今回は姫路から山陽新幹線で博多へ向かいます。
当ブログは「鉄道ブログ」の看板を掲げているにもかかわらず、国内の長距離移動は「搭乗記」ばかりになっていることを筆者自身が気にしていました。
新幹線の延伸によって魅力的な在来線長距離特急が廃止されてしまい、それに取って代わる新幹線が早いのは分かっていますが、在来線に比べて旅情に欠ける上、
運賃面ではLCCだけでなくJALやANAの早割運賃より高い場合がほとんどであり、鉄道ファンといえど新幹線からは足が遠のいていたのですが、
今回LCCなみの価格で山陽新幹線を利用できる旅行商品を発見し久しぶりの新幹線長距離乗車を思い立った次第です。
日本旅行の「姫得スペシャル」というもので、指定列車(往路は本乗車記のひかり583号のみ、復路は博多18:33発小倉18:50発の「のぞみ62号」と博多20:51発小倉21:09発の「ひかり444号」)利用で、
姫路~博多往復が11800円、姫路~小倉往復が11000円と正規運賃の半額以下となっており、
価格面ではJRが直販している様々な早売り商品やクレカ会員限定商品の追随を許さない圧倒的な安さとなっています。
小倉・博多の新幹線改札内の店舗で使える200円クーポンがついてくるほか、加古川・西明石・明石発着が+200円、神戸発着が+400円の加算で購入できるサービスもあるなど、
JR神戸線沿線住民の多くが東へ向かうときは新大阪または新神戸、西へ向かうときは姫路から新幹線を利用しているという実態をしっかり把握したうえでの企画商品という印象を受けるものです。
(姫得スペシャルに関する記述は乗車日現在のものです。)
姫路駅在来線改札口からワンフロア上がったところにある新幹線改札口。
改札口を入ると神輿が飾ってありました。
姫路市の沿岸部(山陽電鉄本線沿線)で毎年秋に行われる「灘のけんか祭り」は神輿をぶつけあう激しい祭りとして知られ怪我人が出ることも珍しくないのですが、
新幹線のコンコースでは「けんか」の3文字は伏せられ、良くいえばお上品に、悪くいえば「祭りの雰囲気が伝わらないのではないか」と思うような展示がなされていました。
姫路駅の山陽新幹線下り時刻表。
「みずほ」が数本停車するほか、「のぞみ」「ひかり」「こだま」「さくら」が偏りなく停車し、列車種別ごとに色を変えた時刻表は随分華やかです。
「姫得スペシャル」における姫路から小倉・博多方面への指定列車は先述のように姫路発9:44の「ひかり583号」のみです。(乗車日現在)
ひかり583号が入線。
日によっては同じダイヤで鹿児島中央行きの「さくら号」として運転されるためか、博多までのJR西日本区間のみを走行するにもかかわらずJR九州の車両で運転されるようです。
ネット予約時には任意の席を指定することはできませんでしたが、予約から数日で日本旅行から郵送されてきた切符を見ると往復とも窓側の席が指定されていました。
車内。(博多駅到着後に撮影したものです、姫路での着席率は4割程度でした。)
山陽新幹線を走行する新幹線車両は、東海道新幹線から直通するものを除き、
指定席車両は東海道新幹線のグリーン車と同じく2列・2列の横4列、
自由席車両は東海道新幹線の普通車と同じ2列・3列の横5列のシート配置になっています。
シートピッチは同じですが横幅の違いからくる快適性の違いは大きく、山陽新幹線に長時間乗車する場合は、自由席が空席多数とわかっていても指定席を選択することをお勧めします。
指定席の横4列はJR西日本所属の車両でも同様ですが、
今回博多まで乗車したJR九州所属車両のシートは特に重厚感があり「JRで最もグリーン車に近い普通車のシート」とも言われています。
占有スペースの面では首都圏近郊の普通列車グリーン車や岡山~高松間の快速マリンライナーのグリーン車を上回っており、
航空との比較ではJALのクラスJと同程度の横幅で、ピッチはこちらの方が7cm上回っています。(クラスJ97cm、東海道山陽新幹線104cm)
足元のコンセントと、ノートパソコンが置けるサイズの背面テーブル。
航空の世界ではJALが先鞭をつけ、ANAが追随したWIFIサービスですが、新幹線でも同様のサービスを受けることができます。
トップ画面。
航空も含め、当初は「乗り換え(乗り継ぎ)検索や到着駅(空港)から目的地への経路検索・宿泊先検索などを意図したもの」という印象でしたが、
