JR 西日本岡山駅。
今回はここから岡山と近郊の総社を結ぶローカル線吉備線に乗車します。
改札口の発車表示。吉備線は左端下段、
つぎの発車は12:11の総社行です。
なお吉備線には表示のように桃太郎線の愛称が付されています。
吉備線の列車は西口バスターミナルに面した9・10番線からの発車で、岡山県北部の津山へ向かう津山線とホームを共用しています。
吉備線は途中8駅、終点の総社までの所要時間は約40分。
日中の一部をのぞいて概ね1時間に2本の運転で一部の便は途中の備中高松までの運転となっています。
岡山駅を発車した吉備線の列車は、一旦高架線に上がりますが、すぐに地平に降り幹線道路と平面交差をしつつ、備前三門駅・大安寺駅と岡山の市街地を進みます。
吉備線については富山県の富山港線とともに、2003年にJR西日本から公式にLRT(近代的な路面電車)化の提案がなされました。
その是非や具体的な検討が続けられる過程で、岡山市内では高架化計画が白紙になった区間もあるようです。
なお富山港線については吉備線に比べて利用が少なく廃線の話もあったことから、LRTという形で存続させることについて最初から地元が積極的で、
3年度の2006年には「富山ライトレール」という新会社が旧JR富山港線の軌道を利用した路面電車の運行を開始ていします。
「富山ライトレール」(現富山地方鉄道)の車両。2013年撮影。
富山ライトレール(現富山地方鉄道)の時刻表など。(日中15分毎・平日朝ラッシュ時10分毎)JR富山港線時代には日中1時間に1本だった。2013年撮影。
先発の「富山ライトレール」が開業当初から良好な結果を出したことも背景にあると思いますが、
吉備線沿線でも次第にLRT化に向けて積極的な動きが見られるようになり、
2018年4月には沿線の岡山市・総社市・JR西日本の間でLRT化に向けた役割分担・費用分担について合意したことが発表されました。
具体的な運行計画については、先述のように現在1時間2本程度の列車本数を、ラッシュ時には途中の備中高松まで10分毎、その先総社まで15分毎、日中も20分毎まで増発。
新駅を7駅設置するかわりに運賃は現状より20%引き上げるという想定がされているようです。
個人的な見解としては、将来性が見込めるローカル線が近代的な姿になって存続することに異議はありませんが、
先述の2003年のJR西日本からの発表の際に「地域に密着したローカル線については広域輸送(新幹線や特急列車など)を前提としたJRが得意とするところではないので地元密着の新しいスタイルの鉄道に生まれ変わらせることが望ましいのではないか」という内容の発表・提案だったという報道がされていたと記憶しています。
それが事実なら、例えば県庁所在都市クラスを拠点とする地方私鉄では、今後も自らが運営を続けることを前提で列車の増発や新駅設置などとともに値上げも適時実施するなど経営努力がなされていますが、
「JRはそれと同じことを本腰を入れてやるつもりはない」という受け止めもできるわけで、その点は当時から疑問を感じています。
(JRの運賃体系が短距離のローカル輸送で利益を出しにくい構成になっているという点は理解できますが。)
利用者の大幅な増加が見られるなど成功を収めている「富山ライトレール」ですが、JRから分離されたことにより以前は東京から富山港線の駅までの1枚の切符が買えたものが、現在ではJRの切符は北陸新幹線の富山までしか買えないばかりか、
「富山ライトレール(富山地方鉄道)」の駅からお隣新潟県の糸魚川まで鉄道(在来線)で行こうとすれば、以前はJRだけでつながり、乗り換えも富山駅1回だけで済んだものが、
現在では「富山ライトレール(富山地方鉄道)」「あいの風とやま鉄道」「えちごトキめき鉄道」と3社乗り継ぎになり、富山と泊の2回の乗り換えを強いられるのが現実です。
これらは昨今注目されている「MaaS」の概念に真っ向から喧嘩を売っているようにも見え、これから進められる吉備線のLRT化においても、同じような不便が極力生じないような配慮が必要ではないかと思うと同時に、
今のところ具体的な将来像が示されていない他の一定の需要があるJRローカル線(吉備線の近隣では福塩線の福山近郊区間など)の将来を考えるうえでも、
JRが上記のようなスタンスであるとすれば、懸念事項と言わなければならないでしょう。
地方交通線運賃を値上げしたり、極端に利用者が少ない区間(バスでも無理なく運べる区間)を廃止してでも、
それ以外の区間(鉄道でないと運べない輸送量がある区間)については、JR自らが利便性改善⇒乗客増加⇒収支均衡を目指してほしいというのが個人的な希望です。
★「富山ライトレール」は2020年3月より高架の富山駅を潜る形で駅の南側を走る富山地方鉄道への乗り入れを開始し、現在は富山地方鉄道の1路線となっています。
大安寺駅を発車すると周囲に田園風景が広がりました。
「富山ライトレール」においてもJR富山港線時代には1時間に1本だったものが15分毎に増発されたことで沿線の開発が進み人口の増加が見られています。
数年後ここを近代的な路面電車がラッシュ時10分毎、日中20分毎に走るようになれば一気に都市化が進むことも予想されます。
岡山から約15分。今回は4駅目の吉備津駅で下車しました。
吉備津駅の簡素な駅舎。
周辺地図(吉備津神社前のものです)
このあと駅から徒歩10分の吉備津神社へ向かい、そのあと徒歩で隣駅「備前一宮駅」に近い吉備津彦神社に向かいました、
ここまで「都市交通」に関係するやや硬い内容でしたが、ここからは沿線散策などが中心になりますので、今回の乗車記事はここで一旦切らせていただきます。
つづきはこちらです。(一部内容が重複します。)