西浦特急 鉄道と旅のブログ

鉄道・飛行機などで国内外を旅行した様子のほか、鉄道を中心に交通全般の話題を取り上げます。

【京都丹後鉄道乗車記】宮豊線・宮舞線(豊岡11:00→西舞鶴13:01)

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但馬空港からバスで15分。伊丹空港から約1時間少々で到着した兵庫県北部JR豊岡駅。

今回はここから第三セクター鉄道の京都丹後鉄道に乗車します。

 

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JRに乗車する場合は駅舎2階の改札口へ向かう必要がありますが、京都丹後鉄道はJR 駅舎の脇に独自の小さな駅舎をかまえており、駅前から上下の移動なくホームへ向かうことができます。

 

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京都丹後鉄道豊岡駅の駅舎内。

 

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京都丹後鉄道の路線図。

豊岡駅は宮津と豊岡を結ぶ赤ライン「宮豊線」の西端(地図の左端)にあたります。

京都丹後鉄道の拠点宮津駅には宮豊線のほか、宮津と西舞鶴を結ぶ青ライン「宮舞線」、宮津と福知山を結ぶ緑ライン「宮福線」が乗り入れています。

 

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運賃表を見ると駅ごとに運賃が上がり高額に感じますが、駅間距離が比較的長いためで、

距離を基準にすればJRの1.5倍程度の区間が多く、地方私鉄や3セク鉄道としては標準的な運賃水準という印象です。

 

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今回は京都丹後鉄道オリジナルの特急車両タンゴエクスプローラー号登場30周年を記念したフリー切符を使用することにしました。

京都丹後鉄道の全線が1日乗り放題となるほか、特急列車の自由席も利用できて2500円。

タンゴエクスプローラー号のクリアファイルのおまけつきです。

 

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11:00発。西舞鶴行の普通列車で出発します。

 

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車両はすでに30年選手ですが、

 

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新快速のような2人掛けシートに、

 

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窓側には小さなテーブルもついて長時間でも快適に乗車できます。

 

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京都丹後鉄道の豊岡~西舞鶴間(宮豊線・宮舞線区間)84kmは旧国鉄宮津線を引き継いだものですが、

同社の経緯は、他の国鉄ローカル線を引き継いだ第三セクター鉄道より複雑です。

まず現在の宮福線区間(福知山~宮津間30km )が新規路線として昭和63年に開通。開通当時の社名は宮福鉄道でした。

平成に入って国鉄(JR )  宮津線の移管を受け、北近畿タンゴ鉄道に社名を変更。先に開業していた宮福線と合わせ114km という長い路線を有するに至っています。

その後、福知山~宮津~天橋立の電化や、上下分離方式によりバス会社として知名度が高い「ウィラー」が列車の運転(上下分離の上の部分)を担うようになり、社名も現在の京都丹後鉄道に再度変更されています。

 

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豊岡を発車した列車はJR山陰本線とわかれ、円山川の鉄橋を渡ります。

豊岡の次のコウノトリの郷駅までが兵庫県に属し、その先で山を超えて京都府内に入ります。

 

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豊岡から2駅。京都府に入って最初の停車駅久美浜駅は寺院のような駅舎が目をひきます。

 

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久美浜から先、駅に停まるごとに乗車があり、豊岡発車時点では数人だった車内は次第に賑やかになりました。

記事を書いている手元にはJR宮津線時代の駅間毎の通過客数を示したグラフがあります。

JR宮津線のうち現在宮豊線となっている区間は宮津と豊岡という2つの都市を結んでおり、豊岡ではJR山陰本線とも接続しているにもかかわらず、

宮津から豊岡方向を見ると、まるで山間の行き止まり駅に向かうかのように、ほぼ「降りる一方」になっていることがわかります。

実際に今回反対方向の豊岡から宮津方面への列車に乗車して車内の様子を見ていると、現在もこの現象はかわっていないように見えました。

このような現象が起こる要因は豊岡手前にある京都と兵庫の「府県境」のために、

ローカル線の主役である高校生の越境通学ができないためと思われますが、

但馬と丹後を分断する府県境の壁は、京都丹後鉄道の輸送に限らず、

お互いの地域にとってプラスには作用していないのではないでしょうか。

 

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多くの乗車があった峰山駅。

駅名板の右の名所案内2番目の「間人」は「たいざ」と読みます。

 

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峰山駅と丹波大宮駅の間では平行する幹線道路沿いにロードサイド型の店舗が並ぶ光景が見られましたが、

鉄道は少し離れた田園地帯をかすめるだけで気軽に歩いて行ける場所に駅があるわけでもありません。

京都丹後鉄道沿線に限ったことではありませんが、鉄道の存在を忘れたかのような街づくりは、ローカル線にとっては人口減少や少子化よりもっと深刻な問題といえそうです。

 

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豊岡から1時間少々。列車の前方に中海を横断する天橋立の松並木が見えてきました。

 

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観光客の利用が多いJRからの直通特急の終点にもなっている天橋立駅ですが、地元客中心の普通列車の乗降はそれほど多くなく、すぐに発車。

列車は市街地を回り込むように走り、宮福線と合流すると、

 

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京都丹後鉄道最大のターミナル宮津駅に到着します。

豊岡から1時間18分、停車時間を利用して駅前に出てみることにしました。

 

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宮津駅での待ち時間に利用したい、ホームと改札外の待合室の両側から利用できる喫茶店「114km Cafe 」。

ここで提供される「丹鉄珈琲」は、京都丹後鉄道で運転される観光列車の車内でも購入することができます。

 

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駅舎外観。

 

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駅前。写真右手の店の前に行列が出来ていますが、富田屋という海鮮料理のお店で、

ネットの検索欄に「宮津駅前」と入力すると予測検索で店の名前が出てくるほど評判が広まっているようです。

 

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富田屋の前を通り駅前ロータリーに進入する大阪からの高速バス。

改めて時刻表の京都丹後鉄道のページを見てみると、現在JRから京都丹後鉄道に直通する特急列車の始発駅はすべて京都駅となっており、

かつて大阪からJR福知山線を介して直通していた特急列車はすべて廃止されてしまったようです。

 

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停車時間は10分。すぐに列車に戻りました。

12:28。列車は宮津と西舞鶴を結ぶ宮舞線区間へと踏み出します。

 

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宮津駅を出て次の栗田駅付近まで続く市街地が途切れると、

 

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車窓には日本海が広がります。

 

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付近には丹後由良海水浴場があり、JR初期には海水浴客を意識した臨時列車なども運転されていましたが、

レジャーの変化の中で、スキー客向けの臨時列車「シュプール号」などとともに過去のものになってしまいました。

 

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丹後由良駅を発車した列車は、由良海岸と並ぶ京都丹後鉄道のビュースポット「由良川鉄橋」にさしかかります。

由良川の河口にかかるこの鉄橋は550mという長さ以上に、水面から約6メートルと通常の鉄橋に比べて「低い」ことが特徴で、

 

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ゆっくりと鉄橋を渡る列車の車窓は船室からの眺めを連想させるものです。

