岡山駅と高松駅を1時間弱で結ぶJRの快速マリンライナー。
早朝から深夜までほぼ30分毎に運転され、編成はほとんどの便が5両編成となっています。
そのうち高松寄り先頭車は2階建て車両で階上と運転席すぐ後ろの区画がグリーン席です。(階下は普通車指定席)
運転席のすぐ後ろの区画は前面展望(岡山行は後面展望)を楽しむことができるパノラマ席になっています。
席番は1A ~1D の4席のみです。
AB は運転席の真後ろとなるため、前方(後方)の景色はCD 席のほうがよくみえます。
指定券の販売システム上も他のグリーン席と区分されているようですので、窓口で購入するときは「パノラマ席希望」と伝えたほうが良さそうです。
今回は1D を予約しました。
列車は定刻に岡山駅を発車。瀬戸大橋へと続く宇野線の軌道は岡山駅を出ると地平の山陽本線と高架の山陽新幹線の間を抜けて南に進路をとります。
宇野線は瀬戸大橋開通までは全線が単線でしたが、瀬戸大橋後は列車の増加にともないボトルネックが指摘されるようになり、岡山の次の大元駅周辺と妹尾駅周辺、早島駅周辺が順次複線化されました。
複線化と同時に高架駅になった大元駅を通過。
大元駅の先のカーブ区間にみえているのは中継信号機です。
道路の予告信号機と同じくカーブで見通しが悪い区間などでその先にある信号機の現示を事前に知らせる役割があり、車以上に「急に止まれない」鉄道では多用される傾向にあります。縦3灯が進行(青)、斜めが注意(黄)、横が停止(赤)を意味します。
次の備前西市駅手前で高架区間が終わるとともに単線になりますが
高架を降りた先にある備前西市駅は行き違いができるようになっています。
このような単線区間の行き違い駅では多くの場合左側通行となります。
かつては駅の前後に両側に開く形のポイントを設置するのが通例でしたが、この駅のように通過列車が多い駅では片側が直線となるような線形に改良し、通過列車は上下列車とも直線側を通過するようにしている事例がJR化後多くみられるようになりました。
このような改良工事は「一線スルー化」と呼ばれ、JR九州・四国・西日本では特によく見られます。
備前西市駅からはしばらく単線になりますが、妹尾駅が近づくと再び複線に。
複線に移行する地点のポイントは両開きスタイルですが、一部列車を除いて80kmでの通過が許容されるものが使用されています。
写真左下に見える勾配票の「L」はLEVEL(勾配なし)を意味しています。
岡山を出て最初の停車駅である妹尾駅に接近。
黄色一色に塗られた普通列車は、この区間では日中は1時間に1本のみの運転となっており、30分間隔に運転される快速マリンライナーが停車しない駅は、政令指定都市となった岡山市の近郊区間としては非常に不便だと思います。
12:20妹尾駅に到着。左上に見えている標識の「5」は5両編成の停止目標です。
妹尾駅から再び単線になり1面1線の備中箕島駅を通過。
次の早島駅手前の高架道路をくぐると複線にもどります。
30分間隔で運転される快速マリンライナーのうち日中の便は妹尾停車・早島通過の便と、妹尾通過・早島停車の便を繰り返すダイヤになっています。
乗車中の29号は前者で早島駅は通過します。
早島駅を通過したところで対向のマリンライナー28号と行き違い。
こちらは早島停車・妹尾通過の便となっています。
早島の次の久々原から単線となったのち、12:25茶屋町駅に到着。
茶屋町・児島・坂出の3駅はマリンライナー全便が停車します。
茶屋町までは単線・複線、高架・地平が入り交じる「隘路」でしたが、茶屋町からは全線高架複線(瀬戸大橋含む)の幹線らしい軌道になります。
茶屋町を出ると列車は一気に加速。
マリンライナーの最高速度である130km/h に近い速度に達します。
120km/hの「制限」標識がこの区間の線形の良さを誇示しているかのようです。
宇野方面へ向かう列車は写真奥に見えているポイントを渡り、高架線の左に沿う単線軌道へとすすみます。
今では影が薄くなった感がありますが、瀬戸大橋開通までは航路接続で高松に至るメインルートを形成していました。
植町駅を通過。先ほど分岐した宇野線の彦崎駅とは徒歩10分ほどの距離にあります。
植町からは長いトンネルとなり、トンネルとトンネルの間にある木見駅をトップスピードで通過。
高速を維持したまま上の町駅を通過すると、まもなく次の停車駅児島に到着します。
児島駅は瀬戸大橋の手前に位置しており、JR西日本とJR四国の境界駅でもあります。
乗務員も交代となるため、特急列車も含め全列車が停車します。
岡山から児島駅まで27.8kmを21分で走り、12:33に到着。