実際にはトンネル内も含め「YOU TUBE」がスムーズに視聴ができるレベルのサービスが提供されていました。
シート回りを見まわしたりWIFI接続を試したりするうち、早くも岡山駅に接近。
10:03岡山駅到着。
西日本を代表する乗り換え駅ですが、乗車した8号車は数人の乗車下車があったのみでした。
岡山を出ると次の停車駅は広島県の福山です。在来線の距離で約60kmですが、「ひかり」や「のぞみ」は16分程度で駆け抜けます。
山陽新幹線の姫路以西の最高時速は300kmとなっています。
乗車しているN700系(九州・西日本・東海共通)の場合、起動から3分で時速270kmまで加速できる性能を有しており、岡山~福山のような比較的短い駅間でも10分程度はトップスピードを保って走っているようでした。
10:20福山城の天守閣に隣接する福山駅に到着。姫路からわずか36分での到着です。
福山を出ると次の停車駅広島までは22分。途中新尾道・三原・東広島の3駅を通過します。
東広島駅付近では中国地方特有の赤味を帯びた瓦屋根を載せた日本家屋が田園地帯に点在する光景が見られました。
山陰側では地元の旧国名から石州瓦と言われたりするようですが山陽側では別の呼び方があるのでしょうか。
10:43広島到着。
乗車下車が均衡していた岡山に比べ下車が目立ち、車内が幾分空きました。
姫路発車以来、通路側の隣席は空席のままです。
広島を発車し加速しながら太田川放水路を渡ります。写真奥には近年廃止された区間の一部が復活したJR可部線の鉄橋が見えています。
ひかり583号は上級種別の「のぞみ」も一部が停車する新山口を通過し、次の停車駅は九州の小倉駅となっています。
さてシートの背面テーブルには自分が乗車している車両と隣の車両の車内設備の案内があります。
小倉まで40分以上停車がなく車内の人の動きも少なくなったので車内設備をチェックすることにしました。
7号車からみた6号車側のデッキ部分。航空機内では考えられないような広いスペースに男子小用と男女共用のバリアフリートイレがあり、
バリアフリートイレの向かいはカーテンで仕切られた洗面台になっています。
7号車の6号車寄りのデッキには自販機もありましたが、所望していたブラックのコーヒーはなく、欲をいえばもう少し飲料のバリエーションがほしいところです。
ちなみに今回姫路から博多まで車内販売員の姿を見ることはありませんでした。
街中でもほとんど見かけなくなった公衆電話も健在です。
最近東海道新幹線から喫煙可能な車両を連結した最後の編成が引退したことが話題になりましたが、デッキでは喫煙ルームが思いのほか広いスペースを占有していました。
トップスピードで走っていた列車が200kmを下回る速度まで減速すると、
山口県東部に位置する徳山駅を通過します。
減速は駅の西側にある曲線通過のためにやむを得ずなされるようです。
この付近では夜の便で海側の席に座ると美しい「工場夜景」を楽しむことができます。
タイミングよく車端の情報パネルに目を向けた人だけが乗車列車の走行位置情報に触れることができます。
通過中の厚狭駅は山口県山陽小野田市に位置する山陽本線・美祢線との乗り換え駅です。
在来線の横を素通りしていた山陽新幹線に駅が設置されたのは1999年のことで山陽新幹線では最も新しい駅となっています。
厚狭・新下関と通過し関門トンネルを抜けると100万都市北九州市の玄関小倉駅に接近。
11:31小倉着。
再び航空を引き合いに出せば、福岡市の人にとっては便利な福岡空港も小倉付近からだと70㎞もの距離があり、2006年に北九州空港が開港するまでは、対大阪だけでなく対東京輸送でも新幹線がかなりのシェアを占めていたようです。
「1000㎞の都市間移動の主役が鉄道という事例は世界中探しても例がない」という話をどこかで聞いた記憶があります。
小倉から九州内を走ること約15分、車窓に鹿児島本線の電車が見えると間もなく週手の博多に到着します。
11:47.姫路から2時間3分で博多駅に到着しました。
復路は2本の指定列車のうち博多発18:33ののぞみ62号を選択しました。
姫得スペシャルの切符が届いてから復路便の発車時刻までどこへ行くか検討したのですが、
関門海峡の人道トンネルとリニューアルされた門司港駅舎を訪問したくなり「それなら博多ではなく小倉往復にしておけば、時間も確保できお得だったのに」と後悔しつつも
福岡発着のJR九州の企画切符で行きたいところへ行くことにしました。
つづきはこちらです。