岡山から赤穂線で到着したJR 西日本相生駅。
山陽本線の上り列車に乗れば姫路まで20分の距離ですが、
今回は山陽本線下り列車に乗り継いで2駅目の上郡へ向かいます。
3番線で発車待ちをしていた上郡行。
姫路方面から播州赤穂へ向かう列車からの乗り換えを受け、上郡まで2駅だけを走る列車です。
この写真を撮ったあと姫路方面からの列車が到着し乗り換えがあったものの、
出控えの影響もあったのか、発車数分前の時点で無人の車両もあるほど空いていました。
10分少々で上郡駅に到着。
山陽本線の下り列車では、この駅が兵庫県最後の駅となり、
姫路・相生方面からの列車の半数がここで折り返すダイヤになっています。
岡山方面へ向かう列車はこの先、船坂峠を超えて岡山県に入りますが、
県境を跨ぐ次の三石駅までは12.8kmもあり山陽本線の駅間としては最長となっています。
さて到着した上郡駅2・3番線ホームの岡山寄りには鳥取方面へ向かう智頭急行の普通列車のりばがあります。
普通列車と断っているのは、岡山や京阪神から鳥取へ向かう特急列車は、直通運転する山陽本線のホームを使うためです。
小さな駅舎内には出場用の改札機と智頭急行の切符販売窓口があります。
ICOCAなどのICカードで到着した場合は改札機で下車処理をした後、智頭急行の切符を購入しホームへ進みます。
ここが県境の駅であるという予備知識があると、
特に兵庫県に住む人にとっては、陸続きの国境施設のようなイメージかもしれませんが、
山陽本線と違い智頭急行線の場合、上郡から先もしばらくは兵庫県内を走行します。
智頭急行線の時刻表。
黄色か岡山から鳥取へ向かう特急スーパーいなば号、紫色が京阪神から鳥取方面へ向かうスーパーはくと号で、結構な本数の特急列車が走っていることがわかります。
上郡~智頭( 鳥取の南約30km) までの智頭急行線内のみ特急の自由席を利用した場合、普通運賃に追加で支払う特急料金は430円と安いので
岡山や京阪神から鳥取へ向かう場合、
上郡までと智頭から先はJRの普通列車を利用(青春18もOK) し、
智頭急行線内だけ特急を利用すると「安くて早い」移動が可能になります。
下記は京阪神からの乗り継ぎの一例です。(休日ダイヤ)
京都7:29発
大阪8:00発
三宮8:24発
姫路9:11発
(新快速3407M )
相生9:30着
※乗り換え1
相生9:32発
(普通719M )
上郡9:44着
※乗り換え2
上郡9:50発
(特急スーパーいなば3号)
智頭10:31着
※乗り換え3
智頭10:48発
(普通634D )
鳥取11:33着
この乗り継ぎの場合、大阪~鳥取の所要時間は3時間33分、費用は運賃3960円、特急料金430円となります。
さて今回は佐用まで兵庫県内区間だけの短距離乗車です。
10:27発の普通列車は「あまつぼし号」というラッピング車両でした。
車内もリニューアルされているようでしたが、個人的には一般車両の4人掛けシートの方が好みです。
特急が頻繁に往来する路線らしく軌道は立派で、普通列車も駅間ではかなりの高速で走行します。
上郡から約20分でJR 姫新線の線路と並び佐用駅に接近。
姫新線との軌道レベルの違いは一目瞭然です。
JR と智頭急行が一体になった佐用駅舎。
佐用駅付近がその中心となっている佐用町もまた岡山県と県境を接する兵庫県西端の町です。
佐用からはJR姫新線に乗り換えて津山へ向かいます。
写真は佐用駅JR切符売り場にあった路線図ですが、
佐用駅を通り山陽本線上郡(佐用の右下)と因美線の智頭(佐用の左上)を結ぶ智頭急行線は存在しないかのようです。
破線ででも示してあればよいのにと感じました。
最近交通の世界ではMaaS ( Mobility as a Service ) という言葉が急浮上しているようですが、
個人的には、駅の券売機で切符を1枚買えば「指定エリアの国鉄・地下鉄・路面電車・バスなど全ての交通機関が2時間乗り放題」というような事例がよく見られるヨーロッパにおいて、
それをさらに発展させようという概念なのではないかと思っています。
多数の鉄道会社が乱立し、それぞれに運賃を設定し、会社単位でさまざまな情報提供が行われている日本では、
