本記事は、2020年3月に東日本大震災以来9年ぶりに運転を再開した、仙台始発の特急ひたち号に終点の品川まで乗り通す乗車記の後半です。
前半、仙台から福島県の「いわき」到着までは下に添付の記事をご覧下さい。
いわき→上野の常磐線上りの時刻表。
仙台始発のひたち号は1日3往復のみですが、いわき以南は1時間毎の運転となり、主に茨城県北部の主要駅で乗客を拾い、水戸からはノンストップで上野へ急ぐダイヤになっています。
12:16に「いわき」を発車した時点で始発の仙台から約2時間が経過。
仙台駅で乗車前に購入した駅弁「海の輝き」を広げることにしました。
ご飯の上に鮭の切り身とイクラが交互にのっています。
似たようなレシピは全国にあると思いますが、
「はらこめし」と呼ぶときは、仙台発車から間もなくで通過した宮城県亘理町付近の郷土料理ということになるようです。
駅弁を味わっている間、湯本駅、泉駅に連続停車。
停車駅は多いものの、いわき発車後は体感でわかるレベルで列車の走行速度が上がりました。
常磐線の最高時速は、北から岩沼~いわき間が100km/h 、いわき~日立間が120km/h 、日立以南が130km/h となっています。
勿来の関に近い勿来駅は福島県に位置しますが茨城県境に近く、
列車は東北地方から関東地方へと歩を進めます。
12:51高萩駅停車。
途中下車して風格のある駅舎を正面から眺めてみたいものです。
13:02日立駅停車。
特急列車としては頻繁に停まる印象ですが各駅とも一定の乗車があります。
太平洋岸に沿って走る常磐線の車窓は、宮城県、福島県、茨城県と進んでも劇的な変化があるわけではありません。
かつてSL時代に上野と東北を結んだ優等列車の一部は、
内陸部を平行する東北本線に比べ「勾配が少ない」という理由で常磐線経由で運転されたものもありました。
13:06日立多賀駅停車。
13:10大甕駅停車。
読みは「おおみか」です。
ローカル私鉄の日立電鉄が当駅と水郡線の常陸太田駅(常北太田)との間を結んでいましたが2005年に廃止されています。
末期に運転されていた地下鉄丸ノ内線から転じた赤い車両が印象的でした。
13:20勝田駅停車。
東京方面のひたち号が停車するホームにはひたちなか海浜鉄道の改札口があります。
ひたちなか海浜鉄道も単線非電化のローカル私鉄ですが、こちらは路線延伸の予定があります。
いわき方面から1時間毎に到着するひたち号の間を埋める形で、
当駅から特急ときわ号が1時間毎に発車し勝田以南の常磐線は特急が30分間隔で走るダイヤになっています。
勝田からしばらく田園地帯を走ると左から鹿島臨海鉄道の高架線が接近。
仙台から約3時間。
高架線から地平に降りた鹿島臨海鉄道の線路と並んで水戸駅に進入。
水戸からは一定数の乗車があったものの、ここまで停車してきた茨城県内の駅に比べて突出して多いというほどではなかったようです。
コロナによる出控えの影響もあると思いますが、
「ひたち号」の間を埋める「ときわ号」のほうが、水戸から乗車する場合は空いていて利用しやすいことも関係ありそうです。
また両者の所要時間差の推移にも注目したいところです。
現在の「ひたち号」車両657系の先代の651系が、
「スーパーひたち号」として現在の「ひたち号」とほぼ同じ水戸~上野間66分の所要時間で1時間毎の運転を始めた90年代初頭、
現在の「ときわ号」に相当する「勝田始発のひたち号」には国鉄型車両が使われていました。
「ひたち号」は「スーパーひたち号」かノンストップで走る水戸~上野間で、
友部、石岡、土浦などに途中停車する上、加速性能の差もあって、
水戸~上野間の所要時間は「スーパーひたち号」と「ひたち号」で20分近い差がありました。
