兵庫県三田市。
JR福知山線と神戸電鉄三田線が乗り入れる三田駅前の風景です。
三田市は昭和61年の福知山線の電化複線化以降、神戸よりも大阪のベッドタウンとしての性格を強めています。
三田市の人口は福知山線の電化複線化以前は4万人程度だったものが現在では11万人に達しています。
神戸電鉄訪問記事の最後はここ三田駅から神戸市のターミナル新開地へ向かう列車に乗車します。
三田線と有馬線を通り新開地まで1時間弱、神戸電鉄のメインラインと言える系統です。
三田駅から新開地駅へ向かう列車はほぼ終日15分毎の運転です。三田線内に単線区間が残るため、これ以上間隔を詰めることは容易ではないようです。
次の16時23分発の新開地行は5000系の4両編成でした。
90年代に製造された車両ですでに経年20年を越えています。
運転台の速度計はデジタルがメインで、補助的にアナログの要素を残したものになっています。
神戸電鉄の場合、最新型の6000系列では純粋な(古典的な)アナログ式に戻されているのが面白いところです。
三田駅を発車して三田市街地の三田本町駅を過ぎると、公園都市線乗り換えの横山駅に到着します。
三田駅発車から5分程度ですが、すでに三田市を抜け神戸市北区に入っています。
横山駅で分岐する公園都市線(右)と三田線(左)です。
三田線は急勾配、急曲線が連続する神戸電鉄の路線の中では例外的に直線が多く勾配も緩やかなのですが、前方を見ていると写真にも写っているように、警報機・遮断機のない第4種踏切が多いことに気づきます。
横山駅から2駅目の道場南口駅で下り列車と交換。
三田線の行き違い駅は長らく横山・道場南口・岡場の3箇所でしたが、岡場駅~田尾寺駅間の複線化とスピードアップにより一時、横山・田尾寺の2箇所に変更されていました。
ただダイヤに余裕がなかったようで列車のワンマン化なども関係があったのか、現在は元に戻されています。
道場南口駅の次の二郎駅付近は中国自動車道と新名神高速道路の接点にあたる神戸ジャンクションに近く、列車は二郎駅から田尾寺駅にかけて両高速道路の下をくぐります。
橋上駅舎の田尾寺駅に接近。
田尾寺駅から次の岡場駅までは複線化されています。短い区間で単線になったり複線になったりするのは粟生線と同じです。阪神大震災後に不通となったJR神戸線の迂回ルートの一つになった三田線は、その重要性が認識され全線複線化という話もあったと思うのですが、現在工事が行われている様子はありません。
三田駅から約15分で到着した岡場駅は三田線の中間駅では最も利用者数の多い駅です。
駅前も大型店が立地するなど主要駅らしい雰囲気になっています。
通勤通学の流れについて言えば、このあたりが三田経由で大阪へ向かう流れと、神戸電鉄・北神急行線で神戸市中心部へ向かう流れの分水嶺になるようです。
岡場駅を出ると再び単線になり三田線唯一のトンネルを抜けると、線内最後の停車駅五社駅に到着します。
2面4線で高架の岡場駅の次の五社駅は単線1面の棒線駅でその様子の違いには驚かされます。
五社駅を出て有馬温泉からの有馬線と合流すると有馬口駅に到着します。
三田駅からの新開地行の列車は、有馬温泉駅からの列車とほぼ同時に進入し、同じホームのむかい側に停車するため、乗り換えは非常にスムーズです。
有馬口駅から有馬線に入ると終点の新開地まで全線が複線です。
一方で勾配は三田線内より「きつく」なり最高速度で走ることができる区間は限られています。
有馬線大池駅~花山駅にかけての下り坂。
神戸電鉄の急勾配が視覚的によくわかる区間です。
有馬口駅から5駅10分程度で北神急行線乗り換えの谷上駅に到着します。
このまま神戸電鉄に乗り続けていても神戸最大のターミナル三宮方面へ行くことができますが、新開地での乗り換え時間を含めて30分以上かかります。
これに対しホームのむかい側で連絡する北神急行線に乗り換えると新神戸駅まで8分、三宮駅まで10分で行くことができます。
ただ北神急行線は運賃が高額なことで知られています。
三宮駅へ行く場合、列車は直通するものの新神戸駅~三宮駅は別路線の神戸市営地下鉄線となることもあり
三田駅からでは神戸電鉄ルートで三宮駅まで780円に対し、北神急行線ルートでは3社(神戸電鉄・北神急行・神戸市営)乗り継ぎ扱いとなり運賃は1060円になってしまいます。
そうした事情もあり急ぎでなければ時間がかかることを承知で神戸電鉄ルートを選ぶ人も少なくなかったのがこれまでの姿でした。
しかし最近になって北神急行線の神戸市営化が話が出てきました。
