐して高架に上がり、右カーブで 東北新幹線と並んで新幹線ホームに進入します。

 

f:id:nishiuraexp:20220127174322j:plain8:13。福島に到着。

山形から米沢まで47km30分に対し、米沢から福島まで40.1kmに35分を要した計算です。 

それぞれ平均時速を計算すると前者94km に対し後者は69kmとなります。

この速度低下に対し、JR東日本と山形県が米沢〜福島間の板谷峠区間を貫く新板谷トンネル掘削の調査を始めており、完成すれば同区間で13分程度の短縮が見込まれているようです。

 

f:id:nishiuraexp:20220127174350j:plain福島駅新幹線ホームに到着した「つばさ124号」は、先に到着していた「やまびこ24号」の後方に連結され、その作業が終わったのちにドアが開きます。

 

f:id:nishiuraexp:20220127174442j:plain8:15。 2分の停車時間で福島駅を発車した「やまびこ・つばさ」号は、

東北新幹線下り本線を横断して東京方面の上り本線に進入します。

 

f:id:nishiuraexp:20220128232942j:plain高速道路で例えれば、上り線に入る際に、下り線の出口から逆走で進入し、対向車が迫りくる下り線を逆走したのち中央分離帯の切れ目から上り線に合流していくイメージです。

山形新幹線の開業から今年で30年。盤石の安全システムに守られ事故は起きていませんが、対向車の速度は時に時速300キロ以上。

一度事故が起これば航空機の墜落を上回る惨事になるかも知れません。

機械の誤作動やヒューマンエラーをある程度起こりうるものとして考慮に入れ、

そのような場合でも大事には至らせない。というフェイルセーフの思想を古くから発展させてきた日本の鉄道にあって、

素人目には、ここは異例の対応という印象を受けます。

 

f:id:nishiuraexp:20220128233055j:plainちなみに 福島駅で併結した「やまびこ124号」は仙台始発であり、

福島駅進入時にも下り本線を横断して「つばさ号」の到着・併結を待っていました。

再び高速道路を引き合いに出せば、上り線を走行している車が下り線のサービスエリアで一休みしていたようなものでしようか。

事故の危険性の話は差し置いても、

上り列車が頻繁に下り本線を横断(言うなれば短距離の逆走)しなければならない現状では、

ダイヤが乱れた際に、その影響が拡大したり収束が困難になることもあり、

2022年、山形方面から東北新幹線の上り待避線に直接繋がる新たなアプローチ線の建設が始まっています。

 

f:id:nishiuraexp:20220128233206j:plain「つばさ号」の東北新幹線内の最高速度は275km。

「つばさ124号」は、他の多くの「つばさ号」が停車する郡山・宇都宮には停まらないため、福島を発車すると次の停車駅は大宮です、

 

f:id:nishiuraexp:20220128233321j:plain8:30。福島駅発車から東北新幹線を南下すること15分。

山形駅から続いていた沿線の積雪はいつの間にかなくなり土色の車窓が続きます。

列車は間もなく白河の関を越え関東地方に入ります。

 

f:id:nishiuraexp:20220128233434j:plain8:40。北関東、栃木県に入り那須塩原駅付近。

車窓右手には冠雪した山並みを望む美しい車窓が展開します。

 

f:id:nishiuraexp:20220128233640j:plain 8:50。栃木県の県庁所在地宇都宮の駅を速度を落とすことなく通過。

 

f:id:nishiuraexp:20220128233819j:plain栃木県から埼玉県に入り、新交通システムニューシャトルとの平行区間に入ると間もなく大宮に到着。

 

f:id:nishiuraexp:20220128233941j:plain9:12。大宮着。

ここから終点東京まで、東京から北へ延びる新幹線3路線(東北、上越、北陸)の全便が線路を共有しています。

そのため線路容量に余裕がなく、 

山形新幹線や同じく在来線直通の秋田新幹線が、福島駅や盛岡駅で東北新幹線の列車と併結して東京へ向かわなければならない理由はここにあります。

 

f:id:nishiuraexp:20220128234048j:plain大宮駅発車後、ほぼ同時に在来線ホームを発車した651系の特急あかぎ6号と並走。

時刻表では特急あかぎ6号の大宮発は9:12となっており、向こうは少し遅れていたようです。

 

f:id:nishiuraexp:20220128234145j:plain大宮から次の上野までの間は、2021年より最高時速が110kmから130kmに向上しており、平行する在来線埼京線の電車を軽快に追い抜いていきます。

速度だけ見れば、関西圏の複々線区間で、新快速が普通電車を追い抜いているようなものですが、

新幹線車両にとっては徐行とも言える速度であり追い越す側の余裕が全く違います。

 

f:id:nishiuraexp:20220128234329j:plain 田端駅付近。

JR東日本東京支社の社屋に新幹線車両が綺麗に写り込んでいました。

 

f:id:nishiuraexp:20220128234411j:plain上野を通過。

先述のように東京を発着する東北、上越、北陸の各新幹線の全便がここを通りますが、通過する列車は一日に数本しかありません。

 

f:id:nishiuraexp:20220128234542j:plain東京到着直前の指定席車内の様子。

東京から地方へ向かう利用に比べ、地方から東京へ向かう利用は、コロナ禍による急減からの回復が遅れているという話もあり、

今回の「つばさ124号」の指定席も山形から終点東京まで終始1両数人〜10人程度と寂しい乗車率でした。

 

f:id:nishiuraexp:20220128234626j:plain定刻9:35。東京駅に到着。

新板谷トンネルの調査開始や福島駅でのアプローチ線建設に加え、山形新幹線向けの新型車両E8系の投入予定も最近発表されました。

鉄道全体に明るい話題が少ない中、今後の進化に期待を寄せることができるのは、幸いと言わなければならないでしょう。

  

f:id:nishiuraexp:20220128234700j:plain最後までお読みいただきありがとうございました。 

 

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