西浦特急 鉄道と旅のブログ

鉄道・飛行機などで国内外を旅行した様子のほか、鉄道を中心に交通全般の話題を取り上げます。

松本電鉄(上高地線)訪問記

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長野県松本市の玄関JR松本駅。

今回はここから松本電鉄に乗車し終点の新島々駅へ向かいます。

 

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松本電鉄の起点松本駅はJR松本駅の一部を間借りしたような形になっています。

松本電鉄は2011年にバス会社を合併し「アルピコ交通」に社名変更されていますが、今でも松本電鉄の呼称が使われることが多く、

松本駅入口にもJRマークと並んで「松本電鉄」の表記がありました。

 

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切符売り場もJRと同じ場所にあります。

写真左手の2台が松本電鉄の券売機です。

 

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券売機上の時刻表と運賃表。

終点の新島々まで14km、30分、710円ですが、新島々までの乗車は観光客が大半で、地元利用の多くは24分、590円の波田までのようです。

ダイヤは朝ラッシュ時のみ20分間隔、それ以外は終日約40分間隔です。

90年代まで新宿と大阪からJRの夜行列車が午前4時台に松本駅に到着するのに合わせ、上高地方面へ向かう観光客のため、終点新島々までノンストップの快速列車が運転されていました。

定期夜行列車の廃止後も、新宿からの臨時快速列車が運転されることがあり、比較的最近まで早朝4時台の快速列車が残っていたことが時刻表の様子から伺えます。

また乗車予定の13:29の時刻表記の横には「あんしん」の文字がありますが、

欄外の注意書きによれば、ワンマン運転ではあるが「火曜・水曜・金曜日に案内係が乗車」とあります。

「IGRいわて銀河鉄道」や「えちぜん鉄道」などでも同様のサービスが行われていたと記憶しています。

列車のワンマン化は純粋に鉄道側の事情で行われるものであり、

利用者にはマイナスに作用することはあってもプラスに作用することはほとんどありません。

平日日中のローカル線利用者は通院の高齢者などが一定の割合を占めることが多く、

ワンマン化のマイナス面が露呈しやすいため、その対応が求められているのでしょうか。

**  あんしん電車は現在コロナの影響で休止中との表示がありました。


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新島々から先のバスとのセット乗車券も券売機で購入できるようになっていました。

 

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今回は松本~新島々往復運賃と同額の1日フリー乗車券「上高地線電車わくわく1日フリー乗車券」を購入し改札へ向かいました。

 

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改札機はJRと松本電鉄の区別はありません。

 

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改札を抜け右手方向へ進み6・7番ホームへの階段を降ります。

階段を降りてすぐの7番線が松本電鉄のりば、奥の6番線がJR大糸線のりばになっています。

 

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松本電鉄の車両は元京王電鉄井の頭線3000系2両で統一されています。

以前は元東急の5000系が使われていました。

5000系は東急時代の緑一色の塗装から元「青ガエル」の愛称もある車両で、お隣の長野電鉄などにも転じていましたが、

冷房設置が困難な車体であったため各社とも置き換えが進み、

全線が標高600メートルを超える冷涼な地域を走る松本電鉄でも平成11年~12年にかけ現在の車両に置き換えられました。

 

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車内。(終点到着後撮影)

多くの地方私鉄の例に漏れずワンマン運転対応の改造が施されていますが、

多くの地方私鉄やJRローカル線では3扉車両をワンマン運転に用いる場合、

運転台寄りの前扉を降車口、中扉を締め切り、後扉を乗車口とすることが多いのに対し、

松本電鉄は中扉が乗車口になっています。

後扉を乗車口とするとワンマン扱いの駅で乗降する乗客全員が車内の後ろから前まで歩く必要がありますが、中扉だと車内を歩く距離が半分で済むことになります。

バス車両ではよく見られる構造であり、バス会社と合併して再スタートを切った電鉄会社らしいアイデアと言えるのかも知れません。

 

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軽く座席が埋まったところで発車時刻に。

松本駅を発車した列車はJR用地を回り込むような形で右手方向へカーブしていきます。

松本電鉄の輸送密度は平成初期の3000人近い水準から一時2000人を切るまでに減少していましたが、

コロナ直前には2000人台半ばまで数値を戻していたようです。

コロナの影響については大都市圏で、移動自粛やリモートワークなどで鉄道利用の大幅減少が見られており、

元々利用者減少で厳しい状況にあった地方の鉄道を心配する声も少なくなかったようですが、

JR・私鉄問わず地方ローカル線の実態を考えれば、利用者が少ないローカル線ほど「地元の公立高校が通常授業を再開すれば需要はほぼ回復するのではないか」と個人的には考えていました。

