今回はJR西日本姫路駅から兵庫県播磨地方を南北に走る2つの路線に乗車するミニトリップに出かけます。
最近は週末毎に雨が降っていたように思いますが今日はまずまずの天気になりました。姫路駅舎の2階は「駅前通りと姫路城を描いた大きな絵の額縁」というコンセプトで設計されたようです。
姫路駅山陽本線ホームにある名物の「えきそば」ですが、駅前地下街「グランフェスタ」にも店舗があることは地元の人や姫路を頻繁に訪れる人以外にはあまり知られていないのではないでしょうか。
今回は入店していませんが、ホームと同じ値段で座って食べることができるのでお勧めです。(お城口を出たところにある地下街への階段を降り、突き当たりを右に進んだところにあります。)
さて今回のミニトリップですが、姫路駅から赤のJライン播但線で終点の和田山まで行き、Eライン山陰本線とGライン福知山線(地図では途切れている部分にある福知山駅で両線はつながっています。)で谷川へ。そこから分岐する緑のIライン加古川線で加古川まで南下するという行程になります。
播但線のダイヤは最近までランダムでしたが、ここ数年で若干の増発とともにパターン化が実現しています。
同時期に最終列車の繰り下げも行われ、東京発20時50分の姫路行「のぞみ135号」(新大阪以西への最終便)からの乗り換えができるダイヤになっています。最終列車の終点寺前着は0時51分となり地方交通線に分類されている路線の中ではトップクラスの遅い時刻までの運転です。
姫路駅から播但線や姫新線に乗車する場合、まず神戸線(山陽本線)と同じ改札を通ったあと、
播但線・姫新線の専用改札口を通ることになります。
播但線ホームへの階段には播但線各駅を描いた版画が駅の順番に飾ってありました。
播但線は沿線の生野にある銀山で産出される銀を含む鉱物を姫路港(飾磨港)へ馬車で輸送した時代の「馬車道」にそのルーツがあるようです。
その名残りだったのでしょうか、現在の播但線は姫路が起点になっていますが、国鉄末期までは姫路~飾磨港間も播但線の一部(通称飾磨港線)として運転されていました。
ホームに上がると先発の「はまかぜ1号」が山陽本線下りホームに入線するところでした。下りの「はまかぜ号」は姫路から播但線内の福崎・寺前・生野・(竹田)に停車しますが、播但線ホームには入らないので姫路から乗車する場合は注意を要します。
一方、姫路から神戸線に入り、明石・神戸・三ノ宮に停車して大阪へ向かう上り「はまかぜ号」は播但線ホームからの発車です。
「はまかぜ1号」の8分後に発車する10時52分発寺前行きに乗車します。103系2両編成での運転です。
播但線用に改造を受けた103系は3500番台と呼ばれますが、朝夕など2両を2本つないだ4両での運転が多いにもかかわらず正面は非貫通(先頭同士を繋いだ際の通り抜け不可)になっています。
一方「お隣」加古川線の103系(3550番台)はほとんどが2両のまま使用されるにもかかわらず先頭部の通り抜けができるに構造になっているというのは不思議な感じがします。
20人程の立客を出して姫路駅を発車。2駅目の野里駅の先までは高架線を走行します。高架化は昭和50年代でこれも地方交通線としては早い段階で実施されたものです。
マンションが立ち並ぶ野里駅周辺は姫路市街の北の玄関の様相を呈しています。
その野里駅では上り列車と行き違い。対向列車は立客多数でした。
非電化時代の播但線は福崎・寺前など内陸の人が姫路へ出る交通機関としての役割が今以上に大きく姫路市街の入口にあたる当駅手前が最混雑区間だった(つまり姫路行の場合野里からは降りる方が多かった)ようですが、増発やパターンダイヤ導入で姫路市内の気軽な利用が増加し最近では状況が変わっている印象を受けます。
野里駅の先で高架は終わり地平に降りて最初の駅が砥堀駅です。
播但線は平成10年に電化された際、同時に高速化も実施されました。高速化というと軌道強化による最高速度向上をイメージしますが、播但線の場合この砥堀駅と寺前の一つ手前の新野駅への行き違い設備の新設がメインだった印象です。
