正月休みを利用した青春18旅行3日目。
甲府から松本・大糸線経由で到着した新潟県の糸魚川駅。2014年に長野~金沢間が開業した北陸新幹線が停車するようになり駅の様相も一変しています。
糸魚川からは日本海沿いを南下しますが、日本海縦貫線の一部を構成していたこの付近のJR北陸本線は、北陸新幹線開業時に「並行在来線」としてJRから分離されており、
新潟県域が「えちごときめき鉄道」、富山県域が「あいの風とやま鉄道」という第3セクター鉄道として運行されています。
新幹線開業前に多数走っていた特急列車が新幹線に取って代わられると、在来線を利用するのは本数の少ない普通列車を利用する地元客だけになり「JRとしてはペイしない」というのが並行在来線が3セク化される理由であり、
そうした事情から並行在来線を引き継いだ第3セクター鉄道の運賃は高めに設定される(設定せざるを得ない)ケースが多いようです。
仮にJR並みの運賃であったとしても青春18切符は使えませんので、今回は「どうせ使えないなら」ということで北陸新幹線と私鉄の富山地方鉄道の特急を乗り継いで富山へ向かうことにしました。
糸魚川駅から金沢方面の北陸新幹線に乗車すると、次の駅は富山県に入り黒部宇奈月温泉駅となります。
隣駅まで1駅のみ新幹線の自由席を利用する場合、特急料金が距離に応じ800円台または900円台となる国鉄時代からの特例は、JR化後20年以上を経て開業した北陸新幹線にも受け継がれています。
黒部宇奈月温泉まで約15分、運賃680円・自由席特急料金880円で計1560円です。
糸魚川駅新幹線ホーム。降雪地の新幹線の駅は線路上まで覆う屋根が特徴的です。
車両面ではJR化後の進化が著しい「新幹線」ですが、駅や高架などの構造物については東北・上越新幹線が開通した国鉄末期には基本的なスタイルが確立し現在まで踏襲されているように見えます。
高架の新幹線ホームからの眺めは、季節や天候によってはかなり良いかもしれません。
13:30発はくたか551号が入線。
北陸新幹線は高崎~上越妙高間がJR東日本、糸魚川駅を含む上越妙高~金沢間がJR西日本の路線となっており、
車両も両者がほぼ同一のものを「持ち寄って」運行しています。
乗車列車には「JR EAST」のロゴが描かれていました。
長野県の車両基地で多数の車両が冠水被害にあった関係で車両不足が生じ一部減便も実施されている北陸新幹線ですが、
Uターンラッシュとは反対方向の列車ということもあり自由席は半分程度が空席でした。
トンネル区間を抜け富山県に入ると天候が回復。
13:45.黒部宇奈月温泉駅で下車。
駅改札口付近。
黒部宇奈月温泉駅は新幹線単独の駅であり、並行在来線となった旧JR北陸本線も離れたところを通っていますが、改札を抜けそのまま真っすぐ駅の建物を出ると
左前方100mほどのところに富山地方鉄道の新黒部駅があり、10分あれば余裕をもって乗り換えることができます。
富山地方鉄道の軌道はもともとここを通っていましたが、駅は北陸新幹線開業にあわせて新規開業したもので、新幹線の駅同様まだ真新しさが感じられました。
待合室の路線図。
ブルーの本線は富山駅から魚津・黒部などを通り新黒部で新幹線と接続して宇奈月温泉へ向かう路線で、終点の宇奈月温泉駅からは黒部峡谷鉄道のトロッコ列車に乗り換えることができます。
首都圏からはここで北陸新幹線と富山地方鉄道を乗り継ぐルートが宇奈月温泉や黒部峡谷への最短ルートとなります。
列車は1時間に2本程度で一部は富山と宇奈月温泉を1時間少々で結ぶ特急列車となっています。
今回はその特急列車でJR富山駅に隣接する電鉄富山駅へ向かいます。
運賃1200円とは別に110円の特急券が必要です。
到着した新黒部発14:12の特急うなづき6号電鉄富山行。
元西武鉄道の特急車両を使用した3両編成です。
車内は富山地方鉄道転属後の平成23年に観光列車アルプスエキスプレス号として運転するために改造されており、
両端の2両は車端部にフリースペースを配したリクライニングシート、
真ん中の車両は窓を向いた座席が並んでいます。
新黒部を出て電鉄黒部に停車したのち、あいの風とやま鉄道(元JR北陸本線)の魚津駅に隣接する新魚津駅に入線。
魚津市街地では「あいの風とやま鉄道」「富山地方鉄道」ともに高架化されており、両者の列車のすれ違いや時には並走も見られるようです。
魚津市街地に限らす「あいの風とやま鉄道」と「富山地方鉄道」は富山~黒部間で路線が近接しており、地方都市圏では例の少ない競合区間となっています。
北陸新幹線開業までは、運賃が安く早いJR北陸本線の普通列車に地元利用が流れる傾向があったとはいえ、長距離輸送を担うJR北陸本線と地元輸送を担う富山地方鉄道という色分けが一応有効であったと思いますが、
JR北陸本線が地元の第3セクター「あいの風とやま鉄道」となり運賃差も縮まった現在となっては、新たな共生の在り方が模索されなければならないのかも知れません。
20年以上前には大阪からのJR特急が富山駅から富山地方鉄道に乗り入れて宇奈月温泉や立山に向かうということも実施されていました。
JR東日本の東北本線と仙石線のように両者の線路が並走している区間に渡り線を設けて金沢・富山~宇奈月温泉の直通特急を運転したり、
並行区間の運賃をそろえてどちらでも乗ることができるようにして実質的な増発や緩急分離(急行線と緩行線のように使いわける)を図るなど、いろいろなことが考えられそうです。
14:48上市駅に停車。向かい側に停車中の普通列車は東急電鉄からの転属車両です。
上市駅は他路線との分岐駅ではありませんが行き止まりスタイルの駅となっており、列車は進行方向を変えて発車します。
隣のホームには富山地方鉄道の自社車両が入線してきました。
上市駅から乗車車両が先頭車となったため運転台の後ろで、しばらく前面展望を楽しみました。
直線主体の線路を80km前後で走行し小さな駅を減速することなく次々に通過していく様子は「特急」の名にふさわしいものでした。
立山からの路線が合流する寺田駅からは列車の本数も増え、沿線はしだいに市街地が目立つようになります。
15:06分、新黒部から54分で終点の電鉄富山駅に到着。
糸魚川~富山間は新幹線では2駅27分 3210円。
旧北陸本線ルート(「えちごときめき鉄道」と「あいの風とやま鉄道」の乗り継ぎ)が、1時間20分+乗り換え時間 1550円。
本記事のような新幹線と富山地鉄の特急を乗り継ぐルートが1時間10分+乗り換え時間 2870円。となっています。
数百円とはいえ新幹線で直行するより安い富山地鉄特急乗り継ぎルートは、多少なりとも鉄道に興味のある方にはおすすめできるルートだと感じました。
電鉄富山駅に隣接するJR新幹線と「あいの風とやま鉄道」の富山駅。
富山から先の区間に並行私鉄はなく、あいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道(石川県域の並行在来線を引き継いだ第3セクター鉄道)直通の金沢行に乗車しました。
つづきはこちらです。