但馬空港からバスで15分。伊丹空港から約1時間少々で到着した兵庫県北部JR豊岡駅。
今回はここから第三セクター鉄道の京都丹後鉄道に乗車します。
JRに乗車する場合は駅舎2階の改札口へ向かう必要がありますが、京都丹後鉄道はJR 駅舎の脇に独自の小さな駅舎をかまえており、駅前から上下の移動なくホームへ向かうことができます。
京都丹後鉄道豊岡駅の駅舎内。
京都丹後鉄道の路線図。
豊岡駅は宮津と豊岡を結ぶ赤ライン「宮豊線」の西端(地図の左端)にあたります。
京都丹後鉄道の拠点宮津駅には宮豊線のほか、宮津と西舞鶴を結ぶ青ライン「宮舞線」、宮津と福知山を結ぶ緑ライン「宮福線」が乗り入れています。
運賃表を見ると駅ごとに運賃が上がり高額に感じますが、駅間距離が比較的長いためで、
距離を基準にすればJRの1.5倍程度の区間が多く、地方私鉄や3セク鉄道としては標準的な運賃水準という印象です。
今回は京都丹後鉄道オリジナルの特急車両タンゴエクスプローラー号登場30周年を記念したフリー切符を使用することにしました。
京都丹後鉄道の全線が1日乗り放題となるほか、特急列車の自由席も利用できて2500円。
タンゴエクスプローラー号のクリアファイルのおまけつきです。
11:00発。西舞鶴行の普通列車で出発します。
車両はすでに30年選手ですが、
新快速のような2人掛けシートに、
窓側には小さなテーブルもついて長時間でも快適に乗車できます。
京都丹後鉄道の豊岡~西舞鶴間(宮豊線・宮舞線区間)84kmは旧国鉄宮津線を引き継いだものですが、
同社の経緯は、他の国鉄ローカル線を引き継いだ第三セクター鉄道より複雑です。
まず現在の宮福線区間(福知山~宮津間30km )が新規路線として昭和63年に開通。開通当時の社名は宮福鉄道でした。
平成に入って国鉄(JR ) 宮津線の移管を受け、北近畿タンゴ鉄道に社名を変更。先に開業していた宮福線と合わせ114km という長い路線を有するに至っています。
その後、福知山~宮津~天橋立の電化や、上下分離方式によりバス会社として知名度が高い「ウィラー」が列車の運転(上下分離の上の部分)を担うようになり、社名も現在の京都丹後鉄道に再度変更されています。
豊岡を発車した列車はJR山陰本線とわかれ、円山川の鉄橋を渡ります。
豊岡の次のコウノトリの郷駅までが兵庫県に属し、その先で山を超えて京都府内に入ります。
豊岡から2駅。京都府に入って最初の停車駅久美浜駅は寺院のような駅舎が目をひきます。
久美浜から先、駅に停まるごとに乗車があり、豊岡発車時点では数人だった車内は次第に賑やかになりました。
記事を書いている手元にはJR宮津線時代の駅間毎の通過客数を示したグラフがあります。
JR宮津線のうち現在宮豊線となっている区間は宮津と豊岡という2つの都市を結んでおり、豊岡ではJR山陰本線とも接続しているにもかかわらず、
宮津から豊岡方向を見ると、まるで山間の行き止まり駅に向かうかのように、ほぼ「降りる一方」になっていることがわかります。
実際に今回反対方向の豊岡から宮津方面への列車に乗車して車内の様子を見ていると、現在もこの現象はかわっていないように見えました。
このような現象が起こる要因は豊岡手前にある京都と兵庫の「府県境」のために、
ローカル線の主役である高校生の越境通学ができないためと思われますが、
但馬と丹後を分断する府県境の壁は、京都丹後鉄道の輸送に限らず、
お互いの地域にとってプラスには作用していないのではないでしょうか。
多くの乗車があった峰山駅。
駅名板の右の名所案内2番目の「間人」は「たいざ」と読みます。
峰山駅と丹波大宮駅の間では平行する幹線道路沿いにロードサイド型の店舗が並ぶ光景が見られましたが、
鉄道は少し離れた田園地帯をかすめるだけで気軽に歩いて行ける場所に駅があるわけでもありません。
京都丹後鉄道沿線に限ったことではありませんが、鉄道の存在を忘れたかのような街づくりは、ローカル線にとっては人口減少や少子化よりもっと深刻な問題といえそうです。
