大阪難波から、若桜までなら半額で乗車できる日本交通バスの若桜経由鳥取行に乗車。(乗車日現在の情報です。)
若桜バス停で下車し徒歩3分程で到着した第3セクター鉄道「若桜鉄道」の終点若桜駅。
駅舎入口
駅舎内では「わかさカフェ」が開店直前の準備中でした。
「開店前ですが無料試飲はいかが」と声をかけていただきました。
カフェに隣接してソファやテーブル席が並ぶラウンジがあり、
無料でいただいたコーヒーを飲んでいると空港のラウンジで飛行機の搭乗を待っているような気分になりました。
ラウンジの隣はライブラリーになっており子供向けを含め鉄道関係の本が小さな棚に並べてあります。
なお駅前にはスーパーがあります。
JR・私鉄・三セク問わず利用者数が同程度のローカル線の行き止まり駅の駅前でこのような施設を見ることはあまりありません。
改札口上の発車時刻表と運賃表。
若桜鉄道は1987年にJR( 国鉄)若桜線の廃止を受けて設立された第3セクター鉄道で、若桜とJR因美線接続の郡家を結ぶ19.2kmの路線です。
第3セクター鉄道への転換時に受けた交付金の枯渇が予想されたため今後の在り方が検討され、
2009年より公有民営の上下分離方式が採用されています。
現在のダイヤは1日10往復で若桜発の場合10本中7本がJRへ乗り入れ鳥取まで直通、
残り3本も郡家駅での接続により直通列車と変わらない40~50分程度で鳥取に到達できることがわかります。
また列車の本数は午後に比重があり、鳥取からの帰宅時間帯には概ね1時間1本の頻度で列車を利用できるようになっています。
乗車する15:16発の鳥取行きは2両編成で後ろの車両(写真)は水戸岡デザインの八頭号。
前の車両にもラッピングが施されていました。
八頭号の車内。
ボックス席の真ん中にはテーブルが設置され、
グループで乗車すれば車窓を愛でながら食べ物や飲み物を囲んで談笑ということもできそうです。
前の車両の車内はオリジナルのままでしたが、2人掛けの転換クロスシートであり、掛け心地だけの比較ならこちらの方が快適そうです。
さて若桜駅から向かうのは隼駅です。
現状では全線1閉塞(途中行き違い不可)の若桜鉄道ですが、隼駅までの途中駅である八東駅に行き違い設備が設置されることを今回の訪問で初めて知りました。
調べてみると、これにより列車の運転本数を1日10往復から15往復に増発することが計画されているようです。
(北条鉄道の記事で法華口駅の行き違い設備復活について触れ、輸送密度3桁の第3セクター鉄道でのこのような事例は珍しいと書いていましたが誤りでした。記事は一部修正消去させていただきました。)
若桜からつづくのどかな沿線風景。
15:38。若桜から22分で隼駅に到着。
隼駅の1日の利用者数は50人程度。
列車が出てしまうと次の列車到着まで静かな時間が流れます。
ホームに設置されていた古い計り。
駅舎内。
若桜駅に比べると昔のままの姿ですが、美しく保たれている印象を受けました。
手前の窓口が切符売り場、奥は手荷物の窓口となっており、
ホームにあった計りを使って荷物の送料を算出していたようです。
美しい姿を保っているのは外見も同様で
隼駅舎は登録有形文化財にも指定されています。
隼駅はスズキが製造する同名のバイク所有者の間で有名になりライダーの訪問が絶えないほか、
2009年からはライダーが集う「隼祭り」が毎年夏に開催されています。
駅舎の窓口内は訪れるライダー向けの土産物売り場?になっていましたが、冬季は休業とのこと。
冬は寒い上、路面凍結や積雪などもあって、鉄道ファンのように「趣味は年中無休」とはいかない方も多いのでしょう。
なお窓の上部に「隼駅を守る会」の文字が見えますが、バイクファン有志ではなく、それを迎える地元の方が起こしたもののようです。
この小さな駅をベースに良い雰囲気が醸成されているのは素晴らしいことだと思いますが、
鉄道ファンとしては、せっかくなのでバイクファンの方にも若桜鉄道に乗ってほしいという思いもあります。
「鉄道で訪問してください」は見当違いだとしても、
「バイクを置いてローカル列車で鳥取まで食事に出かけませんか」くらいの呼び掛けがあってもよさそうな気がします。
誘う先は「わかさカフェ」でもよいかもしれません。
中を覗くと冬季休業にも関わらずストーブが中央に鎮座しており、
この付近が冷涼な気候の土地であることを思い出させてくれました。
駅舎の郡家方には旧JR(国鉄)の12系客車と北陸鉄道で使われていたという珍しい電気機関車が留置されていました。
12系客車はここを訪れるバイクファンのライダーハウスとして活用されているようです。
若桜鉄道の前進国鉄若桜線は昭和3年にここ隼駅まで開通し2年後に若桜へ延長されています。
わずかな期間とはいえ終着駅としての機能を果たしていたため駅周辺に広いスペースがあったことが有利に働いたようです。
ホームにはこんな植樹もありました。
植樹から約11年で大きく育ったことがわかります。
16:35。約1時間の隼駅滞在ののち後続の列車で鳥取へ向かいます。
「水戸岡デザイン車両」は3両あってブルーのものは昭和号と名付けられています。
JR因美線と合流する郡家駅の手前900メートルの位置にある八頭高校前駅は、
郡家駅から高校まで歩く生徒に短区間でも鉄道を利用してもらいたいという観点で若桜鉄道発足後に新設された駅です。
そのような開業経緯もあって当時郡家~八頭高校前間の運賃は60円と格安に設定され話題になりました。
現在は100円になっています。
郡家駅に到着。しばらく停車したのちJR 因美線に入り鳥取へ直通します。
隼駅乗車後の車内改札で郡家までの乗車券を購入した際に受け取った乗車証明書。
郡家駅から先へ直通するJR線の鳥取駅などで下車する際に「JRの利用は郡家駅から」という証になります。
17:09鳥取駅に到着。
駅周辺で夕食をとり19:09発の「とっとりライナー」で宿泊予定の米子へ向かいました。
夕方の時間帯、米子方面へ急ぐ列車は特急ばかりで、
追加料金不要の快速とっとりライナーは混雑すると思い早めにホームへ向かったものの、
鳥取発車時点で座席定員程度にとどまりました。
鳥取から各方面への路線の輸送量は、現在では米子方面より智頭方面の因美線の方が多いのかもしれません。
とっとりライナーに使われる126系ディーゼルカーは、低コストを意識した車両でありながら、
落ち着いた内装で長時間の乗車にも耐える車内になっています。
20:42米子駅到着。
鳥取から92.7kmを途中12駅に停車して93分で駆け抜けた計算になり、
停車時間も含めた平均時速はJR東海か運行する特急電車「伊那路号」や「ふじかわ号」を上回っています。
そのスピードもまた「とっとりライナー」の魅力です。
国鉄時代から米子駅が重要な役割を果たしてきたことを誇示するかのような存在感のある米子駅舎は、
間もなく建て替えられることになっています。
今夜の宿は米子駅から徒歩10分少々のANAクラウンプラザ米子です。
玄関に空港リムジンバスが乗り入れる米子を代表するホテルは、
青春18切符を使った旅行とはやや不釣合な印象もありますが、
今回は1泊素泊まり5198円と底値で予約することができました。
翌日はJR境線と一畑電鉄に乗車しました。
つづきはこちらです。