児島からしばらくで右手から瀬戸中央自動車道が寄り添うと神道山トンネルに突入。
道路もトンネルに入り、トンネル内で上下に並ぶ格好になり、
トンネルをぬけると道路・鉄道2層構造の瀬戸大橋へと進みます。
瀬戸大橋は岡山側から下津井瀬戸大橋、櫃石島橋、岩黒島橋、北備讃瀬戸大橋、南備讃瀬戸大橋の5つの橋と島上の高架橋で構成され全長は約9.4kmあります。
重量のある鉄道車両は吊り橋の中央付近の盛り上がりを押しつぶすように走行します。開通直前に電気機関車を連ねた実験車両が線路を押し下げながら進む映像は開通当時盛んにテレビなどで放映されていた記憶があります。
パノラマ席に乗車して橋上区間に思いのほか大きなカーブがあることを知りました。
海峡区間が終わり四国内の番の州高架橋を走行。
このあたりは周囲に民家がなく騒音の心配がないためか橋上にくらべ速度が上がります。
右手には瀬戸大橋開通に前後して開発がすすんだ宇多津駅周辺の街並みが見えています。
上を通っていた瀬戸中央道が左にわかれると瀬戸大橋線と予讃線が合流するジャンクションにさしかかります。
直進すると予讃線下り(松山方面)に入りますが、高松行きのマリンライナーは左にそれて予讃線上り(高松方面)に向かいます。
このジャンクションは全域がこの先にある宇多津駅の構内という扱いになっています。
予讃線下り線との合流地点。
予讃線に合流すると間もなく坂出駅に到着します。
坂出駅の乗車人員は5000人程度ですが、四国では4県庁所在地の代表駅に次ぐ5番目に利用者数の多い駅となっています。
坂出からは高松方面への乗車もある程度見られますが、瀬戸大橋開通後は岡山方面への乗車のほうが数の上では勝っているようです。
坂出を発車してすぐに快速マリンライナー32号と行き違い。
簡易な構造の八十場駅を通過。予讃線の地平区間では車両の揺れが少々気になりました。
八十場の次の鴨川駅は2面4線で列車の待避や追い越しが可能な構造になっています。
鴨川~讃岐府中間。
曲線上に設置された讃岐府中駅。
讃岐府中から次の国分にかけての線路脇に見えた写真の標識はキロポストといい、路線の起点(走行中の予讃線の場合は高松)からの距離を示しています。
ただし予讃線の場合、起点の高松駅が21世紀入ってから周辺の再開発により約300m坂出寄りに移動しているため、現在では実際の距離を示していない可能性があります。
曲線の国分駅を車両を傾けて通過。
国分駅の先で特急いしづち11号松山行きと行き違い。
2014年登場の8600系の2両編成ですが、この先宇多津駅で岡山からのしおかぜ11号と併結し7両編成になって終点の松山へ向かいます。
国分の次の駅「端岡」は快速マリンライナーは全便通過ですが、四国内のみを走る快速サンポート号は停車します。
狭いスペースに待避線を設置した複雑な配線・ホーム配置が見らえる駅です。
端岡の次の鬼無駅付近で行違った普通列車坂出行きは7200系の2両編成。
国鉄末期に高松~観音寺・多度津~琴平が四国内で初めて電化された際に121系として導入された車両ですが、近年大掛かりな改良が施工されました。
改良の目玉は台車に最近登場したJAL国内線の新型機材A350でも注目された「炭素繊維」を用いたことで、その効用もあって乗り心地が体感で分かるレベルで向上しています。
鬼無駅の先では貨物駅を左に見て、
最後の通過駅香西駅を通過。
少雨の高松を象徴するような水量の少ない香東川を渡り高松市中心部へと入ります。
車内では終点高松駅到着の車内放送が始まります。
寝台特急サンライズ号なども休む車両基地を左に見て、
複線の予讃線に右から単線の高徳線が合流し3線ならんで高松駅へのファイナルアプローチとなります。
高松駅が見えてきました。
線路の間に見える白いものはポイント付近での接触限界(これ以上前進すると隣の線路の車両と接触する)を示すもののだったと思いますが、筆者の記憶違いでしょうか。
不思議な位置に設置されています。
5番線に進入。隣の6番線には13時10分発の岡山行きマリンライナー34号が発車待ちをしています。
乗車中の列車も回送されることなく折り返し岡山行きマリンライナー36号として折り返します。
このように高松駅では日中は5番線または6番線で常にマリンライナーが入線している状態であり、寒暖のあるホームで並んで列車を待つ必要がないよう配慮されています。
13:05。岡山から53分で行き止まりスタイルの高松駅の車止めの前に停車し乗務終了です。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。