高松からマリンライナーと山陽新幹線を乗り継いで広島に到着。
10月23日に2018年夏の水害から1年以上を経て全線復旧を果たした芸備線で12月8日まで運転されている臨時快速列車「庄原ライナー」に乗り継ぎます。
庄原ライナーは定期列車の「みよしライナー」のダイヤで三次まで行き、そこから臨時延長運転という形で備後庄原へむかいます。
車両はキハ47の2両編成で「みよしライナー」として運転されているものと同じです。
入線前からホームには行列が出来ていましたが、ボックスシートに2~3人程度の着席率に落ち着きました。
さて今回山陽新幹線からの乗り継ぎで備後庄原まで向かうために用意した普通乗車券は写真の2枚です。
一見すると広島~井原市間が抜けたキセル乗車のようですが、
JR の旅客規則で東京23区内(東京)、札幌市内(札幌)、仙台市内(仙台)、横浜市内(横浜)、名古屋市内(名古屋)、京都市内(京都)、大阪市内(大阪)、神戸市内(神戸)、広島市内(広島)、北九州市内(小倉)、福岡市内(博多)の駅を発着地とする片道201km 以上の乗車券は、
それぞれの()内に記載の中心駅を発着するものとして扱われることになっています。
言い換えれば中心駅までの乗車券があれば(券面は「~市内」と表記)、その市内区間は途中下車しない限り有効ということになります。
市販の時刻表にはそれぞれの市内駅が明記されており、それによれば芸備線の場合、広島駅から13駅も先の井原市駅までが広島市内の駅にふくまれていることがわかります。
広島から井原市までは37.1kmあり、芸備線の主要駅三次までの68.8km半分以上が広島市内というのは驚きです。
ちなみに広島で途中下車して三次までの切符を買い直すと1340円ですが、井原市から三次までを別買いすると590円で済みます。(備後庄原までは990円です)
東からの場合、201km 以上の要件に該当するのは、概ね兵庫県以東と四国内となりますが、それらの地域から芸備線三次方面を目指す場合は知っておいて損はないでしょう。
さて快速列車の庄原ライナー(通常ダイヤの「みよしライナー」)ですが、広島を出ると5駅目の下深川までは各駅に停車します。
写真は最初の停車駅矢賀駅です。
対向列車の向こうには新幹線の車庫への引き込み線が見えています。
快速列車が下深川まで各駅に停車するのは沿線人口が多い広島近郊区間のフリークエンシー確保が狙いのようです。
この区間の沿線ニュータウンは昭和後期に開発されたものですが、広島駅が広島の繁華街から離れていることもあり、
住民の足はバスが中心で、
国鉄芸備線は三次など内陸の都市へ向かうためのものという位置付けで近郊輸送にはあまり活用されていませんでした。
それがJRになるとラッシュ時10分程度、日中20分毎まで列車が増発され、バス利用の一角を切り崩すに至ったというのが最近までの状況でした。
しかし近年では日中のダイヤが30分毎に改悪されるなど後ろ向きの施策も見られるようになっています。
バスに押し返されたというよりは沿線ニュータウン自体が高齢化などで活気を失いつつあるのではないでしょうか。
下深川に到着。
広島から14.2km 約20分ですが、広島近郊区間はここで一区切りとなります。
この程度の距離の都市圏輸送であるがゆえに長らくバスが主役でいられたのかもしれません。
快速列車はこの先主要駅のみ停車で内陸の三次へ急ぎます。
下深川を出ると2018年夏の水害が深刻だった区間に入ります。
復旧された鉄橋の脇には全線復旧を祝う横断幕も見えましたが、
違う場所では川をまたぐ道路橋が途中で途切れ、その少し下流には流された構造物がそのままになっているというところもありました。
ライフラインの復旧を優先させた結果でしょうが1年以上が経ってなおそのような状況であることに驚かされました。
志和口駅を出てると広島市内最北の井原市駅は通過。
このあたりまで来ると沿線にはのどかな田園地帯が広がります。
井原市の次の向原に停車し、下りの快速「みよしライナー」と行き違い。
芸備線は広島へ向かう方向が「下り」です。
向原の次は甲立に停車。この駅にも全線復旧を祝う横断幕がありました。
この付近の拠点は三次であり駅の利用者も三次駅が多いのですが、三次~広島には高速バスも運転されており、鉄道が水害で寸断されて本当に困っていたのは、甲立のような途中の小さな駅の利用者だったのかもしれません。
11:26。甲立から16分、広島から1時間21分で三次に到着。通常ダイヤではここが終点となります。
三次市の人口は約5万人で広島県北部の拠点となる都市です。
瀬戸内側の広島県から分水嶺を超えて日本海側の島根県に至るというイメージがありますが、三次市内を流れるのは島根県江津市で日本海に注ぐ江の川です。
三次駅は江の川沿いに江津に至る三江線の始発駅でしたが2018年に廃止され、
駅から広島・江津方向をみると踏切をわたる自動車の向こうに路盤だけが残されていました。
三次駅で4分停車した後、11:30分、臨時快速列車として備後庄原に向けて発車。
車内はボックス席に1人程度という空き具合でした。
三次から終点の備後庄原まではノンストップです。
3駅目の塩町駅では福山方面への福塩線が分岐。
三次以南にも増してのどかな風景の中を列車は思いのほか軽快な速度で走行します。
三次発車後に車掌さんから記念乗車証と記念品の配布がありました。
三次から約25分で庄原の街並みが見え、
11:56。終点の備後庄原に到着。
いまでは閑散ローカル線になってしまった芸備線の三次以北ですが、平成初期までは木次線経由で広島と松江・鳥取方面を結ぶ急行列車が運転されるなど、陰陽連絡の使命をになっていた区間でもあります。
駅の利用者や列車の本数に比して広大な備後庄原駅の敷地は無言のうちにその経歴を語っているかのようです。
駅舎も立派なものですが、駅前の整備にともない建て替えられるのでしょうか。
駅前工事の完成図の看板が立っていました。
駅前にたつ古い建物は地方銀行の支店のようですが、玄関には地元バス会社「備北交通」の社名がありました。
さて備後庄原駅の近くには広大な備北丘陵公園などがありますが、乗り継ぎの13:37発の備後落合行の発車までに徒歩で往復するには遠く、駅から10分ほどの上野総合公園まで散歩することにしました。
上野総合公園は上野池という池のほとりに設けられた公園で春には桜が美しいことで知られているようです。
秋のシーズンの来園者は多くないようでしたが、紅葉も美しい静かな公園でした。
桜のシーズンだけ営業するのでしょうか。売店の建物もありました。
庄原ライナーという臨時列車がなければ備後庄原という駅で降りることもなければ、この公園を訪れることもなかったかもしれず、
他にもそういう人がいるのであれば、訪問者にとっても庄原に住む人にとっても(臨時列車の運転は)よかったのではないかと思いながら駅に戻りました。
つつきはこちらです。