兵庫県小野市。神戸電鉄粟生線で到着した終点粟生駅はJR加古川線と北条鉄道も乗り入れるターミナル駅です。
日中の粟生駅は毎時0分からの10分程の間に、まず神戸電鉄粟生線・北条鉄道が到着、そのあと加古川線の上下列車が到着して4本の列車が並び、乗り換え客が行き交ったのち、各列車が東西南北へ発車していくダイヤになっています。
今回は第3セクターの北条鉄道に乗り継ぎます。
北条鉄道は昭和60年に国鉄北条線のあとを継ぐ形で発足しました。
前記事では三木鉄道三木駅跡の公園を訪問しましたが、三木鉄道と北条鉄道はともにJR(国鉄)加古川線の支線として同じ日に国鉄から移管され営業を始めています。
三木鉄道のほうは平成20年に廃止されましたが、北条鉄道は開業から30年以上を経た現在でも国鉄末期と同レベルの輸送量を維持しつづけています。
運営の主導権を握る加西市としても「北条鉄道は黒字ではないが、仮にバスに転換すれば北条鉄道の赤字を上回る経費がかかることが見込まれる、それなら積極的に鉄道を活用しよう」という方針が固まっているようで、決して他の第3セクター鉄道に比べて利用者が多いわけではありませんが、現状では三木鉄道と明暗がわかれたように見えます。
北条鉄道の路線は粟生駅から隣の加西市の中心にある北条町駅まで約13kmで、駅は両端を含め8駅有ります。
今回は粟生からの乗車ですが、拠点は北条町にあり、北条町を中心とする加西市の沿線住民をJR加古川線や神戸電鉄につなげるというのが主たる役割のようです。
運賃は全線で410円です。全線を乗り通す客が多いのは北条鉄道の特徴の一つです。
全線往復と同額の820円で1日乗車券も発売されています。
粟生から乗車して1日乗車券を購入する場合は運転士から引換券を発行してもらいますが、この引換券が1日乗車券として使えるとのことでした。
(発車間際に購入すると列車の遅れにつながるので早めに購入してほしい旨の注意書きがありました。)
車内。日中の北条町行の乗客は10~15人程度でした。
沿線は、神戸市の中心部から40km~50kmの大都市近郊ですが、終点北条町駅の手前まで牧歌的な車窓がつづきます。
途中駅は戦前からの古い駅舎が残る駅が多く登録有形文化財の指定を受けている駅もあります。その一方でトイレなどはしっかりリニューアルが行われているようでした。
粟生から約20分、終点北条町の一つ手前「播磨横田」駅で下車しました。
田園風景の中を加西市中心部へ向けて走り去る列車を見送ります。
播磨横田駅のホームには小さな美術館があります。
神戸在住の川瀬倭子氏の作品(抽象画が中心)が30点ほど展示されていました。冷暖房完備の快適な待合室を兼ねています。
播磨横田駅の外観。
播磨横田駅の時刻表。北条鉄道は終日1時間毎の運転です。
このまま北条町へ向かおうとするとかなり待ち時間がありますが、反対の粟生方面の列車は北条町行の到着から15分後にあります。
美術館を見学して駅舎を写していると、まもなく粟生方面の列車が到着。
これに乗ることにしました。
下車したのは3駅進んだ法華口駅。
この駅舎も登録有形文化財に指定されています。
法華口駅は現在1面1線の駅ですが、ホームの端では構内踏切の設置工場が行われていました。
来年完成の予定でかつて使われていた行き違い設備を復活させる工事が行われています。
輸送密度が3桁の第3セクター鉄道へのこのような投資はあまり例がないように思います。
北条鉄道の利用実績が長年にわたり安定している点が影響しているのでしょう。
(追記:鳥取県の第3セクター鉄道若桜鉄道でも途中駅の八東駅に行き違い設備復を設置する工事が行われています)
古い駅舎の横には地元の大工から寄贈されたという立派な三重塔が建っていました。
三重塔。
文化財の駅舎内ではモンファボリというパン屋が営業しています。
パンを買って駅舎内で食べることもできるイートインスタイルのパン屋です。
コーヒーを駅前の自販機で買ってしまいましたが、パンと一緒にドリンクも買えるようでした。
再び北条町方面の列車に乗るためホームに出ると、枕木に取り付けられているプレートに目がいきました。
北条鉄道の枕木応援団という企画で枕木1本相当の4500円を北条鉄道に寄付することで写真のようなプレートが3年間設置され1日乗車券がもらえるというもののようです。
粟生行きの列車で到着して26分、粟生まで行って折り返してきた北条町行に乗車します。
法華口駅から13分、さきほど途中下車した播磨横田を通り過ぎ、終点の北条町駅が見えてきました。
終点の北条町駅でも駅での集改札は行われておらず、途中駅と同じく下車時に運賃の支払いや1日乗車券(引換券)の提示を求められます。
終点北条町駅。斬新な駅舎です。
駅周辺の街並みも再開発により近代的な景観に生まれ変わっています。
駅の目の前には「コープ神戸」を核とするビルがあるほか、徒歩5分程のところにはイオンSCもあります。
交通面についても、鉄道地図では行き止まりに見える北条町駅ですが、駅前から姫路行の路線バスが1時間に1本程度出ているほか、写真の地図のように中国自動車道上に設置された北条バスストップまで徒歩10分程でいくことができます。
北条バスストップは特急便停車の主要停留所で大阪方面が1時間に2本、神戸三宮方面が1時間に1本程度の頻度で高速バスに乗車できます。
今回のように、行ったり来たりして途中下車を楽しむという利用方法は北条鉄道もオススメしているようです。
北条鉄道の駅にあったパンフレットによれば昼食を挟んで4時間程あれば全駅に降り立つことができるようです。これも1日券があれば運賃は820円で済みます。
ちなみに今回は1回戻っただけですが、運賃を調べると粟生~播磨横田が380円、播磨横田~法華口が260円、法華口~北条町が310円。計950円で、片道ながら1日乗車券の元がとれた計算になります。
神戸市兵庫区の神戸電鉄のターミナル新開地から約50km。兵庫県加西市の北条町駅に到着したところで今回の訪問記事は終点です。
最後までお読みいただきありがとうございました。