また鉄橋は有名な列車撮影ポイントでもあります。

 

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由良川鉄橋の東にある丹後神崎駅のあと、東雲、四所と停車し、右からJR舞鶴線が合流すると間もなく終点の西舞鶴に到着します。

 

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13:01。豊岡から2時間1分で西舞鶴駅に到着。

宮津での停車時間を差し引く1時間51分で途中17駅に停車しながら約84kmを駆け抜けた計算になります。

実際に乗車した感覚としても「ローカル線はゆっくり走る」という固定観念を覆すように、

必ずしも線形に恵まれない路線でありながら、非常にキビキビと走っている印象をうけました。

仮に駅まで10分、乗車40分、駅から10分、平均待ち時間15分(運転間隔30分)トータル1時間15分という移動を想定します。

乗車時間を10分短縮し30分にすれば、トータルの所要時間は1時間5分になりますが、

これは列車を3倍の本数に増発し平均待ち時間を5分(運転間隔10分)にした場合と同じ結果です。

ローカル線では時刻表を確認せずに駅に向かう人は少ないとはいえ、

駅から目的地までの距離が離れがちで、需要の少なさから増発も困難なローカル線こそキビキビ走らなければならないと考えることもできます。

 

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西舞鶴駅も豊岡駅と同じような構造になっており、JRの改札は橋上、京都丹後鉄道の改札は地平にあります。

 

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ガラス張りの近代的な駅舎が特徴の西舞鶴駅。

 

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駅前は広いものの、人気店のおかげで活気が感じられた宮津駅前に比べ閑散としている印象をうけました。

 

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駅前からは京阪神への高速バスが発着しています。

時刻表をみると京都・大阪・神戸いずれへも2時間かからずに到達するようです。

一方、鉄道に目をやれば、特急まいづる号が直通する京都はまだバスと競争する余地がありそうですが、

大阪・神戸については「バスにお任せします」と言っているようなものでしょう。

このあと観光列車あかまつ号で天橋立まで戻り駅周辺を観光しました。

続きはこちらです。 

 

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【水島臨海鉄道訪問記】平日には国鉄型ディーゼルカーも活躍。

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岡山県倉敷市JR西日本倉敷駅。

今回は倉敷駅に隣接する倉敷市駅を拠点とする地方私鉄「水島臨海鉄道」に乗車します。

 

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橋上駅舎のJR倉敷駅からつづく歩道を進むと立体駐輪場を併設した水島臨海鉄道倉敷市の駅舎が見えてきます。

 

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1階駅舎部分。

 

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駅コンコース。

 

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駅掲出の時刻表(左)と路線図(右)

列車の運転は等間隔になっておらず20分または40分間隔の運転で、平均すれば概ね1時間に2本平均30分に1本程度の運転です。

途中の行き違い設備は十分にあり30分の等間隔ダイヤになっていないのが不思議な感じがしますが、

時刻表で確認しても、特に概ね20分間隔のJR山陽本線のダイヤに合わせているというわけでもないようです。

列車の行先については、終点の三菱自工前駅付近の工場への出退勤利用が少ない日中と夜間は水島止まりが主体となっています。

 

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15:26発の列車で終点の三菱自工前へ向かいます。

 

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終点まで距離約10km 。運賃は350円。

 

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倉敷市駅を発車した列車はJR山陽本線に沿って西へ向かって走ります。

 

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山陽本線との並行区間は2km近くに及びます。

 

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山陽本線と別れると最初の停車駅球場前に到着。

 

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球場前駅を出ると高架に上がり次の西富井駅に到着。

行き違い設備の有効長が非常に長く複線区間のようにも見えますが、これは貨物列車との行き違いを考慮した設備です。

水島臨海鉄道の主役は長らく貨物列車であり、

旅客列車は言うなれば副業扱いで1日10往復程度という状態が80年代に入っても続いていました。

近年は旅客輸送の比重が大きくなっていますが、それでも収入面ではほぼ半々というのが現状のようです。

 

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高架を下り停車した駅は福井駅。

JR線なら「備中福井」を名乗っていたかもしれません。

 

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弥生駅も西富井駅同様、行き違い設備の有効長が長く(写真は後方展望)

乗車列車が行き違い区間に入ると対向列車に対する信号が青に変わり、

 

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こちらが完全に停止する前に対向列車が発車していきました。

実際に部分複線のような使い方がされているようにも見えます。

 

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水島の二つ手前の栄駅。

全国チェーンのホテルなども見えていますが、ロータリーを備えた駅前は静かな様子です。

 

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倉敷市から約20分で水島臨海鉄道の拠点駅である水島駅に接近。

倉敷市水島地域の人口は約9万人。

その中心らしく高架線から眺める市街地の様子は他のローカル私鉄とは一線を画しています。

 

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水島駅は1面3線の高架駅。

 

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およそ半分の席が埋まった状態で倉敷市を発車。

半数程度が途中の駅で下車していましたが、

ここで筆者を残し全員が下車しました。

 

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水島駅をでると貨物専用線が分岐し、

 

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車窓には一瞬だけ工業地帯の海が広がります。

 

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水島から2分ほどで終点の三菱自工前に到着。

旅客営業はここまでですが、三菱自工前行きの列車はここで乗客を降ろした後すぐに発車して

 

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前方の倉敷貨物ターミナル駅まで引き上げます。

 

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高架の水島駅に比べると三菱自工前駅は簡素で、駅設備といえるものは簡易ベンチがならぶホームだけ。

駅舎やトイレ、券売機・改札口などはあなく、駅周辺についても店舗どころか自販機すらないというのが現状です。

 

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倉敷市駅の時刻表でも見たように、工場への出退勤専用に近い駅のため、

ここまで乗り入れる列車は朝夕に偏っており、

(大手の工場らしく?)長時間の残業は少ないのか夜も19時台が最終となっています。

 

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三菱自工前駅全景。

 

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駅横の広い道路を走る車運車の荷台をよく見ると三菱ではなく日産の新車が積まれていました。

 

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倉敷貨物ターミナル駅から到着した倉敷市行きの列車で水島駅まで折り返します。

 

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水島駅までの客は筆者一人だけ。

車内の営業開始50周年の広告が気になりました。

水島臨海鉄道は1970年に倉敷市営鉄道を引き継ぐ形で倉敷市~水島間の営業を開始。その後三菱自工前までの旅客営業を開始しています。

また1992年には水島駅付近などの高架化が行われ現在に至っています。

 

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水島駅で途中下車。

 

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ホームのエレベーターは92年の高架当時からのものでしょうか。

 

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高架下の駅施設は簡素で、ホームに上がる階段の下に事務室と券売機がありますがここも改札口はありません。

 

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駅舎外観。

 

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駅前のバスターミナルも駅周辺の市街地も立派ですが、

コロナによる外出自粛を考慮しても人の動きがほとんどないことに驚かされます。

駅に掲出してあった近隣ホテルの広告の地図によれば、徒歩5分ほどのところに「イオン」があるようですが、駅前でその存在を感じるのは難しい状況です。

 

