JR 四国ツアーの旅行商品「自由に四国鉄道の旅」(JR 四国特急乗り放題2日+提携ホテル1泊)を利用してJR 四国の乗り歩き旅行をしています。
(伊予灘ものがたり号乗車のためのグリーン券と食事券は別購入です。)
昨日は徳島から高徳線の特急うずしお号と予讃線の特急いしづち号を乗り継いで松山に到着。
2日目は松山駅から特急ではなく観光列車「伊予灘ものがたり号」で予讃線の伊予大洲駅へ向かいます。
松山駅発8時25分。伊予大洲行「大洲編」の運転に備え出庫する「伊予灘ものがたり」車両。
「伊予灘ものがたり号」に使われる車両は、四国内では徳島地区を中心に活躍がつづく、普通列車用ディーゼルカー「キハ47系」からの改造車2両編成です。
写真左の赤い車両が伊予大洲・八幡浜寄りの1号車で伊予灘に浮かぶ夕陽をイメージした「茜の章」、写真右の黄色い車両が松山寄りの2号車で地元特産の柑橘類をイメージした「黄金の章」となっています。
一旦高松寄りの留置線に引き上げたのち、発車10分程前に1番線に入線してきました。
伊予大洲・八幡浜寄り1号車「茜の章」の車内。
写真右側が伊予灘の車窓を望む側で、カウンター席と4人掛けテーブル席。
山側となる写真左側は全て2人掛けテーブル席になっています。
エントランス部分。
暖簾の向こうにはトイレがあり、奥へ進むと2号車「黄金の章」へ通り抜けができます。
2号車「黄金の章」のエントランス部分はダイニングバーになっていました。
客室部分は1号車「茜の章」と同じく伊予灘を望む側がカウンター席と4人掛けテーブル席、山側が2人用テーブル席になっています。
このように伊予灘を望む側は1号車・2号車ともカウンター席と4人掛けテーブル席のみとなっており、
2人掛けテーブル席がすべて山側(伊予灘とは反対側)になるという点は、この列車への乗車を検討し座席の予約をする際にもっとも注意しなければならない点だと思います。
2人連れでの乗車を検討されている方で車窓を楽しみたい方は、指定券の発売日(乗車日の前月同日の10時)早々に「みどりの窓口」などへ行ってカウンター席横並びを確保することをお勧めします。
なお先日乗車した岡山発のJR西日本の観光列車「ラ・マル・ド・ボァ」も2両編成でしたが、1号車と2号車でカウンター席と2人掛け席の配置を逆にする配慮がなされていました。
列車を運行するJR四国でも1号車と2号車いずれかの向きを反対にしたうえで、同型のキハ47をもう1両連結(向きを逆にすると運転台が同じ方向を向いてしまうため)するなどの対策が必要なのではないかと個人的には感じました。
増結する車両は塗装だけそろえて運転台確保のためのダミー車両とすることも考えられますが、伊予灘ものがたり号は人気があるようですので、1号車、2号車に準じた内装に改造して定員増を図ることへの布石という位置づけでもよいかもしれません。
今回、夕方に八幡浜から松山へ向かう「道後編」に乗車したかったのですがカウンター席は満席と言われ、旅程全体を見直して松山を朝に発車するこの「大洲編」に変更することでようやく1席だけ残っていたカウンター席を確保することができました。
席につくとアテンダントさんが来られ事前購入の食事予約券の確認を受けます。
伊予灘ものがたり号は乗車している「大洲編」(松山8:25⇒伊予大洲10:27)のほか、
「双海編」(伊予大洲10:55⇒松山13:10)
「八幡浜編」(松山13:28⇒八幡浜15:52)
「道後編」(八幡浜16:06⇒松山18:20)
があり、それぞれ事前予約の食事メニューが決まっています。
価格は大洲編の2500円が最も安く、道後編が3000円、
双海編と八幡浜編は4500円となっています。
(伊予灘ものがたり号の運転日は土日祝日が中心です。)
座席には乗車時からペーパーマットやおしぼりなどが準備されていました。
事前に食事を予約していない場合でも、2種類のメニュー表から酒類を含む飲料やおつまみ、軽食などを注文することができます。
8時25分。ホーム反対側からも盛大な見送りを受けて松山駅を発車。
しばらく松山市街地を走った後、重信川をわたると車窓には郊外の田園風景が広がります。
車内では早速「伊予灘の車窓」とならぶこの列車のメインイベントである食事の配膳が始まりました。
モーニングプレート。軽食のイメージでしたが、これだけで充分朝食一食分の分量がありました。
食事内容に比して2500円が安いというイメージはもちませんでしたが、
