西浦特急 鉄道と旅のブログ

鉄道・飛行機などで国内外を旅行した様子のほか、鉄道を中心に交通全般の話題を取り上げます。

「地方都市圏のJRは安すぎる?本当のローカル線問題」第1話。

 JRのローカル線問題というと、今年3月に廃止されたJR西日本の三江線や、JR北海道の閑散路線などを思い浮かべることが多いと思います。

 しかしJRの路線の場合、人口30万~50万程度の地方の県庁所在都市クラスの通勤通学輸送を担っているような路線でも、黒字で運営できている路線・区間は少ないのではないでしょうか。

 筆者がそのような推測に至る根拠の一つが、地方都市圏の輸送で、採算ラインを若干上回る程度の収益(黒字)を挙げている、私鉄や第三セクター鉄道の運賃と、JR運賃の格差です。

 ここでは、上記の地方私鉄の例として四国の2つの私鉄を上げたいと思います。

 ひとつは、香川県の県庁所在地高松市(人口約40万人)を中心に3路線、約60kmの路線を持つ、高松琴平電気鉄道、通称「ことでん」です。手元の資料によれば、2009年度の全線平均の輸送密度は4975人。会社としての営業損益は若干の黒字となっています。「営業」がどこまでを含むものか不明な部分もありますが、少なくとも主力の鉄道事業で大きなマイナスが出ていないことは確かなようです。日中の運転間隔は志度線と長尾線が20分毎、琴平線は区間により15分毎または30分毎となっており、ワンマン化は行われておらず全列車に車掌が乗務しています。また独自のICカード乗車券IRUCAが全駅で利用可能で、今年の春からはSUICAなど主要交通系カードでの乗車もできるようになっています。

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 (写真)ことでん志度線房前駅付近。沿線に観光地が多く、ローカルムードを求めて訪問する大都市圏の鉄道ファンも多いが、ラッシュ時の高松市内では数分間隔で列車が運転される。

 2例目は、愛媛県の松山市(人口約50万)を中心に路線をもつ伊予鉄道です。2009年度の輸送密度は5871人(軌道区間をのぞく)で黒字となっており、「ことでん」に近い状況になっています。日中でも全路線・全区間で15分毎の運転が行われており、「ことでん」同様、独自のICカード乗車券が全駅で利用できます。 

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 (写真)伊予鉄道郡中線古泉駅。伊予鉄道の運賃は距離によってはJRの倍近いものの、近隣に大型ショッピングセンターができ、駅の利用者は増加している。 

 

 さてこれら2私鉄の運賃と同じエリアで営業するJR四国の普通運賃を比較したものが下の表です。

乗車距離 いよてつ ことでん JR四国

 5km 210円 240円 210円 

10km 410円 350円 220円

15km 520円 440円 260円

20km 620円 500円 360円

 

 10km~20kmの距離帯においては、「ことでん」はJR四国の1.5倍程度、「いよてつ」は2倍程度となっており、その差がはっきりしています。

 これは言い換えれば、「ことでん」や「いよてつ」が、仮にJR四国の運賃で、現状のような黒字経営を維持しようとすれば、電車の大幅な減便や人員の削減など、サービスの低下につながる施策は避けられないということではないでしょうか。そのことは、運賃が安いJR四国の中で「いよてつ」や「ことでん」と同じ程度の輸送密度の区間の、輸送サービスの状況を見れば明らかになります。

 JR四国が公表しているデータによれば、県庁所在都市「徳島」(人口25万)の近郊輸送を担う「牟岐線」の徳島~阿南間約25kmの、平成29年度の平均輸送密度は4807人となっており、2009年度の「ことでん」とほぼ同じ、「いよてつ」とも大差ありません。「牟岐線」は私鉄がない徳島で、松山の「いよてつ」や高松の「ことでん」と同じような役割を担っていることが推測されます。

 さて牟岐線の輸送サービスの状況については、朝ラッシュ時が1時間に3本程度、日中以降は1時間に1本ないし2本という運転本数で、発車時刻・運転間隔も一定ではありません。「いよてつ」「ことでん」のようなICカードの導入はなく、多くの列車がワンマン運転、駅員の配置も一部の駅のみという状況で、利用状況が似通っているにもかかわらず、「いよてつ」「ことでん」とは大きなサービス格差が生じています。

 最近では通勤時間帯に定期券に300円程度の特急料金をプラスするだけで乗車できる「通勤特急」を運転するなどの積極策も見られますが、残念ながら、この区間の収支が黒字になっているという話を聞いたことがありませんし、JR四国としても赤字の区間への積極的な投資はためらわれるところでしょう。(注・牟岐線は地方交通線のため上表のJR四国運賃より若干割増の運賃表が適用されます。)

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(写真)JR四国牟岐線 文化の森駅付近 日中の牟岐線は1両ワンマン運転が中心。運賃は同じ四国の私鉄の7割から半額程度だが。

 ここまで四国内の例をとりあげてきましたが、JR西日本の吉備線(岡山都市圏)、JR東日本の大糸線の松本周辺(松本都市圏)、東北本線の福島~白石間(福島都市圏)、水郡線の水戸~常陸大宮(水戸都市圏)などが、「いよてつ」「ことでん」に近い輸送密度のようですが、いずれも運転本数は牟岐線と大差なく、2私鉄に迫るサービスレベルに達している路線は見当たりません。

第2話につづきます。

 

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