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立派なバスターミナルを発着するのはコミュニティータクシー(乗り合いジャンボタクシー?)だけのようです。

水島臨海鉄道の線路は水島から見れば、概ね倉敷や岡山の方向をむいており、路線が主要目的地に対して大きく迂回しているということもなければ、

水島~倉敷市の約10kmの運賃330円についても、JRより高いものの地方私鉄としては標準的であり、

倉敷でJRに乗り継いで岡山まで行く場合でも50分程度・600円台で済みます。

また先に時刻表で確認したように列車は日中でも平均30分に一本程度の頻度で運転されています。

遠来の訪問者が少々考えたくらいでは、マンションに囲まれ商業施設にも近いこの駅が閑散としている理由はおもいつきません。

 

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約20分後の水島駅折り返しの倉敷市行に乗車し、倉敷市まで戻ります。

 

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水島臨海鉄道とバス路線の連絡については、児島駅と倉敷駅を結ぶ下電バスの塩生線が浦田駅前を通っており相互に乗り継ぐことができます。

琴電など四国内乗り歩きの往路復路に立ち寄るには便利な乗り継ぎと言えそうです。

 

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水島から20分少々で倉敷市駅に到着。

すでに夕方の時間帯になっています。

土日は終日写真のような軽量ディーゼルカーで運転される水島臨海鉄道の旅客列車ですが、

平日の朝夕はJRから転籍した国鉄型のディーゼルカーで運転される便があり、水島臨海鉄道のHPにも該当便が明記されています。

5年前に訪問したときのものですが、最後にその写真を添付させていただきます。

 

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浦田駅に入線するキハ35+キハ37の2両編成。

キハ35は高度成長期に国鉄が製造した通勤型ディーゼルカーで大都市近郊の非電化路線で活躍しました。

水島臨海鉄道に転籍した車両は、JR化後も千葉県の久留里線で活躍していたものです。

 

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三菱自工前駅にて。


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倉敷市駅で撮影したキハ37。

国鉄末期に5両のみ製造された希少車両で久留里線と加古川線(兵庫)に導入されました。

 

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キハ37車内。長いロングシートが特徴です。

JR時代に改造が施されていたキハ35にくらべ国鉄時代の姿を保っています。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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【市営化で運賃半額】神戸市営地下鉄北神線乗車記

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神戸市北区谷上駅。

谷上駅は神戸市中心部に近い湊川駅と有馬温泉を結ぶ神戸電鉄有馬線の途中駅でしたが、

戦後有馬線沿線の開発が進み混雑が激しくなったことから、

昭和63年にそのバイパスルートとして谷上駅を始発駅とする北神急行線が開業。

現在の谷上駅舎はそのときに建設されたものです。

 

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北神急行線は従来の神戸電鉄有馬線経由で約40分かかっていた谷上~三宮を10分に短縮する画期的な路線でしたが、

六甲山系を貫く約7kmのトンネル鉄道で建設費が嵩んだことから、運賃を高めに設定せざるを得なかったうえ、

三宮へ向かう場合、列車は直通するものの新神戸からは神戸市営地下鉄区間となるため、

例えば有馬線の終点有馬温泉から北神急行線ルートで三宮へ向かう場合、

有馬温泉から谷上までの神戸電鉄運賃、谷上から新神戸までの北神急行運賃、新神戸から三宮までの神戸市営地下鉄運賃の合算額が必要となり、

有馬温泉など谷上以北の神戸電鉄沿線から三宮までの運賃は1000円を超えることも珍しくない状況でした。

そのため遠回り承知で従来の神戸電鉄有馬線ルートを使う客が少なくなく、

また北神急行開業以後、有馬線沿線の開発が当初の予想ほどは進まなかったことから、

北神急行の利用は伸び悩み、経営は行き詰まっていました。

そのような状況で2020年6月1日より、

北神急行線と新神戸で接続する神戸市営地下鉄に編入されるような形で、

北神急行線区間の神戸市営化が実施されることになりました。

 

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谷上駅改札口付近。

 

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谷上駅の運賃表。

北神急行線当時は谷上~新神戸間の運賃に、その先三宮までは神戸市営地下鉄運賃を合わせ550円となっていましたが、

これが全線神戸市営地下鉄化されたことで280円と約半額に値下げされることになりました。

 

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こちらは神戸市営地下鉄「三宮駅」の運賃表です。

値下げにより谷上乗り換えで三宮から有馬温泉までの運賃は680円となりましたが、これは、

 

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(写真・阪神電鉄神戸三宮駅の運賃表)

従来は谷上乗り換えより「時間はかかるが安い」とされた神戸電鉄ルートの720円を下回っていることがわかります。

今回の北神急行市営化について「三宮~谷上の運賃が半額になる」とマスコミなどでも報道されていますが、

その本質的な意義は、この三宮~神戸電鉄有馬線・三田線方面での運賃逆転にあると言って差し支えなさそうです。


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谷上駅の時刻表を見比べると神戸電鉄有馬線は日中15分毎、朝ラッシュ時約5分毎であるのに対して、

 

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北神急行線改め、神戸市営地下鉄線は日中15分毎、朝ラッシュ時8~9分毎の運転となっています。

神戸電鉄の4両編成に対し神戸市営地下鉄は6両編成であり、車両サイズにも差があるため、朝ラッシュ時の輸送能力に大きな差はありません。

なお神戸市は今回の市営化で30%の利用者増加を見込んでいるとの報道もありますが、北神急行線の輸送能力に余裕があったこともあり市営化に際してダイヤ改正は行われていません。

 

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改札を抜け3・4番線ホームにあがると15:41発の神戸市営地下鉄西神中央行が発車を待っていました。

 

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神戸市営地下鉄車両の緑に対し茶色の帯を巻いた車両は北神急行電鉄開業に際し、同社の車両として運転を開始したものです。

ただ北神急行開業当初から両社は直通運転を行っているため、運賃面では劇的な変化を生んだ今回の市営化も運転面ではほとんど変化がありません。

 

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しばらくして三田・有馬方面から神戸電鉄の列車が到着。

 

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同じホームに並んで停車すると、神戸電鉄(右)から神戸市営地下鉄(左)へ、まとまった数の乗り換えがみられました。

三田・有馬方面から三宮までの運賃がほぼ同じあるいは逆転した今、三宮に関しては神戸電鉄経由で向かう理由はほぼなくなりましたが、

神戸電鉄沿線の鈴蘭台方面へむかうと思われる乗客など1両に10人程度は乗り換えず神戸電鉄車内に残っていました。

 

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15:40。先に神戸電鉄が発車し、1分後神戸市営地下鉄も西神中央に向けて発車していきました。

ちなみに地下鉄の三宮到着は15:51ですが

先に発車した神戸電鉄の場合、終点新開地で乗り換えて三宮に到着するのは16:20となります。

 

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間もなく入線してきた次発15:56発の西神中央行に乗車して三宮へ向かいます。

車両は神戸市営地下鉄の最新型6000系です。

今後新たに神戸市営地下鉄車両となった先程の茶色の元北神急行車両を含む、

神戸市営地下鉄全車両がこの6000系の置き換えられる予定になっています。(海岸線車両を除く)

