2020年11月28日、香川県内に約60km の路線を持つ「高松琴平電気鉄道(通称ことでん)」の琴平線に新駅「伏石駅」が開業しました。
琴電の駅としては平成25年開業の「綾川駅」以来7年ぶりの新駅開業です。
JR高松駅に隣接する琴電のターミナル高松築港駅から琴平線の電車で約12分、5駅目にあたります。
開業日の朝に早速訪問しました。
バスターミナル建設工事が続く伏石駅前。
新規開業の伏石駅は、
駅周辺に古くからの市街地が広がる、隣接の三条駅や太田駅ではスペースの面で限界がある「電車とバスの結節拠点」としての役割が期待されています。
そういう意味では、伏石駅の真価ざ試されるのは、来年春以後とされる駅前バスターミナルが完成してからと言えそうです。
なおバスとの結節の「バス」には地元の生活路線だけでなく、
高松と関西方面を結ぶ高速バスも含まれているようです。
琴電沿線からは一部の高速バス停に併設された駐車場まで車で行かなくても電車から乗り継いで遠方に出かけられるようになり、
京阪神からは一大観光地でありながら直通するバス路線がない琴平方面への短絡ルートとして利用できそうです。
駅前が工場中のため駅舎への入口はややわかりにくく、
駅の目の前に、駅への道案内看板が設置されていました。
バスターミナルが完成するまでの間、
待合室横の「勝手口」のような入口が、
この立派な高架駅の玄関となるようです。
待合室にはベンチのほか、
自販機、バリアフリートイレなどが設置されていました。
電車の待合室というより、バスターミナル完成後のバス利用者向けの待合室という印象を受けました。
高架下のコンコースは比較的シンプルですが、開業を祝う花が彩りを添えていました。
頭上の発車案内。
伏石駅が開業した琴電琴平線の高松市内区間は全国の地方私鉄でもトップクラスの旅客需要がある区間で、
列車は日中以後15分間隔、平日朝ラッシュ時には7分半間隔の運転となっています。
下り琴平方面の時刻表。
琴平方面については伏石駅地点では15分毎の運転ですが、
半数は途中の一宮または滝宮で折り返し琴平まで直通するのは2本に1本です。
なお伏石駅開業にあわせ琴電全線でダイヤ改正が行われ、
伏石駅を含む琴平線に関しては、ほぼコロナ以前の水準まで列車本数が回復した一方、
長尾線は従来(コロナ減便前)の日中20分間隔が24分間隔に、志度線は日中20分間隔が30分間隔に変更されています。
高松市内の気軽な近距離利用も多い志度線の減便は残念ですが、
「単なる減便にしない」という観点で個人的に思うのは、
志度線に並行するJR高徳線の普通列車が日中30分~1時間間隔のランダムダイヤで運転されており、
琴電の減便で両者の運転頻度の差は縮まったことになります。
JR四国は同じく日中30分~1時間間隔のランダムダイヤだった牟岐線の徳島近郊区間について、
2019年3月改正から増発の上30分の等間隔ダイヤとしており、
仮に同じような積極策が採れるならば、両路線の運転間隔が揃い、接続を意識したダイヤを組むことで、
これまでは志度駅や八栗新道駅(JRは讃岐牟礼駅)で「隣接」と言える場所に駅を構えながら、
ほぼ無関係のダイヤで運転されていた両路線の結節強化を図ることができそうです。
ただJR四国もコロナの影響で特に日中の利用者が減少しているとの報道もあることを考えると、
複雑な思いですが、JRも減便して30分~1時間のランダムダイヤを1時間の等間隔ダイヤにすれば、
それはそれで接続ダイヤが組めるのかも知れません。
その場合JRも単なる減便ではないことになります。
「相方がいなくなる」琴電志度線の1本については、従来から1時間間隔で運転されているJR高徳線の特急うずしお号と志度駅で接続させるということも考えられます。
こちらは伏石駅の運賃表。
高松市の繁華街に近く志度線、長尾線との乗り換え駅である瓦町まで190円、
JR 高松駅に隣接するターミナル高松築港駅までは250円。琴平まで590円です。
近距離の運賃はJRの1.5倍程度となる区間もありますが、
先述のようにJRと並行する志度線では減便されてもなおJRより高い頻度で列車が運行されています。
極端な言い方をすれば「安いが不便なJR と高いが一定の利便性を維持することに熱心な地方私鉄」が共存するという構図は、