その点、現在は「スーパーひたち号」の流れを汲む「ひたち号」と、
従来のひたち号と言える勝田始発の「ときわ号」は、ともに657系が使われるようになり、
「ときわ号」は「勝田始発のひたち号」の途中停車を引き継ぎながらも所要時間差を10分以下にまで縮めています。
話を元に戻すと、かつては水戸時点では空いていても「車両が古く次のスーパーひたち号に追い上げられるダイヤ」だった勝田始発のひたち号を敬遠していた層も、
その後継である「ときわ号」を好んで選択している可能性もあり、
車両共通化によって、いわき始発と勝田始発の特急の混雑平準化が図られているようにも見えます。
水戸駅構内に留置中の水郡線などで活躍する新型ディーゼルカー。
個人的には「新型」という認識ですが、すでに登場から20年近くが経過しています。
水戸発車時点での乗車率は40%から50%程度。
在来線特急も一時のガラ空き状態から見れば活気を取り戻しつつあるようです。
水戸を出ると次は上野まで1時間以上ノンストップ。
列車は最高時速130km/h 近い速度を維持して走ります。
北関東の田園地帯をトップスピードで快走しますが、駅停車の加減速がなくなり、軌道レベルも日立以北より高いようで、
水戸発車後はいわき~水戸に比べ乗り心地が改善した印象をうけました。
水戸発車から30分弱で土浦通過。
隣で発車を待っているのは後続の土浦始発の特別快速のようです。
常磐線の特別快速は、関西の新快速などとならび在来線快速列車としては最速の最高時速130kmを誇りますが、
所要時間をみれば土浦~上野で58分と「ひたち号」の水戸~上野間の所要時間と大差ありません。
ひたち号の水戸~上野65分運転の価値を改めて認識させられる場面です。
駅に進入する新京成電鉄の電車を追い越し松戸を通過。
宮城県、福島県、茨城県と走ってきた列車は、この付近で一時的に千葉県に入ります。
行き交う列車も格段に増え、左手の車窓にはスカイツリーが見えてきました。
このあたりまでくると、俊足のひたち号も90km/h程度で流すような走りになります。
隣の鉄橋を渡る東武直通の東京メトロ車両とならんで荒川を渡り、
北千住を通過。
さらに速度が落ちて、仙台発車後間もなくの岩沼駅で別れた東北本線や、山手線などと合流すると間もなく上野に到着します。
14: 35上野着。
長らくここが「ひたち号」の終点で全員が下車していましたが、
品川直通となった現在、下車はあるものの一気に空くという程ではなく、
東京、品川直通の恩恵を受ける人が多いようです。
上野を発車。
秋葉原駅付近を通過。
上野東京ラインは上野~東京間の途中駅にホームは設けられていません。
14:42。仙台から約4時間半をかけ東京に到着。
東北新幹線最速の「はやぶさ号」のおよそ3倍の時間をかけての到着です。
東京からのラスト区間。浜松町~田町間では東京モノレールの姿も。
東京での下車は上野より多く、終点品川まで乗り通した乗客は1両10人以下でした
14:51終点品川駅に到着。仙台から4時間38分の長旅が終わりました。
列車は車内清掃ののち15:15発のときわ号勝田行となって折り返します。
仙台直通ひたち号の走行距離や所要時間を他の路線にあてはめれば、
特急しなの号の名古屋~塩尻間と特急あずさ号の塩尻~新宿間を直通しているのとほぼ同じという計算になります。
平成の31年間を通じて縮小の一途を辿ってきた在来線長距離特急が、
令和の時代になって全区間10両運転という形で復活したのは奇跡的ともいえることで、
震災前は4両だったいわき以北の区間は供給過剰を承知での運行がつづけられているようにも見えます。
なんらかの「適正化」が進められる前に是非乗っておきたい列車です。
最後までお読みいただきありがとうございました。