 

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6000系車内の吊り広告。

谷上駅周辺の神戸市バスの路線の改変を告げる内容です。

 

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谷上駅前で発車時刻を待つ神戸市バス車両。

今回の市営化による値下げにより、谷上以北の神戸電鉄(有馬線やその先の三田線)の駅から三宮へむかう乗客の神戸電鉄から神戸市営地下鉄への乗り換えが促進されることは間違いありませんが、

注目すべきは、神戸電鉄ルートで谷上駅より三宮(新開地)に近い位置にある駅から

「谷上まで逆行して神戸市営地下鉄(北神急行ルート)に乗車する流れをどれだけ作り出せるか」ではないでしょうか。

先述の30%増加という見通しも「逆行需要」を見込んだ数値と思われます。

 

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谷上駅前にあったバス路線図。

30系統は谷上駅の2駅三宮(新開地)寄りの山の街駅から住宅地を通って谷上駅に至るルートになっています。

山の街駅から三宮までの運賃は神戸電鉄ルートで570円ですが、今回の値下げにより谷上まで逆行した場合520円となっており、

山の街駅まで徒歩でアクセスし神戸電鉄で三宮へ向かっていた乗客が谷上逆行ルートに切り替える可能性がありますが、

バスで山の街駅へ向かっていた乗客の場合、そのバス停から谷上駅までバスで出られれば、非常に大きなメリットになります。(バスの運賃が均一200円なら770円から480円への値下げ)

吊り広告の路線改変の詳細も、そうした需要を狙い谷上駅乗り入れの路線を増やす内容になっていました。

 

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15:56。神戸電鉄からの乗り換えを受け、定刻に谷上駅を発車。

列車は谷上駅を発車するとすぐに山岳トンネルに入ります。

このトンネルは神戸市営地下鉄の地下トンネルに繋がっており、

次に列車が地上に顔を出すのはおよそ30分後の妙法寺駅付近となります。

 

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トンネル内は新神戸に向けて33‰の連続下り勾配となっています。。

谷上駅の標高は244メートルありますが、今回神戸市営地下鉄の駅となったことで、地下鉄の駅としては日本一標高の高い駅となります。

元々、神戸市営地下鉄の総合運動公園駅が「日本一」の期間が長かったのですが、

2016年に開業した仙台市営地下鉄東西線の八木山動物公園駅に僅差で抜かれていました。

両駅の標高はともに100メートル程度であり、今度はそう簡単に抜かれることはなさそうです。


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約8分間で六甲山系の下をくぐり新神戸に到着。

市営化された谷上~新神戸の運転業務は神戸電鉄に委託されているため、北神急行時代と変わらず、ここで乗務員が交代する光景が今後もみられます。

神戸電鉄への委託には経営的に影響を受けることへの補償的な意味合いがあると思いますが、

「元北神急行区間の運転業務を受託することになったから神戸電鉄も安泰」という印象は個人的にはもっていません。

 

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日中は谷上始発の列車の間に新神戸始発の列車が1本が入るダイヤになっており、ホーム反対側では次発の西神中央行が発車を待っています。

 

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新神戸から2分。

16:06に三宮駅到着。

 

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大阪方面へはここで阪神電鉄・阪急電鉄・JR神戸線に乗り換えとなります。

 

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地下鉄三宮駅コンコース。

乗り継ぎに関しては、地下で繋がるのは阪神電鉄の神戸三宮駅ですが、

平行移動の距離ではJR三ノ宮駅が近く、大阪までの所要時間もJRの新快速が最も短いことから、

朝ラッシュ時には地下鉄駅からJR改札口に向かう人の流れが途絶えることがありません。

なお神戸電鉄の有馬・三田方面から阪神電鉄・阪急電鉄の大阪方面の駅へ向かう場合に限れば、

谷上駅で乗り換えずに神戸電鉄ルートで新開地駅まで行って乗り換えると、

乗り換えの回数が1回で済み、乗り換え自体も楽ですが、

時間が30分余計にかかるうえ、今回運賃も逆転したため今後そのような選択をする人がどれだけいるかは未知数です。


現時点では、今回の北神急行市営化によって運賃以外で目に見えた動きがあったのは谷上駅周辺のバス路線だけのようですが、

今後値下げ後の需要動向にあわせたダイヤ改正などが実施されるものと思われます。

最後までお読みいただきありがとうございました。


投稿予定だった水島臨海鉄道の記事は近日中に投稿する予定です。


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【吉備線乗車記2】沿線の名所・旧跡密度は京都・奈良周辺の路線に匹敵。

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JR西日本岡山駅。今回はここ岡山と近郊の総社を結ぶローカル線「吉備線」に乗車します。

 

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乗車した12:11発の総社行。吉備線の列車は新幹線とは反対側の9番・10番ホームからの発車です。

 

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約15分の乗車で岡山市街地を抜け4駅目の吉備津駅で下車。

 

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吉備津駅舎。

 

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周辺案内図。(吉備津神社前のものです。)

吉備津駅から吉備津神社⇒(徒歩)⇒吉備津彦神社⇒備前一宮駅と進みます。

 

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駅前の道を左に進み突き当たりを右折すると吉備津神社へと続く松並木が延びています。

 

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松並木の途中にある鳥居をくぐると背後で踏切が鳴り始め、岡山行の列車がやってきました。

鳥居には「昭和10年」「皇太子(平成天皇)御降誕記念」の文字が刻まれています。 

吉備線は岡山近郊の通勤通学路線であるとともに、沿線に神社仏閣・史跡旧跡の類が多いことも特徴です。

その点、全国を見回しても京都・奈良周辺を除けば吉備線の右に出る路線はないのではないでしょうか。

 

 

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松並木の道を歩くこと約5分で吉備津神社前に到着。

 

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大吉備津彦命(おおきびつひこのみこと)が祭られている吉備津神社は広大な境内を持つ神社です。

 

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特徴的な屋根を持つ本殿は室町時代に再建された当時のままの姿で残っており国宝に指定されています。

 

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吉備津神社の見所の一つである長廊下。長さは380メートルもあり、地形に沿って作られているため美しい曲線を描いています。

この廊下の先にある御釜殿では祈祷した内容の吉凶を占うこともできます。

 

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吉備津神社から吉備津彦神社へは吉備線沿いを歩いて向かいました。

 

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吉備津神社は吉備津駅から徒歩約10分。吉備津彦神社は隣の備前一宮駅から徒歩約5分ですが、

吉備津神社から吉備津彦神社まで歩いても20分程です。

 

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吉備津彦神社の入口に到着。

吉備津神社と同じく大吉備津彦命を祭神とする神社です。

 

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拝殿。

 

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拝殿の奥の本殿は県指定文化財に登録されています。

 

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備前一宮駅は吉備津彦神社正面の道を進み、踏切を渡って左折。

神社から徒歩5分ほどの距離にあります。駅舎横ではレンタサイクルが営業していました。

 

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備前一宮駅の改札口。

改札口周辺にはチャージもできるICOCA対応の券売機に自動改札機や、

 

