JR西日本広島駅。
今回はここから可部線方面の電車に乗車します。
可部線は広島から山陽本線を下り方面へ2駅進んだ横川駅から、あき亀山駅に至る広島の近郊路線です。
可部線の列車は広島~あき亀山間を直通運転しています。
まず広島発11:48のあき亀山行で出発します。
可部線に限らず数年前まで国鉄型車両で占められていた広島周辺のJR在来線は、ディーゼルカーで運転される芸備線方面を除いて、
ほぼ全ての車両が写真の新型車両227系に置き換えれています。
227系にはレッドウイングという愛称があります。
名称の由来は先頭部についている転落防止幌です。
転落防止幌は先頭車同士を連結した場合、車両間の隙間が中間車両同士の連結に比べて大きくなるため、その隙間から線路に転落することを防止するために設置されるものです。
定刻に広島駅を発車。
横川までの山陽本線区間は岩国方面への山陽本線下り列車の毎時6本(土休日)に可部線が毎時3本加わる形になり、
地方都市のJR線としては上位に入る高頻度運転区間となっています。
新白島駅に進入。
新白島駅は2015年の開業です。
新交通システムアストラムラインとJR山陽本線の交差部分に設置された新駅で相互に乗り換えができるほか、駅から徒歩圏に広島電鉄(路面電車)の白島駅もあります。
JRの新白島駅の施設は比較的簡素に見えますが、広島市周辺の鉄道ネットワークの中で、今後重要な役割を果たしていくことが期待されてます。
新白島駅を出て太田川放水路を渡り、
広島から6分ほどで山陽本線と可部線が分岐する横川駅に到着。
横川駅ホームの地点ですでに両路線の線路は分岐しており、写真のように山陽本線ホームと可部線ホームの間には広い空間があります。
ここで早速途中下車します。
横川駅は広島周辺では広島駅についで利用が多い駅です。
特に商店などが並ぶ駅南側は活気が感じられます。
駅前広場には広島電鉄の路面電車が乗り入れており、JRの路線から離れている広島最大の繁華街「紙屋町」周辺へ直通しています。
紙屋町周辺へは新白島駅開業後は同駅でアストラムラインに乗り換えていくこともできようになりました。
駅前広場からは生活感漂う商店街も延びています。
駅に戻り後続の電車で可部線区間へと踏み出します。
横川駅を発車した列車は、太田川を渡り西から北に進路を変えると短いトンネルに突入。トンネルを抜けると最初の停車駅三滝駅に停車します。
三滝駅からしばらくは太田川に沿って北上します。
川に沿って建設されたローカル線は数え切れませんが、100万都市の都心からそれほど離れていないところでの、このような車窓はあまり例かありません。
4両編成の車内は1両10人程度とすいていました。
車両が新しくなるのは結構なことですが、駅間距離も客の乗車距離も短い可部線はロングシートのほうが乗り降りしやすいかもしれません。
親しみを感じる古い駅舎が現役で活躍する下祇園駅。
古市橋駅では対向列車待ちのため数分停車。
日中の可部線のダイヤは基本的に下り列車が上り列車の到着を待つダイヤになっているようです。
大町駅は1994年にアストラムラインが開通した際に、
可部線との交差部分に新設された駅です。
アストラムラインと可部線は半ば競合しつつも、紙屋町周辺(県庁前駅)へはアストラムライン、広島駅周辺や横川乗り換えで宮島方面へは可部線と棲み分けがなされているように見えます。
大町駅の次の緑井駅で再び途中下車しました。
木造の小さな駅舎に不似合いな周囲の都会的な街並みは、駅周辺の急速な発展を物語っているかのようです。
緑井駅の利用者数は昭和61年には984人だったものが平成4年には2000人をこえ、その後、隣に大町駅が出来たため一旦減少に転じたものの、現在では2700人を超えており更に増加しそうな勢いです。
駅前広場からはショッピングセンターや岡山資本のデパートへと続くペデストリアンデッキが延びています。
ペデストリアンデッキからは三大都市圏の近郊に遜色ない都市の風景を望むことができました。
駅にもどり、再びあき亀山方面への電車に乗車します。
駅周辺の発展を喜んでばかりはいられない事情もあります。
可部線はアストラムラインが開業し大町駅で接続するようになった1990年代から、
ラッシュ時には行き違い設備をフル活用する10分間隔のダイヤが組まれていますが、
コロナ下の三密対策として駅に掲示されていた広島近郊の路線別混雑状況表によれば、
可部線の緑井~広島間(一番下)は、より輸送量が多い山陽本線(複線)を凌ぐ再混雑区間となってしまっていることがわかります。
右肩上がりの時代なら複線化やホーム延長による増結などが検討されたかも知れませんが、総人口が減少する時代にそんな投資をしても将来「宝の持ち腐れ」になりかねないということでしょうか、
抜本的は混雑対策などは今のところ聞こえてこず、