高松における琴電とJR四国に限らず全国の地方都市で見られます。
一昔以上前の話ということになりますが福井近郊に路線を持っていた京福電鉄は、
モータリゼーションなどで長期にわたる利用者減少がつづき、
JRを大きく上回る運賃水準で経営を続けていましたが、
設備投資もままならないなか2度の正面衝突事故が発生。
安全対策が完了するまで列車の運行停止を命じられる事態になると、
その費用を捻出できない。として、そのまま路線廃止に至りました。
その結果、突如県都に乗り入れる鉄道がなくなった地元では大きな交通混乱が生じ、
渋滞の増加などで、従前から車を利用していた人も含め、
多くの住民が鉄道の必要性を再認識させられた。と言われています。
福井での京福電鉄の経営難については、事故による路線廃止前には、
「トレードオフ」要は運賃が高いから客が乗らず経営難になっている→京福電鉄の経営センスの問題。という認識が広がっていたとも言われていますが、
高いことや値上げは一律に「悪」で、安いことや値下げは一律に「善」であるという一般通念は、
地方都市の公共交通を考えるうえではマイナスに作用することはあってもプラスに作用することはないと個人的には思っています。
(京福電鉄廃止後の福井では第3セクターの「えちぜん鉄道」が設立され、一部区間を除いて、京福電鉄の廃止路線を引き継ぐ形で列車が運行されています。)
切符を購入し高松築港行の電車に乗るためエレベーターで高架のホームへ向かいます。
伏石駅には改札口はありません。
琴電は独自のICカード「IRUCA 」で乗車することもでき、またSUICAなど他の交通系ICカードにも対応していますが、
それらのICカードで乗車する場合はホーム入口にある乗車用のカードリーダーにタッチしてから乗車します。
一般的な自動改札機がある駅と違いタッチを忘れてもそのまま乗車できてしまうだけに、
大都市圏から琴電を訪問する方は注意が必要です。
伏石駅ホーム全景。
4両編成対応の対向式ホームが2面。
伏石駅を挟んで隣接する三条駅と太田駅の間は伏石駅の開業にあわせ複線化されました。
公式に発表されているわけではありませんが、
従来のダイヤを維持するためには、この区間の複線化は避けて通れない道であったと思われます。
平日朝ラッシュ時に、運転間隔が7分半間隔となる時間帯、従来は、
(上り)太田駅→三条駅(行き違い)
(下り)三条駅→太田駅(行き違い)
(上り)太田駅→
というサイクルを7分半で回していたものが、途中に伏石駅が開業したことで不可能になってしまったということのようです。
なお太田駅と次の仏生山駅の間にも新駅設置の計画があり、その際には同区間も複線化される予定のようですが、
駅設置と複線化が抱き合わせになる理由は同じと思われます。
もちろん複線区間が長くなれば柔軟なダイヤ設計ができ、
ダイヤが乱れた場合の収束も容易になるなどの幅広いメリットがあります。
対向ホームに琴電琴平行が到着。
2両編成の場合は、琴平方に寄せて停車する形になるようです。
高松築港方の風景。
近代的な複線高架の軌道の先には密度の高い市街地が広がっており、
大都市圏の大手私鉄の駅を思わせる光景です。
8:16発の高松築港行は京王電鉄からの移籍車両でした。
車両最後部から写した琴平方の風景。
さらなる新駅設置計画がある仏生山駅方面にかけ、市街地が続いている様子がわかります。
今回はコロナの逆風の中で開業した地方私鉄「ことでん」の新駅訪問を通じて、
地方のローカル鉄道のなかでも、比較的需要のある路線について、個人的な考えを述べさせていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
2020.11.28開業 琴電伏石駅に発着する京急ラッピング車両等
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コロナ禍の地方私鉄に明るい話題。
— 西浦特急 (@nishiuraexp2020) 2020年11月27日
本日開業の琴電(香川県)琴平線伏石駅を早速訪問しました。 pic.twitter.com/LAILSbAuSu