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無人駅ながら小型の情報装置とインターホンが用意されており、

ローカル線という範疇では安定した利用があり、LRT による近代化計画も現実味を帯びてきた吉備線に対しては、現状でも一定の投資が行われていることがわかります。

 

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14:04発の総社行で終点の総社へ向かいます。

日中の吉備線は1時間に1~2本程度の運転本数です。駅から徒歩で観光する場合は、事前に次に乗車する列車の時刻を確認しておくほうがよさそうです。

 

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先ほど下車した吉備津駅を発車してしばらくすると右前方の田園地帯に最上稲荷の大きな鳥居が見えてきました。

 

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鳥居の前を通過すると吉備線の中間に位置し線内で最も利用が多い備中高松駅に到着します。

 

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最上稲荷の最寄り駅で初詣シーズンには臨時列車も運転されますが、鳥居は近くても神社までは距離があり、

平時は駅前からタクシーかレンタサイクルのお世話になるのが良さそうです。

自転車を借りてしまえば、備中高松城跡や五重塔で知られる備中国分寺なども駅から気軽に訪れることができます。

 

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駅にあった観光案内。

駅から近い備中高松城は豊臣秀吉による「水攻め」で知られます。

湿地の真ん中に立つ備中高松城を攻め倦ねた秀吉は、近くを流れる足守川を意図的に決壊させ、城を湖に浮かぶ小島のような状態にして落城させています。

この「水攻め」を発案したとされる家臣「黒田官兵衛」を扱った数年前のNHK 大河ドラマでもそのシーンが再現されました。

「水攻め」は巧妙で壮大な作戦でありながら、極力「血を流さずに」勝敗を決めたという点も後世からの評価が芳しい理由のようです。

 

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対向列車の到着を待って発車。

 

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備中高松を出てしばらくすると列車は足守川の鉄橋にさしかかります。

現在の足守川は水量もそれほど多くない静かな川のように見えます。

 

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足守川沿いにある足守駅。

 

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備中高松を発車しても車内には多くの乗客が残っていましたが、総社市街に入った東総社でようやく1両数人という状態に。

 

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東総社から総社市街を巻くように進むと右手から複線電化の伯備線が近づき、

 

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終点の総社駅に到着。岡山から乗り通すと約40分の道のりです。

 

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終点の総社駅は吉備線・伯備線のほか、一つ隣の伯備線清音駅から分岐する井原鉄道の列車も乗り入れるターミナルです。

なおこの駅を発着する伯備線の列車の大半は倉敷駅から山陽本線に入って岡山方面に直通しています。

伯備線の電車で倉敷回りで岡山へ向かう場合、距離的には吉備線より長く運賃も高くなりますが、

単線非電化の吉備線に対し、複線電化で高速運転ができるため、所要時間は倉敷回りのほうが短いという逆転現象が起きています。

先述の吉備線LRT化計画では吉備線全線が電化され最新型の路面電車タイプの車両が導入される見通しですが、

途中駅を7駅増やす構想で、幹線道路と信号で平面交差ということになれば、所要時間の増加は避けられそうになく、

総社~岡山間の移動においては、かえって倉敷回りの重要性が増す結果になるかも知れません。

このあと伯備線で倉敷へ向かい、水島臨海鉄道に乗車しました。つづきは近日中に投稿します。

 

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【吉備線乗車記1】ラッシュ時10分毎に増発?ローカル線LRT化の光と影について考える。

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JR 西日本岡山駅。

今回はここから岡山と近郊の総社を結ぶローカル線吉備線に乗車します。

 

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改札口の発車表示。吉備線は左端下段、

つぎの発車は12:11の総社行です。

なお吉備線には表示のように桃太郎線の愛称が付されています。

 

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吉備線の列車は西口バスターミナルに面した9・10番線からの発車で、岡山県北部の津山へ向かう津山線とホームを共用しています。

 

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吉備線は途中8駅、終点の総社までの所要時間は約40分。

日中の一部をのぞいて概ね1時間に2本の運転で一部の便は途中の備中高松までの運転となっています。

 

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岡山駅を発車した吉備線の列車は、一旦高架線に上がりますが、すぐに地平に降り幹線道路と平面交差をしつつ、備前三門駅・大安寺駅と岡山の市街地を進みます。

吉備線については富山県の富山港線とともに、2003年にJR西日本から公式にLRT(近代的な路面電車)化の提案がなされました。

その是非や具体的な検討が続けられる過程で、岡山市内では高架化計画が白紙になった区間もあるようです。

なお富山港線については吉備線に比べて利用が少なく廃線の話もあったことから、LRTという形で存続させることについて最初から地元が積極的で、

3年度の2006年には「富山ライトレール」という新会社が旧JR富山港線の軌道を利用した路面電車の運行を開始ていします。

 

 

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「富山ライトレール」(現富山地方鉄道)の車両。2013年撮影。

 

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富山ライトレール(現富山地方鉄道)の時刻表など。(日中15分毎・平日朝ラッシュ時10分毎)JR富山港線時代には日中1時間に1本だった。2013年撮影。

 

先発の「富山ライトレール」が開業当初から良好な結果を出したことも背景にあると思いますが、

吉備線沿線でも次第にLRT化に向けて積極的な動きが見られるようになり、

2018年4月には沿線の岡山市・総社市・JR西日本の間でLRT化に向けた役割分担・費用分担について合意したことが発表されました。

具体的な運行計画については、先述のように現在1時間2本程度の列車本数を、ラッシュ時には途中の備中高松まで10分毎、その先総社まで15分毎、日中も20分毎まで増発。

新駅を7駅設置するかわりに運賃は現状より20%引き上げるという想定がされているようです。

個人的な見解としては、将来性が見込めるローカル線が近代的な姿になって存続することに異議はありませんが、

先述の2003年のJR西日本からの発表の際に「地域に密着したローカル線については広域輸送(新幹線や特急列車など)を前提としたJRが得意とするところではないので地元密着の新しいスタイルの鉄道に生まれ変わらせることが望ましいのではないか」という内容の発表・提案だったという報道がされていたと記憶しています。

それが事実なら、例えば県庁所在都市クラスを拠点とする地方私鉄では、今後も自らが運営を続けることを前提で列車の増発や新駅設置などとともに値上げも適時実施するなど経営努力がなされていますが、

「JRはそれと同じことを本腰を入れてやるつもりはない」という受け止めもできるわけで、その点は当時から疑問を感じています。

(JRの運賃体系が短距離のローカル輸送で利益を出しにくい構成になっているという点は理解できますが。)

利用者の大幅な増加が見られるなど成功を収めている「富山ライトレール」ですが、JRから分離されたことにより以前は東京から富山港線の駅までの1枚の切符が買えたものが、現在ではJRの切符は北陸新幹線の富山までしか買えないばかりか、

「富山ライトレール(富山地方鉄道)」の駅からお隣新潟県の糸魚川まで鉄道(在来線)で行こうとすれば、以前はJRだけでつながり、乗り換えも富山駅1回だけで済んだものが、