豊岡から1時間少々。列車の前方に中海を横断する天橋立の松並木が見えてきました。
観光客の利用が多いJRからの直通特急の終点にもなっている天橋立駅ですが、地元客中心の普通列車の乗降はそれほど多くなく、すぐに発車。
列車は市街地を回り込むように走り、宮福線と合流すると、
京都丹後鉄道最大のターミナル宮津駅に到着します。
豊岡から1時間18分、停車時間を利用して駅前に出てみることにしました。
宮津駅での待ち時間に利用したい、ホームと改札外の待合室の両側から利用できる喫茶店「114km Cafe 」。
ここで提供される「丹鉄珈琲」は、京都丹後鉄道で運転される観光列車の車内でも購入することができます。
駅舎外観。
駅前。写真右手の店の前に行列が出来ていますが、富田屋という海鮮料理のお店で、
ネットの検索欄に「宮津駅前」と入力すると予測検索で店の名前が出てくるほど評判が広まっているようです。
富田屋の前を通り駅前ロータリーに進入する大阪からの高速バス。
改めて時刻表の京都丹後鉄道のページを見てみると、現在JRから京都丹後鉄道に直通する特急列車の始発駅はすべて京都駅となっており、
かつて大阪からJR福知山線を介して直通していた特急列車はすべて廃止されてしまったようです。
停車時間は10分。すぐに列車に戻りました。
12:28。列車は宮津と西舞鶴を結ぶ宮舞線区間へと踏み出します。
宮津駅を出て次の栗田駅付近まで続く市街地が途切れると、
車窓には日本海が広がります。
付近には丹後由良海水浴場があり、JR初期には海水浴客を意識した臨時列車なども運転されていましたが、
レジャーの変化の中で、スキー客向けの臨時列車「シュプール号」などとともに過去のものになってしまいました。
丹後由良駅を発車した列車は、由良海岸と並ぶ京都丹後鉄道のビュースポット「由良川鉄橋」にさしかかります。
由良川の河口にかかるこの鉄橋は550mという長さ以上に、水面から約6メートルと通常の鉄橋に比べて「低い」ことが特徴で、
ゆっくりと鉄橋を渡る列車の車窓は船室からの眺めを連想させるものです。
また鉄橋は有名な列車撮影ポイントでもあります。
由良川鉄橋の東にある丹後神崎駅のあと、東雲、四所と停車し、右からJR舞鶴線が合流すると間もなく終点の西舞鶴に到着します。
13:01。豊岡から2時間1分で西舞鶴駅に到着。
宮津での停車時間を差し引く1時間51分で途中17駅に停車しながら約84kmを駆け抜けた計算になります。
実際に乗車した感覚としても「ローカル線はゆっくり走る」という固定観念を覆すように、
必ずしも線形に恵まれない路線でありながら、非常にキビキビと走っている印象をうけました。
仮に駅まで10分、乗車40分、駅から10分、平均待ち時間15分(運転間隔30分)トータル1時間15分という移動を想定します。
乗車時間を10分短縮し30分にすれば、トータルの所要時間は1時間5分になりますが、
これは列車を3倍の本数に増発し平均待ち時間を5分(運転間隔10分)にした場合と同じ結果です。
ローカル線では時刻表を確認せずに駅に向かう人は少ないとはいえ、
駅から目的地までの距離が離れがちで、需要の少なさから増発も困難なローカル線こそキビキビ走らなければならないと考えることもできます。
西舞鶴駅も豊岡駅と同じような構造になっており、JRの改札は橋上、京都丹後鉄道の改札は地平にあります。
ガラス張りの近代的な駅舎が特徴の西舞鶴駅。
駅前は広いものの、人気店のおかげで活気が感じられた宮津駅前に比べ閑散としている印象をうけました。
駅前からは京阪神への高速バスが発着しています。
時刻表をみると京都・大阪・神戸いずれへも2時間かからずに到達するようです。
一方、鉄道に目をやれば、特急まいづる号が直通する京都はまだバスと競争する余地がありそうですが、
大阪・神戸については「バスにお任せします」と言っているようなものでしょう。
このあと観光列車あかまつ号で天橋立まで戻り駅周辺を観光しました。
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