大分駅から特急ソニック号で到着した博多駅。
1987年のJR発足により九州内の国鉄路線はJR九州に引き継がれましたが、例外として新大阪から博多まで乗り入れる山陽新幹線については、終点博多までJR西日本が運行することになりました。
これによりJR化後の博多駅にはJR九州とJR西日本の2社の列車が乗り入れています。
ところで大阪方面からJR西日本の山陽新幹線を通り博多に到着した新幹線車両は博多駅の先約8kmに位置する車両基地まで引き揚げるものが多いのですが、
車両基地がある那珂川町は福岡市の中心に近いにもかかわらず交通が不便であったことから、住民から回送列車を営業列車として開放してほしいという要望が国鉄時代からありました。
平成2年にJR 西日本が車両基地の脇に博多南駅という新駅を設けることでその要望を実現し、営業を開始したのがこれから乗車する博多南線です。
博多南線はそのような成立経緯から全て新幹線の車両で運転されますが、JR 西日本内では在来線として扱われています。
似たような例としてはJR 東日本の上越新幹線越後湯沢駅から近くのスキー場最寄りのガーラ湯沢駅への路線を在来線として開業させた事例があります。
前置きが長くなってしまいましたが、早速在来線の博多南線が発車する新幹線ホームへ向かいます。
JR 九州の在来線切符売り場とは離れた「みどりの窓口」内にある自動券売機で博多南までの切符を購入します。
博多南線は終点まで8分で途中に駅はありませんが、全列車が特急列車という扱いになっており、普通乗車券200円とは別に100円の特急券が必要になります。
1枚にまとめてもよさそうですが自動改札機のシステムが乗車券と特急券を別々に認識するようになっているのかもしれません。
筑紫口に近い新幹線のりばの改札からホームへ向かいます。
次の博多南行は15:12。ひかりレールスター仕様の700系編成での運転です。
博多南線の使用車両は時刻表に明記されており、現状ではこの車両で運転される便が最も多くなっています。
ひかりレールスター仕様の700系は全車両が普通車ですが、博多まで指定席として運転される車両については東海道新幹線のグリーン車と同様の横4列(通常は5列)のシート配置になっています。
なお博多南線内は全便全車両が自由席として運転されます。
このレベルのシートに100円の追加で乗ることができる事例は他にはなさそうです。
発車10分前には空席が多かったものの、直前に乗車する人が多く、さらりと席が埋まって発車時刻になりました。
客層は大都市近郊の私鉄線に似ており、日曜午後の下りでは、買い物帰りの家族連れや塾や部活帰りと思われる学生などが中心でした。
博多駅発車後しばらくJR 九州の在来線鹿児島本線としばらく併走します。
鹿児島本線と離れ市街地の高架を走ること数分、
ポイントで本線と分岐し高架を降りると車両基地の脇にある博多南駅に進入します。
なおここまでの高架線は山陽新幹線開通から長らく車両基地への引き込み線扱いでしたが、
2011年の九州新幹線開通後は九州新幹線本線としても使われており線路を共用する格好になっています。
15:20博多南駅に到着。
仮ホームのような単線一面の簡易な駅です。
到着した車両の向こうには車両基地で発車を待つ新幹線車両が見えています。
博多南駅の管理は以前はJR 九州が行っていましたが、近年JR 西日本の管理に変わり改札周辺は京阪神近郊の小さな駅とよく似た雰囲気です。
駅舎も非常に簡素なものですが、写真にも写っている前面道路をまたぐ陸橋の先には大都市近郊の駅前でよく見かける複合ビルができており、
1階がバスターミナル、2階が博多南駅連絡口、3階4階にはオフィスなどが入居しています。
バスターミナルを発着するのは地元のコミュニティバスと西鉄バスで、
本数的には西鉄天神大牟田線の大橋駅へ向かうものが圧倒的に多いようです。
博多南と大橋の路線は旅行者には利用機会があまりなさそうですが、
路線途中の住民にとっては博多へ向かうときは博多南行(博多南線乗り継ぎ)、繁華街天神へ向かうとかは大橋行(西鉄乗り継ぎ)と使い分けができバスの営業上も効率がよさそうです。
陸橋から駅にもどると地元那珂川町の市制施行を祝うJR 西日本作成の看板が設置されていました。
1990年の博多南駅開業時には3万人台だった地元那珂川町の人口は5万人を越え単独での市制施行に至りました。
その背景に、この地域の交通環境を劇的に改善した博多南駅の存在があったことは言うまでもなく、両者は共存共栄の関係と言えそうです。
博多南駅からは博多駅乗り継ぎとなるJR 九州福岡近郊区間への切符を買うことができます。
博多南駅を発車する列車は朝ラッシュ時に1時間に4本程度、日中以降は1時間に1本と多くはありませんが、駅の利用者数は乗車人員で約7000人に達しています。
遠方からこの駅のラッシュの様子を見に行くことは容易ではありませんが、数値からその様子を推し量ることはできます。
ラッシュ集中率を40パーセントと見積もるとラッシュ1時間に約2800人が4本の列車に乗車している計算になります。
1分あたり45人から50人が改札を通過する状態が1時間つづき、横5列シートの車両を含む8両編成の全ての座席を埋め立客も多数の状態で博多駅に向けて列車が発車する光景が毎朝見られるに違いありません。
15:47発の復路に利用した博多行もレールスター仕様の700系8両編成でした。
休日の午後に博多へ向かう利用者は少ないようで、博多駅寄りにある改札口から遠い車両は1両数人という状態でした。
発車後本線との合流地点で鹿児島中央方面へ向かう九州新幹線の列車と行き違い。
九州新幹線の最高時速は260kmですが博多南線列車との共用区間は120km制限となっています。
15:55博多駅に戻ってきました。
列車は約5分博多駅に停車したのち山陽新幹線こだま号岡山行となって発車します。
博多駅からは多数の乗車が見られましたが、広島や岡山へは後続の「のぞみ」の方が早着することから、その多くは小倉までの福岡県内利用の乗客と思われます。
博多~小倉間の在来線(鹿児島本線)にはJR九州が多数の特急列車を運転していますがその所要時間が40分台であるのに対し、山陽新幹線だと20分かからずに到着することができます。
JR九州は特急料金を割り引く特例を設けるなどの対抗策を実施しており、
博多~小倉間は全国的にも珍しいJR同士が客を奪い合う区間となっています。