現在では「富山ライトレール(富山地方鉄道)」「あいの風とやま鉄道」「えちごトキめき鉄道」と3社乗り継ぎになり、富山と泊の2回の乗り換えを強いられるのが現実です。

これらは昨今注目されている「MaaS」の概念に真っ向から喧嘩を売っているようにも見え、これから進められる吉備線のLRT化においても、同じような不便が極力生じないような配慮が必要ではないかと思うと同時に、

今のところ具体的な将来像が示されていない他の一定の需要があるJRローカル線(吉備線の近隣では福塩線の福山近郊区間など)の将来を考えるうえでも、

JRが上記のようなスタンスであるとすれば、懸念事項と言わなければならないでしょう。

地方交通線運賃を値上げしたり、極端に利用者が少ない区間(バスでも無理なく運べる区間)を廃止してでも、

それ以外の区間(鉄道でないと運べない輸送量がある区間)については、JR自らが利便性改善⇒乗客増加⇒収支均衡を目指してほしいというのが個人的な希望です。

★「富山ライトレール」は2020年3月より高架の富山駅を潜る形で駅の南側を走る富山地方鉄道への乗り入れを開始し、現在は富山地方鉄道の1路線となっています。

 

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大安寺駅を発車すると周囲に田園風景が広がりました。

「富山ライトレール」においてもJR富山港線時代には1時間に1本だったものが15分毎に増発されたことで沿線の開発が進み人口の増加が見られています。

数年後ここを近代的な路面電車がラッシュ時10分毎、日中20分毎に走るようになれば一気に都市化が進むことも予想されます。

 

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岡山から約15分。今回は4駅目の吉備津駅で下車しました。

 

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吉備津駅の簡素な駅舎。

 

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周辺地図(吉備津神社前のものです)

このあと駅から徒歩10分の吉備津神社へ向かい、そのあと徒歩で隣駅「備前一宮駅」に近い吉備津彦神社に向かいました、

ここまで「都市交通」に関係するやや硬い内容でしたが、ここからは沿線散策などが中心になりますので、今回の乗車記事はここで一旦切らせていただきます。

つづきはこちらです。(一部内容が重複します。)

 

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【超特急】名古屋→神戸3時間。名神高速バスの実力(名古屋駅13:35→神戸三宮BT16:37)

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JR名古屋駅新幹線口に隣接する高速バスのりば。

今回はここから高速バスで神戸の中心三宮へ向かいます。

 

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ターミナル脇にある乗車券発売所券待合室。

 

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建物内は三密防止の観点からベンチの大半が取り払われ「乗車券だけ購入したら建物から出て下さい」と言われているような雰囲気でした。

 

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バスターミナル案内図。

 

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4番乗り場から13:35に発車する神戸三宮行に乗車します。

JR東海バスの運行で種別は「超特急」となっています。

なお名古屋~神戸の超特急は1日6往復で、そのうち3往復を名鉄バスが受け持っている関係で、名古屋側の始発はJR名古屋駅ではなく名鉄バスセンターとなっています。

 

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名鉄バスセンターから名古屋駅新幹線口に到着し発車を待つ乗車便車両。

 

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車内。シートは横4列で昼間の高速バスとしては標準的な設備という印象ですが

 

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指定の席に座ってみると、シートの幅は余裕かあるほか、小さなテーブルやコンセント・フットレストなどが各席に備わっており、

隣が空席だったこともありますが掛け心地は思いのほか快適でした。

 

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13:35定刻に名古屋駅を発車。

乗客は約10人。緊急事態宣言明けから間もない時期としては「乗っている」印象であり、

採算ラインに届かないまでも「運休にしたほうがマシ」というほどひどい状況ではないようです。

 

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名古屋市中心部の一般道をしばらく走行。

名古屋の地理には詳しくありませんが、地下鉄桜通線の終点中村区役所前駅の出口が見えていました。

乗車便は「超特急」らしく名古屋駅を発車すると途中停車するバス停はなく、次は終点の神戸三宮となっています。

 

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烏森ランプから名古屋高速に進入。

 

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名古屋高速の車窓。

名古屋駅を発車してそれほど時間は経っていませんが、沿道はすでに郊外の風景になっています。

 

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名古屋高速を抜け東名阪道へ。

名古屋高速、東名阪道とも出控えの影響で交通量は少なく、バスは走行車線を定速運転で淡々と進みます。

 

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東名阪道の木曽三川にかかる橋は、最近開通した高速道路の橋に比べるとクラシックな雰囲気が漂っていました。

東名阪道のこの付近の開通は昭和50年となっていますが、公害問題への抗議から地元首長が開業式典をボイコットする事態になったと伝えられています。

 

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車窓には一見すると公害とは無縁に見えるのどかな風景が広がっています。

 

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四日市JCTで東名阪道から分岐し新名神高速道路に進みます。

これから走る新名神高速道路の四日市JCT ~亀山JCT 間の開通は去年(2019年)のことです。

 

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新規開通した新名神区間。

亀山付近までは東名阪に並行しているため車窓風景も似ています。

 

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のどかな車窓の前方にJR西日本の「まっ黄色」カラーの電車が留まっているのが見え目を奪われましたが、

接近すると三岐鉄道の元西武鉄道車両とわかりました。

三岐鉄道は西武鉄道の息がかかったローカル私鉄で西武鉄道の中古車両が西武時代の黄色の塗装を纏って活躍しています。

 

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亀山JCT 付近からは山深くなり、

 

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三重・滋賀県境をなす鈴鹿山地を貫く約4kmの鈴鹿トンネルを通過。

 

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滋賀県に入り14:40頃。名古屋駅を出て約1時間で甲南PAに到着。ここで10分少々の休憩となりました。

 

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PAの建物。

 

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週末の昼下がりですが、この先、京阪神周辺の高速道路に渋滞はなし。

交通量が少ないと安全性が増すためか事故の表示も見当たりません。

 

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PAのトイレにあった夜間車線規制の告知。

普段なら夜間でないとできない工事規制も今の時期なら日中にできる場合があるかも知れません。

照明の省略や割増手当の削減など料金収入が減っているであろう高速道路会社のコストカット策としては有効なのではないでしょうか。

 

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14:50頃発車。

 

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現在開通している新名神の滋賀県区間は開通からすでに10年以上が経過していますが、

昭和期に建設された高速道路と違い橋梁ひとつを見ても周囲の風景に馴染むよう配慮されている様子がわかります。

 

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草津JCTで新名神区間は終わり、名神高速に合流。

現在の新名神高速道路は草津JCTから高槻JCTの間、概ね滋賀県西部と京都府内が未開通で残っています。

 

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草津~大津間にある名神高速と東海道新幹線の並行区間。

日本の交通・物流を象徴する場面として関連雑誌にこの区間を俯瞰した写真が挿入されることもよくあります。

 

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京都市街地の南をかすめ、かつて渋滞の名所だった梶原・天王山トンネル付近を右ルート・左ルートに別れて通過。

バスは大阪府内に入ります。 

 

