西浦特急 鉄道と旅のブログ

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「地方都市圏のJRは安すぎる?本当のローカル線問題」第2話

 

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第1話について

 上の貼り付けの第1話では、採算ラインを上回る程度の収益を上げている地方私鉄として四国の「ことでん」と「いよてつ」の例をあげ、輸送密度で見る限りそれらと同レベルの利用があるJR四国「牟岐線」(徳島~阿南間のみ)との運賃・サービスなどを比較しました。

 結論として運賃は総じて私鉄の方が高く、区間によってはJRの2倍程度ということもありますが、一方で輸送サービスの現状では、私鉄は多くの路線で15分毎・20分毎の等間隔・頻発運転が行われ、ICカードの導入や車両の更新なども積極的に行なわれているのに対し、輸送密度が同程度のJR路線は四国に限らず、日中1時間に1~2本のランダムダイヤで、ICカードの導入なども進んでいない現状があるこを見てきました。f:id:nishiuraexp:20181213225030j:plain

 JR四国牟岐線の列車。(第1話の記事掲載の翌日に2019年春より増発のうえ等間隔ダイヤ(30分ヘッド)が実施されることが発表された。)

 

 第2話本題 現在の地方都市圏のJR運賃の経緯

 第2話では、輸送実態が似通っている路線同士にもかかわらず、地方都市のJRと私鉄で運賃格差が生じている理由について考察していきたいと思います。

 そもそも現在のJRの運賃は、1987年のJR発足前の国鉄運賃を基本的に継承しています。国鉄運賃は、路線毎の利用実態にかかわらず乗車距離によって定められており、乗車距離が同じであれば、北海道のローカル線でも首都圏の路線でも運賃は同じでした。

 したがって運賃を設定するにあたっては、100円の収入を得るのに1000円かかる赤字ローカル線から80円で済む黒字路線まで、すべてを「平均」した値で考えられていたものと思われます。平均と言っても、赤字ローカル線と黒字の首都圏の路線とでは利用者の比重が圧倒的に違うので、真ん中をとって590円にする必要はなく、120円くらいにしておけば問題なかったのでしょう。これは逆にいえば、100円の収入を得るのに1000円かかる路線がなぜ存在するのかの説明の一つにもなります。

 しかし昭和40年代ころから、地方でのモータリゼーションの進行などで赤字ローカル線の問題が深刻化、国鉄の財政も悪化し、合理化と値上げが繰り返されるようになります。その過程で、これまでのように全国の平均値をもとに値上げをしていると、利用が多く黒字経営ができている大都市圏で、並行する私鉄との運賃差が拡大し乗客が逸走する恐れがあったことや、受益者(ローカル線の利用者)負担の考えもあって、国鉄は全国の路線を「幹線」と「地方交通線」に分け、地方交通線(赤字ローカル線とほぼ同義)は、10%程度運賃を上乗せするルールを導入するなどの改革を行いました。

 これは、先の例でいえば、全国平均から計算された120円の運賃を値上げする際に幹線は130円に、ローカル線は140円にしたということになります。このような改革の時代を経て、昭和62年に国鉄は分割民営化され現在のJRが発足します。

 

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 JR北海道留萌線増毛駅 留萌~増毛間は利用の減少から廃止された。現在までに廃止されたJR路線は輸送量的にはバスで代行できるものばかりだが。

 

 民営化は大きなインパクトでしたが、運賃は国鉄末期のものがそのまま引き継がれました。利用者の比重から見れば、大都市の通勤路線や新幹線など、黒字路線を多く引き継いだ本州3社(JR東日本、東海、西日本)は、国鉄が全国平均的な考え方で算出した運賃を適用しても、経営を安定させることができましたが、もともと100円の収入を得るのに300円や500円あるいはそれ以上かかっていた路線ばかりを引き継いだ、JR四国やJR北海道・JR九州(所謂「三島会社」)は、「1割増の140円」では初めから計算が合わなかったことは想像に難くありません。

 発足直後はそれでも、バブル景気の追い風などもありましたが、その時代も過ぎ、利用者が減少基調になった平成8年に三島会社は一斉に値上げを行いました。例えていえば、「1割増しの140円」を「160円」にしたということになるでしょう。引き継いだ路線の運営にかかる経費を考えれば「焼石に水」程度でしかなかったはずです。

 国鉄末期の度重なる値上げの反省もあって、JRになって以降の値上げは消費税転嫁を除けば、この三島会社の1回のみで、現在に至っています。

 

 JR四国の運賃は距離によっては阪急電鉄とほぼ同じ

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 この文章の例えでいう「三島会社の160円」については、第1話で四国の場合、松山や高松近郊に路線を持つ地方私鉄の、5割から7割程度に相当することを確認しましたが、今回は逆にJR三島会社と同程度の運賃の私鉄について見てみたいと思います。下の表は、大都市圏を代表する私鉄とJR四国の運賃の比較です。

乗車距離 JR四国 阪急電鉄 東急電鉄

 5km 210円 190円 160円

10km 220円 220円 200円

15km 260円 270円 250円

20km 360円 280円 250円

  地方都市圏で通勤通学の利用が多い、10km~15kmの距離帯では、JR四国の運賃は、首都圏の東急電鉄に比べるとやや高いものの、京阪神圏の阪急電鉄とほぼ同等になっています。

 15kmまでの運賃がほぼ同等の阪急電鉄の全線平均輸送密度は15万人以上です。JR四国全線の平均輸送密度は4730人にすぎません。第1話で例に挙げたJR四国と同程度の輸送密度の地方私鉄「いよてつ」や「ことでん」は、大都市の私鉄が行っているサービスや保有する施設のうち、地方都市でも必要なものを「厳選」し経費を切り詰めたうえで、JR四国や阪急電鉄の1.5倍から2倍の運賃を徴収することで、ようやく収支均衡水準に持ち込んでいるのでしょう。

 こうしたJR(三島会社)と私鉄の、輸送密度と運賃のアンバランスが生じた背景は上にのべたとおりです。値上げを経ながらもJR四国などの三島会社が引き継いでいる国鉄運賃は、その決定にあたって阪急電鉄以上に利用の多い山手線などの経営的に超優良の路線も「どんぶり勘定」にしていたものなのです。

 

 第3話では、このアンバランスの将来的な影響について考えたいと思います。

  

*文中の詳細のデータについては簡易な方法で調べたものですので誤りがあるかもしれません。