神戸空港からソラシドエアで沖縄・那覇空港に到着。
20時過ぎの沖縄都市モノレール「ゆいレール」で牧志駅近くのカプセルホテル「MAXI ALPA」へ向かいました。
翌朝ホテルからは牧志駅とほぼ同じ距離の隣駅「安里駅」から再びゆいレールに乗車します。
昨日那覇空港駅で1日乗車券800円を購入しましたが、ゆいレールの1日乗車券は24時間有効なので日を跨いでの利用に便利です。
ゆいレールは2003年8月の開業以来那覇空港駅と首里駅の間12.9㎞での営業でしたが、
2019年10月1日に那覇市に隣接する浦添市の「てだこ浦西」駅まで4.1kmが延長開業しました。
今日は延長区間に設けられた途中駅3駅に下車しながら終点「てだこ浦西」駅を目指します。
安里駅から5駅約10分。まず従来の終点であった首里駅で下車しました。
世界遺産の首里城まで徒歩15分の距離にあり観光客の利用が多い駅です。
ここ首里駅からてだこ浦西までの4.1㎞が新規に延長開業した区間です。
途中には石嶺・経塚・浦添前田の3駅が設けられ、てだこ浦西までの所要時間は首里駅から約10分となっています。
ゆいレールの初乗りは現在230円と全国的に見ても高い水準にあります。
8月までは隣駅まで150円になる特例がありましたが、IC乗車券OKICAで乗車した場合の引き去り額のみ150円に据え置かれ、紙の切符を購入した場合は230円と大幅な値上げとなりました。
ICカードでの乗車と紙の切符(外国風に言う1回乗車券)の価格差を大きくして、ICカード乗車の割合を増やそうという戦略が、国内の他の鉄道会社より徹底しているように感じれました。
首里駅1番線ホームから9時24分発の「てだこ浦西」行で新規開業区間へと出発します。
乗車約2分で最初の駅石嶺駅に到着。ここはまだ那覇市内に位置しています。
軌道下の道路の交通量は多く、道の両側には隙間なく建物がならんでいました。
写真左手では小さな駅前広場の整備が進められていましたが駅の開業には間に合わなかったようです。
全体に沿線や駅周辺の風景は首里駅~那覇空港駅の既存区間と似通っている印象です。
石嶺駅全景。駅前では開業イベント開催に向けた準備が進められていました。
駅舎内に華やかな開業ムードはあまりなく、改札近くの写真の張り紙が目立っていた程度で、ずっと前から営業していたかのような淡々とした空気が流れていました。
後続の電車で次の駅「経塚」駅に移動します。
新規開業区間を走るモノレールの車内は比較的空いていましたが、ここまで空席が目立っていたのはこの便だけでした。
石嶺駅から登り勾配を走行し右に大きくカーブした地点の高台に経塚駅があります。
石嶺駅~経塚駅間で市境を超え、すでに浦添市域に入っています。
浦添市は那覇市・沖縄市・うるま市に次ぐ沖縄県第4の都市で約20㎢に11万人が暮らしています。
市域の14パーセント余りを占める米軍基地を除くと人口密度は約7000人と大都市なみの数値になります。
経塚駅を発車して那覇空港へ向かう対向列車。写真左下には住宅の屋根のようなものが見えますが、すべて「墓」のようでした。
沖縄県では単に墓石を建てているだけでは台風の暴風で倒され飛ばされてしまうこともあるのでしょうか、一つ一つの墓が祠に収まっており、それが丘陵地の斜面にならぶ様子は大都市郊外のニュータウンのようにも見えました。
浦添市の人口密度7000人という予備知識をもってこの駅に降り立つと思いのほか駅周辺が静かであることに驚かされます。
この駅でも駅開業に絡む周辺の工事が目立ち、まるで予定より早くモノレールが来てしまったかのようでした。
経塚駅全景。
ホーム部分を覆うアーチ状のガラスが武骨な印象をやわらげています。
この駅も開業を派手に祝う雰囲気はなく、すでに地元の方の生活の一部になっている感がありました。