混雑状況を示す表の下には列車を特定して「大変混雑するので」と分散乗車を呼びかける張り紙がありました。
後続のあき亀山行に乗車。
梅林駅でも数分停車し行き違い待ち。
大都市近郊で頻繁に行われる行き違い待ちは単線路線の宿命なのでしょうか。
全線単線で路線延長も可部線と似通っている静岡県の遠州鉄道では、可部線より密な終日12分間隔のダイヤが組まれていますが、
平均1km間隔の駅ほぼ全てに行き違い設備があり、行き違い待ちらしい行き違い待ちもなくスムーズな運行を実現しています。
運賃はJRの1.5倍となる区間もありますが、可部線を含め一定以上の需要があるJRのローカル線は見習うべきところが多いのではないかと思っています。
緑井駅から約20分、可部線最大の駅可部駅に到着。
ここでも途中下車して駅の様子を見学します。
到着したホームの先には跨線橋がありますが、
その手前に改札口があり、跨線橋は自由通路として開放されていました。
跨線橋手前の西口から駅の外へでることもできます。
西口側にはバスターミナルが整備されています。
自由通路を渡り東口へ。
可部駅から広島方面の電車に乗車するときはこちらの改札口からホームに入ります。
東口には「みどりの窓口」や「セブンイレブン」があり駅としての機能はこちらに集約されています。
東口駅舎。
駅前にはマンションも建っているものの途中下車した緑井駅に比べると、駅前の整備は進んでおらず、ローカル線の駅前風景といった印象です。
さて可部駅から後続の電車で終点あき亀山へのラスト区間へ踏み出しますが、
可部線は元々、横川から可部を通り、非電化で三段峡にいたる60kmの路線でした。
しかし可部から先の非電化区間の列車本数は1日10往復以下に過ぎず、2003年に乗客減少により廃止され、可部駅が終点となりました。
一方で廃止された可部駅から先の沿線でも、可部駅から数kmの区間は市街地が続いていたことから、
「電化区間を延伸して列車を増発してほしい」という熱心な要望が廃止以前からありました。
しかし電化延伸どころか路線廃止という事態になり要望活動は断ち切られるかに思われましたが、「復活延伸」に要望内容を変えて継続され、
ついに2017年、可部~あき亀山間1.6kmの復活開業が実現。現在に至っています。
可部~あき亀山間は電化での復活となっただけでなく、
可部まで20分間隔の列車の全便があき亀山まで乗り入れる形になっており、地元にとっては長年の要望活動が報われた格好です。
一方JRに目をやれば「復活させるくらいなら最初から廃止しなければよかったのではないか」という個人的な思いがあります。
国鉄末期の赤字ローカル線廃止においても路線単位の輸送密度を過度に重視した結果、実際には需要がある区間が、需要が極端に少ない区間と同じ路線として扱われ、国鉄から切り離されるということがあったようです。
今後もJRローカル線の廃止は避けて通れないと思いますが、同じようなことが起こらないことを願うばかりです。
可部駅から2分程で復活区間唯一の途中駅河戸帆待川駅に接近。
単線一面の簡素な駅ですが、周囲には住宅地が広がっており、4両で20人~30人程度の下車がありました。
終点あき亀山までの区間は1両数人とう状態に。
河戸帆待川を出ると前方に留置線を擁する広い駅施設が見え、
終点のあき亀山駅に到着。
駅名表記の右上に「広」マークに注目です。
広島から乗り通すと乗車時間約45分ですが、広島市内に位置しており、広島駅まで200km以上の乗車券を所持している場合は、
広島市内の別の駅で途中下車しなければここまで来ることもできます。
あき亀山駅は、行き止まりの線路の先につづく通路を通って駅舎へ向かう構造になっています。
似たような構造の主要駅としてまず思い浮かぶのは函館駅ですが、探せば他にもあるかも知れません。
あき亀山駅舎。
駅舎内には改札機と時刻表程度しか見当たらず、終日20分毎に列車が到着する終点駅としては簡素な造りです。
駅舎前にあったモニュメント。
駅施設の隣にはクレーンが何本も立ち上がっており、
その回りには駅前ロータリーを取り囲むように柵が張り巡らされていました。
その柵にあった看板。「広島市立新安佐市民病院」新築その他工事。
遠来の訪問者の視点で、つい「なんだ病院か」と思ってしまいますが、
大病院なら時間帯問わず病院関係者の通勤利用が見込めるほか、通院、面会訪問など様々な需要が期待できます。
可部線のような路線にありがちな片輸送の解消にも一役買いそうです。
病院ができれば駅の利用が増えるだけでなく、コンビニやドラッグストアなども出来て賑やかになるかも知れませんが、
今のところ駅周辺に時間を潰すような場所はなく、
折り返しの広島行で大町駅まで戻り、アストラムラインに乗り換えました。
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