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日本初の高速道路として開通した名神高速道路ですが「神」の神戸市には乗り入れていません。

バスは名神高速道路の終点、兵庫県西宮市の西宮JCTから阪神高速神戸線に進入。

 

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六甲山系の山並みを右に見て終点の神戸三宮バスターミナルへ急ぎます。

 

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生田川ランプで阪神高速をでると終点の三宮までは「歩いても行ける」距離です。

 

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定刻16:37に対して16:24頃にJR三ノ宮駅に隣接する三宮バスターミナルに到着しました。

名古屋駅から所定3時間2分のところ、今回は2時間49分での到着です。

 

名古屋駅からは大阪駅行の高速バスも運行されていますが、その所要時間は所定ダイヤで2時間56分と神戸行と6分しか違いません。(運賃は神戸三宮まで3460円、大阪駅まで3060円)

また鉄道との比較においても、新幹線を別にすれば、名古屋と大阪(難波)の間は近鉄特急が2時間5分で結んでおり、高速バスとの所要時間差(51分)が明確になっていますが、

神戸までとなると難波で阪神神戸三宮行の快速急行にのりついで約3時間の道のりとなり、

私鉄トップクラスの高速運転で知られる近鉄特急が相手でも、今回のように道が空いていれば「バスのほうが早い」ということが頻繁に起こりそうです。

全体として名古屋駅のバスターミナルにあった「超特急」の種別表示は決して大袈裟なものではなく、

二つの隣り合う大都市圏を鉄道と互角の所要時間、割安な運賃で直結する「名神」高速バスの実力を再認識した3時間となりました。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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【リニア接続も視野に?】近鉄の新型特急「ひのとり」プレミアムシート乗車記(大阪難波11:00→名古屋13:05)

 

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近鉄大阪難波駅の特急券売場。

今回はここ大阪難波から2020年3月にデビューした新型特急列車「ひのとり」に乗車して名古屋へ向かいます。

 

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特急券売場に掲出された特急列車時刻表は近鉄伝統の縦書き。

日中の名古屋行は毎時0分発の鶴橋~名古屋間で津のみに停車する速達便と毎時30分発の主要駅停車便で構成されています。

毎時0分発の速達便は名阪ノンストップ特急として運転されてきた経緯があり、車両もその用途に特化した「アーバンライナー」車両が主に使われてきましたが、

今回デビューした「ひのとり」はその一部を置き換えるダイヤで運行されています。

 

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販売窓口上部の運賃表は特急車両の写真を多用した全国的にも珍しい?見ていて楽しくなる運賃表です。

ここで特急券を購入するのはレストランでメニュー写真を見てウエイターに注文する感覚にも似ており、特急列車が近鉄の「看板商品」であることを改めて実感するものです。

肝心の料金ついては、従来の「アーバンライナー」のレギュラーシート(普通車)が指定席特急券のみ、デラックスシート(グリーン車相当)が追加510円であるのに対し、「ひのとり」はレギュラーシートが追加200円、プレミアムシートが追加900円となっています。

大阪難波から名古屋までプレミアムシートを利用した場合の運賃・料金の合計は5240円となり、新大阪~名古屋間の新幹線普通車より安いもののその差は大きくはありません。

 

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今回は新幹線の「速さ」とは別の満足に期待し11:00発の「ひのとり11列車」のプレミアムシートに乗車します。

「11時発の11列車」は偶然ではなく大阪難波発の便については発車時刻と列車の号数を意図的に一致させているようです。

特急券はインターネットサイトから購入、乗車券はピタパのタッチで支払いました。

 

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発車時刻の10分程前に改札を抜け、ホームで発車を待つ「ひのとり」と対面。

近鉄の特急車両と言えば、まず昭和から続く紺色とオレンジの塗装を連想しますが、

「ひのとり」のメタリックレッドともいうべき「ゴージャスな赤色」は、

「アーバンライナー」「しまかぜ」「伊勢志摩ライナー」など平成の看板特急にも全く使われることがなかった色であり、

ホームに停車しているだけで強い存在感を放っていました。

 

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6両編成の両端がハイデッカー構造のプレミアムシート車両となっており、その車端には黄金の「ひのとり」(不死鳥)が描かれていました。

 

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指定の名古屋寄り先頭車1号車の車内へ。

 

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エントランス部にはコーヒーマシーンとスナックの自販機が設置されており、その対面にはカード対応の荷物ロッカーがあります。

いずれもJR も含め従来の特急列車では見られなかったサービスです。

またこの部分の天井は階段の先のハイデッガー構造の客室部分と同じ高さで、鉄道の車内としては非常に開放感がある空間になっていました。

 

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エントランス部の階段を上がりプレミアムシートが並ぶ客室へ。

赤い絨毯の上に大きなシートがゆったりと並ぶ車内の雰囲気は従来の「グリーン車」の域を脱しており、

JALの国内線ファーストクラスや短距離国際線のビジネスクラスをイメージさせるものでした。

 

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運転席後ろの窓も大きく最前列の席に座ると前面展望をほしいままに出来ます。

ちなみに最前列の席番は7A ~7C となっています。

 

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今回は最前列の2人掛け窓側に空席がありましたが、車内見学などで席を立つことを考えて、前から3列目の1人席を指定しました。

シートだけを見ても、グリーン車というよりはビジネスクラスを連想させます。

背もたれの枕部分にも「ひのとり」があしらわれています。

 

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シートピッチは130センチあり国内の鉄道では最大級です。

新幹線のグリーン車より14センチ広いだけでなく、

シート背面にリクライニングを受け止めるボードが設置されているので、リクライニングを倒しても後ろの席のスペースを新たに侵食することがありません。

 

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リクライニングは肘おき部分のパネルで操作する電動式。

 

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肘おきに内蔵のテーブル。

 

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座席横の大きな窓の日除けも電動で上下させることができます。

 

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11:00定刻に大阪難波を発車した列車は上本町駅地下ホームに停車したのち、地上に上がり大阪環状線との乗り換え駅鶴橋駅に進入。

 

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鶴橋駅を発車すると次は三重県の県庁所在地津まで1時間以上停車駅はありません。

鶴橋発車時点でプレミアムシートは8割程度の席が埋まっていました。

 

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大阪府内の車庫では「ひのとり」とこれまでの名阪特急の主役アーバンライナー(真ん中の白の車両)の姿が見えました。

 

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大阪府内の市街地から奈良県の田園風景へと車窓は変化していき、列車の速度も一段と早くなります。

 

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速度計アプリで確認しようとしましたが、頭上の荷物棚に運転台の計器が写り込んでいるのを発見。

目を凝らすと速度計の針は110~120の間を指していました。

京阪神ではJRの新快速などでも体験することができる速度ですが、車内の静粛性は雲泥の差で良い意味でスピード感が感じられません。

 

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大阪難波発車から1時間弱、列車は奈良・三重県境付近の山間部を走っています。

車内も落ち着いてきたのでここで他の車両の様子を軽く見学することにしました。

 

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コーヒーマシーンやスナックの自販機があるプレミアムシート車両のエントランス部分にはトイレも設置されています。

 