後続便でつぎの駅「浦添前田」駅に移動します。
2分程度の乗車で、列車の前方ではなく右側に浦添前田駅が見えてきました。
新規開業区間は急カーブが目立ち徐行を強いられる箇所が多く、列車の駅停車時間も含めた平均時速は既存区間の28.7㎞(12.9㎞27分)に対し、24.6㎞と若干低くなっています。
浦添前田駅で並んだ「てだこ浦西」行きと「那覇空港」行。
経塚駅にくらべると周囲は市街化が進んでいます。
石嶺・経塚につづき駅周辺は工事の真っ最中でした。
駅前のロータリーは送迎車両だけを対象にしたものにしては大きく感じられ路線バスの乗り入れも予定されているのかもしれません。
駅に戻り終点のてだこ浦西駅へ向かいます。
浦添前田駅のホームからは一つ手前の経塚駅からの軌道の8割程度を見渡すことができます。
浦添前田駅からの最終区間には約600mのトンネルがあります。
すべて調べたわけではありませんが、モノレールのトンネルは東京モノレールの羽田空港の敷地をくぐるものと、ここだけではないでしょうか。
トンネルを抜けると終点のてだこ浦西駅は目の前でした。
てだこ浦西駅ホーム。
那覇空港駅から乗り通すと37分。運賃は370円です。
駅名の「てだ」は太陽(TIDA)を意味し「てだこ」で太陽の子という意味になるようです。
コンコースのステンドグラス。
この駅ではパネル展示や花飾りなど途中駅にくらべて、開業直後の駅の祝賀ムードが幾分感じられました。
てだこ浦西駅全景。
駅に着いて周辺にスタバやドトールがあったら一服しようと思っていたのですが、今のところスタバどころかコンビニも見当たらりません。
てだこ浦西駅の駅前で目立っていたのは大型の立体駐車場です。
てだこ浦西駅は沖縄自動車道に隣接しており、沖縄本島の中部・北部から車で那覇市内を目指す人に、ここでモノレールに乗り換えてもらい、モノレールの経営安定と那覇市内の渋滞緩和を図るという目論見があります。
そういう意味では、この駐車場は今回のゆいレール延長の経緯や延長区間の終点がここに設定された理由にも関係する非常に重要な施設といえます。
てだこ浦西駅の利用見込みは乗降合わせて8500人と、現在の駅前の様子を目の当たりにした遠来の訪問者には強気にも思える数値になっていますが、パークアンドライド需要を盛り込んだ数値であり、駐車場もさらに増設する計画があるのでしょう。
てだこ浦西駅に掲出されていた駐車場利用者募集の広告。
てだこ浦西駅からの折り返しは、途中「美栄橋」か「県庁前」で下車し国際通り周辺を散歩してから空港に向かうつもりでしたが、首里駅をすぎると立客が多くなり、目的の美栄橋・県庁前駅付近では下車するのも一苦労というような満員状態になっていました。
一旦下車してしまうと、空港へは満員の後続便に乗り込む必要があり億劫になって結局空港まで乗り通してしまいました。
土休日の午前11時台で、ドア付近に立つ客が駅ごとにホームに出て下車客を通している光景は異様であり、車内の混雑は同じ時間帯の山手線や御堂筋線を上回っているように感じられました。
今回各駅の発車表示器の時刻・行先横に表示されている「各停」の文字が気になっていました。
将来的には急行運転なども「夢」のある話だと思いますが、
目先の現実問題として新たに始発駅となった「てだこ浦西」駅だけで1列車平均30人程度に相当する4250人もの乗車(乗降8500人の半分)が見込まれていることを考えれば、現状の2両編成では駅の利用者が見込みに達するより前に輸送がパンクしてしまいそうです。
浦添市域への延長開業が実現した今、3両・4両への増結が「ゆいレール」の次の大きな課題と言えるのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。