西浦特急 鉄道と旅のブログ

鉄道・飛行機などで国内外を旅行した様子のほか、鉄道を中心に交通全般の話題を取り上げます。

【特急うずしお13号乗車記】遠回りを克服?岡山直通の意義を考える。(岡山11:05⇒徳島13:04)

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JR西日本岡山駅。今回はここから徳島へ向かう特急列車「うずしお号」に乗車します。

 

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岡山駅改札口の発車表示。

発着する路線の数が多いだけでなく中国・四国各県への特急列車や快速マリンライナーの発車時刻がならび、地方都市の駅としては破格の華やかさを誇っています。

乗車する徳島行の特急「うずしお13号」は左上端ですが、表示内容が示すように高知行の「南風号」と併結された状態で岡山を発車します。

また右上端には鳥取行「スーパーいなば5号」の表示がありますが、その発車時刻は南風・うずしお号と同時刻の11:05、さらに時刻表を確認すると伯備線経由の特急やくも9号出雲市行も11:05同時刻発車となっています。

新幹線のダイヤを見ると東京駅7:30発、名古屋駅9:10発の「のぞみ11号」の岡山到着が10;47となっており、3つの特急列車への乗り継ぎができるようになっています。

それぞれのダイヤを比較すると「うずしお13号」は高松に12:03、終点徳島に13:04に到着するのに対し、

スーパーいなば5号は終点鳥取に12:53、やくも9号は米子に13:17、松江に13:41、終点出雲市に14:12に到着します。

 

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6番線に停車中の「南風・うずしお号」編成。進行方向前寄り3両が高知行南風号、後寄り3両が徳島行うずしお号です。

寝台特急サンライズエクスプレス出雲号、瀬戸号の岡山における編成分割と違い、「南風号」と「うずしお号」は四国最初の停車駅「宇多津駅」で切り離されたのち、それぞれ反対方向に向けて発車するので連結順序を逆にすることは不可能です。

「うずしお号」の左には3番線から同時刻に発車する鳥取行スーパーいなば号が停車しているのが見えます。

 

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各乗車口にある表示は目の前の車両の行先を表示し誤乗車防止に一役買っていました。

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車両は南風号と共通の2000系ですが、うずしお号に使われている車両は高徳線の高速化事業竣工に合わせて導入されたN2000系と呼ばれる改良型です。

前面の顔立ちが南風号に使われているものとは異なるほか、最高時速も10kmアップの130kmとなっています。

 

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岡山発車時点での乗車率は20パーセント程度。昨日乗車した特急やくも号に比べると「乗っている」印象です。

 

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11:05岡山駅を定刻に発車。しばらく岡山市街地の高架線と走行します。

さて東京や名古屋から陸路で徳島を目指す場合、最も一般的なルートは新幹線で新神戸まで行き、JRバス等が神戸~徳島間で運行する高速バス「阿波エクスプレス神戸号」に乗り継ぐルートになると思いますが、

先述のように東京7:30発の新幹線「のぞみ11号」からこの「うずしお13号」に乗り継いでも、高速バス乗り継ぎと同じく1回の乗り換えで徳島まで行くことができます。

両者の運賃と所要時間を比較してみたところ下記の通りとなりました。

まず岡山回りで「うずしお号」を利用するルートでは、JRの運賃・指定席特急料金の合計は東京~徳島が19990円、名古屋~徳島が14930円となります。

一方、新神戸で新幹線と高速バスを乗り継ぐルートでは、東京~新神戸が新幹線15380円+高速バス3400円=18780円、名古屋~新神戸が新幹線8320円+高速バス3400円=11720円

所要時間については、東京を7:30、名古屋発を9:10に発車する「のぞみ11号」の新神戸到着は10:15。

新神戸駅10:55発の徳島行高速バス「阿波エクスプレス神戸号」に乗り継ぐと徳島到着は13:03となり、偶然にも岡山発の「うずしお13号」の徳島到着(13:04)とほぼ同時となることがわかりました。

新神戸10:55発の高速バス「阿波エクスプレス神戸号」には東京7:51発、名古屋9:32発の「のぞみ13号」でも間に合うとはいえ、

新幹線が圧倒的に早いことや、JRの運賃が長距離ほど割安となることもあって、明らかに遠回りとなる岡山経由でも運賃・所要時間とも大きな差はないことがわかります。

 

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快速マリンライナーの全列車が停車する宇野線の主要駅茶屋町駅をゆっくり通過したのち、瀬戸大橋開通に合わせて建設された本四備讃線区間へと進みます。

 

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本四備讃線区間の軌道側が許容する最高時速は130kmですが、乗車列車は併結相手の南風号が120km対応となっているため、「そこまでは出せないはず」などと考えていましたが、実際のダイヤには余裕があるようで110km程度で走行する区間が多かったようです。