一足飛びにMaaSを語るよりも、MaaSの意図を捉え、その意図に反していると思われるものを一つずつ潰していくという姿勢が現実的なのではないでしょうか。
JR姫新線は姫路と伯備線接続の新見を結ぶ路線ですが、姫路近郊区間を除けば長大ローカル線の様相を呈しています。
佐用駅では津山・新見方面、姫路方面とも1~2時間に1本程度のダイヤになっています。
11:04発津山行の車両はJR 西日本の閑散路線の定番キハ120。
車内はリニューアルされており、
「この車両まだまだ使い続けるぞ!」というJR西日本の意気込みが伝わってくるようです。
京阪神からのスーパーはくと号の到着を受けて発車。
大阪から津山方面へはJRと神姫バスが、共同で中国自動車道経由の高速バスを運行しており、その一部は京都発着となっていますが、
神戸~津山については現状では姫路から、または佐用で智頭急行から姫新線に乗り継ぐルート以外に現実的な選択肢がありません。
姫新線の岡山県区間では「完全平行」の中国自動車道が車窓に見えました。
津山~大阪のような広域移動だけでなく
佐用から津山のような日常生活での移動でも(姫新線ではなく)都市高速のように中国自動車道を短距離利用する人が少なくないのではないでしようか。
途中の美作江見駅。
駅舎前だけでなく駅舎内まで多数の花で埋められており、
植物園のようになっている様子が車内から見て取れました。
鳥取からの因美線が合流する東津山駅。
姫新線は姫路方面が上り、因美線は鳥取方面が上り、岡山と津山を結ぶ津山線は岡山方面が上りです。
津山は随分低く見られたものです。
12:02。佐用から約1時間かかって津山到着。
駅前の道を5分程歩くと市内を流れる旭川にかかる橋にさしかかります。
左手には岡山の地元デパート天満屋の店舗が見えており、津山の都市の「格」を誇示しているかのようです。
右手方向には、市街地越しの小高い山の上に津山城の城郭の一部が見えています。
城郭の周囲に見えている樹木は桜で一帯は花見の名所でもあるのですが、内陸の津山ではまだ蕾のようでした。
2013年春に撮影した津山城の桜です。
旭川を渡ったあたりが津山市街地の中心のようで、
地方都市の風情とともに岡山県の北の要衝らしい活気も感じられました。
本日の昼食は、天満屋上階にあるレストラン「シャロン」の豚生姜焼き定食。
帰りは、天満屋の2階から続く、旭川にかかる歩行者専用の橋を渡り津山駅に戻りました。
津山13:29発。津山線の快速ことぶき号で岡山に戻ります。
春先ののどかな風景が広がる弓削駅で対向列車の待ち合わせ。
やってきた津山行の快速ことぶき号は「みまさかノスタルジー」仕様の国鉄色編成でしたが、
同じ国鉄色でも急行色に変更されていたことを初めて知りました。
この色にするなら最近まで津山線で活躍していたキハ48(デッキと客室が区分された車両)のほうが似合っていると思うのですが、
キハ48はどこへ転属してしまったのでしょうか。
同じ桜でも城郭のものとは樹種が違うのか、津山周辺でもすでに開花しているものもあるようです。
国内でも大都市圏を中心に流行が広がりつつある新型疾病の感染者数は、旅行日時点の岡山県では0人。
だから安心というわけではありませんが、津山線ではいつもの春と変わらない穏やかな車窓・車内風景が展開していました。
岡山の一つ手前の法界院駅は駅付近に岡山大学などが立地しており、
岡山までの一駅のみの利用が多いことは津山線の特徴のひとつですが、
JR初期には多数あった岡山~法界院のみを運転する列車は、現在では平日下り1本を残して廃止されています。
法界院をでて間もなく山陽本線と山陽新幹線の高架か合流すると間もなく岡山に到着します。
14:37。津山から58.7kmを1時間少々で駆け抜け岡山駅に到着。
快速ことぶき号は、西日本では山陰本線の快速とっとりライナー・アクアライナーや芸備線の快速みよしライナーと並び、
ローカル輸送での実力と鉄道旅行で利用する際の魅力を兼ね備えた列車だと思っています。
朝、赤穂線方面に向けて出発した岡山駅に戻ってきたところで今回の旅行記は終了です。
最後までお読みいただきありがとうございました。