2500円という価格については、伊予灘ものがたり号を利用して松山から伊予大洲まで移動するのにかかる総費用(徴収しないとペイしない値段)からJRの運賃・料金規則によって請求される運賃・料金を差し引いた金額、
言い換えれば複数乗務されているアテンダントさんのサービスなどの人件費も盛り込んだ金額という理解でよいのではないかと思います。
食事が済むタイミングを見計らって食後のコーヒーがサーブされました。
予讃線は松山から約15kmの向井原駅で内陸の内子経由と海岸線を行く伊予長浜経由に分岐します。
伊予灘に沿って延びる伊予長浜経由の路線ほうが古くからの予讃線で、内子回りの内陸ルートは国鉄末期にバイパスルートとして開通したものです。
松山と愛媛県西部の拠点宇和島を結ぶ特急列車「宇和海」号は全列車が内子回りで運転され、伊予灘ものがたり号が走る海沿いのルートは普通列車のみの運転となっています。
向井原駅を通過して5分程で伊予灘沿いに出ます。
当日は台風通過直後ということもあり波が高く冬の日本海を見ているようでもありました。
松山駅を発車して51分。9時16分に下灘駅に到着しました。
ここは大洲編では唯一の途中停車駅で10分間の停車時間があります。
下灘駅は単線1面の小さな駅ですが、ホームから見える伊予灘の風景が美しいことで知られ、青春18切符のポスターにも採用されたことがあります。
海に沈む夕陽を望む夕方の時間帯は特に美しいとされていますが、台風一過のクリアな視界に恵まれた今回の午前9時台の風景も期待を裏切らないものでした。
2両編成の定員は50人ですが、全員がホームに出てこの駅の雰囲気を楽しんでいました。アテンダントさんに記念写真を撮ってもらうこともできるようです。
下灘駅発車後もしばらく伊予灘の車窓がつづきます。
列車は伊予灘を望む区間では沖合に見える船と同程度まで速度を落として運転していました。車窓に見入っていると「伊予灘クルーズ」の船に乗船しているようでもあります。
予讃線(海線)沿線の拠点伊予長浜駅を通過すると、
列車は左に大きくカーブして伊予灘を離れ肱川に沿って進みます。肱川の風景も伊予灘と同じ側「大洲編」の場合は進行方向右側です。
肱川は秋から冬の朝に川霧が音をたてて伊予灘に流れ下る「肱川あらし」という現象が見られることで有名ですが、毎朝見られるものではなく遠来の訪問者がその光景を目にすることは容易ではないようです。
車内には乗車日と乗車記念のスタンプを押して持ち帰ることができる記念証が用意されていました。
このような伊予灘に沈む夕陽を望むことができるのは「伊予ものがたり号」4列車の中でも夕方に八幡浜から松山へ向かう「道後編」のみです。
関連グッズも豊富で、2号車のカウンターや巡回するアテンダントさんから買い求めることができます。
終点の伊予大洲駅が近づき「大洲市さんからのプレゼントです」と乗客全員に手渡された手土産。
中には大洲市の観光案内と市内の飲食店で使えるクーポン、「さといもカレー」が入っていました。
伊予灘ものがたり号の運転は大洲・八幡浜など愛媛県西部の観光振興の話抜きには語れません。
この地域では東京・大阪など大都市圏から直接観光客を呼び込むより、桁違いに多い観光客が日々訪れている松山市内・道後温泉から「足を延ばしてもらう」戦略のほうが合理的であり、伊予灘ものがたり号はJRと協調してその戦略を具現化したものという位置付けではないでしょうか。
松山駅から約2時間。10時27分に終点の伊予大洲駅に到着しました。
観光案内所を併設した伊予大洲駅舎。
大洲市は伊予の小京都とも呼ばれ、肱川流域にある大洲城を中心に発展した人口約4万人の城下町です。
大洲城は駅からも見えていました。
距離は約1.4kmありますが、観光案内所ではレンタサイクルの貸し出しも行われており気軽に訪れることができます。
大洲から先の周遊ルートとしては、松山方面の特急列車で10分程の内子駅で途中下車して古い町並みや「内子座」を見学したのち松山に戻るルートや
宇和島方面の特急列車で10分程の八幡浜からフェリーで別府温泉(九州・大分県)へ向かうなどのルートが考えられます。
筆者は10時50分発の宇和島行き特急宇和海号に乗り継ぎ、宇和島から予土線の普通列車に乗り継ぐ予定でしたが、乗車予定の列車に限って「運転休止」になってしまいました。
30分程駅のベンチで思案した結果、次の特急列車で松山駅まで戻り高速バス「南国エクスプレス号」で予土線回りで向かう予定だった高知を目指すことにしました。
つづきはこちらです。