四国から岡山へ向かう上りの特急列車が遅れている場合など、岡山での新幹線との接続には相当気を遣うようで(新幹線の発車が遅れれば影響が全国に及ぶ)、四国と新幹線をつなぐ宇野線や本四備讃線区間のダイヤは多少の遅れなら吸収できるよう余裕が見られているという話を聞いたことがあります。

 

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瀬戸大橋の手前にあたる児島駅はJR西日本とJR四国の境界駅であり、運転士・車掌の交代があるため、特急列車もすべて停車します。

 

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児島発車から数分で列車は瀬戸大橋へ。

橋の開通後、瀬戸大橋が通る島の住民とJRの間で騒音をめぐる紛争が発生したことを覚えている人も少なくなっているのではないでしょうか。

 

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瀬戸大橋を渡り終え四国最初の停車駅宇多津に到着。ここで南風号とうずしお号の切り離しが行われます。

 

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駅ホームの発車表示は別個の列車として、それぞれの発車時刻を表示しています。

 

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編成中間の「南風号」と「うずしお号」の連結部分。

切り離し作業が行われています。

 

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切り離しが終わると間もなく南風号が先に発車時刻を迎えます。

2000系は後継の2700系デビューにより引退が見えてきましたが、アンパンマンラッピングは2700系にも引き継がれることが決定しています。

 

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南風号発車の2分後に進行方向を変えて発車する「うずしお13号」の先頭車両。

 

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ホームから「うずしお13号」の進行方向(高松方向)を見ています。

真ん中2線が瀬戸大橋方面で、高松へ向かう列車は左端の線路へと進み瀬戸大橋方面への線路をアンダークロスして写真右方向へ進みます。

 

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宇多津駅発車後の車窓。

左奥に見えている高架が宇多津駅から見た瀬戸大橋方面への線路、右側に見えているのが快速マリンライナーが通る瀬戸大橋と高松方面を短絡する線路です。

写真に見えているデルタ線はすべて宇多津駅構内という扱いになっており、実際には宇多津駅には入らない快速マリンライナーも、運賃計算上は乗車している「うずしお号」と同じように宇多津駅を経由して走行していることになっています。

 

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瀬戸大橋方面に目を凝らすとこちらに向かってくる列車が見えました、岡山駅を乗車している「うずしお13号」の7分後に発車した快速マリンライナー25号のようです。

「うずしお号」は特急列車の面目を保つため?マリンライナーの前に割り込み、快速マリンライナーが全て停車する坂出駅を通過して高松駅へ急ぎます。

 

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12:04.宇多津から18分で高松駅に到着。

宇多津から進行方向を逆にして走ってきましたが、高松駅は行き止まり式の構造になっているため、ここで再び進行方向を変え高徳線を徳島へと向かいます。

ターミナル駅が行き止まり式になっていることが多いヨーロッパではこのような運転方法は珍しくありませんが国内では非常に貴重です。

 

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特急うずしお号の大半はここ高松と徳島の間で運転されており、岡山に直通するのは乗車中の13号を含む1日2往復のみとなっています。

他の便については高松と岡山を結ぶ快速マリンライナーとの接続により、直通便と大差ない所要時間で岡山~徳島を行き来できるようになっています。

 

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わずか2分の停車時間で高松からの乗客を迎え、進行方向を「元に戻し」高松駅を発車します。

 

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定刻に高松駅を発車してすぐに、岡山から後を追ってきた快速マリンライナー25号とすれ違い。

岡山を11:12に発車したマリンライナー25号の高松到着時刻は12:07となっていますが、時刻表を確認すると毎時12分に岡山を発車するマリンライナーは53分後の毎時05分に高松駅に到着するものが多く、

要するに快速列車のマリンライナーが先発の特急列車(うずしお13号)に高松で追いつくと「話がややこしくなる」ので、意図的にマリンライナーの「スジを寝かせている」というのが実態のようです。

 

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栗林駅に到着。高架駅ですが高さが通常より高く感じられるのは、元々は駅の西側で地平の国鉄高徳線をオーバークロスしていた琴電琴平線の軌道の高さをそのままに、それをオーバークロスする高架を建設したためのようです。

特急うずしお13号の高徳線内の停車駅は栗林・志度・三本松・板野の4駅のみ。高松~徳島間の所要時間58分は、この区間では最速となっています。

 

 

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栗林駅を発車すると加速しながら高架を下り、住宅や工場と田園が混じる近郊風景の中をトップスピードで駆け抜けます。

スピード感があっていかにも特急列車らしい走りを堪能できますが、踏切での大きな事故が起きないか心配でもあります。

 

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栗林の次の停車駅、志度では新型車両2700系で運転の上り高松行うずしお号と行き違い。

2700系に先行して製造された車体傾斜の2600系も「うずしお号」の運用に入っており、国鉄型185系とあわせ、現在のうずしお号には4種類の車両が混在しています。

 

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高松から乗客が増え3割程度の座席が埋まりました。緊急事態宣言解除直後にしては高い乗車率といえますが、5月16日から一部の便が運休となっていることも影響していると思われます。