結果的に姫路~寺前の全駅で行き違いができるようになり、また多くの駅に写真のような安全(脱線)側線が設けられたため行き違い待ちのための停車が最小限に抑えられています。
播但線全線で平行する国道312号線。
昭和48年という早い段階で高規格道路の播但連絡道路が開通したこともあってか、交通量が多い割には姫路市内の一部をのぞいて片側一車線のままで残り、駅近くの住民が姫路へ出かける場合は「電車の方が早い」状況になっているようです。
姫路市内最後の駅「溝口駅」で2回目の行き違い。
姫路~福崎間の各駅は砥堀を除いて1日1000人以上の利用があり、上り列車の場合30分ヘッドの運転でも駅ごとにまとまった乗車があるようです。
姫路から17.1kmを30分弱で走って特急停車駅で折り返し列車も多い福崎駅に到着しました。姫路の都市圏もここで一段落です。
播但線の姫路~福崎の輸送状況に似通っていると個人的に思うのが静岡県の「遠州鉄道」です。遠州鉄道は浜松市の新浜松駅と同市西鹿島駅の間17.8kmを結ぶ地方私鉄で、浜松市の平成の大合併前の人口規模は姫路市よりやや多い程度だったと記憶しています。
(写真)遠州鉄道の車両と新浜松駅の時刻表 2両が基本・赤丸は4両 2012年撮影
遠州鉄道はその浜松市の近郊輸送を担い、早朝深夜を除いて終日12分間隔のダイヤを実施しています。浜松~西鹿島の運賃は470円。途中16の駅に停車して32分で走行しています。輸送密度は少し古いデータですが11000人程度となっています。
対する播但線は朝夕は10~20分間隔と遠州鉄道に匹敵する運転間隔となっていますが、日中はようやく30分の等間隔ダイヤが実現したばかり。姫路~福崎の運賃は320円。途中6駅で所要時間は25~30分程度となっています。
輸送密度は姫路~寺前で8904人(JR西日本HPより)となっていますので、姫路~福崎に限定すれば遠州鉄道と同等以上になるものと思われます。
両社の比較では、総じて遠州鉄道は播但線に比して運賃は高いものの、頻発運転とこまめな駅設置で輸送サービスの質は運賃差以上の差がある印象です。
播但線は経営的には姫路~寺前の電化区間に限れば黒字と言われています。それは言い換えれば、私鉄の遠州鉄道も駅の統合や減便によって輸送サービスの質を播但線なみにすれば、浜松~西鹿島の運賃を470円から300円程度に値下げすることが可能ということかもしれません。
しかし遠州鉄道の答えはJRの1.5倍の運賃を設定してでも、日中も12分間隔で電車を走らせ 約1km間隔の駅を維持するというものです。
「なぜそのような答えを出すに至ったのか」その背景を一度尋ねてみたいような気がしますし、播但線に限らず四国内の「ことでん」「伊予鉄」(私鉄)とJR四国の比較でも同じことが言えると思います。
姫路・浜松・高松・松山などの都市圏で鉄道を利用する人の数は、東京や大阪で鉄道を利用する人の数に比べれば桁違いに少ないかも知れませんが、最近廃止になったJR西日本の三江線やJR北海道の閑散路線に比べれば桁違いに多いわけで、これらの地方都市圏輸送を適正化することこそが、全国に鉄道ネットワークを有するJRの将来の姿を左右する「本当のローカル線問題」なのではないかと思っています。
福崎から先は車内にも余裕ができ車窓にも田園が広がります。この区間の線路は高速化により最高時速110kmを許容するようになりましたが、103系の車両性能上の最高時速は100km。電車はモーター音を響かせ全力疾走します。
姫路から約45分で播但線の電化区間の終点寺前駅に到着しました。
寺前は「播但」の「播」播磨地方の北端に位置し、「但」の但馬地方の終点和田山駅へはディーゼル列車に乗り換えとなります。
姫路駅播但線ホームへの階段にあった寺前駅の版画。大胆なタッチですが、この駅の本質をよく現しています。
つづきはこちらです。