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トイレ前の通路から隣のレギュラーシート車両に移ると、長椅子を配したフリースペースがあります。

グループで乗車した場合など静かなプレミアムシート車両での談笑が憚られるときは、ここでコーヒーマシーンのコーヒーを飲みながら寛ぐのも悪くなさそうです。

なお長椅子の対面にはプレミアムシート車両と同じ荷物ロッカーが用意されています。

 

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レギュラーシート車両の車内。8割程度の席が埋まっていたプレミアムシート車両に比べ着席率は2割程度とすいていました。 

レギュラーシートの座席背面にもリクライニング受けのボードが設置されているほか、ピッチについても新幹線のグリーン車と同じ116センチが確保されています。

先述のようにアーバンライナーのレギュラーシートに比べ追加料金200円が必要ですが、充分にその価値はありそうです。

 

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レギュラーシートの座席。次に乗車するときは乗り比べの意味でこちらを指定しようと思います。 

 

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フリースペースがあった側とは反対のデッキには一般的な飲料の自販機が設置せれていました。

 

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プレミアムシート車両にもどりコーヒーマシーンのコーヒーを購入。

紙コップも「ひのとり」デザインになっており、飲み終えた直後に洗面所で洗えば乗車記念品にもなりそうです。

 

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肘おき内臓のものとは別に窓際にも小さなテーブルがあります。

 

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洗面所に置かれていた「おしぼり」

今風にいう「アテンダント」の女性が乗客に「おしぼり」を配るのが近鉄特急の定番サービスになっていた時代があり、筆者も記憶があります。

 

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乗車時には気づきませんでしたが、足元には車内設備案内のパンフレットが差し込まれていました。

 

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列車は三重県伊賀市と津市に跨る布引山地を貫く新青山トンネル(5652m)を走行中。同トンネルは日本の大手私鉄では西武鉄道の正丸トンネル(4811m)を越える日本一の長さとなっています。

 

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トンネル区間を終え平野部に出ると伊勢中川駅手前で大きく減速。ここまで走行してきた大阪線から分岐して名古屋線への短絡線に進みます。

 

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短絡線からの車窓。右手から名古屋線の軌道が近づいてきます。

写真右奥には大阪線と名古屋線が合流する伊勢中川駅があります。

現在では標準軌(1435mm)で統一され「ひのとり」や「アーバンライナー」など名阪直通の特急が走る大阪線・名古屋線ですが、

かつては名古屋線の軌道が狭軌(1067mm)となっていたため直通運転ができず、近鉄で大阪と名古屋を行き来する場合は伊勢中川での乗り換えが必須になっていました。

終戦後、悲願となっていた名古屋線の標準軌化工事が開始されましたが、それから間もなく昭和34年9月に伊勢湾台風が襲来。

名古屋線が大規模な被害を受けましたが、その際、路線の復旧は工事計画を前倒しして標準軌で行うことが決定されました。

工事は急ピッチで進められ、同年12月12日には完了、このとき「ひのとり」につながる大阪~名古屋の直通特急の運転が始まっています。

当初の名阪直通特急は伊勢中川駅でスイッチバックをしていましたが、昭和36年には走行中の短絡線が完成し、よりスムーズな運転ができるようになっています。

 

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写真:名古屋線への合流

 

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名古屋線をしばらく走り、鶴橋以来の停車駅「津」に接近。近鉄の線路に寄り添う単線非電化の軌道はJR紀勢線のものです。

その貧弱な様子は、地域輸送を近鉄に奪われ成長の機会を得られなかったようにも見えますが、

一方で近鉄がなかったら国鉄~JRがそれなりの投資をして路線の近代化をせざるを得なかったはずであり、近鉄がかわりに「やってくれた」という見方もできそうです。

 

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13:22.鶴橋から1時間以上のノンストップ走行で津に到着。

運転開始から2ヶ月以上が経過してもホームで後続列車を待つ乗客からの熱い視線を感じました。

 

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運転席では運転士の交代が行われています。かつて鶴橋から名古屋までノンストップ運転だった時代には、先ほど通過した短絡線走行中に運転士の交代が行われていました。

 

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津を発車してしばらくで三重県最大の都市「四日市」付近を走行。

近鉄四日市駅周辺はその中心で沿線には都会的な風景が広がりますが、「ひのとり」は大きく減速することもなく四日市駅を通過し終点名古屋へ急ぎます。

 

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こちらはさらに進んで桑名駅。JRと近鉄を連絡する橋上駅舎の工事が行われているようです。

 

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名古屋線の見せ場は木曽三川と呼ばれる、揖斐川・長良川・木曽川にかかる2つの長い鉄橋です。延長は揖斐・長良川鉄橋は991.7m、木曽川橋梁は860.7mとなっています。

 

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国鉄(JR)の東海道本線が名古屋から関ケ原を経由して京都・大阪へ至るルートとなった理由として、この三川への架橋技術が十分でなはなく、仮に「がんばって」架橋しても戦艦から攻撃されれば主要交通路を遮断されることになることが懸念されたためとも言われています。

東海道線が建設された明治初期の日本はまだ「黒船ショック」が尾をひいていたのかも知れません。

 

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名古屋が近づくと平行するJRの軌道も近代的な姿に整備されています。

名古屋13:00発の特急南紀号とすれ違うと「間もなく終点名古屋に到着」と車内放送が流れました。

 

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名古屋駅前のセントラルタワーなどの高層ビルが近づくと名古屋駅へとつづく地下に進入。

 

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トンネルに入ると車内はブルーの間接照明に包まれました。

照明の色を自在に変える演出も航空機にヒントを得たものでしょうか。

 

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13:05名古屋駅に到着。難波から2時間5分、鶴橋から1時間59分は鶴橋~名古屋間ノンストップ運転時代とかわらない所要時間です。

本記事のような乗車記は多少の批判的な視点も含まれていたほうが中身が濃くなると考えていますが、今回乗車した「ひのとり」は「非のうちどころ」がほとんど見つからない素晴らしい車両でした。

強いて言えば、プレミアムシートの追加料金900円を1000円にするかわりにコーヒーマシーンのコーヒーを無料で飲めるようにするほうが、乗客の満足度が向上するのではないかと感じたことくらいでしょうか。

 

★★昭和34年の伊勢湾台風の被害を飛躍へのステップにかえ、東海道新幹線開通によって生じた国鉄(JR)との圧倒的なスピード格差も独自のサービスや魅力的な車両によって凌いできた近鉄名阪特急に押し寄せる次の大波は2027年に予定されているリニア新幹線の名古屋開通ということになるでしょう。

その影響は未知数ですが、東京・大阪を最速で移動しようとすれば名古屋での乗り換えが必須になるという点を考慮すれば、かならずしもマイナス要素ばかりではないようにも思えます。

リニア開通時に名阪特急の主役となっているであろう「ひのとり」は、リニアからの乗り換え客を迎えることを念頭に設計されたものと思われます。

「ひのとり」が「たゆたえども沈まない」近鉄名阪特急のフラッグシップとして末永く活躍してくれることを期待しています。★★

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

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