 

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車窓の国道11号線を通る車も通常より少ないようです。

国道11号線は香川県内では概ね高徳線に平行していますが、香川県の東端に近い引田駅付近から山を越え徳島県の板野に至る高徳線に対し、国道11号は海沿いを鳴門市方面へ迂回しています。

 

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香川県東部一帯を東讃地方と呼ぶことがありますが、その中心に近い三本松駅に到着。

距離的には高松と徳島のほぼ中間に位置しています。

 

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三本松を出ると次の停車駅は徳島県の板野。

折り返し列車が多く「うずしお号」の多くが停車する引田駅も最速達便らしく通過。

 

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引田からは沿線風景が一変し急勾配・カーブ・トンネルの連続で、香川・徳島県境の大坂峠に挑みます。

 

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サミットに位置する大坂トンネルを抜ける列車の速度は約90km。引退が見えてきたとは言え2000系のハイパワーを実感する県境の峠越えです。

 

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トンネルを抜け下り勾配を下る途中、

 

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国道11号とともに高徳線に平行する主要道路である高松自動車道の高架が線路を跨いでいます。

県境付近では鳴門に迂回する国道11号に対し高徳線と同じようなルートで山を越えている高松自動車道ですが、高松市・徳島市いずれでも高速出口から都心部へのアクセスが必ずしも便利とは言えず、

高松と徳島を結ぶ高速バス「高徳エクスプレス号」の所要時間も、そのあたりがネックになって「うずしお号」に迫れていません。

一般道路・高速道路とも平行道路が「煮え切らない」点、高徳線の利用維持にはプラス要因になっているかもしれません。

 

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峠を下った地点にある板野駅。国鉄時代にはここから鍛冶屋原線が分岐していましたが昭和47年に廃止されています。

徳島県内の高徳線の歴史をさかのぼると、阿波電気軌道(私鉄)が1916年に鳴門線の撫養駅から現高徳線池谷駅を経て現吉成駅の先にあった古川駅の間を開業、1923年には池谷駅~板野~鍛冶屋原駅間を開業させています。

阿波電気軌道は電化を目論んだ社名でしたが、1926年に電化を断念し社名を阿波鉄道に変更したのち、1933年に路線の国有化が実施されています。

 

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鳴門線と合流する池谷駅から南下する区間。

昭和46年までこの付近には阿波市場という駅があり、運転席後ろから注意深く前方を見ているとその遺構が確認できます。

 

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徳島の2つ手前にあたる吉成駅を通過。

 

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前方をよく見ると安全側線の先に線状の空き地が見えます。

明確に確認できているわけではありませんが、おそらく安全側線の方向に先述の阿波電気軌道の徳島側のターミナル古川駅へ向かう軌道が延びていたのではないでしょうか。阿波電気軌道は吉成駅から先中原駅を経て吉野川北岸の古川駅に至り、そこから徳島市中心部「新町橋」まで船での連絡輸送を実施していました。

現在は鳴門線直通列車で約40分の鳴門~徳島間ですが、当時は撫養(鳴門)~古川間の列車の所要時間が45分、古川~新町橋までの船の所要時間も45分という姿だったようです。

 

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現在の高徳線は吉成駅の先で西にカーブし約1kmの吉野川鉄橋で四国三郎の異名を持つ大河吉野川を渡ります。

この鉄橋を含む吉成~佐古間が1935年に開業したことにより高徳線は全線開通となりました。

需要が大きい徳島近郊区間が最後の開業になっているという事実は、この約1kmの鉄橋の架橋が当時最先端の技術を要したことを意味しているのでしょう。

 

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吉野川鉄橋を渡り終え、徳島市内の高架をしばらく進むと佐古駅の手前で右手から徳島線が合流します。

1935年(昭和10年)の吉野川架橋によりようやく徳島市中心部に乗り入れた高徳線は、明治時代には開業していた徳島線に擦り付くように急カーブで合流し佐古駅に進入します。

 

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徳島線と高徳線が単線並列で並ぶ佐古駅を通過するころ、終点徳島到着の車内放送が流れます。

 

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佐古駅から先終点徳島まで単線並列で進み、

 

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徳島駅2番線に進入。

 

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13:04、岡山駅から1時間59分で定刻に徳島駅に到着しました。

この前面は岡山駅地点では南風号と顔を突き合わせていた側です。思い出すのに少し時間がかかりました。

 

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徳島県はコロナの影響が少なかったこともあってか駅コンコース周辺は一定の活気が感じられました。

写真右手のパン店は最近開店したベーカリーチェーン「VIE DE FRANCE」の店舗で四国では初出店とのこと。

パン食にあまり抵抗を感じないほうで、徳島は仕事で訪れる機会も多いので今後頻繁に利用させてもらうことになるかもしれません。

最後は鉄道から話がそれましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

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