西浦特急 鉄道と旅のブログ

鉄道・飛行機などで国内外を旅行した様子のほか、鉄道を中心に交通全般の話題を取り上げます。

【新居浜特急乗車記】新居浜~松山約2時間。桜三里越えでJRと競う。(新居浜駅13:30→松山市駅15:37)

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愛媛県新居浜市。JR四国予讃線新居浜駅。

今回の旅行記はここからスタートします。

 

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新居浜駅周辺は平成24年頃から順次再開発が進み、駅周辺に店舗・ホテルなどが進出しています。

駅の利用者数は地元利用を中心に増加傾向にあり現在1日約2000人。

JR四国では10位、愛媛県内では松山、今治についで3位となっています。

 

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さて今回は新居浜駅前から一般道経由で愛媛県の県庁所在地松山へ向かう特急バスに乗車します。

新居浜と松山を結ぶ特急バスは通称「新居浜特急線」と呼ばれ、

新居浜側の「せとうちバス」と松山側の「伊予鉄バス」の共同運行、概ね1時間毎のダイヤとなっています。

高速道路の整備が遅れていた四国では90年代初頭まで、徳島・高松・松山を結ぶ国道11号線をはじめとする主要一般道を延々と走る長距離特急バスが多数運転されていました。

それらの路線は高速道路の整備とともに高速道路走行をメインとする一般的な高速路線バスへの転身を果たしましたが、

 

 

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(新居浜特急線の概念図)

新居浜と松山の間については、

バス路線に平行するJR予讃線が、途中の伊予小松駅付近から高縄半島突端の今治に迂回するルートとなっているうえ、

JR松山駅か松山市の繁華街から離れており、

一般道経由でも鉄道に対して所要時間面で競争力があること、

また桜三里峠を挟んで向き合う伊予鉄道横河原線沿線との短絡路線としての役割も担っていることから、

長距離の一般道走行で都市間を結ぶという旧来のバス路線が現在まで維持されているということのようです。

 

 

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今回は新居浜駅発13:30の便に乗車しました。

発車5分程前に「せとうちバス」の車両が入線。

伊予鉄バスとの共同運行ですが便数では「せとうちバス」担当便のほうが多くなっています。

 

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車内はトイレなしの4列シート。進行方向左側の最前列は優先座席になっていました。

特急バスということで途中停車するバス停は絞られていますが、

高速バスのような途中乗降制限は設けられておらず、国道11号線沿いの短距離移動の需要も拾っていきます。

 

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新居浜市の人口は約12万人。

経路の関係でJR予讃線の車窓からはその都市規模を実感できませんが、

街の中心へ乗り入れるバスの車窓には、今治と並ぶ東予地方の拠点に相応しい都市風景が広がります。

 

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新居浜の市街地を抜け片側2車線の道路を快走。

 

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新居浜駅から約30分で、新居浜市に隣接する西条市の中心JR伊予西条駅に到着。

 

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西条市中心部の西を流れる加茂川。

毎年秋には河川敷で「いもたき」が行われ、この地域の風物詩になっています。

 

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加茂川の上流(南)には石鎚山系の山々が連なります。

 

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加茂川からJR伊予小松駅付近にかけての国道11号線沿いには、

四国霊場88箇所のうち63番吉祥寺、62番宝寿寺などの札所が連続しており、

バスの車窓からも寺院の一部を見ることができました。

 

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伊予小松付近で平行していたJR予讃線と別れると、バスの車窓は次第に山深くなり桜三里越えの山道にさしかかります。

 

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桜三里は国道11号の愛媛県西条市と東温市を結ぶ峠道を指します。

その呼び名の由来については、700年以上前の源平時代に平家の落ち武者が平家再興を願い桜を植えたことに由来にするという説と、

江戸時代に松山藩主が吉野山のような名所にしようと囚人を動員して桜を植えさせたことに由来するという説があるようです。

 

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沿道の桜は一時期、国道を走る自動車の排気ガスなどが原因で勢いを失っていましたが、

地元の方の保存活動により美しい風景を取り戻しつつあります。

 

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県都松山への短絡ルートを構成する桜三里峠は日中でも交通量が多く、

前車に続いてのんびり走る車窓からは、途切れることなく続く満開の桜を楽しむことができました。

 

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桜三里峠を越えると松山近郊に路線を広げる伊予鉄道横河原線の沿線となり、

国道11号の沿道にも次第にマンションなどが目立つようになります。

 

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新居浜駅前を発車して約2時間、伊予西条駅前からだと約1時間30分。

松山市中心部の繁華街「大街道」到着のアナウンスが流れると降車ボタンが押され、およそ半数の乗客が下車していきました。

 

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大街道から約5分。15:37定刻に到着した伊予鉄道松山市駅前で下車。

新居浜から2時間7分、運賃は1570円でした。(新居浜特急線の終点はJR松山駅です)

 

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伊予鉄道の松山市駅はJR松山駅から伊予鉄道の路面電車で約10分。

松山市中心部の繁華街に位置しています。 

 

ここで乗車してきた新居浜特急線のライバルであるJR予讃線について手持ちの時刻表で確認してみます。

今治へ迂回する新居浜~松山間の鉄道距離は91km。

運賃は普通列車利用で1830円、特急自由席利用で3030円となっています。

JR松山駅までの所要時間は、新居浜から特急列車で約1時間5分、普通列車で2時間20分程度。

伊予西条からは特急列車で約1時間。普通列車で約2時間です。

松山側の目的地が松山市駅や大街道周辺の繁華街の場合、JR松山駅からの移動時間を考えれば、

新居浜特急線は、運賃だけではなく所要時間でもJRの特急列車と大差ない計算になり、桜三里越えのアドバンテージが際立つ結果になっています。

このような状況において、JR四国は特急列車往復と松山市内の路面電車が乗り放題になる「松山日帰り路面電車割引切符」を発売していますが、

その価格は新居浜発が5800円、伊予西条発が5580円と、バスとの価格差を埋めるには至っていません。

個人的には、新居浜特急線の絶え間ないテコ入れと、バス利用者を振り向かせるJRの魅力的な切符の発売により、

広い視点では地方におけるマイカーへの過度の依存に対して共闘する形になればと願っています。

 

最後に補足。

当ブログでは随所で「地方のJR運賃は輸送実態に比して安すぎるのではないか」という主張をしていますが、

あくまで「30km、長くても50km程度までの都市圏輸送において」という前提であり、

それ以上の距離帯での安易な値上げは、特急利用が中心で利益が大きい長距離輸送において、

他の交通モードに対する競争力を落とす結果になると考えています。

新居浜~松山における特急バスとの競合もその一例ではないでしょうか。

また経営危機に直面したJR北海道で2019年に行われた値上げについても、

「近距離ほど値上げ率が高い」という構成になっており、個人的には非常に的を得た内容であると感じています。

 

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