しかし観光客の比率が高い松本電鉄はその例外かも知れません。

観光利用は「みずもの」という危機意識はあっても、こういう形で観光利用が激減することは誰も考えていなかったのではないでしょうか。

 

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松本駅から約400m。最初の停車駅「西松本」に停車。

駅ホームに自転車置き場が設置されていました。

多くの地方私鉄で自転車の車内持ち込みができるケースが増えていますが、松本電鉄の場合、ターミナルの松本駅がJRと共用のため実施が難しいのでしょうか。

車内への自転車持ち込みの効果は大きいと個人的には考えています。

駅まで800m 、電車乗車10km、駅から800m の11.6kmの移動にかかる時間を想定すると、

徒歩で駅までアクセスする場合、

駅まで徒歩10分、電車20分程度、駅から徒歩10分、電車が30分間隔運転の場合の平均待ち時間15分を合計し計55分程度となりますが、

徒歩10分を自転車5分に置き換えると45分に短縮できます。

電車の時刻にあわせて出発する前提なら30分程度となり平均時速は23.2km 。

これでようやくマイカーとスピードで競う土俵に立てるというものではないでしょうか。

 

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松本から4駅目の大庭(おにわ)駅は松本インターに近く高速バス「松本インター前」バス停と徒歩で乗り継ぎができます。

新宿や大阪方面から高速バスで松本へアクセスし上高地方面へ向かう場合は短絡ルートとなり時間を節約できそうです。

 

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電車は市街地を抜け郊外の田園地帯を走ります。

松本電鉄の軌道は終点の新島々へ向けて登り勾配になっていますが、勾配は穏やかで山岳路線の趣はありません。

 

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松本から14分。路線中間の新村駅に到着。ここで終点まで1回だけの対向列車との行き違いがあります。

松本電鉄のダイヤはケーブルカーやロープウェーを想像するとわかりやすそうです。

 

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松本から24分。波田駅。

松本駅以外では最も利用者の多い駅で唯一の終日駅員配置駅となっています。

駅近くにはスーパーが見え小さな市街地が形成されていました。

 

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最後の停車駅は渕東で「えんどう」と読みます。

単線一面の無人駅ですが、松本電鉄の萌えキャラ「渕東なぎさ」さんが下車客を出迎えていました。

 

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13:59終点の新島々駅に到着。

松本駅で席を埋めた乗客の8割近くがここまで乗り通したのは意外でした。

山の観光シーズンではなく、首都圏で緊急事態宣言が続くなかでも一定の観光需要があるようです。

 

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線路は新島々駅から先、島々駅まで続いていましたが、

昭和58年に土砂崩れで運転休止となり翌年廃止されました。

 

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上高地方面へのバスターミナルと一体化した新島々駅。

 

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バス路線図の右端が松本駅、赤印が現在地新島々で左端は岐阜県の高山です。

 

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折り返しの電車に乗車し復路は新村駅で途中下車。

 

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駅舎は近年建て替えられたようです。

 

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駅前には松本市のコミュニティーバスのバス停があります。

 

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1日7往復程度の運行。

 

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バス停ポールの裏のボックスにあった路線図と時刻表の冊子。

いずれの路線もメインターミナルの松本駅へは入らず、郊外鉄道駅からのフィーダーに徹しています。

また大半の系統はJR大糸線や篠ノ井線など別路線の駅とを結んでおり、2つのフィーダー路線を1本に繋げたようなルートが特徴といえそうです。

 

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新村駅前で発車を待つコミュニティーバス。

 

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駅から徒歩3分程の場所には30台程度が駐車できるパークアンドライド駐車場が設置されていました。

 

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次の電車で松本駅に戻る際に撮影。

駅ホームへは元々スロープだったものを、より緩い勾配に改良したのでしょうか。

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あんしん電車にはじまり、中間扉からの乗車、自転車との連携、パークアンドライド駐車場、スロープ改良と、

観光利用が多いことで知られる松本電鉄ですが、

フィーダーバスを運行する地元自治体も含め、

地元利用者の繋ぎ止めに対する意識の高さが随所に感じられました。

コロナ前の利用者数の盛り返しは、そうした努力の結果であったのかも知れません。

観光需要は「みずもの」と言っても、松本電鉄を利用して向かう観光地は、旅館組合のやる気次第で浮き沈みするような観光地ではなさそうですし、

コロナの終息によって、観光需要が貴重な地元の足を下支えするという、従前の姿に1日も早く戻ることを期待せずにはいられません。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

以下補足。

 

 

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今回はFDA神戸松本線往復とホテルのセットで10000円という格安プランを利用して松本を訪問しました。

ホテルは松本駅を出て左手方向に徒歩3分程のホテルモルシャン。

 

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客室と朝食。

 

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復路で利用した松本空港発FDA233便神戸行。

 


【絶景機窓】松本空港離陸から10分間。FDA233便神戸行。

 

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