神戸市営地下鉄の駅にあった掲示によれば、市営化が実現すると初乗り運賃の負担がが2回から1回に減り(北神急行と神戸市営が神戸市営のみに)、運賃水準も神戸市営地下鉄のほうが安いことから、谷上~三宮の運賃は540円から280円と約半額になるようです。
こうなると三田方面からは神戸電鉄ルートでも北神急行ルートでも運賃はほぼ同じになり、わざわざ遠回りの神戸電鉄ルートで三宮へ出る人はほぼいなくなると思われます。
神戸電鉄の列車は谷上駅を出ると箕谷、山の街、北鈴蘭台の順に停車します。
山の街駅と北鈴蘭台駅は新開地方面への利用者が多い駅ですが、北神急行線の市営化による値下げ後は流れが変わる可能性があります。
山の街駅の場合、神戸電鉄ルートで三宮駅までが560円に対し、値下げ後に谷上駅まで逆行して現在の北神急行ルートで行くと520円となり運賃が逆転します。
北鈴蘭台駅の場合はそれぞれ540円と580円になり逆転はしませんが、どちらから行っても大差ないレベルになります。
・・・運賃計算は神戸電鉄まわりが2019年7月現在の運賃。北神急行まわりは2019年7月現在の運賃から値下げ前後の差額260円を差し引いた金額です。消費税増税などは加味していないため参考程度の数値です。・・・
三田駅から45分で粟生線と合流する鈴蘭台駅に到着。
ほんの数駅の違いですがここまで来ると値下げの影響はほとんどなさそうです。
鈴蘭台駅を出ると左手に車両基地が見えます。
今日は当たりで、写真左から3000系が2本、1000系列が1本、5000系が1本、そして右端に最新型の6000系列と現役の全世代の車両が並んでいました。
少し離れたところにはリバイバルカラーの1150系の姿も。
ダム建設によるルート変更で建設されたトンネルは約1km 。
トンネル内の勾配は旧線の50‰に対して45‰に「緩和」されています。
トンネルを抜けてしばらくで見える駅施設は長年にわたる休止期間を経て最近廃止された菊水山駅です。
営業当時も利用者数は非常に少なく、普通列車のうち新開地~鈴蘭台・西鈴蘭台の区間運転の便だけが停車していました。
山間を抜けて神戸市中心部の市街地に入ったところにある長田駅に停車。
神戸電鉄の長田駅は、JRや神戸市営地下鉄、神戸高速線の長田を名乗る駅とは離れた場所にあります。
高低差も大きく徒歩での乗り換えは現実的ではありません。
斜面に広がる市街地に六甲山系の山並みという神戸らしい車窓を目にすると列車は間もなく地下に入り、
神戸電鉄の戸籍上の終点湊川駅に到着します。今回はここで下車しましたが、
鈴蘭台方面からの全列車が、1駅先の神戸高速鉄道線内「新開地」駅までの運転です。
湊川駅~新開地駅の間は約400メートルで、開業当時は日本一短い駅間だったようです。
湊川駅では神戸市内地下鉄湊川公園駅と地下での乗り換えが可能です。
現在の運賃を調べると三田駅からの場合、谷上駅で神戸市営地下鉄直通の北神急行線の列車に乗り換え、地下鉄の終点西神中央駅まで行くと1250円。
この乗車記のように鈴蘭台駅まわりで湊川駅まで来て、湊川公園駅から地下鉄に乗り継ぐと1000円です。
谷上駅~西神中央駅(北神急行・地下鉄まわり)の値下げ後の運賃の情報はありませんが、谷上駅~三宮駅で260円の値下げとなることが半ば公表されていることを考えると、三田駅~西神中央駅のように神戸市中心部を通り抜ける場合についても運賃は「どちらでも同じ」程度になることが予想されます。
三田駅を発車したのは16時23分でしたが、地下鉄ホームに行くと17時21分発の西神中央行が発車するところでした。
ちなみに谷上駅でホーム向かい側に停車していた北神急行線からの西神中央行の当駅(湊川公園)発車時刻を調べると17時14分でした。
その差7分は思っていたより少ない気もしますが、谷上駅からは余裕で座ることができる時間帯でも、湊川公園駅からだと座れないことも多く、運賃差がほぼなくなった時に利用者がどのような判断をするのか注目されるところです。
このようにほぼ全線で、近い将来に予定されている北神急行線市営化による値下げの影響を受けることが予想される神戸電鉄のメインラインです。
悪い方向の影響が大きければ、直接関係する有馬・三田線よりも先に、すでに乗客の減少で収支が悪化している粟生線の今後に影響が出ることも考えられます。
多くの利用者にとっては「早いけど高い」北神急行線が、「早い」地下鉄線に変わることは歓迎すべきことでしょうし、しばらくは一鉄道ファンとして神戸電鉄の対応に注目しているしかないのでしょうか。
・・・6月以降、兵庫県内の鉄道記事が中心になっていましたが、8月からは海外も含め他地域の記事も多数投稿する予定です。・・・
最後までお読みいただきありがとうございました。